労災と示談書は両立する?行政書士が現場目線で解説
- 代表行政書士 堤

- 2 日前
- 読了時間: 42分
🌺こんにちは!おてがる契約書の代表行政書士 堤です。
本日は示談書についての重要なポイントを解説したコラム記事をお届けします。
労災事故に遭った際、会社や第三者との示談交渉は避けて通れないケースがあります。しかし、「示談書を書いたら労災給付が受けられないのでは?」と不安になる方も少なくありません。本コラムでは、行政書士として現場で見てきた経験をもとに、労災保険と示談書の関係や注意点をわかりやすく解説します。初心者の方でも理解できるよう、具体例や実務上のトラブル事例も交えて紹介しますので、安心して読み進めてください。
本記事のまとめ:
重要事項 | 概要 |
|---|---|
示談書を作ること自体は違法ではなく、使い方次第でトラブルを防げます。 | |
清算条項や権利放棄条項が、将来の追加請求や労災給付に影響することがあります。 | |
早すぎる示談は損害の取りこぼしにつながり、適切な判断が将来の安心を左右します。 |
🌻労災示談は、一歩間違えると後で取り返しのつかないトラブルに発展することがあります。本記事を読むことで、労災給付と示談金の違い、示談書で注意すべき条項、実務でよくある失敗例を事前に知ることができます。これから示談を検討する方、すでに示談書を提示されて悩んでいる方には、特に参考になる内容です。後悔しないために、まずは正しい知識を押さえておきましょう。
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▼目次
~事例・比較分析紹介~
~番外編~
1.労災と示談書は本当に両立するのか?【結論から整理】
労災保険と示談の関係性の全体像
労災保険とは、労働者が業務中や通勤中にけがや病気をした場合に、医療費や休業補償、障害補償などを支給する国の制度です。会社が加入していれば、労働者は原則として会社に請求するのではなく、労災保険から給付を受けることになります。
一方で、示談書は「当事者同士で損害賠償や慰謝料の支払いを取り決めた書面」です。多くの場合、交通事故や職場でのトラブルなど、損害が発生した際に作成されます。
この2つを整理すると、次のような関係になります。
項目 | 労災保険 | 示談書 |
対象 | 労働者の業務上のけが・病気 | 加害者がいる場合の損害・慰謝料 |
支払い元 | 国(労災保険) | 加害者または企業 |
法的性質 | 公的給付 | 民事契約(任意) |
両立の可否 | 原則可能 | 示談内容次第で労災請求に影響あり |
つまり、労災と示談は形式的には両立可能です。ただし、「示談書に何を盛り込むか」によっては、労災請求や将来的な損害補償に影響することがあります。
「労災=示談できない」という誤解が生まれる理由
実務上、「労災だから示談できない」と考える人が少なくありません。その背景には、以下の理由があります。
労災給付は国が行うという事実労災は企業や個人が直接支払うものではなく、国から給付されるため、「民間の示談が不要」と誤解されやすいです。
示談内容による権利放棄のリスク示談書に「会社や加害者に請求しない」と明記すると、労災保険で受け取れる給付や将来の補償を制限してしまう場合があります。この点を知らずに示談書を作成すると、後で損をすることになります。
現場の混乱労働者・会社・保険担当者・行政書士など関係者が多く、情報の食い違いが起こりやすいことも誤解の原因です。
つまり、「労災だから示談できない」と単純に決めつけるのは正しくありません。正しく理解すれば、労災と示談書は両立させることが可能です。
行政書士の現場感覚:問題になるのは“示談の中身”
行政書士として現場で多くの相談を受けて感じるのは、「労災との両立が問題になるのは、示談書の中身次第」という点です。例えば、次のような内容が問題になります。
権利放棄の条項「会社や加害者に今後一切請求しない」と記載すると、労災給付や将来の損害賠償の権利にも影響する可能性があります。
補償金額の明確化不足示談で支払う金額があいまいだと、後で追加請求やトラブルにつながることがあります。
労災給付との二重取り禁止の誤解労災給付と示談金を受け取ることで違法になるのではないか、と思う人もいますが、正しく調整すれば問題ありません。
現場では、示談書を作る前に「労災給付の範囲」「民事請求との関係」「将来のリスク」を整理することが非常に重要です。簡単に言うと、「誰の権利を守るための示談書なのか」を明確にして作ることが鍵になります。
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2.労災における「示談」とは何を意味するのか
労災(労働災害)の基本構造
労災保険制度の役割
労災保険は、労働者が業務中や通勤中にけがや病気を負った場合に、国が医療費や休業補償、障害補償などを支給する制度です。ポイントは以下の通りです。
労働者が直接会社に請求せず、国からの給付を受けられる
医療費や休業補償だけでなく、将来の障害や死亡に対する補償も含まれる
労働者を守るための公的保障制度である
例えるなら、会社で怪我をしたときに「会社に直接請求するのではなく、国の保険からお金が出る仕組み」と考えるとわかりやすいです。
国からの給付と会社責任の切り分け
労災給付は国から支払われますが、会社が安全配慮義務を果たしていなかった場合や第三者の過失が絡む場合には、別途損害賠償請求が可能です。
項目 | 労災給付(国) | 会社や第三者への請求 |
対象 | 医療費、休業補償、障害補償 | 精神的苦痛、逸失利益、慰謝料 |
支払い元 | 国 | 会社・第三者 |
法的性質 | 公的給付 | 民事請求(任意) |
つまり、労災は「最低限の補償」を国が保証する制度であり、示談で取り決めるのはそれ以上の損害や補償をどう扱うかという話です。
労災示談とは何を合意するものか
示談の相手(会社・第三者)
労災における示談の相手は大きく分けて二つです。
会社との示談
労災給付でカバーされない範囲の補償(慰謝料や追加補償)について話し合います
会社側が過失や責任を認める場合に行われることが多い
第三者との示談
例:工事現場で他社の重機にぶつかった場合、その会社や運転者に対して損害賠償を請求する
労災給付とは別に、民事的な損害補償として取り決めます
簡単に言えば、「誰が補償すべきか」を整理し、過不足なく合意するための手段が示談です。
示談で対象になる損害・ならない損害
示談で扱う損害と扱わない損害を整理すると、労災との関係がよりわかりやすくなります。
対象 | 説明 | 労災との関係 |
医療費 | 治療にかかる費用 | 労災給付の対象なので通常示談では不要 |
休業補償 | 仕事を休んだ期間の給与相当 | 労災給付でカバーされるため通常示談の対象外 |
慰謝料 | 精神的苦痛に対する金銭 | 労災給付だけでは不足する場合、示談で取り決め可能 |
逸失利益 | 将来の収入減少 | 労災給付を超える場合に示談で調整可能 |
物損 | 私物の破損や損失 | 労災給付とは別に示談で解決可能 |
ポイントは、労災でカバーされる部分は示談で再請求できないことが多く、示談は労災給付を補完する役割だということです。
このように整理すると、労災示談は「国からの最低限補償+会社や第三者の追加補償」を明確に合意するための手段であることが理解できます。
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3.労災保険給付と示談金はどう違うのか
労災保険でカバーされる範囲
労災保険は、業務中や通勤中のケガ・病気に対して、国が給付を行う制度です。給付の内容は大きく分けて3つあります。
療養補償
医療費や治療費が支給されます。
例:骨折や打撲での治療費、通院交通費
休業補償
ケガや病気のために働けなかった期間の給与相当が支給されます。
例:仕事を2週間休んだ場合の給与の6~8割程度
障害補償・遺族補償
後遺症が残った場合や、死亡した場合に支給されます。
例:事故で手足に障害が残った場合の一時金や年金
簡単に言えば、**「病院にかかる費用や休めない期間の生活費を国が保証する制度」**と理解するとわかりやすいです。
示談金(損害賠償)で問題になる範囲
示談金は、労災保険ではカバーできない損害や精神的苦痛に対する補償を、会社や第三者と合意して受け取る金銭です。具体的には以下のような項目が含まれます。
慰謝料
精神的苦痛や心理的負担に対する金銭
例:長期入院や後遺症による生活の不便、精神的ストレス
逸失利益
ケガや病気のために将来得られたはずの収入が減少する場合の補償
例:労災給付だけではカバーできない将来の収入減
労災保険では補えない損害
個人の私物の破損や、休業補償ではカバーされない追加費用
例:仕事用ノートパソコンの破損、介護費用の自己負担分
項目 | 労災保険 | 示談金(損害賠償) |
医療費 | 支給あり | 原則不要(既にカバーされているため) |
休業補償 | 支給あり | 原則不要(既にカバーされているため) |
慰謝料 | 支給なし | 示談で取り決め可能 |
逸失利益 | 一部支給 | 示談で調整可能 |
物損・個人負担費用 | 支給なし | 示談で取り決め可能 |
損害賠償金と示談金の違い
損害賠償金と示談金は、言葉の意味が混同されやすいですが、実務上は次のように整理できます。
損害賠償金
法律上、加害者に請求できる金銭
裁判で決まることもあり、必ずしも示談で合意しなくても請求可能
示談金
当事者同士で合意して支払われる金銭
損害賠償金の一部または全部を、事前に取り決めて解決する手段
労災給付と併用可能だが、示談内容によっては将来の権利に影響することもある
ポイントは、**「労災保険は国の最低補償、示談金は労災でカバーできない部分を補うもの」**として使い分けることです。誤って示談書に「今後請求しない」と書くと、労災給付や将来の損害補償に影響する可能性があるため注意が必要です。
この整理を踏まえると、労災給付と示談金は目的や対象が明確に違うため、両立可能であることが理解できます。
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4.労災示談で問題になりやすい金銭項目の整理
慰謝料の考え方
労災示談で最も注意される金銭項目のひとつが慰謝料です。慰謝料とは、事故やケガによって受けた精神的苦痛に対する補償金を指します。労災保険では原則カバーされないため、示談で取り決めることが多い項目です。
入通院慰謝料
ケガの治療のために入院や通院をした場合に発生する精神的負担に対する補償
例:骨折で3週間入院、通院が2か月続いた場合、その期間の精神的負担を金銭換算して示談に盛り込む
後遺障害慰謝料
ケガの後遺症が残った場合に支払われる慰謝料
労災給付の障害補償とは別に、生活の不便や心理的ストレスを補償する目的で取り決める
例:手指の神経損傷により日常生活に支障がある場合
死亡慰謝料
労災で死亡した場合、遺族に対する精神的損害を補う金銭
労災給付の遺族年金や一時金とは別に、示談で遺族が合意する形で支払われることがある
逸失利益の考え方
逸失利益とは、「将来得られたはずの収入がケガや事故によって失われる損害」を指します。労災給付では十分にカバーできない場合、示談で補填することが多いです。
後遺症が残った場合
後遺症によって働ける範囲や収入が減る場合、逸失利益として計算される
計算例:月収20万円×残り就労年数×後遺症割合
死亡事故の場合
被災者が将来稼ぐはずだった収入全体を逸失利益として算定
配偶者や子どもの生活保障として示談に反映されることがある
休業損害・その他積極損害
労災示談で整理が難しいのが、休業損害やその他積極損害の扱いです。ポイントは「労災保険の休業補償と二重取りにならないか」です。
休業補償との関係
労災給付として休業補償が支給される場合、示談で同額を請求すると二重取りとなる可能性があります
示談で請求する場合は、労災給付との差額や追加費用を明確にする必要があります
二重取りにならない整理方法
労災給付でカバーされた範囲は除外
示談書に「労災給付で支給された金額を控除する」と明記
例:休業損害50万円のうち、労災で40万円支給 → 示談で請求できるのは差額10万円
金銭項目 | 労災保険 | 示談金の整理方法 |
入通院慰謝料 | 支給なし | 精神的苦痛分を取り決め |
後遺障害慰謝料 | 一部障害補償あり | 精神的・生活への影響分を追加 |
死亡慰謝料 | 遺族年金・一時金 | 精神的損害を補完 |
逸失利益 | 障害補償の一部 | 将来の収入減を示談で補填 |
休業損害 | 支給あり | 労災給付との差額を明記 |
物損・その他費用 | 支給なし | 示談で合意可能 |
まとめると、労災示談で問題になりやすい金銭項目は「慰謝料・逸失利益・休業損害・物損」などです。労災給付と重複しないよう整理することが、示談でトラブルを防ぐ最大のポイントとなります。
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5.労災示談の流れと期間の目安【実務ベース】
労災事故発生から示談までの基本的な流れ
労災示談は、事故発生から最終的に示談書を作成するまで、いくつかのステップを経て進行します。以下の流れを押さえておくとスムーズです。
事故発生・治療
まずは事故発生直後に医療機関での治療を開始します。
怪我の状態や通院記録は、示談で慰謝料や逸失利益を算定する際の重要な証拠になります。
例:工場で手を切った場合、入院日数や通院回数がそのまま慰謝料に影響します。
労災申請と給付
労働者は会社を通じて労災申請を行い、国から給付を受けます。
療養補償や休業補償、障害補償などがこの段階で支給されます。
ここでのポイントは、労災給付を受けた範囲は示談で二重請求できないことです。
症状固定・後遺障害等級認定
怪我の回復がある程度見込めない状態になった時点で「症状固定」と判断されます。
後遺症が残る場合は、後遺障害等級認定を申請し、等級に応じた障害補償が決まります。
示談金を決める上での基準となる症状や等級をこの段階で確定させることが重要です。
損害額算定
入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、逸失利益などの金額を計算します。
労災給付でカバーされた範囲を差し引き、示談で取り決める対象を明確化します。
表にまとめると整理しやすいです。
損害項目 | 労災給付 | 示談で取り決める金額 |
医療費 | 支給あり | 原則不要 |
休業補償 | 支給あり | 労災との差額のみ |
入通院慰謝料 | 支給なし | 全額示談で調整 |
後遺障害慰謝料 | 一部支給 | 不足分を示談で補填 |
逸失利益 | 一部支給 | 将来の減収分を示談で補填 |
示談交渉・成立
当事者間(会社・第三者・労働者)で損害額や支払い条件について交渉します。
合意に至ったら示談書を作成し、署名・押印をして成立です。
この段階で、労災給付との関係や今後の請求権の扱いを明確にしておくことが重要です。
労災示談にかかる期間の目安
労災示談は、事故の内容や怪我の程度によって期間が大きく異なります。一般的な目安は以下の通りです。
期間 | 内容 |
数週間〜数か月 | 軽症で通院が短期間の場合、早期に示談成立するケース |
6か月〜1年程度 | 入通院が長期化した場合、休業損害や慰謝料計算に時間がかかるケース |
1年以上 | 後遺障害が残る場合や、第三者責任が絡む場合に長期化 |
早期示談が危険な理由
怪我や症状が完全に回復していない段階で示談を成立させると、後で追加請求が困難になる可能性があります。
特に後遺障害や逸失利益は、症状固定前に正確な金額を決めるのが難しいため、早期示談はリスクが高いです。
長期化しやすいケース
後遺障害等級の認定に時間がかかる場合
被害者と加害者(または会社)で損害額の見解が大きく異なる場合
第三者が絡む複雑な事故や、複数の損害項目(慰謝料・逸失利益・物損)がある場合
実務では、治療終了後・症状固定後に示談交渉を開始するのが安全で、かつ後々のトラブルを防ぐ最適なタイミングとされています。
この整理を理解しておくと、労災示談の流れや期間感覚、注意すべきタイミングが明確になり、後でのトラブルを避けることができます。
6.労災示談書の役割と法的な注意点
労災示談書とは何か
口約束との違い
労災示談書は、労働者と会社(あるいは第三者)の間で合意した損害補償の内容を書面にしたものです。口頭での約束とは違い、後で「言った言わない」のトラブルを防ぐ役割があります。
例えるなら、口約束は「手元にメモがない約束」、示談書は「公的な契約書のようなメモ付きの約束」です。書面があることで、合意内容の明確化と法的証拠性が担保されます。
書面化の意味
損害金額や支払期日を明確にできる
労災給付と示談金の範囲を整理できる
将来の追加請求の可否を明文化できる
書面化することで、労災給付や慰謝料などの権利関係を整理し、安全に合意することが可能になります。
示談書に必ず注意すべき条項
労災示談書には、いくつか注意すべき条項があります。特に以下の3つはトラブルの元になりやすいので、慎重に扱う必要があります。
清算条項(権利放棄条項)
「本示談により、今後一切の請求を行わない」という内容
労災給付や将来の損害賠償権利まで放棄してしまう可能性がある
ポイント:労災給付を受ける権利は残す形で、民事請求のみ整理する
留保条項の有無
「労災給付による金額控除や将来追加請求の可能性を留保する」という内容
留保条項を入れると、症状固定後の後遺障害や逸失利益の追加請求が可能
例:入通院慰謝料や逸失利益を後日再計算する場合、留保条項があると安全
労災保険給付との関係
示談書で請求できる金額は、労災で既に給付された範囲を除くことが基本
誤って労災給付分も請求対象にすると二重取りとなり、法律上問題になる場合がある
示談書が原因でトラブルになる典型例
労災示談書は便利ですが、内容次第ではトラブルの原因になることがあります。典型例を整理します。
追加請求ができなくなるケース
清算条項で「今後の請求権をすべて放棄」と書いた場合
後遺障害が後から重くなるなど、追加で逸失利益を請求したくてもできなくなる
ポイント:どこまでの権利を放棄するかを明確に区別することが重要です
労災給付との調整ミス
労災給付を受けた後に示談金を支払う際、給付分を差し引かずに合意
結果的に二重請求になったり、加害者側が支払い拒否するトラブルに
対策:示談書に**「労災給付金額を控除して支払う」**と明記する
トラブル例 | 原因 | 回避策 |
追加請求不可 | 清算条項で権利放棄 | 放棄対象と留保対象を分けて明記 |
二重取り | 労災給付と示談金を重複 | 示談書に給付控除条項を明記 |
権利関係不明 | 条項が曖昧 | 金額・期間・対象範囲を具体的に記載 |
まとめると、**労災示談書は「口約束よりも安全に権利関係を整理する道具」**ですが、条項の書き方次第で後のトラブルに直結します。特に「清算条項」「留保条項」「労災給付との関係」は必ず確認して作成することが重要です。
7.第三者行為災害と示談の特殊ルール
第三者行為災害とは
第三者行為災害とは、業務中のケガや病気が、会社以外の第三者の行為によって発生した場合を指します。労災保険制度では、被災者が受け取る給付に特殊ルールが適用されるため、示談の扱いにも注意が必要です。
例1:通勤中に他社トラックに追突されて負傷
例2:職場で業務に関係ない第三者に暴行されて怪我
ポイントは、損害賠償の相手が「会社」ではなく第三者」になることがある点です。労災給付は国が支払いますが、第三者の過失分については、民事請求(示談)で補償を受けることになります。
示談のタイミングに注意すべき理由
第三者行為災害では、示談を成立させるタイミングが非常に重要です。早すぎたり、労災給付と整理されていない示談は、給付制限やトラブルにつながります。
労災給付への影響
第三者行為災害では、会社や国からの労災給付は原則支給されます。
しかし、示談で第三者から損害賠償を受ける場合、国は給付金の一部返還を求めることがある
例:交通事故で被害者が示談金として100万円受け取った場合、労災給付の休業補償や治療費の一部が控除されることがある
示談成立が給付制限につながるケース
示談金を受け取った時点で「これ以上請求しない」と明記すると、労災給付に対する調整や返還が発生する場合がある
特に、労災給付と第三者損害賠償が重複する部分(医療費や休業補償)は注意が必要
注意点 | 内容 |
示談タイミング | 治療終了・症状固定後に開始するのが基本 |
労災給付との関係 | 示談金受領で国が給付金を控除する可能性あり |
契約条項 | 「給付調整あり」「権利放棄の範囲限定」を明記 |
簡単にまとめると、第三者行為災害では示談のタイミングと条項の書き方が非常に重要です。早期示談や条項の不備は、労災給付の調整ミスや後々のトラブルに直結するため、慎重に進める必要があります。
8.労災示談で失敗しやすいポイント
労災示談は、一度合意してしまうと後から修正が難しくなる場合があります。特に初心者が陥りやすい失敗ポイントを整理しておくことで、トラブルを避けることができます。
治療終了前に示談してしまう
治療中の示談は、怪我の回復状況や後遺症の有無が不確定な段階で合意してしまうことを意味します。
例:骨折が完全に治っていない段階で示談してしまう → 後から後遺症が残っても追加請求が難しい
ポイント:症状固定後に示談交渉を行うことで、後遺障害や逸失利益を正確に評価できます。
相手方の提示額をそのまま受け入れる
会社や第三者から提示された示談金額を十分な検討なしに受け入れると、必要な損害補償を取りこぼすリスクがあります。
例:通院慰謝料や逸失利益の計算が不十分なまま示談 → 後で後悔
対策:損害項目ごとに金額を整理し、労災給付との重複や不足を確認する
示談書の意味を理解しないまま署名する
示談書は法律文書であり、署名・押印すると合意内容が法的に拘束力を持ちます。
曖昧な条項や「今後請求しない」といった権利放棄条項を理解せずに署名すると、追加請求や権利行使ができなくなることがあります。
ポイント:署名前に条項の意味を確認し、必要であれば専門家に相談
後遺障害等級認定を受けずに示談する
後遺症が残る場合、後遺障害等級認定を受けていない段階で示談すると、逸失利益や後遺障害慰謝料の算定が不十分になる可能性があります。
例:手首の障害が残る可能性があるが認定前に示談 → 後日正式に認定された等級分の補償を受けられない
対策:後遺障害が疑われる場合は認定後に示談交渉を行う
失敗ポイント | 具体例 | 回避策 |
治療終了前に示談 | 骨折が完全回復前に合意 | 症状固定後に交渉 |
提示額を鵜呑み | 慰謝料や逸失利益不足 | 項目ごとに金額整理 |
示談書の意味不明 | 権利放棄条項を理解せず署名 | 条項の意味を確認・専門家相談 |
後遺障害等級未認定 | 等級認定前に示談 | 認定後に示談交渉 |
まとめると、**労災示談での失敗は「タイミング」と「条項の理解不足」**が原因となることがほとんどです。治療終了・症状固定後、損害項目の整理、条項内容の確認を行うことが、トラブル回避の基本です。
9.労災示談を成功させるための実務的ポイント
労災示談は、金額や条項の取り決めを誤ると後々トラブルにつながります。成功させるには、タイミング・数字・条項の理解を意識した実務的な対応が重要です。
後遺症がある場合は等級認定を優先する
後遺症が残る可能性がある場合、まず後遺障害等級認定を受けることが最優先です。
等級認定によって、後遺障害慰謝料や逸失利益の金額が具体的に決まります。
例:手首の神経損傷で日常生活に支障がある場合
等級認定なしで示談 → 後日、逸失利益や慰謝料の追加請求が困難
等級認定後に示談 → 後遺障害に応じた正確な金額を請求可能
過失相殺・素因減額を冷静に検討する
労災示談では、被災者側にも過失がある場合や、既往症の影響がある場合に、損害額が減額されることがあります。
「過失相殺」や「素因減額」と呼ばれる考え方です。
例:
工場内で転倒 → 怪我の原因の一部が本人の注意不足の場合
示談金額を算定する際に、過失割合を差し引くことで適正な金額を決定
ポイント:冷静に計算し、不当な減額要求には応じないことが大切です。
証拠と数字をもとに交渉する
示談交渉では、感情や口頭の話だけで進めるとトラブルになります。
医療記録・通院日数・休業日数・給与明細・後遺障害等級通知など、証拠をもとに金額を算定します。
実務ポイント:
通院記録 → 入通院慰謝料の根拠
給与明細 → 休業損害・逸失利益の計算根拠
医師の診断書 → 後遺障害慰謝料の補強
数字と証拠に基づく交渉は、相手方とのトラブルを避け、示談成立をスムーズにします。
「示談しない」という選択肢も残す
示談は便利ですが、必ず成立させる必要はありません。
早期に示談せず、必要に応じて裁判や労災請求を優先する選択も有効です。
例:
示談金額が不十分で、後遺障害等級認定前
第三者が絡む複雑なケース → 裁判で適正額を請求する方が安全
ポイント:「示談しない」選択肢を意識して、交渉で焦らないことが重要です。
ポイント | 実務上の具体例 | 成功のコツ |
等級認定優先 | 手首神経損傷→等級認定後に示談 | 後遺障害に応じた金額で交渉 |
過失相殺・素因減額 | 転倒事故で本人注意不足 | 冷静に計算・不当減額には応じない |
証拠・数字重視 | 通院日数・給与明細・診断書 | 客観的根拠を示して交渉 |
示談しない選択 | 等級認定前・複雑な第三者事故 | 焦らず裁判や労災請求も検討 |
まとめると、労災示談を成功させるには、タイミング(症状固定・等級認定)、数字と証拠に基づく交渉、条項や選択肢の理解がポイントです。これらを押さえて進めることで、示談トラブルを防ぎつつ、適正な補償を受けることが可能です。
10.行政書士・弁護士に相談すべき判断基準
労災示談では、どこまで自分で対応し、どの部分で専門家に相談するかを判断することがトラブル回避の鍵です。行政書士と弁護士の役割の違いを理解しておくと、安全かつスムーズに示談を進められます。
行政書士がサポートできる領域
行政書士は、書類作成や条項チェックなど、示談交渉の準備段階をサポートできます。法律相談や裁判代理はできませんが、実務上の整理には非常に有効です。
示談書作成
示談書の文案作成、条項の整理、金額の表記などを行います。
例:労災給付と示談金の関係、権利放棄・留保条項の整理など
条項チェック
曖昧な条項や誤解を生む表現を修正
「今後請求しない」といった清算条項が適正か確認
書面リスク整理
労災給付との重複や二重取り、後日請求の可否を明確化
示談書の安全性を事前にチェック
まとめると、行政書士は「書類の作成とリスク整理」を中心にサポートする専門家です。
弁護士相談が必要になるケース
一方で、以下のようなケースでは弁護士に相談することが望ましいです。
交渉が対立している場合
会社や第三者との交渉が平行線で進まない場合
相手方が不当な減額要求や、権利放棄を強く求めてくる場合
弁護士は代理交渉や法的手段を使った解決が可能です
高額・後遺障害・死亡事案
後遺障害等級が重い場合、逸失利益や慰謝料が高額になるケース
死亡事故など、損害額や関係者が多いケース
弁護士に相談することで、適正な金額算定や交渉力を確保でき、後々のトラブルを防止
行政書士・弁護士相談の判断表
判断項目 | 行政書士 | 弁護士 |
示談書作成 | ○ | ○(代理作成も可) |
条項チェック | ○ | ○ |
書面リスク整理 | ○ | ○ |
交渉代理 | × | ○ |
高額・複雑事案 | △(サポート可) | ○(交渉・訴訟対応) |
後遺障害・死亡事故 | △ | ○ |
まとめると、行政書士は書面の整理と条項チェック、弁護士は交渉や訴訟対応が中心です。労災示談では、症状や金額、交渉状況に応じて専門家を使い分けることが、安全でスムーズな示談成立につながります。
11.労災と示談書に関するよくある質問(Q&A)
労災と示談書に関しては、初めての方にとって疑問や不安が多い分野です。ここでは、現場でよくある質問を整理し、わかりやすく解説します。
労災で示談金は本当にもらえる?
労災自体は国からの給付制度で、会社や第三者から支払われるものではありません。
ただし、第三者の過失が関係する場合や会社の責任がある場合は、示談金として損害賠償を受けられることがあります。
例:
通勤中に他社トラックに追突されて怪我 → 加害者に損害賠償を請求 → 示談で慰謝料や逸失利益を受け取る
職場で設備の不備によりケガ → 会社側と示談で治療費や休業補償を補完
ポイントは、労災給付と示談金は別の仕組みであることを理解することです。
示談しないとどうなる?
示談を行わない場合でも、労災給付は受けられます。
ただし、第三者の損害賠償は個別に請求する必要があります。
示談をしないことで、交渉が長引くリスクや裁判に発展する可能性はありますが、焦って低額で示談する必要はありません。
示談後でも労災給付は受けられる?
はい、原則として示談後でも労災給付を受けることが可能です。
ただし、示談書に「労災給付分も含めて権利を放棄する」などと書かれている場合は注意が必要です。
ポイント:示談書を作成する際は、労災給付は別扱いであることを明記しておくことが重要です。
示談書を書いたら撤回できない?
原則として、示談書は署名・押印した時点で法的効力を持ちます。
内容によっては撤回や無効を主張できる場合もありますが、非常に限られます。
例:
契約当時、十分な説明がなく誤解があった場合
強制や詐欺などがあった場合
ポイント:署名前に条項を理解し、必要であれば専門家にチェックしてもらうことが重要です。
質問 | 回答のポイント |
労災で示談金はもらえる? | 第三者過失や会社責任がある場合に可。労災給付とは別。 |
示談しないと? | 労災給付は受けられる。第三者損害賠償は個別請求。焦らず対応。 |
示談後でも給付は? | 原則可。示談書条項に注意。給付分を放棄していないか確認。 |
示談書の撤回は? | 原則不可。契約無効は限定的。署名前に条項確認が必須。 |
まとめると、労災給付と示談金は仕組みが異なるため、それぞれの権利を整理することが重要です。示談書作成や交渉の際には、条項の意味を理解し、必要に応じて専門家に相談することで安全に進めることができます。
12.まとめ|労災と示談書は「使い方次第」で両立する
労災と示談書の関係は、**「相反するもの」ではなく、正しく使えば両立できる」**というのが結論です。ポイントを整理しておきましょう。
労災保険と示談は別制度
労災保険は国が運営する給付制度で、医療費・休業補償・後遺障害補償などをカバーします。
示談は、会社や第三者との損害賠償に関する個別合意です。
この2つは制度として独立しており、労災給付を受けながら示談で不足分を補うことが可能です。
例:通勤中の交通事故で労災給付を受けつつ、加害者との示談で慰謝料や逸失利益を補完することができます。
危険なのは「内容を理解しない示談書」
示談書は一度署名すると法的拘束力を持つため、内容を理解せずに合意するとトラブルの元になります。
特に注意すべきは:
労災給付分も含めて放棄してしまう条項
後遺障害等級認定前に示談してしまうケース
権利放棄や清算条項の意味を理解せず署名するケース
対策:署名前に条項を確認し、必要に応じて行政書士や弁護士にチェックしてもらうことが安全です。
書く前に立ち止まることが最大のリスク回避
示談書の作成や交渉は、焦らず立ち止まって状況を整理することが何より大切です。
確認すべきポイント:
治療や症状固定は完了しているか
後遺障害等級認定は済んでいるか
損害項目や労災給付との関係は整理できているか
示談書の条項の意味を理解しているか
例え話:示談書は「金銭の受け取りと将来の権利を一度に決める設計図」のようなものです。設計図を確認せずに建物を建て始めるようなものは、後で欠陥やトラブルが出るリスクが高くなります。
まとめると、労災と示談は「制度の違いを理解し、内容を整理してから交渉する」ことで安全に両立できます。示談書は便利なツールですが、内容を理解せず書くことが最大のリスクであることを忘れないようにしましょう。
~事例・比較分析紹介~
13.実際に見た「労災示談書トラブル事例」分類調査
労災示談は、条項やタイミングを誤ると後日追加請求やトラブルにつながることがあります。ここでは、過去に相談・依頼で扱った労災示談案件を、**「どこで失敗したか」**の観点で分類・整理しました。
1. 清算条項に関するトラブル
示談書に「今後一切請求しない」「清算済みとする」などの条項を入れたことで、後日、労災給付や損害賠償を請求できなくなったケースがあります。
具体例:
入通院が長引き、慰謝料が不足していたにも関わらず「今回の示談で権利放棄」と明記 → 後で追加請求できず
ポイント:
清算条項は便利ですが、労災給付分を除外する明記や、後日請求の留保をつけることが安全です。
2. 示談時期に関する失敗
症状固定前や治療途中で示談を成立させてしまったケースは、後々トラブルになる典型例です。
具体例:
事故から2週間後に示談 → その後、後遺障害が残り、逸失利益請求ができなくなった
交渉時に数字だけを見て妥協 → 本来受けられる金額より大幅に少ない示談金で決定
ポイント:
示談は治療終了・症状固定・後遺障害等級認定後に行うのが基本です。
早すぎる示談は「リスクの先送り」になりやすいです。
3. 後遺障害未確定によるトラブル
後遺障害等級が未確定のまま示談すると、将来の慰謝料や逸失利益の追加請求が難しくなります。
具体例:
手足の麻痺が残る可能性あり → 示談成立 → 等級確定後の追加請求を断られる
医師の診断書や労災通知を確認せずに合意 → 本来の損害額と差が大きく後悔
ポイント:
後遺障害等級認定前の示談は原則避ける
等級確定後に示談金額を算定することで、適正な金額で交渉可能
4. その他よくある分類
失敗分類 | 内容 | 典型例 |
権利放棄条項 | 清算条項・権利放棄を理解せず署名 | 労災給付分まで請求不可に |
示談時期 | 症状固定前・治療途中で示談 | 後遺障害や休業損害が未確定 |
後遺障害未確定 | 等級確定前に合意 | 逸失利益・慰謝料の追加請求不可 |
金額認識不足 | 相手方提示額を鵜呑みにする | 本来受け取れる損害額より低額で決定 |
複雑事故対応不足 | 第三者が関与する事故の示談 | 労災給付との二重取りや交渉ミス |
まとめると、労災示談書でのトラブルは「タイミング・条項・金額の理解不足」に起因することが多いです。過去事例を分類することで、自分が示談書を作る際にどのポイントで注意すべきかが明確になります。
14.労災示談書に書かれていた「危険条項」実例調査
労災示談書には、一見当たり前に見える文言でも、後で労災給付や損害賠償の追加請求に影響する危険な条項があります。ここでは、実際に過去相談・依頼で扱った示談書(匿名・要約)から、問題になりやすい条項の実例を整理・分析しました。
1. 清算条項・権利放棄条項
文言例:「本示談により、今後一切の請求権を放棄する」
問題点:
労災給付分や将来の逸失利益も含めて放棄してしまう可能性がある
後日、後遺障害等級が確定した場合でも追加請求が困難
具体事例:
入通院中に示談書を作成 → 数か月後に後遺障害が残ることが判明 → 権利放棄条項により追加請求できず
対策:
清算条項には**「労災給付分は除く」や「後日請求権は留保」**と明記する
曖昧な権利放棄条項は避ける
2. 早期示談を促す条項
文言例:「治療が完了する前に本示談書を締結することを条件とする」
問題点:
症状固定前や後遺障害等級認定前に示談を結ばせる
後日、逸失利益や慰謝料の追加請求ができないリスク
具体事例:
事故後2週間で示談 → その後後遺障害等級が認定されるも、示談書締結済みで請求できず
対策:
示談書には**「症状固定・後遺障害等級確定後に最終的な合意」**と記載
早期示談を強制する条項は避ける
3. 労災給付との関係を曖昧にする条項
文言例:「本示談により、労災給付も含めて清算する」
問題点:
労災給付は国から支給される権利であり、会社や第三者との示談で放棄できない
曖昧な記載により、労災給付との重複や二重取りの誤解が生じる
具体事例:
示談書に「一切請求しない」とのみ記載 → 給付と損害賠償の範囲が不明確 → 後日、会社が支払いを拒否
対策:
示談書で労災給付分は別扱いであることを明記
給付と示談金の関係を条項で整理
4. その他、注意が必要な条項
危険条項 | 問題点 | 実例 |
清算条項 | 権利放棄の範囲が広すぎる | 労災給付や将来の逸失利益まで請求不可 |
早期示談条項 | 症状固定前に示談を強制 | 後遺障害認定後の追加請求不可 |
労災給付を含む条項 | 給付と示談金の関係が不明確 | 会社が支払いを拒否するトラブル |
曖昧な損害範囲 | 何が含まれるか不明確 | 入通院慰謝料や休業補償の不足 |
まとめると、危険条項は「内容の曖昧さ・権利放棄・早期示談」の3つに集中しています。示談書を作成する前に、条項の意味を理解し、必要であれば行政書士や弁護士にチェックしてもらうことが、労災示談トラブルを防ぐ最も重要な対策です。
15.労災示談が“成立しても揉めたケース”の時系列調査
示談書を作成しても、後日トラブルに発展するケースは意外と多くあります。ここでは、過去に相談・依頼で扱った案件を時系列で整理し、どのタイミングで問題が生じやすいかを解説します。
1. 示談前の状況
特徴:治療途中・後遺障害等級未確定・損害額未確定の段階
よくある問題:
会社や第三者が早期示談を促す
入通院慰謝料や休業補償の範囲が未確定
後遺障害が残る可能性があるにも関わらず、合意に焦る
具体例:
事故発生後1か月で会社から「示談書に署名してほしい」と連絡
患者側は症状が落ち着いていなかったため、将来の逸失利益や後遺障害を正確に把握できない
ポイント:
示談前の段階で十分な情報整理ができていないと、将来の請求権を誤って放棄するリスクがあります。
2. 示談時の問題
特徴:示談書を署名するタイミング
よくある問題:
清算条項や権利放棄条項の意味を理解していない
労災給付と示談金の関係が曖昧
示談金額を鵜呑みにする
具体例:
「今回で一切の請求権を放棄する」と記載された示談書に署名
後遺障害が残る可能性があるにも関わらず、将来請求の留保がない
ポイント:
示談書は署名前に条項の意味を理解し、必要に応じて専門家にチェックしてもらうことが不可欠です。
3. 示談後に生じたトラブル
特徴:示談成立後、労災給付や損害賠償の追加請求で揉める
よくある問題:
後遺障害等級が確定した後に追加請求したくても権利放棄条項に阻まれる
労災給付と示談金の重複・二重取りを巡って会社と争いになる
示談金額が適正でないことに気づく
具体例:
示談後3か月で後遺障害等級が認定される → 本来受け取れる逸失利益の請求を断られる
示談書に「すべて清算済み」と明記されていたため、会社との交渉が泥沼化
ポイント:
示談成立後は条項による権利制限が強制力を持つ
後日請求ができるように、示談書には留保条項や労災給付分の除外明記が重要
4. 時系列まとめ(表形式)
時期 | 状況 | 問題点 | 具体例 |
示談前 | 治療途中・後遺障害未確定 | 将来請求権の放棄リスク | 事故発生1か月で示談を迫られる |
示談時 | 示談書署名 | 条項の意味を理解せず署名 | 清算条項で将来請求不可 |
示談後 | 示談成立後 | 労災給付や逸失利益で争い | 後遺障害認定後に追加請求できず |
まとめると、「示談前・示談時・示談後」のいずれの段階でも注意不足はトラブルに直結します。示談書を作成する際は、時系列で自分の状況と条項の影響を整理することが、トラブル防止の基本です。
16.労災保険給付と示談金が衝突した実務ケース調査
労災示談では、労災保険給付と示談金の関係が不明確なまま進めると、二重取りや給付制限などトラブルにつながることがあります。ここでは、過去の実務案件をもとに、衝突が起きた具体的なケースと要因を整理しました。
1. 二重取りトラブルのケース
状況:示談金に休業損害や療養補償相当分を含めた条項があり、労災給付と重複
問題:
被災者が示談金と労災給付の両方を受け取ろうとした
会社が重複分の返還を要求
具体例:
示談書に「入通院費・休業損害を含む」と記載 → 労災保険給付の休業補償と重複 → 会社から調整を求められる
ポイント:
示談書作成時に労災給付と示談金の範囲を明確に切り分ける必要があります。
2. 調整ミスによるトラブル
状況:労災給付の金額や範囲を正確に把握せず示談金を算定
問題:
示談金の計算に労災給付分を含めすぎたり、除外し忘れたりする
結果として追加請求や返還請求が必要になる
具体例:
休業損害を労災給付分を含めず計算 → 示談成立後に会社が「過払い」と主張 → 修正交渉が発生
ポイント:
労災給付金の金額・種類(休業補償・障害補償など)を正確に確認
示談金はあくまで「給付でカバーされない損害」を対象に算定
3. 給付制限につながったケース
状況:示談書に「全て清算済み」と記載したことによる労災給付の制限
問題:
権利放棄条項により、労災保険の一部給付が制限されるケースが発生
具体例:
示談書に「入通院費・慰謝料・休業損害を含めて清算」と明記
結果として労災給付の休業補償や傷病手当が一部受け取れず
ポイント:
労災給付は国から支給される公的権利であり、示談書で放棄できない部分とできる部分を明確化する必要があります。
4. ケース整理(表形式)
事例分類 | 衝突内容 | 原因 | 実例 |
二重取り | 労災給付と示談金の重複 | 示談範囲の曖昧さ | 入通院費・休業損害を両方で請求 |
調整ミス | 過払い・不足のトラブル | 給付金額や種類の誤認 | 休業補償の重複計算 |
給付制限 | 労災給付が減額・受け取れない | 清算条項の誤記載 | 「全て清算済み」で一部給付制限 |
まとめると、労災給付と示談金が衝突する主な要因は、**「範囲の曖昧さ」「金額の誤認」「権利放棄条項」**に集中しています。示談書作成時は、労災給付と示談金の切り分けを明確化し、条項の影響を確認することがトラブル回避の基本です。
17.「示談してよかった労災」と「示談すべきでなかった労災」の比較調査
労災示談はケースによって合理的な場合と避けるべき場合があります。過去の実務案件をもとに、条件別に比較することで、示談の判断基準を整理します。
1. 示談してよかったケース
条件
後遺障害が残らなかった
治療終了後で症状固定済み
会社が示談金を迅速に提示、トラブル防止の姿勢あり
特徴
示談金が労災給付に加えて合理的な慰謝料・損害補償を含む
交渉が短期間で終了し、心理的・金銭的負担が軽減
後日追加請求の可能性が低い
具体例
事故発生 → 治療完了 → 症状固定 → 会社が「慰謝料・入通院費」を提示
示談書作成後、労災給付を差し引いた実質補償額が十分
双方納得のうえで成立、後トラブルなし
ポイント:
示談は「損害範囲が確定している」「後遺障害がない」場合に合理的です。
2. 示談すべきでなかったケース
条件
後遺障害が残る可能性あり
治療途中で症状が不安定
会社が示談金を過小提示、条項も不十分
特徴
示談書署名後に後遺障害が残った場合、逸失利益や慰謝料を請求できないリスク
清算条項の曖昧さにより、労災給付との調整が困難
示談金が低額で交渉余地を失う
具体例
示談前に会社が「早期解決」の名目で示談を促す
後日、後遺障害等級認定 → 示談書に権利放棄条項あり → 追加請求不可
結果として、被害者側が損害の大部分を取り逃がす
ポイント:
示談は「損害が未確定」「後遺障害の可能性がある」「会社対応が不透明」な場合は避けるべきです。
3. 条件別比較(表形式)
条件 | 示談してよかった | 示談すべきでなかった |
後遺障害 | なし | あり(未確定含む) |
治療状況 | 症状固定・治療完了 | 治療途中・症状不安定 |
会社対応 | 適切・迅速 | 過小提示・条項不十分 |
示談結果 | 双方納得・後トラブルなし | 権利放棄で追加請求不可・トラブル化 |
金銭面 | 労災給付+合理的補償 | 示談金過少で損害取り逃がし |
4. 実務上のポイント
示談が合理的かどうかは後遺障害・治療状況・会社対応の三要素で判断
早期示談を迫られても、損害が確定していなければ署名は慎重に
示談書作成時は、労災給付との切り分けや権利放棄条項の確認が重要
この比較調査により、**「示談が適切かどうかはケースバイケース」**であり、判断には必ず情報整理と条項確認が必要であることがわかります。
契約書作成は弁護士・行政書士どっちに依頼すればいい?
契約書を作成する際、「弁護士と行政書士、どちらに依頼すればよいのか?」と悩む方は多いでしょう。どちらの専門家も契約書作成の業務を行いますが、その役割や対応範囲には違いがあります。本記事では、専門家に依頼するメリットや具体例を交えながら、どちらを選ぶべきかを解説します。
専門家に依頼するメリット
1. 契約のリスクを防げる
契約書には、当事者同士の合意内容が明確に記載されます。しかし、素人が作成すると、法律的に不備があったり、トラブルが発生したときに対応しきれなかったりするリスクがあります。専門家に依頼することで、契約の抜け漏れを防ぎ、将来的なトラブルを未然に防ぐことができます。
具体例
たとえば、フリーランスが企業と業務委託契約を結ぶ際、報酬の支払い期限や業務範囲の記載が不明確だと、後々「こんなはずじゃなかった」と揉める原因になります。専門家に依頼すれば、報酬の支払い遅延時のペナルティや、契約解除の条件など、重要な事項を適切に盛り込んだ契約書を作成できます。
2. 自社や個人に適した契約内容にできる
契約書の雛形(テンプレート)はインターネット上にもありますが、それをそのまま使うと、自社のビジネスモデルに合わなかったり、不要な条項が含まれていたりすることがあります。専門家は依頼者の事情をヒアリングし、最適な契約書を作成してくれます。
具体例
例えば、飲食店のオーナーがテナント契約を結ぶ際、一般的な賃貸借契約書だけでは、営業時間の制限や原状回復義務について十分にカバーされていないことがあります。専門家に相談すれば、こうした細かい点も考慮した契約書を作成でき、トラブルを未然に防げます。
行政書士と弁護士の違いは?
契約書作成を依頼できる専門家には、行政書士と弁護士の2種類があります。それぞれの違いを理解することで、自分に適した専門家を選びやすくなります。
行政書士:契約書作成の専門家
行政書士は、主に「契約書の作成」を専門とする国家資格者です。法律に基づいた正確な契約書を作成し、行政手続きや許認可申請にも対応できます。
具体例
・事業者間の業務委託契約書の作成 ・飲食店や美容サロンなどのテナント契約書の作成 ・売買契約書や合意書の作成
ただし、行政書士は「紛争が発生した場合の代理交渉」や「法廷での弁護」は行えません。トラブルが発生した際の対応まではできないため、契約内容に不安がある場合は、弁護士に相談する必要があります。
弁護士:法律トラブルに対応できる専門家
弁護士は、契約書の作成だけでなく、契約に関する紛争対応や訴訟の代理もできる法律の専門家です。トラブルが発生した際のリスクを考慮し、より強固な契約書を作成できます。
具体例
・企業間の買収、合併契約書の作成と交渉 ・高額な不動産売買契約の作成とリーガルチェック ・契約違反が起きた際の法的対応
弁護士に依頼すると、契約書の作成だけでなく、万が一の紛争時にも対応してもらえるというメリットがあります。ただし、弁護士の費用は行政書士より高額になることが一般的です。
専門家に依頼する際の費用と流れ
費用の相場
依頼する専門家や契約書の種類によって、費用は異なります。一般的な相場は以下のとおりです。
専門家 | 費用の目安 |
行政書士 | 契約書作成3万~10万円、リーガルチェック1万~3万 |
弁護士 | 契約書作成10万~30万円、紛争対応10万円以上 |
行政書士は比較的リーズナブルな価格で契約書を作成できますが、紛争対応はできません。一方、弁護士は費用が高めですが、契約のリスク管理を徹底できるというメリットがあります。
依頼の流れ
専門家を選ぶ:契約内容や将来的なリスクを考慮し、行政書士か弁護士のどちらに依頼するか決める。
相談・ヒアリング:依頼者の状況を詳しく聞き、契約書の目的や必要な条項を確認する。
契約書の作成・修正:専門家が契約書を作成し、依頼者と確認しながら修正を加える。
最終確認・納品:完成した契約書を納品し、必要に応じて公証役場での認証を行う。
具体例
たとえば、フリーランスが業務委託契約を結ぶ際、
行政書士に相談し、業務範囲や報酬条件をヒアリング。
契約書のドラフトを作成し、内容を確認。
必要に応じて修正し、最終版を納品。
依頼者が契約書に署名し、取引先と締結。
このような流れで進めるため、契約の重要性を理解しながら進めることができます。
まとめ
契約書作成を専門家に依頼することで、契約のリスクを防ぎ、スムーズな取引を実現できます。
行政書士は契約書の作成が得意で、費用を抑えられるが、紛争対応はできない。
弁護士は契約書作成に加えてトラブル対応も可能だが、費用は高め。
契約内容や想定リスクに応じて、適切な専門家を選びましょう。
また、おてがる契約書では、どんな契約書も一律2万円で作成しています。
また、内容証明対応も対応しております。
作成依頼はLINEで簡単に行うことができるため、誰でもてがるに利用することが可能です。弁護士・司法書士が作成する契約書は費用が高額です。おてがる契約書は行政書士が運用しておりオンライン・電話・メールを活用して、簡単・格安でスピードが速く最短で納品が可能です。







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