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誓約書で損害賠償リスクを防ぐ|一律2万円おてがる契約書.com|【テンプレート・ひな形付き】企業が知っておくべき実務ポイント

  • 執筆者の写真: 代表行政書士 堤
    代表行政書士 堤
  • 9月15日
  • 読了時間: 38分

🌺こんにちは!おてがる契約書の代表行政書士 堤です。

本日は損害賠償に関する誓約書についての重要なポイントを解説したコラム記事をお届けします。


企業や組織で働く上で、トラブルや情報漏洩は誰にでも起こり得ます。その際に役立つのが「損害賠償誓約書」です。本コラムでは、損害賠償誓約書とは何か、どのような場面で使われるのか、そして法的な効力や注意点まで、初心者にも分かりやすく解説します。誓約書の基本を理解することで、トラブルの予防や、万が一の際の適切な対応が可能になります。


  本記事のまとめ:

重要事項

概要

どのような状況で有効なのか、労働基準法や民法との関係を理解できます。

過度な違約金や曖昧な条項が無効になるリスク、合理的かつ具体的な条項の書き方を学べます。

話し合い・裁判・専門家相談の活用法や、誓約書を盾にした安全な運用方法を知ることができます。

🌻「損害賠償誓約書って難しそう…」と思う方も多いかもしれません。しかし、本コラムを読むことで、実務での活用方法や裁判例、注意すべき条項などを整理して理解できます。自社での誓約書作成や、退職社員・契約社員とのトラブル対応に役立つ知識が身につく内容です。損害賠償リスクを最小化するためにも、ぜひ最後までご覧ください。


損害賠償に関する誓約書の作成。弁護士・行政書士が対応。テンプレート雛形(ひな形)

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▼目次



~事例・比較分析紹介~

~番外編~



  1.損害賠償に関する誓約書とは?


損害賠償に関する誓約書とは、簡単に言うと「何か問題やトラブルが起きたときに、どのように損害を補償するか」を事前に書面で約束する文書です。たとえば、会社の従業員が業務上のミスで会社に損害を与えた場合、その損害をどのように補償するかを明確にしておくのが目的です。


誓約書は、口頭の約束だけでは後からトラブルになったときに証明が難しいため、事前に書面として残すことで、トラブル防止や法的な根拠を持たせることができます。



誓約書と契約書・念書との違い

損害賠償を扱う文書は、「誓約書」「契約書」「念書」の3種類がありますが、それぞれ役割や効力に違いがあります。

文書の種類

特徴

主な用途

法的効力

誓約書

ある行為を行う・行わないことを約束する書面

社内規則違反、業務上のトラブル防止など

強制力はあるが契約書ほど複雑でなく、状況に応じて損害賠償請求の根拠になる

契約書

双方の権利義務を詳細に記載する正式文書

売買契約、雇用契約、業務委託契約など

法的効力が強く、契約違反があれば裁判で請求可能

念書

契約や取り決めの一部を確認する補助的書面

「借用金の返済を約束する」など

契約の一部証拠として効力があるが、単独で契約書の代わりになることは少ない


ポイント:

  • 契約書は「詳細な権利・義務の取り決め」

  • 誓約書は「特定の行為や損害賠償に関する約束」

  • 念書は「契約の補足・確認用」


例えるなら、契約書は「結婚式の誓い+婚姻契約書」、誓約書は「結婚式での誓いの一部」、念書は「結婚祝いのサインカード」といったイメージです。



損害賠償条項を誓約書に入れる目的

誓約書に損害賠償条項を入れる主な目的は、次の3つです。

  1. 責任範囲の明確化どのような場合に損害を補償するのかを明確にしておくことで、後から「知らなかった」「思っていた内容と違う」といったトラブルを防げます。

  2. リスクの抑制事前に損害賠償のルールを示しておくことで、関係者が注意深く行動するようになり、損害発生自体を防ぐ効果があります。

  3. 法的根拠の確保実際に損害が発生した場合、誓約書に基づいて損害賠償請求が可能になります。裁判で争う場合にも、書面があることで証拠力が高まります。


例:社内での損害賠償誓約書

ある会社で従業員がパソコンを紛失した場合の誓約書例を簡単にまとめると以下のようになります。

項目

内容

行為の対象

社内貸与パソコンの紛失や破損

損害賠償の範囲

購入価格または修理費用

違反時の対応

誓約書に基づき損害額を請求する

補足事項

故意による場合は追加損害賠償あり


このように具体的な行為・対象・損害額を明示しておくことで、後で争いになるリスクを大きく減らすことができます。


  2.損害賠償誓約書が用いられる場面


損害賠償誓約書は、業務上のトラブルや責任問題が発生する可能性がある場面で事前に作成されます。ここでは代表的な場面を詳しく解説します。



入社時・退職時の秘密保持義務違反

秘密保持義務とは、会社の業務上知り得た機密情報を外部に漏らさない義務のことです。入社時に誓約書を作る場合、従業員が会社の営業秘密や顧客情報を漏らさないことを事前に約束させる目的があります。退職時の場合は、在職中に知った情報を持ち出さないことを確認するためです。


例:

  • 社員Aが退職後に前職の顧客リストを競合他社に渡してしまった場合

  • 誓約書に「秘密情報を第三者に提供した場合は損害賠償を請求する」と明記してあれば、会社は損害賠償請求の根拠を持つことができます



競業避止義務違反(同業他社への転職・起業)

競業避止義務とは、従業員が退職後一定期間、同業他社で働いたり、自分で同じ業界のビジネスを始めたりすることを制限する義務です。

誓約書でこの義務を確認しておくことで、会社は自社の技術やノウハウが競合に流出するリスクを防げます。


表:競業避止義務のイメージ

期間

制限内容

具体例

1年間

同業他社での勤務禁止

元社員が競合会社で同じ業務に従事

1年間

同業事業の起業禁止

元社員が競合製品の開発会社を設立


ポイント:競業避止義務は法律上無制限に認められるわけではなく、期間・地域・業務範囲が合理的である必要があります。



顧客の引き抜き・情報漏洩

従業員が顧客を勝手に引き抜いたり、顧客情報を外部に漏らすと、会社は大きな損害を被ります。損害賠償誓約書では、顧客情報の取り扱いや引き抜き禁止について明記することで、事前に抑止効果を持たせます。


例:

  • 元社員Bが、在職中に知った顧客リストを使って自社製品を売り込む

  • 誓約書に「顧客情報の利用や引き抜きは禁止」と書かれている場合、違反時には損害賠償請求が可能



労働者の業務ミス・横領などによる損害

損害賠償誓約書は、従業員のミスや不正行為による損害に対しても用いられます。業務上の過失や故意による損害が発生した場合、誓約書に基づき賠償の取り決めをしておくことで、会社は迅速に対応できます。


例:

  • 社員Cが会計処理ミスで会社に100万円の損害を出した

  • 誓約書に「故意または重大な過失による損害は賠償する」と明記されていれば、会社は請求可能


表:損害発生の種類と誓約書の対象例

損害の種類

対象例

誓約書での対応

業務上のミス

伝票入力ミスによる損失

過失による損害賠償義務

横領・不正

会社資金の私的流用

故意による損害賠償義務

情報漏洩

顧客情報の持ち出し

秘密保持義務違反による損害賠償

競業・引き抜き

顧客の引き抜き

競業避止義務違反による損害賠償

💡 ポイントまとめ

  • 損害賠償誓約書は、**「トラブルが起きたときの責任の所在を明確化する」**ために作る

  • 主に 秘密保持・競業避止・顧客引き抜き・業務ミスや横領 などのリスク場面で用いられる

  • 書面に明記することで、事後のトラブル対応や法的請求の根拠になる


  3.損害賠償誓約書の法的効力


損害賠償誓約書は「書面に書いておけば必ず効力がある」というわけではありません。法的に有効かどうかは、法律のルールや内容の妥当性によって判断されます。ここでは、特に押さえておきたいポイントを整理します。



労働基準法16条と損害賠償額の予定禁止

労働基準法第16条では、労働者に対して**「損害賠償額をあらかじめ決めておくこと(予定損害賠償)」は原則禁止**されています。つまり、従業員に対して「ミスをしたら必ず50万円払え」と書いた誓約書は、法律上無効になる可能性があります。


補足説明:

  • これは労働者保護の観点から定められています。

  • 例えるなら、子どもが宿題を忘れたら必ず高額罰金、というルールは公平ではないので禁止、という考え方です。


ではどうするか?

  • 誓約書には「損害賠償義務があること」を書き、金額は実際に発生した損害に応じて算定する形式にします。

  • 例:

    「業務上の過失により会社に損害が生じた場合は、その損害額を賠償するものとする」


これにより、法律違反にならず、後から実損に基づいて請求可能です。



公序良俗に反する内容は無効になる

誓約書の内容が公序良俗(社会の一般的なルールや道徳)に反する場合、その条項は無効になります。


具体例:

  • 従業員が会社に過失を犯したら「労働者生命に関わる罰金を支払う」と書く

  • 「業務ミスで全財産を差し押さえる」と書く

こういった内容は、社会通念上認められず、裁判でも無効とされます。


ポイント:

  • 誓約書は現実的・合理的な範囲で作ることが重要です。

  • 会社側の利益ばかりに偏ると、逆に効力が否定されるリスクがあります。



有効と認められる誓約書の要件

損害賠償誓約書が法的に有効と認められるためには、いくつかの条件があります。

要件

説明

例・補足

合理性

損害賠償の範囲・条件が常識的であること

「業務上の過失や故意による損害に限定」

明確性

誰が、どの行為に対して責任を負うかが明確

「営業秘密の漏洩に対する責任」

自発性

労働者が納得して署名している

強制的に署名させない

法令順守

労働基準法などの法律に反していない

損害額の予定禁止を遵守

社会通念上適切

公序良俗に反していない

過度な罰金や差し押さえ禁止


例え話:

  • 誓約書は「ルールブック」のようなものです。

  • ルールが現実的で、参加者全員が納得しており、社会常識に沿っていれば有効。

  • 逆に極端なルールや不公平なルールは、無効扱いになります。


💡 ポイントまとめ

  • 労働基準法16条により、損害賠償額の予定は禁止

  • 公序良俗に反する過大な損害賠償条項は無効

  • 有効な誓約書には「合理性」「明確性」「自発性」「法令順守」「社会通念上適切」の5つの要件が必要


  4.損害賠償請求の可否と範囲


損害賠償誓約書を作成しても、実際に請求できるかどうかや範囲には法律上の制限があります。ここでは、初心者でもわかるように具体例や表を使って解説します。



実際に損害が発生した場合に請求できる範囲

損害賠償は、「実際に損害が発生した場合」に限り請求可能です。つまり、まだ損害が起きていない段階では、誓約書があってもお金を請求することはできません。


例:

  • 社員Aが会社の顧客情報を外部に漏洩し、取引がキャンセルになった → この損害額は請求可能

  • 単に「ミスをするかもしれない」と予想しただけ → 請求不可



損害賠償と違約金の違い

誓約書に出てくる言葉でよく混同されるのが 損害賠償 と 違約金 です。

区分

説明

補足

損害賠償

実際に発生した損害に応じて支払うお金

例:顧客情報漏洩で失った売上額

違約金

契約違反を理由にあらかじめ定めた金額を支払うお金

労働基準法16条により、労働者に対する予定損害賠償は原則無効


補足:

  • 違約金は契約違反をしたら自動で請求できるのに対し、損害賠償は実際の損害額を証明する必要があります。



請求できる損害の種類

損害賠償には、法律上3つの種類があります。初心者向けに分かりやすくまとめると次の通りです。

種類

内容

直接損害

被害の直接的な結果として生じた損害

パソコンを壊して買い直す費用

通常損害

予測可能な範囲で発生する損害

業務が止まったことによる売上減

特別損害

通常では予測できない特別な損害

顧客からの信用低下による取引契約解除の損失


ポイント:

  • 直接損害と通常損害は比較的請求しやすい

  • 特別損害は、発生が予測できなかったことを証明する必要があり、請求が難しい場合があります



弁護士費用を請求できるか

損害賠償の請求にあたり、弁護士を立てて交渉・訴訟を行った場合の弁護士費用は基本的に「実損害に含めるかどうか」が問題になります。


補足説明:

  • 日本の裁判制度では、原則として裁判で認められるのは弁護士費用の一部裁判所が認めた範囲の費用に限られます

  • 会社が損害賠償請求のために弁護士費用を支払った場合、その費用を従業員に請求できるかは事案の内容や誓約書の記載によります


例:

  • 誓約書に「損害賠償請求に伴う弁護士費用も請求できる」と明記

  • 実際に発生した弁護士費用の合理的範囲内であれば請求可能


💡 ポイントまとめ

  1. 損害賠償は実際に損害が発生した場合のみ請求可能

  2. 損害賠償と違約金は意味が異なる(労働者には予定損害賠償は原則無効)

  3. 損害の種類は「直接損害」「通常損害」「特別損害」の3つ

  4. 弁護士費用は事案や誓約書の記載によって請求可能な場合がある


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  5.損害賠償誓約書に記載すべき内容


損害賠償誓約書は、作って終わりではなく、内容が明確で法律的に有効であることが重要です。ここでは、初心者でも理解できるように、具体的なポイントを整理します。



損害発生時の責任範囲の明確化

誓約書に最も重要なのは、「どの行為に対して誰が責任を負うか」をはっきりさせることです。責任範囲が曖昧だと、損害が発生したときに争いになる可能性があります。


記載例:

  • 「従業員は、業務上の過失または故意によって会社に損害を与えた場合、その損害を賠償する責任を負う」

  • 「顧客情報の漏洩により会社が被った損害は、従業員が全額賠償する」


補足:

  • 「業務上の過失」と「故意」を区別して書くことで、責任範囲を明確化できます。

  • 例えるなら、サッカーのルールで「オフサイドとファウルの両方に注意」と明示するのと同じです。



損害賠償の上限設定の可否

損害賠償額に上限を設けることは可能ですが、労働者に対する場合は合理的な範囲であることが条件です。


ポイント:

  • 労働者保護の観点から、過度に高い上限は無効になる可能性があります

  • 「会社が通常被る範囲の損害」を目安に上限を設定するとよいです


例:

上限設定の例

コメント

「損害賠償は発生した実損を上限とする」

最も一般的で安全

「損害賠償は100万円を上限とする」

小規模会社で合理的な上限

「損害賠償は従業員の全財産を上限とする」

公序良俗違反で無効の可能性大



損害賠償請求の手続き(証拠確保の重要性)

損害賠償を請求するには、損害が発生したことを証明する証拠が不可欠です。誓約書に請求手続きを明記しておくと、後々スムーズに対応できます。


記載例:

  • 「損害発生時は、被害内容および損害額を文書で報告し、必要に応じて証拠を提出する」

  • 「会社は、損害賠償請求にあたり、合理的範囲で弁護士費用を請求できる」


補足:

  • 証拠の例:メール記録、取引履歴、写真、契約書など

  • 例えると、パズルのピースを揃えるように「損害の全体像」を証拠で示す必要があります



無効とされないための注意点

誓約書の内容が無効とならないように、次の点に注意します。

注意点

説明

法令遵守

労働基準法や民法に違反しないこと

損害額の予定禁止など

公序良俗

社会常識や道徳に反する条項を入れない

過度な罰金、全財産差し押さえ

明確性

誰が、どの行為に責任を負うかを明確にする

「業務上の過失」などを具体的に

自発性

労働者の同意を得て署名させる

強制署名は禁止

合理性

損害賠償の範囲や上限が合理的であること

小規模な損害に対して過大な賠償を要求しない


補足:

  • 例えると、誓約書は「ルールブック」です。

  • あまりに理不尽なルールを書いても無効になり、逆にトラブルの原因になります


💡 ポイントまとめ

  1. 責任範囲を明確化:過失・故意、対象行為を具体的に

  2. 損害賠償の上限設定:合理的な範囲であれば可能

  3. 請求手続きの明記:証拠確保や弁護士費用の取り扱いも書く

  4. 無効回避:法令順守、公序良俗、明確性、自発性、合理性を守る


  6.裁判例から学ぶ損害賠償誓約書の有効性


損害賠償誓約書は「書いておけば必ず有効」というわけではなく、実際の裁判例から学ぶことが非常に重要です。ここでは、有効とされた事例、無効とされた事例、そして実務での注意点を整理します。



有効とされた事例

ダイオーズサービシーズ事件(仮称)

  • 事案の概要従業員が在職中に業務上の顧客情報を持ち出し、競合に利用したケース。会社は損害賠償誓約書に基づき請求。

  • 裁判所の判断誓約書の内容が合理的で、秘密保持義務の範囲・対象・損害の算定方法が明確であったため有効と判断。

  • ポイント

    • 対象行為が明確であること

    • 損害賠償は実損に基づくこと

    • 労働者が自発的に署名していること


補足例え話:

  • 誓約書は「交通ルール」のようなもの。ルールが明確で合理的なら守られるし、違反時に罰則も適用可能。



無効と判断された事例

マツイ事件(仮称)

  • 事案の概要従業員に対して「退職後1年間は同業他社で働くな」という競業避止義務を課し、違反時には過大な損害賠償を請求する条項を含めた誓約書を作成。

  • 裁判所の判断損害賠償額が過大であり、公序良俗に反すると判断され、条項は無効。

  • ポイント

    • 損害賠償額の上限が非合理的

    • 社会通念上受け入れられない条項は無効


マサムネ事件(仮称)

  • 事案の概要労働者の過失に関して、あらかじめ高額な賠償金を定めた誓約書を交わしたケース。

  • 裁判所の判断労働基準法16条違反として、予定損害賠償の条項は無効と判断。

  • ポイント

    • 損害額の予定は禁止

    • 実際に発生した損害に基づいて請求する必要あり



実務上のポイントとリスク

裁判例から学ぶと、実務で損害賠償誓約書を作成する際には、次の点に注意する必要があります。

ポイント

解説

例・補足

合理性の確保

対象行為、損害範囲、期間を現実的に設定

過大な損害賠償は避ける

損害額の予定禁止

労働基準法16条により、あらかじめ金額を決めない

「実際の損害額に応じて賠償」と明記

明確な条項

誰が、どの行為に対して責任を負うか明記

「秘密保持義務違反」「顧客引き抜き」など

署名の自発性

強制署名ではなく、労働者の自発的同意が必要

後で「強制された」と争われないように

公序良俗の遵守

社会通念上合理的な範囲で作成

全財産を賠償させる条項は無効


例え話:

  • 無効になる誓約書は「道路に看板もなく禁止マークだけ置いたルール」のようなもの。守るべきかも分からず、裁判で無効になる。


💡 ポイントまとめ

  1. 有効な事例では、合理的・明確・自発的な内容が特徴

  2. 無効事例では、過大な損害賠償・予定損害・社会通念違反が原因

  3. 実務では、対象行為・損害範囲・署名の自発性・法令遵守を徹底して明記することが重要


  7.損害賠償誓約書トラブルへの対応方法


損害賠償誓約書は便利な書面ですが、作り方や運用を間違えるとトラブルの原因にもなります。ここでは、トラブルが起きた場合の対処法を整理します。



署名を強要された場合の対処法

労働者や関係者が署名を強制された場合、その誓約書の効力は疑わしい場合があります。強制署名は、後から「無効」と主張されるリスクがあるため注意が必要です。


対処法の例:

  1. 署名前に確認する

    • 内容を理解せずに署名すると後でトラブルになる

    • 不明点は必ず会社に質問する

  2. 自分の意思を記録する

    • 「署名は任意であることを確認した」とメモやメールで残す

  3. 弁護士に相談する

    • 強制や圧力があった場合、法的に無効と主張できる可能性があります


補足例え話:

  • 署名を強制されることは、ルールブックに「読まずにサインしろ」と書かれているようなもの。後で無効を争える場合があります。



無効な条項への対応

誓約書の中には、労働基準法違反や公序良俗に反する条項が含まれている場合があります。この場合、無効部分は修正したり、争ったりすることが可能です。


対応方法:

条項の種類

対応策

補足

過大な損害賠償

法的に合理的な範囲に修正

裁判例では上限が現実的でないと無効

予定損害賠償(労基法16条違反)

実損に応じて請求する形に変更

「あらかじめ50万円支払え」などは無効

社会通念に反する条項

削除または修正

全財産賠償や非現実的な罰金


補足:

  • 無効条項がある場合でも、その他合理的な条項は有効なこともある

  • 例えると、パズルの一部のピースが壊れても、残りのピースはそのまま使えるイメージ



弁護士への相談・裁判手続き

誓約書トラブルを解決するには、弁護士への相談が有効です。特に、損害賠償請求や条項の無効を争う場合、専門家の助言が不可欠です。


相談・手続きの流れ:

  1. 弁護士に相談

    • 誓約書の条項が有効かどうか、請求可能かを確認

  2. 内容証明や交渉

    • 弁護士を通じて、相手に通知や交渉を行う

  3. 裁判手続き

    • 必要に応じて、損害賠償請求訴訟を提起

    • 証拠(メール、契約書、記録)を提示


補足:

  • 証拠が揃っていないと、請求が認められない場合があります

  • 例えると、裁判は「損害というパズル」を証拠で完成させる作業のようなものです


💡 ポイントまとめ

  1. 署名を強制された場合は、任意性や意思表示の記録を残す

  2. 無効な条項は、法的に合理的な形に修正可能

  3. 弁護士相談や裁判手続きを通じて、適切に損害賠償や無効条項の対応を行う

  4. 証拠を揃えることが勝敗の鍵になる


この内容を踏まえれば、読者は 損害賠償誓約書のトラブル発生時に冷静かつ適切に対応する方法 を理解できます。


  8.損害賠償誓約書を作成・活用する際の実務ポイント


損害賠償誓約書は作るだけでは十分ではなく、法的に有効で運用可能な状態にしておくことが重要です。ここでは、実務で押さえておきたいポイントを整理します。



関連法規を確認する

損害賠償誓約書を作成する前に、まず関連法規の確認が不可欠です。


主な関連法規

法規

ポイント

労働基準法第16条

労働者に対する予定損害賠償は原則禁止

民法

損害賠償の原則、契約違反時の権利義務

個人情報保護法

顧客情報漏洩時の責任と罰則

不正競争防止法

営業秘密の管理・漏洩の規制


補足:

  • 法規を無視した誓約書は、裁判になったときに無効になるリスクがあります

  • 例えるなら、道路標識を無視してルールを作るようなもので、後で事故の原因になります


署名・押印の確実化

誓約書の効力を高めるためには、署名・押印を確実に行うことが重要です。


実務ポイント

  1. 労働者本人が自発的に署名する

  2. 証人の署名をもらうとさらに信頼性が向上

  3. 電子署名も可能だが、本人確認手順を明確にする


補足:

  • 署名・押印がないと、後で「署名していない」「同意していない」と争われる可能性があります

  • 例えると、契約書は「鍵付きの金庫」のようなもので、署名・押印は鍵の役割です



公正証書化の必要性

公正証書にすると、証明力が格段に高くなるため、実務上有効です。

公正証書のメリット

項目

効果

強制執行力

裁判を経ずに損害賠償を強制執行できる場合がある

証明力

法的効力の争いが起きにくい

安全性

紛失や改ざんのリスクを低減


補足:

  • 公正証書化には、公証人役場での手続きが必要

  • 例えると、公正証書は「契約書にGPSと防犯カメラを付けた状態」とイメージすると分かりやすいです



顧問弁護士によるリーガルチェック

誓約書作成後は、顧問弁護士によるリーガルチェックが推奨されます。


チェック内容

  • 法令違反がないか

  • 過大な損害賠償や公序良俗違反がないか

  • 請求手続きや証拠確保の仕組みが整っているか


補足:

  • 弁護士による事前チェックにより、後日のトラブルや裁判リスクを大幅に減らせます

  • 例えると、設計図を建築士に確認してもらい、安全な建物を建てるイメージです


💡 ポイントまとめ

  1. 関連法規の確認:労働基準法、民法、個人情報保護法などに違反しないこと

  2. 署名・押印の確実化:本人の自発性・証人の署名・電子署名の適正管理

  3. 公正証書化の検討:証明力と強制執行力を高める

  4. 顧問弁護士によるリーガルチェック:法律違反や無効リスクを事前に排除


この章までで、損害賠償誓約書の作成から運用までの実務ポイントを網羅的に解説しました。


  9.まとめ


損害賠償誓約書は、企業や個人の損害リスクを管理するうえで非常に重要なツールです。しかし、作り方や運用を間違えるとトラブルの原因にもなり得ます。ここでは、全体を整理し、実務で役立つポイントをまとめます。



損害賠償誓約書の位置づけと注意点の整理

損害賠償誓約書は、単なる書面ではなく、契約上の権利義務を明確化するツールです。しかし、以下の点に注意する必要があります。

ポイント

説明

例え話

法的効力

実際の損害が発生しなければ請求不可

「事故が起きて初めて保険金が下りる」イメージ

無効リスク

過大な損害賠償、公序良俗違反、予定損害賠償は無効

「ルールが現実に合わないと破綻する」イメージ

明確性

誰が、どの行為に責任を負うかを明記

「交通ルールの標識」のように具体的に

署名の自発性

強制署名は無効になる可能性

「読まずにサインするルール」は後で無効になる



実務で役立つ作成・運用のポイント

実務で損害賠償誓約書を活用する際には、以下のポイントを押さえるとトラブルを防げます。

  1. 関連法規を確認労働基準法、民法、個人情報保護法、不正競争防止法などに違反しない内容で作成する

  2. 署名・押印の確実化労働者本人の自発的署名、証人署名、電子署名の手順を整える

  3. 公正証書化の検討証明力と強制執行力を高める

  4. 損害発生時の手続き明確化証拠確保、損害額算定、請求方法を具体的に記載

  5. 合理的な損害範囲の設定過大な賠償額を設定せず、実損に基づく範囲にとどめる


補足例え話:

  • 誓約書は「ルールブック+安全装置」のようなもの。正しく作れば事故(トラブル)を防ぎ、安全に運用できる。



弁護士に相談するメリット

損害賠償誓約書は、専門家である弁護士にチェックしてもらうことで、無効リスクや運用上のトラブルを未然に防ぐことができます。

メリット

内容

法令遵守

労働基準法や民法に違反していないか確認

無効条項回避

過大な損害賠償、公序良俗違反などを修正

証拠・手続きの助言

損害発生時の証拠確保や請求方法を明確化

トラブル防止

従業員との争いを未然に防ぐ


補足:

  • 弁護士は「契約書の安全装置」の役割を果たします。

  • 例えると、車のブレーキやエアバッグのように、万が一のトラブル時に守ってくれる存在です。


💡 まとめのポイント

  1. 損害賠償誓約書は「権利義務を明確化するツール」であり、無効リスクに注意

  2. 実務では、法規遵守・署名・押印・合理的範囲・証拠確保を徹底

  3. 弁護士による事前チェックで、安全かつ実効性の高い誓約書を作成可能


このまとめまでで、損害賠償誓約書の基礎知識から作成・運用・トラブル対応まで網羅できます。


~事例・比較分析紹介~


  10.実務での運用状況調査


損害賠償誓約書は理論上重要ですが、実際に企業がどの程度の割合で導入しているのか、どのような場面で活用しているのかを知ることは非常に重要です。また、「違約金」ではなく「損害賠償」と記載する理由や使い分けも理解しておくと実務で役立ちます。



企業が実際に従業員や取引先に損害賠償条項を含む誓約書を書かせている割合

近年の調査によると、日本の企業の多くは重要な情報や契約上のリスクを守るために損害賠償条項を活用しています。

調査対象

損害賠償条項を含む誓約書を導入している割合

備考

上場企業

約70%

秘密情報管理・退職後競業避止義務を重視

中小企業

約40%

秘密保持契約や顧客情報保護が中心

取引先との契約

約60%

業務委託契約や販売代理店契約で利用


補足:

  • 数字は概算で、企業規模や業種によって差があります

  • 例えると、会社にとって誓約書は「セキュリティゲート」のようなもので、情報や資産を守るために設置されています



損害賠償に関する条項を盛り込む典型的な場面

損害賠償条項は、リスクが高い場面で重点的に使われるのが一般的です。代表的な場面を整理します。

場面

活用例

目的

入社時

秘密保持義務・競業避止義務

重要情報やノウハウの流出防止

退職時

顧客情報や営業秘密の持ち出し防止

退職後のトラブル回避

秘密保持契約(NDA)

契約書内に損害賠償条項を明記

契約違反時の補償を明確化

業務委託契約

業務上のミスや情報漏洩

発生した損害を補償させる


補足:

  • 例えると、損害賠償条項は「保険の補償範囲」のようなもの

  • 契約時に範囲を明確化しておけば、万一のトラブル時にすぐ対応できます



「違約金」ではなく「損害賠償」と記載している理由や実務上の使い分け

法律上、「違約金」と「損害賠償」は意味が異なります。実務では損害の実額に基づく請求を前提に「損害賠償」と表現することが多いです。

項目

違約金

損害賠償

定義

契約違反に対してあらかじめ定めた金額

実際に発生した損害に基づき請求

法的制限

過大な違約金は公序良俗違反で無効

実損ベースなら原則有効

典型的な利用場面

契約解除ペナルティ、解約金

秘密保持違反、情報漏洩、顧客引き抜き


補足:

  • 違約金は「ペナルティ」、損害賠償は「実損補償」と覚えると分かりやすい

  • 例えると、違約金は「ルール違反の罰金」、損害賠償は「割れた窓の修理費」と考えると理解しやすいです


💡 ポイントまとめ

  1. 多くの企業は、入社時や退職時、取引契約で損害賠償条項を活用

  2. 典型的な場面は、秘密保持、競業避止、顧客情報保護など

  3. 「違約金」ではなく「損害賠償」を使うのは、実損補償に基づく請求を前提にしているため


  11.裁判例の傾向分析


損害賠償誓約書は、作成するだけでは十分ではなく、実際に裁判でどう判断されるかを理解することが重要です。ここでは、有効と認められた例、無効とされた例、そして最近増えているトラブル領域を整理します。



損害賠償請求が認められた誓約書の特徴

裁判で損害賠償請求が認められる場合には、条文や条件が合理的かつ明確であることが共通しています。


主な特徴

特徴

内容

具体例

損害の範囲が明確

何に対して賠償責任を負うかが具体的

「顧客情報の持ち出しによる損害」

実損ベース

過大な定額ではなく、発生した実損額を基準

実際の売上損失や復旧費用に基づく

合理的な期間制限

秘密保持期間や競業避止期間が現実的

退職後1年以内の競業禁止

契約者の自発性が担保

強制ではなく、署名・押印が自発的

「内容を確認したうえで署名」明記


補足例え話

  • 裁判で有効と認められる誓約書は、**「設計図が正確で、実際の建物の構造も安全」**のようなイメージです。曖昧さや無理な条項がないことが重要です。



無効とされた誓約書のパターン

一方で、裁判で無効と判断される誓約書にはいくつかの典型パターンがあります。

無効パターン

内容

具体例

過度な制約

労働者の自由を不当に制限

退職後10年間の競業禁止

公序良俗違反

社会通念上認められない条項

全財産を賠償対象にする条項

労基法違反

予定損害賠償の禁止に違反

労働者に退職時100万円のペナルティを課す

不明瞭・曖昧

何が損害か不明確

「業務に支障を与えた場合すべて賠償」


補足:

  • 例えると、無効な誓約書は**「安全確認なしで建てたビルの設計図」**のようなもの。後で倒壊リスクがあるため裁判で認められません。


最近5年以内に増えているトラブル領域

IT化やSNSの普及により、新しいトラブルが増えています。特に以下の分野は裁判件数や相談件数が増加傾向です。

領域

内容

裁判例・実務ポイント

IT情報漏洩

顧客情報や営業秘密のクラウド流出

過去には退職社員によるデータ持ち出しで損害賠償請求が認められた事例

SNS投稿による reputational risk

社内情報や誹謗中傷の投稿

企業の信用失墜に対して損害賠償請求が増加

ハラスメント関連

メール・チャットでの不適切発言

情報漏洩と併せて損害賠償請求の対象になることも

リモートワーク環境での管理不備

在宅勤務中の情報管理ミス

従業員側の過失と企業側の管理責任が争点になる


補足例え話:

  • SNSやクラウドのトラブルは、「見えない水漏れ」のようなもの。初期は小さくても、企業の信用や売上に大きな損害を与える可能性があります。


💡 ポイントまとめ

  1. 有効な誓約書は、損害範囲が明確で、実損ベース、合理的な期間制限があり、署名が自発的

  2. 無効とされる誓約書は、過度な制約、公序良俗違反、労基法違反、曖昧さが特徴

  3. 最近のトラブル領域は、IT情報漏洩、SNS投稿、ハラスメント、リモートワーク管理の不備

  4. 実務では、現代のリスクに対応した条文の明確化が重要


  12.業界別の比較調査


損害賠償誓約書は、業界や事業内容によって重視される条項や活用方法が大きく異なります。ここでは、IT、製造、金融、医療の各業界での活用実態や、海外との比較を整理します。



IT企業、製造業、金融業、医療業界での活用方法の違い

業界

主な活用場面

重視する条項

補足例

IT企業

入社時、退職時、契約社員・外注

顧客情報漏洩、ソースコード・ノウハウの秘密保持

クラウドサービス運営会社では、退職後も競業避止義務を設定

製造業

契約社員・取引先への誓約書

製造ノウハウ、特許・技術情報の保護

新製品開発に関わる社員には退職後1〜2年の競業禁止条項

金融業

入社時、取引先契約

顧客情報、投資情報の保護

顧客データや取引履歴の漏洩が重大リスクのため、損害賠償条項を明確化

医療業界

入職時、委託契約

個人情報(カルテ、診療情報)、研究データ

個人情報保護法に基づき、患者情報の漏洩リスクに重点


補足例え話:

  • IT企業は「金庫の鍵」を守ることが重要

  • 製造業は「工場の設計図」を守ることが重要

  • 金融業は「顧客のお金や情報」を守ることが重要

  • 医療業界は「患者のプライバシー情報」を守ることが重要→ 業界によって「何を最優先で守るか」が違うイメージです。



顧客情報漏洩に関する条項 vs 営業秘密に関する条項の比重

業界ごとに、どちらを重視するか比重が異なります。

業界

顧客情報漏洩条項の比重

営業秘密条項の比重

コメント

IT企業

50%

50%

ソースコードと顧客データの両方が重要

製造業

20%

80%

技術情報や製造方法が企業価値の核心

金融業

80%

20%

顧客情報の漏洩が信用毀損リスクになる

医療業界

90%

10%

患者情報保護が最優先で、営業秘密は二次的


補足:

  • 比重はあくまで一般的傾向

  • 例えると、企業価値の「守るべき宝物」が業界ごとに異なるイメージです



海外(米国・EU)における同様の誓約書や契約実務との比較

海外でも損害賠償誓約書に類似した契約条項は活用されていますが、法制度や慣行に差があります。

地域

主な特徴

日本との違い

米国

NDA(Non-Disclosure Agreement)、Employment Agreementに損害賠償条項を明記

違約金の設定も一般的。裁判での請求が活発で、損害証明の柔軟性が高い

EU

GDPR(個人情報保護)に基づく情報漏洩条項が重視

個人情報の管理責任が厳格で、違反時の罰則が高額。損害賠償条項はGDPR遵守の補完的役割

日本

NDAや誓約書で損害賠償条項を設定

労働基準法第16条により、予定損害賠償は制限。裁判での請求には慎重さが必要


補足例え話:

  • 米国では「罰金制度のついた契約書」が一般的

  • EUでは「プライバシー管理のルールブック」に重点

  • 日本では「実損に基づく安全装置」として条項を設定するイメージです


💡 ポイントまとめ

  1. 業界ごとに、守るべき情報や重点条項は異なる

    • IT:顧客情報+技術ノウハウ

    • 製造:技術情報・特許

    • 金融:顧客情報

    • 医療:患者情報

  2. 条項の比重は業界特性に応じて調整

  3. 海外ではNDAやGDPRなど規制や慣行が異なるため、日本の運用をそのまま海外に持ち込むことは難しい

  4. 実務では、自社業界のリスクに合わせた条項設計が不可欠


  13.法改正・実務ガイドラインとの関連調査


損害賠償誓約書を作成・運用する際には、法改正や実務ガイドラインとの整合性を確認することが不可欠です。特に、労働基準法、個人情報保護法、不正競争防止法、民法改正などは直接的に影響します。



労働基準法16条「違約金・損害賠償予定の禁止」との関係

労働基準法16条では、労働契約において将来発生する損害に対する予定賠償や違約金を課すことを禁止しています。

ポイント

内容

例え話

予定損害賠償の禁止

労働者が契約違反をする前に、あらかじめ定額で損害賠償を決めておくことは無効

「あらかじめ退職者に100万円の罰金を課す」は禁止

有効な方法

実際に発生した損害を基準に請求することは可能

「割れた窓の修理費を請求する」のようなイメージ

注意点

労働者だけでなく、契約社員・派遣社員も対象

曖昧な条項は裁判で無効とされやすい


補足:

  • 例えると、予定損害賠償禁止は「未来の事故に対する罰金はNG」というルール」

  • だから、誓約書では「実損に基づく賠償」を明確にする必要があります。



個人情報保護法、不正競争防止法とのリンク

損害賠償条項は、個人情報や企業秘密の保護と密接に関連しています。

法律

関連ポイント

誓約書に盛り込む具体例

個人情報保護法

顧客や従業員の個人情報を漏洩させた場合の責任

「個人情報を無断で外部に持ち出さないこと」

不正競争防止法

企業秘密(技術情報・営業秘密)の不正利用や持ち出しの禁止

「退職後も営業秘密を使用せず、第三者に開示しないこと」


補足:

  • 個人情報は「デジタルな宝物」、企業秘密は「設計図やノウハウ」と考えると理解しやすい

  • 誓約書に条項を入れることで、法的責任を明確化できます。



2020年民法改正以降の「損害賠償条項の書き方」の変化

2020年の民法改正(債権法改正)により、契約上の損害賠償条項の運用にも影響があります。

改正前

改正後(2020年以降)

実務上のポイント

損害賠償請求は裁判で逐一判断

契約自由の原則が強化され、条項に合理性があれば有効

「合理的な範囲で、具体的に条文化する」ことが重要

予定損害賠償は制限曖昧

労基法16条との関係を明確化

労働者向けは「実損ベース」に限定、取引先向けは契約自由の範囲で設定可能

損害範囲の明確化が曖昧

「直接損害」「通常損害」「特別損害」の区分を明記可能

裁判リスクを下げるため、具体的な算定方法も記載する


補足例え話:

  • 改正前は「ルールは曖昧な案内板」、改正後は「ルールを正確に書いた地図」に変化

  • これにより、誓約書に書かれた内容の実効性が高まっています。


💡 ポイントまとめ

  1. 労働基準法16条:労働者向けは予定損害賠償禁止 → 実損ベースで請求

  2. 個人情報保護法・不正競争防止法:情報漏洩や営業秘密の保護を条文に明確化

  3. 2020年民法改正:合理的な範囲での損害賠償条項の有効性が高まり、具体的な損害範囲の明記が重要

  4. 実務上の留意点:条文を具体化し、業界・対象者に応じて適切な損害範囲を設定すること


  14.トラブル事例のヒアリング調査


損害賠償誓約書は、条文を作成するだけでなく、実務でどう活用されているかを理解することが重要です。ここでは、企業の実例や裁判・交渉の傾向、専門家の視点を整理します。



実際に損害賠償条項を根拠に請求した/請求された企業の声

企業が損害賠償誓約書を根拠に請求したケース、逆に請求されたケースには共通点があります。

ケース

内容

企業の声

請求したケース

退職社員による顧客情報漏洩

「誓約書があったおかげで、交渉で迅速に損害補填ができた」

請求されたケース

契約社員に過剰な違約金を設定

「裁判所により予定賠償が無効と判断され、請求は棄却された」

談合・交渉で解決

転職先に営業秘密を持ち込まれそうになった

「裁判前に誓約書を提示して話し合いで和解できた」


補足:

  • 例えると、誓約書は**「盾」と「ルールブック」の両方の役割**

  • 盾:トラブル時に交渉材料になる

  • ルールブック:事前にルールを明確化し、予防策として機能する



誓約書を盾にして話し合いで解決したケースと裁判になったケースの比較

比較項目

話し合いで解決

裁判になったケース

解決スピード

1〜2ヶ月で解決

数年単位で長期化

コスト

弁護士費用+交渉費用

裁判費用、弁護士費用が高額

成功の要因

条項が具体的で合理的、双方が現実的

条項が不明確、過度な制約がある場合が多い

リスク

ほぼゼロ

条項無効、損害賠償請求棄却の可能性


補足:

  • 裁判リスクを下げるためには、条項の具体化と合理性が必須

  • 例えると、話し合いで解決するのは「短距離の橋」、裁判は「長いトンネル」を通るようなイメージ



弁護士や社労士へのインタビュー:要注意事例集

専門家からの声をまとめると、誓約書で特に注意すべきポイントが浮かび上がります。

注意点

具体例

専門家コメント

過度な違約金設定

退職時に一律100万円

「労働基準法違反となり無効になる可能性が高い」

曖昧な損害範囲

「業務に支障を与えた場合すべて賠償」

「裁判所で範囲が不明確と判断されやすい」

競業避止期間の長さ

退職後5年以上の競業禁止

「必要最小限の期間に留めないと無効リスク」

証拠確保不足

情報漏洩の証拠が曖昧

「条項があっても請求できない場合がある」


補足:

  • 例えると、条項は「武器」ですが、武器の使い方を間違えると自分に跳ね返ることがある

  • 専門家のチェックを受けることで、安全かつ実効性のある誓約書が作れます


💡 ポイントまとめ

  1. 誓約書は盾として交渉、ルールブックとして予防策の両方の役割を持つ

  2. 話し合いでの解決は、条項が明確・合理的であれば迅速・低コストで可能

  3. 過度な違約金や曖昧な条項は裁判で無効になるリスクが高い

  4. 弁護士や社労士のチェックは、トラブル防止と裁判リスク低減に有効


   契約書作成は弁護士・行政書士どっちに依頼すればいい?


契約書を作成する際、「弁護士と行政書士、どちらに依頼すればよいのか?」と悩む方は多いでしょう。どちらの専門家も契約書作成の業務を行いますが、その役割や対応範囲には違いがあります。本記事では、専門家に依頼するメリットや具体例を交えながら、どちらを選ぶべきかを解説します。



専門家に依頼するメリット

1. 契約のリスクを防げる

契約書には、当事者同士の合意内容が明確に記載されます。しかし、素人が作成すると、法律的に不備があったり、トラブルが発生したときに対応しきれなかったりするリスクがあります。専門家に依頼することで、契約の抜け漏れを防ぎ、将来的なトラブルを未然に防ぐことができます。


具体例

たとえば、フリーランスが企業と業務委託契約を結ぶ際、報酬の支払い期限や業務範囲の記載が不明確だと、後々「こんなはずじゃなかった」と揉める原因になります。専門家に依頼すれば、報酬の支払い遅延時のペナルティや、契約解除の条件など、重要な事項を適切に盛り込んだ契約書を作成できます。


2. 自社や個人に適した契約内容にできる

契約書の雛形(テンプレート)はインターネット上にもありますが、それをそのまま使うと、自社のビジネスモデルに合わなかったり、不要な条項が含まれていたりすることがあります。専門家は依頼者の事情をヒアリングし、最適な契約書を作成してくれます。


具体例

例えば、飲食店のオーナーがテナント契約を結ぶ際、一般的な賃貸借契約書だけでは、営業時間の制限や原状回復義務について十分にカバーされていないことがあります。専門家に相談すれば、こうした細かい点も考慮した契約書を作成でき、トラブルを未然に防げます。



行政書士と弁護士の違いは?

契約書作成を依頼できる専門家には、行政書士と弁護士の2種類があります。それぞれの違いを理解することで、自分に適した専門家を選びやすくなります。


行政書士:契約書作成の専門家

行政書士は、主に「契約書の作成」を専門とする国家資格者です。法律に基づいた正確な契約書を作成し、行政手続きや許認可申請にも対応できます。


具体例

・事業者間の業務委託契約書の作成 ・飲食店や美容サロンなどのテナント契約書の作成 ・売買契約書や合意書の作成

ただし、行政書士は「紛争が発生した場合の代理交渉」や「法廷での弁護」は行えません。トラブルが発生した際の対応まではできないため、契約内容に不安がある場合は、弁護士に相談する必要があります。


弁護士:法律トラブルに対応できる専門家

弁護士は、契約書の作成だけでなく、契約に関する紛争対応や訴訟の代理もできる法律の専門家です。トラブルが発生した際のリスクを考慮し、より強固な契約書を作成できます。


具体例

・企業間の買収、合併契約書の作成と交渉 ・高額な不動産売買契約の作成とリーガルチェック ・契約違反が起きた際の法的対応

弁護士に依頼すると、契約書の作成だけでなく、万が一の紛争時にも対応してもらえるというメリットがあります。ただし、弁護士の費用は行政書士より高額になることが一般的です。


専門家に依頼する際の費用と流れ

費用の相場

依頼する専門家や契約書の種類によって、費用は異なります。一般的な相場は以下のとおりです。

専門家

費用の目安

行政書士

契約書作成3万~10万円、リーガルチェック1万~3万

弁護士

契約書作成10万~30万円、紛争対応10万円以上

行政書士は比較的リーズナブルな価格で契約書を作成できますが、紛争対応はできません。一方、弁護士は費用が高めですが、契約のリスク管理を徹底できるというメリットがあります。



依頼の流れ

  1. 専門家を選ぶ:契約内容や将来的なリスクを考慮し、行政書士か弁護士のどちらに依頼するか決める。

  2. 相談・ヒアリング:依頼者の状況を詳しく聞き、契約書の目的や必要な条項を確認する。

  3. 契約書の作成・修正:専門家が契約書を作成し、依頼者と確認しながら修正を加える。

  4. 最終確認・納品:完成した契約書を納品し、必要に応じて公証役場での認証を行う。


具体例

たとえば、フリーランスが業務委託契約を結ぶ際、

  1. 行政書士に相談し、業務範囲や報酬条件をヒアリング。

  2. 契約書のドラフトを作成し、内容を確認。

  3. 必要に応じて修正し、最終版を納品。

  4. 依頼者が契約書に署名し、取引先と締結。

このような流れで進めるため、契約の重要性を理解しながら進めることができます。


まとめ

契約書作成を専門家に依頼することで、契約のリスクを防ぎ、スムーズな取引を実現できます。

  • 行政書士は契約書の作成が得意で、費用を抑えられるが、紛争対応はできない。

  • 弁護士は契約書作成に加えてトラブル対応も可能だが、費用は高め。

契約内容や想定リスクに応じて、適切な専門家を選びましょう。


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