遺留分トラブルを避けるために書いておくべき誓約書とは?|一律2万円おてがる契約書.com|【テンプレート・ひな形付き】
- 代表行政書士 堤

- 9月19日
- 読了時間: 58分
🌺こんにちは!おてがる契約書の代表行政書士 堤です。
本日は遺留分についての重要なポイントを解説したコラム記事をお届けします。
「遺留分」という言葉を聞いたことはあっても、具体的に何を意味するのか、どのように対処すればよいのか分からない方は少なくありません。今回のコラムでは、遺留分に関する誓約書の役割や作成時のポイントを初心者の方にもわかりやすく解説します。生前に書くべき内容や、後々のトラブルを避けるための注意点まで丁寧にご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
本記事のまとめ:
重要事項 | 概要 |
|---|---|
違いを理解せずに誓約書を書いてしまうと、思わぬ権利喪失につながることがあります。 | |
氏名・日付・放棄内容・署名押印は必須。公証人認証や証人を付けることで効力を高められます。 | |
遺言書の内容を尊重しつつ、最低限の権利を手放す範囲を明確にすることで、トラブルを防止できます。 |
🌻相続トラブルは、家族関係を大きく揺るがす可能性があります。特に遺留分の問題は、知らずに放置すると後々大きな争いに発展することも。この記事では、誓約書の書き方や注意点を具体例や図解とともに解説しており、「これから遺産のことを整理したい」「トラブルを未然に防ぎたい」という方に必ず役立つ内容です。少しの知識と準備で、将来の不安を大きく減らすことができます。
また、おてがる契約書では、どんな契約書も一律2万円で作成しています。作成依頼はLINEで簡単に行うことができるため、誰でもてがるに利用することが可能です。
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▼目次
~事例・比較分析紹介~
~番外編~
1.はじめに:遺留分ってそもそも何?
相続の世界で必ず耳にする言葉のひとつが「遺留分(いりゅうぶん)」です。初めて聞く方には少し難しい響きかもしれませんが、簡単に言うと 「法律で保障された、相続人が最低限もらえる相続財産の取り分」 のことです。
例えば、親が亡くなった後、遺言で財産を特定の子どもだけに多く与えたり、特定の人に生前贈与をしていた場合でも、他の相続人には「法律で保障された分」があります。これが遺留分です。
遺留分を巡るトラブルの典型例
遺留分は相続トラブルの火種になりやすいテーマです。典型例をいくつか挙げると:
遺言で不公平な分配「長男にだけ全財産を相続させる」といった遺言がある場合、他の相続人(例えば次男や配偶者)は遺留分を主張できます。
特定相続人への生前贈与生前に特定の相続人に大きな贈与をしていた場合、他の相続人の取り分が減ることがあります。この場合も遺留分を請求できる可能性があります。
親族間の話し合いができず、感情的対立に発展遺留分を巡る争いは、親族間の信頼関係に亀裂を入れることもあります。
こうしたトラブルを未然に防ぐために登場するのが 「誓約書」や「念書」 です。
遺留分に関する誓約書・念書の役割とは?
遺留分を巡る問題を解決・予防するために作成されるのが「遺留分に関する誓約書」や「念書」です。これらは、口頭の約束だけでなく、書面で意思を明確化することで法的な証拠力を持たせる手段です。
誓約書と念書の違い
用語 | 意味 | 法的効力 |
誓約書 | 将来の行動や義務を守ることを約束する書面 | 契約書に近く、強い効力を持つ場合がある |
念書 | 一般的な確認や約束を書面にしたもの | 誓約書ほど強くはないが、証拠として利用可能 |
例え話:親が亡くなった後、兄弟3人が遺産を分けることになりました。長男が「全財産を私が管理する」と言った場合、次男・三男は「遺留分を守ってほしい」と誓約書を書かせることで、後から揉めるリスクを減らせます。
具体的に何を書けばいいのか?
遺留分に関する誓約書では、以下の内容が盛り込まれることが多いです:
対象財産の明確化「この財産のうち、○○円分が遺留分対象です」と具体的に記載します。
権利を主張しない旨の確認(場合によって)「私は遺留分を請求しない」という意思表示をする場合もあります。
違反時の対応誓約書違反時のペナルティや、返還請求の条件を明記しておくことが重要です。
図解:遺留分と誓約書の関係
┌─────────────────────┐
│ 相続財産全体 │
│ │
│ ┌─────────┐ │
│ │遺留分対象財産│◀───────── 保障される最低限の取り分
│ └─────────┘ │
│ │
│ ┌─────────┐ │
│ │遺言で分配された財産│ ──> 遺留分を超える分は自由に分配可能
│ └─────────┘ │
└─────────────────────┘
誓約書・念書を作ることで、「遺留分対象財産」と「自由に分配できる財産」の境界を明確にし、後のトラブルを防ぎやすくなります。
まとめ
遺留分とは、法律で保障された相続人の最低限の取り分です。
トラブルの典型例として、遺言による不公平分配や生前贈与があります。
誓約書や念書は、口頭だけでは不十分な相続トラブルの予防策として有効です。
書面にすることで、後から「そんな約束はなかった」と言われるリスクを減らせます。
2.基礎知識の整理
遺留分に関するトラブルを防ぐためには、まず 「遺留分」とは何か」「誓約書や念書とは何か」 を正しく理解することが大切です。ここでは、初心者でもわかりやすく整理していきます。
遺留分とは?
遺留分とは、相続人が法律によって保障される 最低限の相続分 のことです。遺言や生前贈与によっても侵害できない「取り分」がある、と考えるとわかりやすいです。
誰が遺留分を持つのか?
遺留分を持つ人は、法律で定められています。日本の民法では以下の相続人が対象です。
相続人の種類 | 遺留分が認められるか |
子ども(直系卑属) | あり |
配偶者 | あり |
直系尊属(親・祖父母など) | あり(直系卑属がいない場合のみ) |
兄弟姉妹 | なし |
例え話:お父さんが亡くなった場合、子どもや配偶者には「最低限これだけはもらえる」という権利があります。しかし兄弟姉妹には遺留分はありません。
遺留分の割合
遺留分は相続財産に対して、相続人の立場によって割合が決まっています。
相続人 | 遺留分の割合 |
配偶者のみ | 1/2 |
子どもがいる場合(配偶者あり) | 配偶者1/2、子ども全員で1/2を按分 |
直系尊属のみ(子どもなし) | 1/3 |
具体例:総財産が1,200万円の場合、子ども2人と配偶者がいる場合は以下のようになります。
配偶者の遺留分:1,200万円 × 1/2 = 600万円
子ども2人の遺留分合計:1,200万円 × 1/2 = 600万円 → 子ども1人あたり300万円
※ 遺留分は法律で保障された最低限なので、遺言や生前贈与で減らされた場合でも請求可能です。
念書・誓約書とは?
遺留分トラブルを防ぐために活用されるのが、「念書」や「誓約書」 です。まずはそれぞれの意味と法律上の位置づけを整理しましょう。
法律上の位置づけ
誓約書将来の行動や義務を明確に約束する書面。契約書に近い性質を持ち、強い法的効力を持つ場合があります。
念書口頭での合意や確認を文書化したもの。誓約書ほど強くはないですが、証拠として裁判で利用できます。
図解:念書と誓約書の違い
┌─────────────────────────────────┐
│ 書面の法的効力 │
│ │
│ 強 ─────────── 誓約書 │
│ │
│ 弱 ─────────── 念書 │
└─────────────────────────────────┘
単なる合意確認と法的効力の違い
書面の種類 | 内容 | 法的効力 |
念書 | 取り決めや確認の記録 | 証拠として利用できるが、強制力は限定的 |
誓約書 | 義務や権利の履行を約束 | 契約書に準じた強い効力を持つ場合あり |
例え話:
念書は「今日はこういう約束をしたよ」とメモを残すイメージ
誓約書は「この約束を破ったらペナルティがあります」と契約書にサインするイメージ
遺留分に関しても、トラブルを防ぎたい場合は 誓約書を作成することでより確実な法的保護 を得ることができます。
ポイントまとめ
遺留分は法律で保障された相続人の最低限の取り分
誰が遺留分を持つか・その割合を理解しておくことが重要
念書や誓約書を活用することで、遺留分トラブルを未然に防げる
3.相続放棄と遺留分放棄の違い
遺産相続に関して、「相続放棄」と「遺留分放棄」は似ている言葉ですが、意味や手続き、法的効力が大きく異なります。ここでは両者の違いを初心者向けに整理します。
相続放棄とは?
相続放棄とは、 相続人が被相続人(亡くなった方)の財産を一切受け取らないことを選択する手続き です。
家庭裁判所で行う手続きが必須
相続放棄は、単なる口頭や書面の約束では効力を持ちません。必ず 家庭裁判所での手続き が必要です。
申立先:被相続人の最後の住所地の家庭裁判所
提出書類:相続放棄申述書、戸籍謄本など
期限:原則として 相続開始を知った日から3か月以内
例え話:相続放棄は「相続財産をもらわないと宣言して家庭裁判所に届け出る」イメージです。口頭で「私はもらいません」と言っても法的には無効です。
「念書」や「誓約書」だけでは無効
家庭内で「相続放棄します」と書面にしても、法的効力はありません。あくまで裁判所の手続きが必須です。
念書や誓約書:証拠として使える場合はあるが、法律上の放棄とはならない
相続放棄:裁判所の許可が出て初めて法的効力が生じる
遺留分放棄とは?
一方、遺留分放棄は 法律で保障された最低限の取り分(遺留分)を放棄すること です。相続放棄とは異なり、財産全体ではなく「遺留分のみ」を放棄できます。
相続開始前に放棄できる制度
遺留分放棄は 相続開始前に家庭裁判所の許可を得て行うことが可能
家庭裁判所の許可が必要な理由は、相続人が権利を軽率に失わないようにするためです
例:親から「あなたには遺留分を請求しないでほしい」と言われても、家庭裁判所での許可を経なければ効力はありません。
相続開始後に放棄する場合との違い
相続開始前放棄:遺留分権利そのものを事前に消滅させる
相続開始後放棄:相続開始後に他の相続人と合意して遺留分請求権を放棄することも可能ですが、家庭裁判所の関与がないと効力に制限があります
「念書・誓約書」だけでは効力が制限される
遺留分を巡るトラブルを防ぐために念書や誓約書を作ることは有効ですが、
家庭裁判所の許可なしでは法的効力は限定的
特に「将来遺留分を請求しない」という意思表示を確認する場合は、家庭裁判所の手続きが重要です
図解:相続放棄と遺留分放棄の違い
┌───────────────────────────────────────────┐
│ 相続人の権利 │
│ │
│ ┌───────────┐ ┌──────────────────┐ │
│ │ 相続放棄 │ │ 遺留分放棄 │ │
│ │ 全財産を │ │ 最低限の取り分だけ │ │
│ │ 放棄する │ │ 放棄する │ │
│ │ 家庭裁判所 │ │ 家庭裁判所の許可が │ │
│ │ の手続き必須│ │ 必要 │ │
│ └───────────┘ └──────────────────┘ │
│ │
│ 注意:念書・誓約書だけでは効力が限定 │
└───────────────────────────────────────────┘
ポイントまとめ
相続放棄は全財産を受け取らない手続きで、家庭裁判所での手続きが必須
遺留分放棄は最低限の取り分だけを放棄する制度で、相続開始前に許可が必要
念書や誓約書は補助的手段として有効だが、単独では法的効力が限定される
トラブル防止には、家庭裁判所の手続き+書面での合意確認の組み合わせが有効
4.遺留分に関する誓約書(サンプル例)
以下は、遺留分に関する誓約書の 基本的な構成例 です。状況に応じて、内容を調整することが可能です。
サンプル条文
遺留分に関する誓約書
私は、以下の事項について誓約いたします。
第1条(遺留分の放棄)
私は、○○(被相続人)の財産に関する遺留分請求権を放棄することをここに誓約します。
第2条(権利行使の制限)
私は、遺留分に関して一切の請求・権利行使を行わないことを確認します。
第3条(違反時の対応)
万が一、本誓約書に違反した場合、○○に対して法的手段による請求を受ける可能性があることを理解しています。
第4条(確認)
本誓約書は、私が自由意思に基づき署名・押印したものであり、強制や圧力は一切受けていません。
作成日:令和○年○月○日
署名:____________________
印:____________________
サンプル条文の解説
第1条:遺留分の放棄
目的:遺留分請求権を事前に放棄する意思を明確化
注意点:法的効力を確実にするには、家庭裁判所の許可が必要です
補足:単に「放棄します」と書くだけでは効力が限定されます
第2条:権利行使の制限
遺留分を巡る請求を行わないことを確認
将来の紛争を防止する役割があります
例え話:兄弟間で「遺留分請求はしない」と明言することで、後から揉めるリスクを減らせます
第3条:違反時の対応
違反した場合のペナルティや法的手段の可能性を明記
家庭裁判所の許可があれば、効力はより強力になります
補足:ここに具体的な金額や返還方法を入れるケースもあります
第4条:確認
強制や圧力がなく自由意思で署名したことを確認
後々、「無理やり書かされた」と争われないための条項です
実務で押さえるポイント
家庭裁判所の許可
相続開始前に遺留分放棄する場合は必須
書面だけでは効力に制限があります
証拠力を高める工夫
署名・押印を必ず行う
作成日を明確にする
必要に応じて公正証書にすることでさらに安心
感情的トラブルを防ぐ
文章で明確に意思を示すことで、親族間の争いを未然に防止可能
専門家の確認が望ましい
弁護士や司法書士に内容を確認してもらうことで、家庭裁判所の許可手続きもスムーズに進みます
図解:誓約書作成と法的効力の流れ
[作成] → [署名・押印] → [家庭裁判所の許可取得] → [法的効力発生]
念書・誓約書だけでは ↓
[法的効力限定・証拠として利用]
💡 補足:
この誓約書を作成することで、遺留分を巡る後々のトラブルを未然に防ぐことが可能です
ただし、効力を最大化するには 家庭裁判所の許可+公正証書化 が理想です
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5.遺留分放棄と誓約書の効力
遺留分放棄や誓約書は、相続トラブルを防ぐ有効な手段ですが、いつ書くか・どのように作るかによって効力が大きく変わります。ここでは、生前・死後の効力や有効とされる条件を整理します。
生前に書いた場合
遺留分放棄の意思を被相続人が生存中に示す場合、単に誓約書や念書を書いたとしても、法的効力は限定的です。
単なる誓約書では無効
「私は遺留分を請求しません」と生前に書いても、法律上の放棄にはなりません
家庭裁判所での手続きを経ないと、相続開始後に他の相続人が遺留分を主張することが可能です
例え話:親が「子どもには遺留分を請求しないでね」と手紙を書いたとしても、それだけでは法的には効力なし。裁判所の許可が必要です。
裁判所での正式な手続きが必要
相続開始前に遺留分を放棄する場合は、家庭裁判所の許可を得る必要があります
手続きには、放棄を希望する相続人の申し立てと、被相続人の財産の概要が必要です
ポイント表:生前放棄の効力
条件 | 効力 |
単なる誓約書・念書 | 無効(証拠としては利用可能) |
家庭裁判所の許可取得 | 法的効力あり(遺留分放棄が成立) |
死後に書いた場合
被相続人の死後に作成される誓約書の場合は、相続人間の合意としての効力が中心です。
相続人間の合意として有効
相続開始後に、相続人同士で「遺留分請求を行わない」と合意すれば、誓約書として有効とされる場合があります
口頭の約束よりも書面化することで、トラブルを未然に防ぎやすくなります
ただし「相続放棄」や「遺留分放棄」とは区別が必要
相続開始後に作成された誓約書は、法律上の**「相続放棄」や家庭裁判所の許可を伴う遺留分放棄」ではありません**
あくまで 相続人同士の合意 としての効力に留まります
例え話:兄弟が集まって「遺留分の請求はしない」と署名した誓約書は有効ですが、家庭裁判所の許可がある遺留分放棄とは効力の強さが異なります。
有効とされる誓約書の条件
誓約書が実際に有効と認められるためには、いくつかの条件があります。
条件 | 説明 | 補足例 |
合意内容が具体的・明確 | どの財産に関する遺留分なのか、誰が放棄するのか明確に書く | 「○○不動産の遺留分に関して、私は請求しない」など |
公序良俗に反しない | 不正な内容や社会通念上問題のある条項は無効 | 違法な条件を付けるなどは不可 |
公正証書化や弁護士関与 | 公正証書として作成、または弁護士確認で証拠力を強化 | 家庭裁判所の許可取得時にも有利 |
補足:公正証書の有用性
公正証書として作成すると、家庭裁判所の許可やトラブル時の証拠力が高まる
署名・押印だけの私文書よりも法的信頼性が強い
図解:誓約書の効力の違い
【生前に作成】
単なる誓約書 → 無効
家庭裁判所の許可取得 → 法的効力あり
【死後に作成】
相続人間の合意 → 有効(法的効力限定)
相続放棄・遺留分放棄とは別物
まとめ
生前作成の誓約書は単独では無効、家庭裁判所の手続きが必要
死後作成の誓約書は相続人間の合意として有効だが、法的効力は限定的
有効な誓約書は、内容が具体的で明確、公序良俗に反せず、公正証書化や弁護士関与で信頼性を高める
誓約書は、遺留分トラブルの予防として有効だが、家庭裁判所手続きと組み合わせるとより確実
6.遺留分に関する誓約書の作成手順とチェックリスト
遺留分トラブルを防ぐためには、単に誓約書を作るだけでは不十分です。効力を高め、後々争いにならないように作る手順を整理しましょう。
1. 作成前の準備
誓約書を作成する前に、まず以下を確認します。
項目 | 内容 | 補足説明 |
対象財産の特定 | どの財産の遺留分を対象にするのか明確化 | 不動産・預貯金・株式など |
相続人の確認 | 誰が誓約書に署名するか | 配偶者、子ども、兄弟など、遺留分権利者を漏れなく確認 |
法的手続きの要否 | 生前放棄か死後放棄かによって手続きが異なる | 生前放棄は家庭裁判所の許可が必要、死後は相続人間の合意で作成可能 |
専門家への相談 | 弁護士や司法書士に相談 | 公正証書作成や裁判所手続きの支援に有効 |
2. 誓約書の構成内容
誓約書に盛り込むべき基本項目は以下です。
条項 | 内容 | ポイント |
表題 | 「遺留分に関する誓約書」と明記 | 一目で内容がわかるようにする |
前文 | 誓約書の目的や背景を簡単に説明 | 「相続トラブル防止のため」など |
第1条:遺留分の放棄 | 遺留分請求権を放棄する意思を明確に記載 | 対象財産・相続人を具体的に記載 |
第2条:権利行使の制限 | 遺留分請求を行わないことの確認 | 将来トラブルを防止 |
第3条:違反時の対応 | 違反時の法的手段やペナルティの明記 | 家庭裁判所手続きと組み合わせるとより強力 |
第4条:確認事項 | 自由意思で作成したこと、公序良俗に反しないことの確認 | 強制や圧力がないことを明記 |
署名・押印 | 作成日、署名、押印を必ず記入 | 公正証書にすると証拠力が高まる |
3. 作成手順のステップ
対象財産と相続人を整理
財産リストを作り、誰が権利者か明確にする
条文をドラフト作成
上記の構成内容に沿って文章化する
曖昧な表現は避ける(例:「一部財産」より「○○不動産」)
専門家に確認
弁護士や司法書士に文言や効力をチェックしてもらう
公正証書化を検討すると安心
署名・押印
全ての相続人が署名し、押印する
日付を明確に記入
保管とコピー配布
原本は安全な場所に保管
相続人全員にコピーを渡すと、後のトラブル防止に有効
4. チェックリスト
作成時に確認すべきポイントをまとめると以下の通りです。
チェック項目 | 確認内容 |
対象財産は明確か | 「○○不動産」「預金口座○○」など具体的に書かれているか |
相続人が全員署名しているか | 抜け漏れがないか確認 |
生前放棄の場合は裁判所許可を取得したか | 家庭裁判所での許可が必須 |
文言は明確で曖昧でないか | 「請求しない」と明確に記載 |
公序良俗に反していないか | 違法・不当な条件が含まれていないか |
公正証書化や専門家確認済みか | 証拠力を高める工夫があるか |
図解:誓約書作成と効力の流れ
[対象財産・相続人確認] → [条文作成] → [専門家確認] → [署名・押印] → [保管・共有]
生前放棄の場合
→ [家庭裁判所の許可取得] → 法的効力発生
5. 作成時の実務的ポイント
曖昧な表現は避け、財産・相続人・放棄内容を具体化
公正証書にすると、証拠力・効力がより強力
専門家のチェックで、裁判所手続きや法的リスクを事前に回避
相続人全員で署名・押印することで、将来のトラブルを予防
💡まとめこのチェックリストと手順を使えば、遺留分に関する誓約書を効力のある形で作成することが可能です。特に生前放棄の場合は家庭裁判所の許可、死後の場合は相続人全員の署名・合意を徹底することで、トラブル防止につながります。
7.遺留分放棄の手続きと流れ
遺留分放棄は、単に「放棄します」と書面にするだけでは法的効力を持ちません。家庭裁判所の許可を得る手続きを経て初めて有効になります。ここでは、具体的な手順やポイントを詳しく解説します。
1. 申立人が必要書類を準備
まず、遺留分放棄を申請する相続人(申立人)は、必要書類を準備します。
必要書類の例
書類 | 内容・ポイント |
申立書 | 遺留分放棄の意思を明確に記載 |
戸籍謄本 | 申立人と被相続人の関係を証明 |
相続関係説明図 | 家族構成と相続関係を整理した図 |
財産目録 | 放棄対象となる財産の一覧 |
印鑑証明書 | 申立人の署名押印の確認用 |
ポイント:
財産目録は漏れなく正確に作成すること
相続関係説明図は、家族関係を一目でわかる形にすると審査がスムーズ
例え話:財産目録は「遺留分の地図」のようなものです。ここに書かれていない財産は、後で紛争の原因になる可能性があります。
2. 家庭裁判所への提出
書類が揃ったら、被相続人の最後の住所地の 家庭裁判所に提出 します。
提出時に、申立人が申立書の内容を説明する場合もあります。
ポイント:
書類不備があると審査に時間がかかる
事前に家庭裁判所に相談して、必要書類を確認すると安心
3. 照会への回答
家庭裁判所は、提出書類をもとに審査を行い、必要に応じて申立人や関係者に 照会(確認) を行います。
照会内容例:
「本当に自由意思で放棄するのか?」
「放棄の理由や背景は合理的か?」
「代償(見返り)を受けていないか?」
ポイント:
照会への回答は正確かつ丁寧に行う
曖昧な回答は追加資料の提出や審査の遅延につながる
例え話:照会は「裁判所のヒアリング」のようなものです。自由意思や合理性を確認するためのチェックポイントです。
4. 許可審判の送付
家庭裁判所で審査が完了すると、遺留分放棄の許可審判書が申立人に送付されます。
許可審判が出た時点で、法的に遺留分放棄が成立します。
ポイント:
許可審判書は原本を安全に保管
相続手続きや遺産分割協議で提示できる証拠となります
5. 許可されるための基準
家庭裁判所が遺留分放棄を許可するかどうかは、以下の基準で判断されます。
基準 | 内容 |
自由意思 | 強制や圧力がなく、自分の意思で放棄していること |
合理性 | 放棄の理由が合理的であること(例:親族間の公平を保つため) |
代償の有無 | 放棄の見返りとして不当な利益を受けていないこと |
補足:
代償の有無は特に重要で、「放棄の見返りに多額の財産をもらった場合」は家庭裁判所が承認しない可能性があります
自由意思と合理性は、申立書や照会回答で確認されます
例え話:自由意思・合理性・代償のチェックは、「遺留分放棄が公平で正当なものかを裁判所が確認する安全装置」のようなものです。
図解:遺留分放棄手続きの流れ
[必要書類準備]
↓
[家庭裁判所に提出]
↓
[照会(確認)への回答]
↓
[審査]
↓
[許可審判の送付]
↓
[法的効力発生]
まとめ
遺留分放棄は家庭裁判所の許可が必要で、単なる誓約書では効力を持たない
手続きは、書類準備 → 提出 → 照会回答 → 許可審判の流れで進む
許可されるためには、自由意思・合理性・代償の有無が重要な基準
許可審判書は原本を保管し、相続手続きで提示可能
💡補足:遺留分放棄の手続きは、トラブルを未然に防ぎ、相続を円滑に進めるための重要なステップです。家庭裁判所の手続きと、誓約書・公正証書化を組み合わせることで、相続人間の紛争リスクを大幅に減らすことができます。
8.遺留分放棄に関するよくある質問(FAQ)と注意点
遺留分放棄は手続きや法的効力がやや複雑なため、よくある疑問や注意点を整理しておくと安心です。
Q1. 「生前に書いた誓約書だけでは効力がありますか?」
回答:生前に単なる誓約書や念書を書いただけでは、法的効力はありません。家庭裁判所の許可を得ることで初めて法的効力が発生します。
補足例:
親が「子どもには遺留分請求をしないで」と手紙を書いた場合 → 証拠にはなるが、法的効力は限定
家庭裁判所で遺留分放棄許可を取得 → 法的効力あり
Q2. 相続開始後に「遺留分放棄の誓約書」を作ることはできますか?
回答:相続開始後でも相続人間で「遺留分請求を行わない」と合意すれば誓約書として有効です。
注意点:
法的効力は家庭裁判所の許可を伴う生前放棄より弱い
相続人全員の署名・押印が必須
合意内容が具体的で明確であることが重要
例え話:兄弟が集まって「遺留分の請求はしません」と署名した紙 → 相続人間の約束として効力はあるが、裁判所の許可がないため完全な法的効力は限定的。
Q3. 遺留分放棄を許可してもらうためのポイントは?
基準 | 内容 | ポイント例 |
自由意思 | 強制や圧力がないか | 本人の意思で作成したことを確認 |
合理性 | 放棄の理由が妥当か | 親族間の公平維持など |
代償の有無 | 不当な利益を受けていないか | 見返りの有無を明記 |
補足:
「自由意思」と「合理性」が特に重視されます
代償が過大だと、家庭裁判所が許可しないことがあります
Q4. 公正証書にする必要はありますか?
回答:必須ではありませんが、証拠力を高めるために公正証書化するのが望ましいです。
利点:
偽造・紛失のリスクが低い
家庭裁判所への提出や後の相続手続きで有利
相続人間のトラブル防止に役立つ
Q5. 注意しておきたいポイントは?
財産と相続人を漏れなく明確化
財産リストや相続関係図を作ると審査がスムーズ
曖昧な表現は避ける
「一部の財産」ではなく「○○不動産」「預金口座○○」など具体的に
署名・押印は必須
相続人全員が署名することでトラブルを防止
専門家のチェック
弁護士・司法書士に確認してもらうと、家庭裁判所での許可取得がスムーズ
図解:遺留分放棄の効力と注意点
[生前作成の誓約書] → 効力限定 → 家庭裁判所の許可で法的効力あり
[死後作成の誓約書] → 相続人間の合意として有効(効力限定)
[公正証書化] → 証拠力・信頼性向上
まとめ
遺留分放棄は単なる書面だけでは効力が限定され、家庭裁判所の許可や相続人全員の合意が重要
自由意思・合理性・代償の有無を意識して作成する
公正証書化や専門家の確認で、紛争リスクを大幅に減らせる
💡補足:遺留分放棄の手続きや誓約書作成は、相続トラブルを未然に防ぐ重要な手段です。生前に手続きをする場合も、死後に相続人間で合意する場合も、具体的・明確な文章化と専門家のチェックがポイントです。
9.実際のトラブル事例と注意点
遺留分や誓約書に関するトラブルは、事前に準備を怠ったり、手続きや形式を誤ったりすることで発生します。ここでは典型的な事例と、それに伴う注意点を具体的に解説します。
1. 遺言書で特定相続人に全財産 → 遺留分請求でトラブル
事例:父親が遺言書で「全財産を長男に相続させる」と指定した場合、他の相続人(配偶者や子)は遺留分を請求できます。
結果、長男と他の相続人の間で紛争発生
財産分割協議が難航し、最終的に家庭裁判所で遺留分減殺請求が行われるケースも
ポイント:
遺言書で特定相続人に全財産を渡す場合でも、遺留分権利者は請求できる
事前に遺留分放棄の誓約書や家庭裁判所の許可を取得しておくとトラブル回避
例え話:遺言書だけで「長男だけにケーキを全部あげる」と書いても、他の兄弟には「私の分も欲しい!」という権利(遺留分)が残っているイメージです。
2. 生前の念書しかない → 無効で争いに発展
事例:親が生前「子どもには遺留分請求をしないでほしい」と念書を書いたが、家庭裁判所の許可を得ていない場合。
相続開始後、相続人が遺留分を請求
生前の念書は法的効力が限定的であるため、争いが発生
ポイント:
生前の念書や口頭の約束だけでは法的効力は弱い
家庭裁判所の許可や公正証書化がないと、後々無効になるリスク
図解:
[生前の念書のみ]
↓(法的効力弱い)
[相続開始後に遺留分請求]
↓
[争い・裁判の可能性]
3. 遺留分放棄の誓約書を作ったが形式不備 → 効力否定
事例:相続人間で「遺留分は請求しない」と誓約書を作ったが、署名漏れや内容が曖昧だったケース。
家庭裁判所や第三者から「合意内容が不明確」と判断され、効力が否定
トラブルに発展し、相続手続きが複雑化
注意点:
署名・押印は必須
放棄対象の財産や相続人を明確に記載
公正証書化や弁護士確認でリスク軽減
例え話:「ケーキの半分は渡さないでね」とだけ書いた紙では、誰がどのケーキか分からず、争いになるのと同じです。
4. 注意点まとめ
遺留分放棄や誓約書作成時には、以下の点に注意する必要があります。
注意点 | 内容 |
未成年者 | 未成年者は法定代理人(親権者など)の同意が必要 |
撤回の可否 | 遺留分放棄は原則撤回不可(生前手続きの場合も家庭裁判所の許可後は不可) |
内容の具体性 | 財産・相続人・放棄内容を明確に記載 |
公序良俗 | 不正や違法な条件は無効 |
証拠力の強化 | 公正証書化や弁護士確認で紛争リスクを減らす |
図解:トラブルの原因と回避策
[遺言書で全財産] → 他の相続人が遺留分請求 → 家庭裁判所で争い
[生前の念書のみ] → 無効 → 相続人間で紛争
[誓約書形式不備] → 効力否定 → トラブル発生
-------------------------------------------------
回避策:
- 家庭裁判所の許可取得
- 公正証書化
- 内容を明確化
- 弁護士確認
まとめ
遺留分トラブルは遺言書・念書・誓約書の内容や形式不備で発生する
生前・死後に関わらず、法的手続きや署名・押印、公正証書化でリスクを最小化
未成年者の代理人同意や撤回不可など、法律上の制約にも注意
事前の専門家相談が、相続トラブル回避の最も効果的な手段
💡補足遺留分放棄や誓約書作成は、「争わない相続」のための保険のようなものです。形式や手続きに不備があると、せっかくの「保険」も効力を失ってしまうため、慎重な準備が必要です。
10.実務で使える文例・テンプレート
遺留分放棄に関する誓約書は、内容の明確化と形式の正確さが重要です。ここでは、実務で活用できる文例と記載すべき基本事項、公証人認証の活用方法を解説します。
1. 遺留分放棄に関する誓約書(例文)
以下は、一般的な遺留分放棄の誓約書の例です。
【遺留分放棄の誓約書 例文】
遺留分放棄の誓約書
私は、下記の内容に基づき、遺留分請求権を放棄することをここに誓約します。
1. 放棄する相続人
氏名:〇〇 〇〇
生年月日:〇年〇月〇日
住所:〇〇市〇〇町〇丁目〇番
2. 被相続人
氏名:〇〇 〇〇
生年月日:〇年〇月〇日
最後の住所:〇〇市〇〇町〇丁目〇番
3. 放棄する内容
上記被相続人に関する遺留分請求権を、いかなる場合も行わないことを誓約します。
4. 確認事項
- 本誓約書は、私の自由意思に基づき作成したものであり、強制や圧力は受けていません。
- 放棄の対価として不当な利益は受けていません。
- 本誓約書の内容は公序良俗に反していません。
作成日:〇年〇月〇日
署名:__________
押印:__________
2. 記載すべき基本事項
遺留分放棄の誓約書には、以下の項目を必ず記載します。
項目 | 内容 | ポイント |
氏名 | 放棄する相続人、被相続人 | フルネーム、生年月日、住所も明記 |
日付 | 作成日 | 法的効力の基準になる |
放棄内容 | 遺留分請求権の放棄を明確に記載 | 「いかなる場合も行わない」と具体化 |
署名・押印 | 署名は自署、印鑑は実印が望ましい | 公正証書化を検討 |
確認事項 | 自由意思・代償の有無・公序良俗 | トラブル回避のため明示 |
3. 公証人認証の活用
公証人認証(公正証書化)を行うと、以下のメリットがあります。
証拠力の強化公正証書は「公文書」として法的効力が強く、後日争いになっても有効性が高い
紛失・偽造リスクの軽減原本は公証役場で保管されるため、安全性が高い
家庭裁判所への提出がスムーズ生前放棄の許可申立の際、公正証書があると審査が簡単
手順例:
誓約書のドラフトを作成
弁護士や司法書士にチェックしてもらう
公証役場で公証人に認証してもらう(署名・押印の立会い)
原本を公証役場で保管、コピーを相続人全員に配布
例え話:公正証書は、誓約書に「公式なハンコ」を押すイメージです。これにより、後で「勝手に書き直されたのでは?」という争いを防げます。
4. 実務でのポイントまとめ
具体的かつ明確な文章で作成する
相続人全員の署名・押印を必須にする
公正証書化で証拠力を強化
専門家に確認し、家庭裁判所での審査やトラブルに備える
原本は安全な場所に保管し、コピーは全員に配布
💡補足遺留分放棄の誓約書は、相続トラブルを未然に防ぐための最も有効なツールです。
生前放棄なら家庭裁判所の許可
死後放棄なら相続人全員の合意と組み合わせることで、効力と安心感が格段に高まります。
11.遺留分放棄・誓約書作成フローチャート
ステップごとの手順とポイント
[ステップ1] 準備
↓
- 相続人・被相続人の情報整理
- 財産目録の作成
- 相続関係説明図の作成
- 放棄の意思を確認
[ステップ2] 誓約書作成
↓
- 氏名・生年月日・住所の記載
- 放棄内容を具体的に明記(遺留分請求権の放棄)
- 自由意思・代償の有無・公序良俗の確認を明記
- 署名・押印(実印推奨)
[ステップ3] 専門家確認(任意だが推奨)
↓
- 弁護士・司法書士に内容チェック
- 法的トラブルのリスクを最小化
[ステップ4] 公正証書化(推奨)
↓
- 公証役場で署名・押印を公証人に立会い確認
- 原本を公証役場で保管
- コピーを相続人全員に配布
[ステップ5] 家庭裁判所の許可(生前放棄の場合)
↓
- 必要書類を準備(申立書、戸籍謄本、財産目録など)
- 家庭裁判所に提出
- 照会に回答
- 許可審判書を受領 → 遺留分放棄成立
[ステップ6] 完了
↓
- 誓約書・許可審判書を安全に保管
- 相続手続きや遺産分割に活用
図解:簡易フローチャート
準備 ──> 誓約書作成 ──> 専門家確認 ──> 公正証書化 ──> 家庭裁判所許可 ──> 完了
矢印は「手順の順番」を示します
生前放棄の場合は「家庭裁判所許可」が必須
死後放棄の場合は「家庭裁判所許可」は不要だが、相続人全員の署名・合意が必須
実務上のポイント
準備段階で財産・相続人を明確化
財産漏れや相続人漏れはトラブルの原因
誓約書は具体的・明確に記載
曖昧な表現は効力否定のリスク
公正証書化で証拠力強化
原本は公証役場で保管
コピーを全員に配布
家庭裁判所許可(生前放棄の場合)は必須手続き
自由意思・合理性・代償の有無が審査のポイント
まとめ
遺留分放棄・誓約書は、トラブル防止とスムーズな相続のための手段
作成前の準備 → 誓約書作成 → 専門家確認 → 公正証書化 → 家庭裁判所許可(生前放棄)の順で進めると安心
手順を守ることで、相続人間の争いを未然に防ぐことが可能
💡補足このフローチャートは、初心者でもどの手順で何をすればよいか一目で理解できるように整理しています。特に、公正証書化や家庭裁判所許可の流れを事前に把握することで、誤解や手続き漏れを防げます。
12.遺留分トラブルを防ぐためのまとめ
遺留分に関するトラブルは、相続人間の誤解や手続きの不備から生じやすい問題です。ここまで解説した内容を整理すると、トラブルを未然に防ぐためのポイントが明確になります。
1. 「誓約書」だけでは不十分
生前・死後に関わらず、単に「遺留分を請求しない」と書いた誓約書や念書だけでは、法的効力が限定されます。
生前の場合、家庭裁判所の許可がないと効力が認められません。
死後の場合でも、相続人全員の署名・合意がなければ効力は不確実です。
例え話:「ケーキを半分だけ渡す」と書いた紙を机に置くだけでは、他の兄弟が取り合いを始めたときに守られないのと同じです。形式や手続きが重要です。
2. 生前放棄は家庭裁判所の許可が必要
遺留分を生前に放棄する場合は、家庭裁判所の許可が必須です。
許可の際には以下の基準が審査されます:
基準 | 内容 |
自由意思 | 強制や圧力がないか |
合理性 | 放棄の理由が妥当か |
代償の有無 | 不当な利益を受けていないか |
許可が下りると、法的に効力を持つ遺留分放棄となり、争いを未然に防ぐことができます。
3. 死後の合意なら誓約書で整理可能
相続開始後は、相続人間の合意として遺留分請求を行わないことを整理できます。
この場合、家庭裁判所の許可は不要ですが、署名・押印・具体的な放棄内容の明記が重要です。
公正証書化しておくと、証拠力が高まり、後日争いが起きにくくなります。
図解イメージ:効力の比較
状況 | 誓約書のみ | 家庭裁判所許可 | 効力 |
生前放棄 | × 効力限定 | ○ 法的効力あり | 安全 |
死後合意 | ○ 相続人間のみ | × 不要 | 証拠力強化推奨 |
4. 専門家(弁護士・公証人)の関与が重要
弁護士や司法書士にチェックしてもらうことで、法的な不備や曖昧な表現を防止できます。
公証人による公正証書化で、証拠力・安全性を大幅に向上させられます。
トラブルの予防だけでなく、家庭裁判所への提出や相続手続きのスムーズ化にもつながります。
まとめのポイント
誓約書だけでは完全に安全ではない
生前放棄は家庭裁判所の許可が必須
死後の合意は誓約書で整理可能だが、署名・押印・内容の明確化が重要
弁護士・公証人の関与でトラブル防止と証拠力を確保
例え話:遺留分放棄や誓約書は、相続トラブルを未然に防ぐ「保険」のようなものです。形式や手続きを正しく行えば、争いを避け、安全で安心な相続を実現できます。
💡補足
記載内容が不明確な誓約書は、争いの火種になる
公正証書化や家庭裁判所の許可は「法的効力の保証」と考えるとわかりやすい
専門家に相談して手順を守ることが、安全な相続の最大のポイントです
13.遺留分放棄・誓約書 完全マニュアル
相続トラブルの中でも特に多いのが遺留分を巡る争いです。本マニュアルでは、生前・死後の遺留分放棄、誓約書の作成手順、注意点までを初心者でもわかるように整理しています。
1. 遺留分トラブルを防ぐ基本ポイント
誓約書だけでは完全に安全ではない
生前放棄は家庭裁判所の許可が必要
死後の合意なら相続人間で誓約書作成が可能
弁護士・公証人の関与で証拠力・安全性を確保
2. 遺留分放棄・誓約書作成フローチャート
ステップ1:準備
- 相続人・被相続人の情報整理(氏名・生年月日・住所)
- 財産目録の作成(不動産・預貯金・株など)
- 相続関係説明図の作成(誰がどの財産をもらうか)
- 放棄する意思の確認(自由意思)
ステップ2:誓約書作成
- 放棄対象:遺留分請求権
- 記載内容:氏名・住所・日付・具体的放棄内容
- 確認事項:自由意思、代償の有無、公序良俗
- 署名・押印(実印推奨)
ステップ3:専門家確認(任意だが推奨)
- 弁護士・司法書士による内容チェック
- 曖昧な表現や法的リスクの排除
ステップ4:公正証書化(推奨)
- 公証役場で署名・押印を公証人に立会い確認
- 原本を公証役場で保管
- コピーを相続人全員に配布
ステップ5:家庭裁判所の許可(生前放棄の場合)
- 申立書・戸籍謄本・財産目録など必要書類を準備
- 家庭裁判所に提出
- 照会に回答
- 許可審判書を受領 → 遺留分放棄成立
ステップ6:完了
- 誓約書・許可審判書を安全に保管
- 相続手続きや遺産分割に活用
3. 生前放棄と死後放棄の違い
項目 | 生前放棄 | 死後放棄(相続人間合意) |
法的手続き | 家庭裁判所の許可が必要 | 不要(合意のみ) |
効力 | 法的効力あり | 相続人間で効力、証拠力は公正証書化で向上 |
注意点 | 自由意思・合理性・代償の有無を審査 | 署名・押印・内容明確化が必須 |
4. 実務で使える誓約書例
遺留分放棄の誓約書
私は、下記の内容に基づき、遺留分請求権を放棄することを誓約します。
1. 放棄する相続人
氏名:〇〇 〇〇
生年月日:〇年〇月〇日
住所:〇〇市〇〇町〇丁目〇番
2. 被相続人
氏名:〇〇 〇〇
生年月日:〇年〇月〇日
最後の住所:〇〇市〇〇町〇丁目〇番
3. 放棄内容
上記被相続人に関する遺留分請求権を、いかなる場合も行わないことを誓約します。
4. 確認事項
- 本誓約書は自由意思に基づき作成しました
- 放棄の対価として不当な利益は受けていません
- 公序良俗に反していません
作成日:〇年〇月〇日
署名:_________
押印:_________
5. 注意点まとめ
注意点 | 内容 |
曖昧な表現 | 効力否定の原因になるため具体的に記載 |
未成年者 | 代理人(親権者)の同意が必要 |
撤回 | 原則不可(生前放棄も家庭裁判所の許可後は不可) |
証拠力 | 公正証書化や弁護士確認で強化 |
財産漏れ | 財産・相続人・放棄対象を明確に |
6. まとめ
遺留分放棄・誓約書はトラブル防止の保険
生前放棄なら家庭裁判所の許可が必須
死後放棄は相続人間合意で整理可能
弁護士・公証人関与で安心・安全な相続を実現
例え話:誓約書や公正証書は、相続トラブルを「未然に防ぐ安全ネット」のようなものです。形式や手続きを正しく行えば、争いなくスムーズに相続できます。
💡補足このマニュアルを活用することで、どの段階で何をすればよいか、誰が関与すべきか、どの手続きが必要かを一目で理解でき、初心者でも安全に遺留分放棄・誓約書作成を進められます。
~事例・比較分析紹介~
14.誓約書の効力・有効性に関する調査
遺留分放棄の誓約書は、相続トラブルを未然に防ぐ重要なツールですが、作成時期や形式によって効力が大きく異なります。ここでは、生前・死後に書かれた誓約書の違いや裁判例を基に、その有効性を詳しく解説します。
1. 生前に書かれた遺留分放棄の誓約書は本当に無効なのか?
原則として無効とされる場合が多い遺留分は法律上の最低限度の取り分であり、相続開始前に個人間の合意だけで放棄することは制限されています。
家庭裁判所の許可がないと効力を持たない生前放棄を有効にするには、相続開始前に家庭裁判所へ申立て、許可審判を受ける必要があります。
例え話:遺留分は「相続人に必ず残る最低限の財産の権利」です。生前に紙に「私はもらわない」と書いただけでは、後日相続人が争えば無効になる可能性があります。これは、法律が最低限の権利を守ろうとしているからです。
ポイント:
単なる「念書」「誓約書」では効力限定
家庭裁判所の許可があれば法的効力が認められる
2. 死後に作成された誓約書の効力の違い
相続開始後に相続人間で作成された誓約書は、相続人全員の合意として有効とされる場合があります。
この場合、家庭裁判所の許可は不要ですが、内容が曖昧だと効力が否定されることがあります。
公正証書化すると、証拠力が高まり、トラブル防止に役立ちます。
図解イメージ:生前と死後の効力の違い
項目 | 生前放棄 | 死後作成 |
法的効力 | 家庭裁判所の許可が必要 | 相続人間合意で有効 |
証拠力 | 許可審判で確実 | 公正証書化で強化 |
効力の範囲 | 法的効力あり | 相続人間の効力に限定 |
3. 裁判例から見る効力の判断
ケース1:効力が認められた例
事例: 相続開始後、相続人全員が署名・押印した遺留分放棄の誓約書
結果: 合意が具体的・明確であり、公序良俗に反していないとして効力を認められた
ケース2:効力が否定された例
事例: 生前に書かれた誓約書で、家庭裁判所の許可なし
結果: 無効と判断され、遺留分請求権が認められた
理由: 遺留分は相続人の最低限の権利であり、単独の合意だけでは制限できない
ポイント:裁判例からわかることは、効力を持たせるためには「作成時期」「手続き」「具体性」の3点が重要ということです。
4. 実務上のまとめ
生前に作成: 家庭裁判所の許可がない限り効力は限定的
死後に作成: 相続人全員の合意で効力あり(署名・押印・内容明確化が必須)
裁判例: 曖昧な誓約書や手続き不備は無効になる可能性
公正証書化: 証拠力を強化し、争いを未然に防ぐ
💡補足
生前放棄は「法律上の最低限度の権利を守るため、単独合意だけでは無効」
死後合意は「相続人全員の意思が一致していれば有効だが、明確でなければ争いの原因になる」
いずれの場合も、弁護士や公証人の関与で安全性を高めることが推奨
15.誓約書作成の手続き・形式に関する調査
遺留分放棄の誓約書は、ただ書けば良いというものではなく、作成方法や形式が効力に直結します。ここでは、公正証書化の有無、家庭裁判所の関与、未成年者・成年後見人が関わる場合の実務について解説します。
1. 公正証書化すべきか、署名・押印だけで十分か
署名・押印のみ
メリット:手軽に作成可能
デメリット:証拠力が低く、後日争いが発生した場合に無効とされるリスクあり
公正証書化
メリット:公証人が立会い、法的に形式をチェックして作成
効力が明確になり、裁判でも証拠として非常に強力
デメリット:費用と時間がかかる
例え話:署名・押印だけの誓約書は「手書きの契約書のようなもの」、公正証書化は「銀行や裁判所が保証してくれる正式な契約書」のイメージです。後者の方が安全性が高いことは直感的に理解できます。
2. 家庭裁判所の許可が必要なケースと不要なケース
ケース | 家庭裁判所の許可の必要性 | 解説 |
生前放棄(相続開始前) | 必須 | 遺留分は法律上の最低限度の権利のため、個人間合意だけでは効力が認められない |
死後放棄(相続人間の合意) | 不要 | 相続人全員の合意で効力あり。ただし署名・押印・内容明確化が必須 |
遺言に基づく放棄 | 不要 | 遺言自体の効力に従うため、家庭裁判所の許可は不要 |
許可が必要な生前放棄は、自由意思・合理性・代償の有無が審査されます。
許可を得ることで、法的効力が保証され、相続トラブルを未然に防止できます。
3. 未成年者や成年後見人の関与が必要な場合
未成年者が関与する場合
親権者の同意が必須
親権者の署名・押印も必要
署名だけでは無効とされる可能性あり
成年後見人が関与する場合
成年後見人が代理で署名・押印
後見人が関与していない場合、無効や取り消しリスクあり
実務例:
15歳の相続人Aが遺留分放棄に合意する場合、A本人の署名だけでは無効。親権者Bが署名・押印する必要があります。
成年後見人Cが関与する相続人Dの場合、D本人の署名だけでは無効。後見人Cの署名・押印が必要です。
4. 形式・手続きに関するポイントまとめ
ポイント | 内容 |
証拠力 | 署名・押印のみより公正証書化が強力 |
許可の必要性 | 生前放棄は家庭裁判所の許可が必須、死後合意は不要 |
未成年者・成年後見人 | 必ず代理人の署名・押印が必要 |
内容の具体性 | 「誰が」「何を」「どの範囲で」放棄するかを明確化 |
保存・配布 | 原本は安全な場所に保管、コピーを関係者に配布 |
5. 補足:実務での注意点
署名・押印のみで作成する場合
公正証書化していないと、効力が不明確
裁判になった場合、争われるリスクが高い
公正証書化を行う場合
公証人が法的要件を確認
家庭裁判所の許可が必要な場合もスムーズに対応可能
未成年者・成年後見人が関与する場合
署名漏れや同意書の不備は効力否定の原因
実務では、代理人の署名・押印を確実に行うことが必須
💡まとめ
誓約書の効力は「作成方法・形式・関与者」に大きく依存
公正証書化や家庭裁判所の許可、代理人関与を適切に行うことで、安全に遺留分放棄を整理できる
初心者でも、表やフローチャートで手順を整理しておくとミスを防げます
16.遺留分放棄の理由・動機に関する調査
遺留分放棄は、単なる権利放棄ではなく、その背景や動機によって効力や法的評価が変わる場合があります。ここでは、放棄の代表的な理由や、代償との組み合わせによる法的評価について詳しく解説します。
1. 遺産分配の公平性確保のための放棄
遺留分放棄の代表的な理由の一つが、相続人間での公平性を保つことです。
例えば、長男が家業を継ぎ、親から不動産や事業用資産を優先的に取得する場合、他の相続人(弟妹)が遺留分を請求せず放棄することで、全体の遺産分配が公平になります。
この場合、「相続人同士の調整・合意」という動機が効力判断において重視されます。
例え話:親の遺産がケーキだとすると、長男が家業を継ぐ分を先に切り分け、弟妹が残りを平等に分けるために「私はこのケーキの一部をもらわない」と書面で合意するイメージです。
2. 財産整理・生前贈与との組み合わせ
遺留分放棄は、生前贈与や財産整理の計画とセットで行うこともあります。
具体例:
親が生前に子Aに不動産を贈与
他の子B・Cが遺留分を放棄することで、贈与による財産差を相殺
この場合、遺留分放棄は相続開始前の財産調整の手段として使われます。
注意点: 放棄が強制や圧力によるものでないこと、合理的な理由があることが重要です。
表:生前贈与+遺留分放棄の例
相続人 | 財産の受領 | 遺留分放棄 |
A(長男) | 生前贈与で不動産 | 放棄不要 |
B(次男) | 現金・株式 | 遺留分放棄で承諾 |
C(三男) | 現金・株式 | 遺留分放棄で承諾 |
この仕組みにより、遺産全体の分配が円滑に進むことが期待されます。
3. 遺留分放棄を金銭や代償とセットにした場合の認定基準
遺留分放棄の際に、金銭や代償とセットにするケースがあります。
例えば:
遺留分を請求しない代わりに、一定額の現金や他の財産を受け取る
この場合、家庭裁判所や裁判例では、以下の点が判断基準になります:
基準 | 内容 |
自由意思 | 強制や圧力がないか |
合理性 | 放棄と受け取る代償のバランスは妥当か |
公序良俗 | 社会通念上不適当でないか |
文書の明確性 | 何を放棄し、何を受け取るか具体的に記載されているか |
ポイント: 単に「遺留分を放棄する」と書くのではなく、代償の金額や対象を明確に示すことが重要です。
例え話:「リンゴ1個をあげる代わりに、みかん1個をもらう」ようなイメージです。どちらが何を得るか明確にしておかないと、後で「やっぱりリンゴも欲しい」と争いになりかねません。
4. 実務上の注意点
合理的な理由を示す
単なる感情や強制による放棄は効力を疑われる可能性があります。
代償を明確に書面化
金銭や財産との交換がある場合、詳細を明確に記載。
関係者全員の合意確認
特に死後の合意の場合、相続人全員の署名・押印が必須。
専門家の関与
弁護士や公証人に確認することで、法的リスクを最小化。
5. まとめ
遺留分放棄の動機は主に「公平性確保」「財産整理」「代償との調整」に分類できる
放棄の効力を認めさせるには、合理的な理由と具体的な内容の明示が重要
金銭や代償をセットにする場合は、自由意思・合理性・公序良俗を満たすことがポイント
書面化・署名・押印・公正証書化・専門家確認が、安全な相続のカギ
💡補足遺留分放棄は、相続人間の円満な財産分配を実現するツールです。しかし、動機や理由が不明確だと、後で争いになるリスクがあります。作成時は、上記のポイントを押さえて文書化することが非常に重要です。
17.誓約書によるトラブル事例・リスク調査
遺留分放棄の誓約書は、作成方法や内容が不十分だとトラブルの原因になることがあります。ここでは、実際のトラブル事例や、効力が否定されるリスクについて整理します。
1. 生前の誓約書が無効 → 遺産争いに発展したケース
事例:親が生前に長男に財産を譲る予定で、次男・三男が「遺留分を請求しない」と誓約書を作成。しかし、家庭裁判所の許可を得ていなかったため、相続開始後に次男・三男が遺留分請求。結果として遺産争いに発展。
ポイント:
遺留分は相続開始前の単独合意では制限できない
生前に署名・押印だけで作成した誓約書は、効力を持たないケースが多い
例え話:「ケーキをもらわないと書いておいたけど、裁判所に承認してもらわなかったため、後で『やっぱり欲しい』と言って争った」というイメージです。
2. 放棄の意思が取り消される可能性のあるケース
放棄の意思が以下のような場合、取り消しリスクがあります:
強制・圧力による放棄
誤解や錯誤に基づく放棄
心理的な影響(未成年者や認知症等による意思無効)
実務例:
50代の相続人が、親族の強い圧力で遺留分放棄の誓約書に署名した場合、後日「自由意思でなかった」と主張して取り消し請求
ポイント:自由意思が認められない場合、家庭裁判所や裁判所は効力を否定する可能性があります。
3. 誓約書の文言不備による効力否定の実例
誓約書に誰が何を放棄するか明確に書かれていない場合、効力が否定されることがあります。
実例:
「私は遺留分を放棄します」とだけ記載
誰が受け取る財産か、範囲や条件が不明
結果:家庭裁判所で効力否定、遺留分請求が認められた
解説:遺留分放棄は具体的で明確である必要があります。
放棄する相続人
放棄の範囲(遺産全体か一部か)
代償や条件(あれば)
表:文言不備による効力リスク
不備の種類 | リスク |
誰が放棄するか不明 | 放棄効力が認められない |
放棄対象が不明 | 範囲が曖昧で争いに発展 |
条件や代償が未記載 | 後日請求や取り消しの原因 |
4. 実務で注意すべきポイント
生前に作成する場合
家庭裁判所の許可を必ず取得
単独署名だけでは無効リスク大
文言を具体化する
誰が、何を、どの範囲で放棄するかを明確化
代償や条件も明記すると安全
自由意思の確認
強制や誤解に基づく放棄は効力が否定される
未成年者や成年後見人が関与する場合、代理署名・押印必須
公正証書化の活用
証拠力が高まり、効力否定リスクを最小化
5. まとめ
生前の誓約書は家庭裁判所の許可がないと無効になる可能性が高い
放棄の意思が自由でない場合、後で取り消されるリスクあり
文言不備や内容の曖昧さは、効力否定や遺産争いの原因
公正証書化や専門家(弁護士・公証人)の関与がトラブル防止の鍵
💡補足誓約書は便利なツールですが、作成方法や文言、意思の自由度が不十分だと、かえってトラブルの種になる可能性があります。初めて作成する場合は、弁護士や公証人に相談して、内容と形式を適切に整えることが重要です。
18.誓約書作成の実務ガイド・テンプレート調査
遺留分に関する誓約書を作る際は、ただ文章を作るだけでは不十分です。法律的に効力を持たせ、後々のトラブルを防ぐためには「書き方のルール」を押さえることが大切です。
ここでは、記載すべき必須項目や公証人の認証の有無、家庭裁判所で認められやすい書き方まで、実務的なポイントを詳しく解説します。
記載すべき必須項目
誓約書を作成する際には、以下の項目を必ず盛り込む必要があります。もし1つでも欠けると、後に効力を争われる可能性があります。
項目 | 説明 | ポイント・例 |
氏名 | 誓約する人のフルネーム | 「山田 太郎(やまだ たろう)」のように漢字・ふりがな両方を記載するとより確実 |
日付 | 誓約書を作成した日 | 「2025年9月18日」と明確に記載 |
放棄内容 | 遺留分を放棄する具体的内容 | 「被相続人○○の遺留分に関する請求権を一切放棄する」と明記 |
署名押印 | 書面の真正性を示す | 署名は自筆、押印は実印が望ましい |
補足解説:放棄内容は曖昧にしてはいけない
「遺留分を放棄します」とだけ書いても後々争いの原因になります。放棄する対象(遺産の範囲や金額)、放棄の時点、条件などを具体的に書くことが重要です。例え話として、「兄に全ての財産を渡す」と口頭で約束した場合、後から「本当に全部ですか?」とトラブルになる可能性があります。書面で明確に示すことで、安全性が格段に高まります。
公証人認証の有無による効力の違い
遺留分に関する誓約書は、公証人の認証を受けるかどうかで効力や証拠力が大きく変わります。
認証の有無 | 効力・特徴 | ポイント |
公証人認証あり | 法的に非常に強い効力を持つ。家庭裁判所でも証拠として認められやすい。 | 公証役場で手数料がかかるが、安全性が高い。署名押印も公証人立会いで行う。 |
公証人認証なし | 当事者間の契約として効力はあるが、後に争われると「証拠能力」が弱くなる場合がある。 | 署名・押印は必ず自筆で行い、可能であれば証人を付けると効果が高まる。 |
補足解説:公証人認証のメリット
例えるなら、「公証人認証あり」は銀行で預金を守る金庫のようなもの。誰が見ても「正しい書類」と認められます。一方、「認証なし」は自宅の引き出しにしまっている現金。存在はあるけれど、他人から見たら本当に正しいか証明しにくいイメージです。
家庭裁判所で認められやすい書き方のポイント
遺留分放棄の誓約書は、家庭裁判所で遺産分割の審判に関わることもあります。その際に認められやすい書き方には以下のポイントがあります。
具体性を重視する
「遺産全部」と抽象的に書くより、「預貯金〇〇口座の残高、土地○○番地の所有権」など具体的に明示する。
自発性の証明
書面に「自分の意思で自由に決めた」と明記。
強制や圧力がなかったことを示すと、効力が認められやすい。
日付と署名押印を明確に
誓約日や署名押印が欠けていると無効と判断される場合がある。
証人や公証人を活用
第三者の立会いがあると、裁判所で「強制ではない意思表示」として評価されやすい。
補足例:裁判所での認められ方
例えば、兄弟間で遺留分を放棄した書面を作っていても、後から「強制された」と主張されることがあります。その場合、公証人認証や証人の存在があれば、「本人の自由意思で作成された」と認められやすく、家庭裁判所でも効力を尊重してもらいやすくなります。
まとめ
必須項目を漏れなく記載すること(氏名・日付・放棄内容・署名押印)。
公証人認証ありだと法的安全性が高く、家庭裁判所でも認められやすい。
具体的かつ自発性を示す表現にすることで、後々の争いを防止できる。
図解イメージ案(ブログ用)
[誓約書作成の流れ]
作成 → 署名押印 → 公証人認証の有無確認 → 保管 → 家庭裁判所提出時に効力確認
表:認証の有無による効力比較
認証 | 法的効力 | 証拠能力 | 備考 |
あり | 高い | 高い | 公証人立会いで安全性◎ |
なし | 中 | 中 | 証人をつけると有効性向上 |
19.遺留分放棄誓約書テンプレート例
【遺留分放棄誓約書(サンプル)】
遺留分放棄誓約書
私は、以下のとおり、被相続人○○(故人)の遺留分に関する請求権を放棄することを誓約します。
記
1. 放棄者(誓約者)の氏名・住所
氏名:山田 太郎(やまだ たろう)
住所:東京都○○区○○町1-2-3
2. 被相続人の氏名・住所
氏名:山田 花子(やまだ はなこ)
最終住所:東京都○○区○○町1-2-3
3. 放棄の内容
私は、被相続人○○が遺した以下の遺産について、遺留分に関する一切の請求権を放棄します。
- 預貯金:○○銀行 ○○支店 普通預金口座番号 ○○○○○○
- 不動産:東京都○○区○○町 ○○番地の土地及び建物
- その他財産:株式、投資信託等(具体的に記載)
4. 放棄の意思表示
私は、この放棄を自分の自由意思に基づき、強制や圧力なく行うことを誓約します。
5. 日付
2025年9月18日
6. 署名・押印
署名:_________________________
実印押印:____________________
7. 公証人認証(任意)
公証人立会いの下で認証を受ける場合
公証人署名・押印:____________________
公証役場名:________________________
認証日:___________________________
8. 証人(任意)
証人氏名:____________________
住所:________________________
署名:________________________
テンプレート解説
氏名・住所
誰が放棄するのか、誰の遺産についての放棄かを明確にします。
放棄の具体的内容
遺産の範囲をできるだけ詳細に書くことが重要です。「全部」と書くだけでは家庭裁判所で争われる可能性があります。
放棄の意思表示
「自由意思であること」を明記し、強制や圧力がないことを示すと、効力が認められやすくなります。
署名押印
実印を推奨。自筆署名は必須です。
公証人認証
これを付けると、法的効力・証拠能力が格段に高まります。
証人
任意ですが、複数の証人を付けることで裁判所での信頼性が増します。
図解:誓約書作成フロー
作成 → 署名押印 → 証人確認(任意) → 公証人認証(任意) → 安全保管 → 遺産分割協議・家庭裁判所提出
20.相続放棄との違いに関する調査
遺留分放棄の誓約書を作る際、よく混同されやすいのが 「相続放棄」 です。法律上では全く別の制度であり、効力や手続き方法も大きく異なります。ここでは、初心者でもわかりやすく整理し、誓約書でどこまでできるか、残る権利・消える権利を具体例付きで解説します。
「相続放棄」と「遺留分放棄」の法律的違い
まずは基本的な違いを整理しましょう。相続放棄と遺留分放棄は、法律上の位置づけが違うため、混同すると後で大きなトラブルになることがあります。
項目 | 相続放棄 | 遺留分放棄 |
対象 | 相続人としての地位そのもの | 遺留分請求権(相続人が最低限取得できる権利) |
効果 | 相続人でなくなる → 遺産に関与できない | 遺産は取得できるが、遺留分請求権だけを放棄 |
手続き | 家庭裁判所での申述が必須 | 原則は書面(誓約書)でも可能、場合によって公証人認証推奨 |
法的根拠 | 民法第915条以下 | 民法第1042条以下 |
補足解説
相続放棄は、「私は最初からこの相続人ではありません」と法律上扱われるイメージ。
遺留分放棄は、「最低限の権利(遺留分)は請求しませんが、他の相続は普通に受けます」という選択的権利放棄です。
例えるなら、
相続放棄 → レストランで「私はこのテーブルの客ではありません」と席を立つイメージ
遺留分放棄 → 「最低限の取り分はいいです」と告げるだけで、他の料理は普通に食べるイメージ
誓約書だけでできるのか、家庭裁判所の手続が必要か
遺留分放棄は原則として 誓約書でも可能 ですが、相続放棄とは違い、効力や証拠能力を高める工夫が重要です。
放棄の種類 | 必須手続 | 補足 |
相続放棄 | 家庭裁判所での申述が必須 | 期限内(相続開始から3か月以内)に手続きが必要 |
遺留分放棄 | 書面(誓約書)で可能、必要に応じ公証人認証 | 家庭裁判所に提出する場合は、公証人認証や証人付きの方が認められやすい |
補足解説
遺留分放棄は「当事者間の契約」の性質が強く、誓約書に署名押印があれば法律上効力があります。
ただし、家庭裁判所や第三者に証明する場合は 公証人認証や証人を付けることが推奨 です。
相続放棄は、本人が家庭裁判所に申し立てない限り、法的に認められません。
放棄しても残る権利と消える権利の整理
遺留分放棄と相続放棄では、残る権利・消える権利が大きく異なります。以下の表で整理するとわかりやすいです。
放棄の種類 | 消える権利 | 残る権利 |
相続放棄 | 相続全体の権利(遺産取得権・遺留分請求権も含む) | なし(相続人ではなくなるため全て消える) |
遺留分放棄 | 最低限保証される遺留分請求権 | その他の相続分・遺産取得権・遺贈はそのまま受け取れる |
具体例
兄が被相続人の遺産の遺留分を放棄した場合、
消えるもの:遺留分(最低限の取り分を請求する権利)
残るもの:遺言で指定された財産や遺産分割協議で取得できる財産
兄が相続放棄した場合、遺産のすべてに関与できなくなります。遺留分請求もできません。
補足解説
遺留分放棄は「最低限の権利だけを手放す」選択であり、賢く使えば財産の分配をスムーズにすることが可能です。一方で、相続放棄は文字通り「相続権そのものを放棄する」ので、慎重に判断する必要があります。
図解イメージ:権利の残り方
[相続放棄]
┌─────────────┐
│ 相続全権利なし │
└─────────────┘
[遺留分放棄]
┌─────────────┐
│ 遺留分請求権なし │
├─────────────┤
│ 遺言・遺産分割権あり │
└─────────────┘
まとめ
相続放棄は、相続人としての地位そのものを放棄する手続きで、家庭裁判所申述が必須。
遺留分放棄は、最低限の権利(遺留分請求権)だけを放棄するもので、誓約書でも可能だが公証人認証や証人があると安全。
放棄する権利と残る権利を明確に理解しないと、トラブルや思わぬ損失につながる。
21.読者向けFAQ・疑問解消
遺留分放棄の誓約書については、法律用語も多く、初心者の方にはわかりにくい部分が多いのが現実です。ここでは、読者がよく抱く疑問をFAQ形式で整理し、分かりやすく解説します。
Q1. 遺留分を放棄したら相続権は完全になくなるの?
答え:いいえ、完全にはなくなりません。
遺留分は、法律で保証された「最低限取り分」のことです。放棄しても、それ以外の財産や遺産取得権は残ります。
補足解説
遺留分放棄 = 「最低限保証された取り分を請求しません」という意思表示
残る権利 = 遺言で指定された財産、遺産分割協議で取得できる財産
例えるなら、遺留分は「安全ネット」です。
安全ネットを外す(遺留分放棄)と、落下時に最低限守られる保障はなくなるけれど、上にある財産(遺言や分割で取得できる部分)はそのまま手に入るイメージです。
権利の種類 | 放棄後の状態 |
遺留分請求権 | 消える |
遺言による財産取得権 | 残る |
遺産分割協議での取得権 | 残る |
Q2. 生前に誓約書を書いても死後に争われることはある?
答え:可能性はありますが、公証人認証や証人付きで書くとリスクが低くなります。
遺留分放棄は契約の性質を持つため、書面だけでも効力があります。しかし、相続人間で「強制された」「内容が不明確」と争われるケースがあります。
争いが起きやすい例
曖昧な表現:「遺産は全部兄に渡す」としか書かれていない
書面なし:口頭での約束だけ
強制や圧力があったと主張される場合
安全策
書面化(誓約書)
自筆署名・押印
公証人認証
証人を付ける
これらを行うと、家庭裁判所で「本人の自由意思による放棄」と認められやすくなります。
図解イメージ
生前誓約書
署名押印 → 証人・公証人認証 → 死後も効力維持
Q3. 遺留分放棄と遺言書の関係はどう整理すべき?
答え:遺言書の内容を尊重しつつ、遺留分放棄は「最低限の請求権」を手放す手段として整理します。
遺言書:誰にどの財産を渡すかを書いた「指示書」
遺留分放棄:法律で保証された「最低限の取り分」を放棄する意思表示
注意ポイント
遺言書より遺留分は優先される
遺言で「全財産を長男に」と書かれていても、他の相続人は遺留分請求が可能
遺留分放棄で請求権を手放すと、遺言の内容がそのまま実行されやすくなる
遺言書作成とセットで考えると、安全に遺産を分配できる
例え話
遺言書 = 家の設計図
遺留分 = 最低限支えになる柱
遺留分放棄 = 柱は使わないけれど、設計図に沿った家はそのまま建つイメージ
まとめ
遺留分放棄しても、相続権や遺産取得権は完全には消えない
生前に誓約書を作っても、書き方や証明方法によっては争いが起きる可能性がある
遺言書との関係を整理することで、相続トラブルを防止できる
FAQ図解イメージ
遺言書と遺留分放棄の関係
┌────────────────────────────────┐
│ 遺言書で指定された財産 → 取得可能 │
├────────────────────────────────┤
│ 遺留分請求権 → 放棄するか選択 │
└────────────────────────────────┘
契約書作成は弁護士・行政書士どっちに依頼すればいい?
契約書を作成する際、「弁護士と行政書士、どちらに依頼すればよいのか?」と悩む方は多いでしょう。どちらの専門家も契約書作成の業務を行いますが、その役割や対応範囲には違いがあります。本記事では、専門家に依頼するメリットや具体例を交えながら、どちらを選ぶべきかを解説します。
専門家に依頼するメリット
1. 契約のリスクを防げる
契約書には、当事者同士の合意内容が明確に記載されます。しかし、素人が作成すると、法律的に不備があったり、トラブルが発生したときに対応しきれなかったりするリスクがあります。専門家に依頼することで、契約の抜け漏れを防ぎ、将来的なトラブルを未然に防ぐことができます。
具体例
たとえば、フリーランスが企業と業務委託契約を結ぶ際、報酬の支払い期限や業務範囲の記載が不明確だと、後々「こんなはずじゃなかった」と揉める原因になります。専門家に依頼すれば、報酬の支払い遅延時のペナルティや、契約解除の条件など、重要な事項を適切に盛り込んだ契約書を作成できます。
2. 自社や個人に適した契約内容にできる
契約書の雛形(テンプレート)はインターネット上にもありますが、それをそのまま使うと、自社のビジネスモデルに合わなかったり、不要な条項が含まれていたりすることがあります。専門家は依頼者の事情をヒアリングし、最適な契約書を作成してくれます。
具体例
例えば、飲食店のオーナーがテナント契約を結ぶ際、一般的な賃貸借契約書だけでは、営業時間の制限や原状回復義務について十分にカバーされていないことがあります。専門家に相談すれば、こうした細かい点も考慮した契約書を作成でき、トラブルを未然に防げます。
行政書士と弁護士の違いは?
契約書作成を依頼できる専門家には、行政書士と弁護士の2種類があります。それぞれの違いを理解することで、自分に適した専門家を選びやすくなります。
行政書士:契約書作成の専門家
行政書士は、主に「契約書の作成」を専門とする国家資格者です。法律に基づいた正確な契約書を作成し、行政手続きや許認可申請にも対応できます。
具体例
・事業者間の業務委託契約書の作成 ・飲食店や美容サロンなどのテナント契約書の作成 ・売買契約書や合意書の作成
ただし、行政書士は「紛争が発生した場合の代理交渉」や「法廷での弁護」は行えません。トラブルが発生した際の対応まではできないため、契約内容に不安がある場合は、弁護士に相談する必要があります。
弁護士:法律トラブルに対応できる専門家
弁護士は、契約書の作成だけでなく、契約に関する紛争対応や訴訟の代理もできる法律の専門家です。トラブルが発生した際のリスクを考慮し、より強固な契約書を作成できます。
具体例
・企業間の買収、合併契約書の作成と交渉 ・高額な不動産売買契約の作成とリーガルチェック ・契約違反が起きた際の法的対応
弁護士に依頼すると、契約書の作成だけでなく、万が一の紛争時にも対応してもらえるというメリットがあります。ただし、弁護士の費用は行政書士より高額になることが一般的です。
専門家に依頼する際の費用と流れ
費用の相場
依頼する専門家や契約書の種類によって、費用は異なります。一般的な相場は以下のとおりです。
専門家 | 費用の目安 |
行政書士 | 契約書作成3万~10万円、リーガルチェック1万~3万 |
弁護士 | 契約書作成10万~30万円、紛争対応10万円以上 |
行政書士は比較的リーズナブルな価格で契約書を作成できますが、紛争対応はできません。一方、弁護士は費用が高めですが、契約のリスク管理を徹底できるというメリットがあります。
依頼の流れ
専門家を選ぶ:契約内容や将来的なリスクを考慮し、行政書士か弁護士のどちらに依頼するか決める。
相談・ヒアリング:依頼者の状況を詳しく聞き、契約書の目的や必要な条項を確認する。
契約書の作成・修正:専門家が契約書を作成し、依頼者と確認しながら修正を加える。
最終確認・納品:完成した契約書を納品し、必要に応じて公証役場での認証を行う。
具体例
たとえば、フリーランスが業務委託契約を結ぶ際、
行政書士に相談し、業務範囲や報酬条件をヒアリング。
契約書のドラフトを作成し、内容を確認。
必要に応じて修正し、最終版を納品。
依頼者が契約書に署名し、取引先と締結。
このような流れで進めるため、契約の重要性を理解しながら進めることができます。
まとめ
契約書作成を専門家に依頼することで、契約のリスクを防ぎ、スムーズな取引を実現できます。
行政書士は契約書の作成が得意で、費用を抑えられるが、紛争対応はできない。
弁護士は契約書作成に加えてトラブル対応も可能だが、費用は高め。
契約内容や想定リスクに応じて、適切な専門家を選びましょう。
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