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示談書とは何かを知らないと損をする?よくあるトラブル事例付き解説

  • 執筆者の写真: 代表行政書士 堤
    代表行政書士 堤
  • 4 日前
  • 読了時間: 58分

🌺こんにちは!おてがる契約書の代表行政書士 堤です。

本日は示談書についての重要なポイントを解説したコラム記事をお届けします。


示談書は「とりあえず形にしておけば安心」と思われがちですが、実はその認識こそがトラブルの原因になることがあります。内容をよく理解しないまま示談書に署名した結果、後から追加請求を受けたり、約束が守られなかったりする相談は後を絶ちません。このコラムでは、示談書とは何かという基本から、実際によくあるトラブル事例までを交えながら、示談書で損をしないための本質的なポイントをわかりやすく解説します。



  本記事のまとめ:

重要事項

概要

内容次第で自分を守る書面にも、将来の火種にもなります。

清算条項や支払期限、接触禁止など、条文不足がそのままトラブルに直結します。

感情や勢いで署名せず、不安があれば専門家のチェックを受けることで、取り返しのつかないリスクを避けることができます。

🌻「相手と話はついているから大丈夫」「ネットのテンプレートを使えば問題ない」


もし少しでもそう思っているなら、ぜひ最後まで読んでみてください。実務の現場では、示談書をきちんと理解していなかったことで、数十万円、時にはそれ以上の損失につながったケースも珍しくありません。本記事は、これから示談書を作る人だけでなく、すでに示談を経験したことがある人にも役立つ内容です。後悔する前に、ぜひ一度確認してみてください。


示談書の作成。行政書士が対応。

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▼目次



~事例・比較分析紹介~



~番外編~




  1.示談書とは何か?知らないと損をする理由


示談書とは何か(法律上の位置づけ)

示談書とは、当事者同士のトラブルについて、裁判をせずに話し合いで解決した内容を文章にまとめた書面です。法律上、「示談書」という名前の決まった定義が条文にあるわけではありませんが、実務上は和解契約書の一種として扱われます。


たとえば、

  • 慰謝料をいくら支払うのか

  • いつまでに、どの方法で支払うのか

  • これ以上請求しない(清算条項)

  • 今後一切連絡しない

といった内容を整理し、双方が合意した証拠として残すものが示談書です。


重要なのは、示談書は「気持ちの整理のためのメモ」ではなく、法的効力を持ちうる契約書だという点です。きちんと作成されていれば、後から「そんな約束はしていない」と言われた場合でも、証拠として主張することができます。



「示談」と「示談書」の違い

初心者の方が混同しやすいのが、「示談」と「示談書」の違いです。この2つは似ているようで、意味合いが異なります。

用語

意味

ポイント

示談

当事者同士が話し合って解決すること(行為・状態)

口頭でも成立する

示談書

示談の内容を文章にした書面

証拠として残る


たとえるなら、示談=口頭での約束示談書=その約束を契約書として書面化したものというイメージです。


法律上、示談自体は口頭でも成立します。しかし、後から内容を証明できないという大きな問題があります。そのため、実務では「示談=示談書まで作って初めて安全」と考えられています。



口約束・LINE合意では不十分な理由

「LINEで『これで終わりにする』ってやり取りしたから大丈夫ですよね?」この相談は、非常によくあります。


結論から言うと、口約束やLINEだけでは不十分なケースが多いです。


なぜ口約束は危険なのか

口約束は、後から内容を証明するのが非常に困難です。裁判になった場合、

  • いつ

  • 誰が

  • どんな条件で

合意したのかを、客観的な証拠で示す必要があります。

「言った」「言ってない」の水掛け論になると、証拠がない側が不利になります。


LINEやメール合意の限界

LINEやメールは、一定の証拠価値はありますが、次のような弱点があります。

  • 条件が曖昧(「分かった」「了解」だけ)

  • 清算条項が入っていない

  • スクリーンショットの真正性を争われる可能性

  • 相手が「そのつもりではなかった」と主張できてしまう


特に多いのが、「支払いの話だけして、今後一切請求しない点を書いていない」というケースです。

この場合、相手が後から「別の損害がある」と追加請求してくる余地が残ってしまいます。



示談書を軽視したことで生じる典型的な不利益

示談書を作らなかった、あるいは内容が不十分だったことで、実際によく起こるトラブルがあります。


後から追加請求をされる

「これで終わりだと思っていたのに、また請求が来た」というケースです。示談書に**清算条項(本件に関し、今後一切請求しない)**がないと、相手は追加請求を主張できます。


支払いがされない・逃げられる

口約束だけで示談した場合、相手が支払いをしなくても、強く責任追及できないことがあります。

示談書があれば、

  • 支払期限

  • 遅延時の対応

  • 分割か一括か

を明確にでき、交渉や法的手続きでも有利になります。


「そんな約束はしていない」と否定される

時間が経つほど、相手の態度が変わることは珍しくありません。示談書がなければ、相手に約束を否定されても反論が難しくなります。


感情的対立が再燃する

示談書を作らずに曖昧なまま終わらせると、後日トラブルが蒸し返され、精神的な負担が長期化します。


書面にして「ここまでで終わり」と線を引くこと自体が、当事者双方にとって重要な意味を持つのです。


示談書は、「作らなくても何とかなる書類」ではありません。作らないことで、後から大きな不利益を被る可能性がある書類です。



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  2.示談書の法的効力と限界


示談書は契約書として効力を持つ

示談書は、法律上は**「契約書」として扱われます。具体的には、民法上の和解契約**にあたり、当事者双方の合意が成立していれば、原則として法的効力が認められます。


ここで重要なのは、示談書に特別な様式や名称は求められていない点です。「示談書」「和解書」「合意書」など名称が何であっても、

  • 当事者が特定されている

  • 合意内容が明確である

  • 双方が合意していることが分かる

この条件を満たしていれば、契約として成立します。


たとえば、「慰謝料として50万円を支払う」「支払いが完了したらこれ以上請求しない」といった内容を文章にし、署名や押印があれば、法的には十分な契約と評価される可能性が高くなります。



当事者間における拘束力

示談書の効力が最も強く発揮されるのは、示談書を交わした当事者同士の関係です。


約束した内容は原則として守らなければならない

示談書に署名・押印した以上、「やっぱり納得できない」「気が変わった」といった理由で、一方的に内容を無視することはできません。


たとえば、

  • 支払うと約束した慰謝料を払わない

  • 「これ以上請求しない」と書いたのに再請求する

こうした行為は、契約違反として問題になります。


清算条項が持つ意味

多くの示談書には、次のような条文が入ります。

「本件に関し、当事者間には本示談書に定めるほか、何らの債権債務が存在しないことを相互に確認する」


これはいわゆる清算条項で、「これで完全に終わり」という意味を持ちます。この条項があることで、後からの蒸し返しを防ぐ効果が高まります。



第三者(裁判・警察・保険会社)との関係

示談書は強力な書面ですが、万能ではありません。特に注意が必要なのが、第三者との関係です。


裁判との関係

示談書がある場合、裁判所はその内容を重要な証拠として扱います。ただし、示談書があるからといって、必ず裁判でその内容がそのまま認められるとは限りません。

  • 内容が不明確

  • 一方に著しく不利

  • 作成経緯に問題がある

このような場合、裁判所が示談書の効力を制限的に判断することもあります。


警察との関係

刑事事件が絡む場合、「示談が成立しているか」は処分に影響することがあります。ただし、示談書があるからといって必ず事件にならないわけではありません


犯罪の種類や悪質性によっては、被害者と示談していても、捜査や処罰が進むことがあります。


保険会社との関係

交通事故などでは、示談書の内容が保険会社の支払い判断に影響します。しかし、保険会社が示談書の内容すべてに拘束されるわけではありません


特に、保険会社を介さずに当事者だけで示談してしまうと、

  • 保険金が支払われない

  • 想定より低額で確定してしまう

といった不利益が生じることがあります。



示談書があっても強制執行できないケース

初心者の方が誤解しやすい点として、「示談書があれば、相手が払わなくてもすぐ差し押さえできる」という考えがあります。

これは正確ではありません。


強制執行できる書面とできない書面

示談書はあくまで私文書です。そのため、原則としてそのままでは強制執行できません

書面の種類

強制執行できるか

通常の示談書

原則できない

公正証書(強制執行認諾文言あり)

できる

確定判決・和解調書

できる


通常の示談書の場合、相手が支払わなければ、訴訟を起こして判決を取る必要があります。

そのため、金銭の支払いを確実にしたい場合は、示談書を公正証書にしておくことが非常に重要になります。



示談書が無効・取消しとなる場合

示談書は強い効力を持ちますが、一定の場合には無効または取消しとなることがあります。


内容が法律に反している場合

たとえば、

  • 犯罪行為を隠すことを条件にする

  • 明らかに公序良俗に反する内容

このような示談書は、法律上無効とされます。


錯誤(勘違い)・詐欺・強迫があった場合

  • 重要な事実を知らされていなかった

  • 嘘をつかれて署名した

  • 脅されて署名させられた

このような場合、示談書は取消しの対象になります。


たとえるなら、「正しい判断ができない状態でサインさせられた契約」は守られない、という考え方です。


著しく不公平な内容の場合

一方だけに極端に不利な条件が押し付けられている場合、裁判所がその効力を制限したり、無効と判断することもあります。

特に、

  • 被害の実態とかけ離れた低額な示談金

  • 内容を十分理解しないまま署名したケース

では、後から争いになることが少なくありません。


示談書は、正しく作れば強い味方になりますが、内容や作り方を誤ると、「あるのに役に立たない書面」になってしまいます。



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  3.示談書と混同しやすい書類との違い


示談書と公正証書の違い

示談書とよく比較される書類に公正証書があります。この2つの大きな違いは、**「強制力の有無」**です。


示談書は当事者同士で作成する私文書であり、契約としての効力はありますが、相手が約束を守らなかった場合、すぐに差し押さえなどの強制執行はできません


一方、公正証書は公証役場で公証人が作成する公文書です。特に、強制執行認諾文言(支払いをしなければ強制執行を受けても異議がない、という文言)を入れた公正証書であれば、裁判をせずに強制執行が可能になります。

項目

示談書

公正証書

作成者

当事者同士

公証人

書類の性質

私文書

公文書

契約としての効力

あり

あり

強制執行

原則不可

可能(条件あり)

作成の手間・費用

比較的少ない

手間・費用がかかる


たとえるなら、示談書は「約束を書いたメモ付き契約」、公正証書は「国のお墨付きがある契約」というイメージです。


金銭の支払いが絡む場合や、相手の支払い能力に不安がある場合は、示談書だけで済ませるのは危険といえます。



示談書と和解書・合意書・免責証書の違い

実務では、「示談書」という名称以外にも、似た書類が多数登場します。名前が違うだけで混乱しがちですが、法的な本質はかなり共通しています


和解書・合意書との違い

和解書や合意書は、当事者間で一定の条件に合意した内容をまとめた書面です。示談書との違いは、使われる場面にあります。

  • 示談書:トラブル・紛争の解決を目的とする場合が多い

  • 合意書:紛争前後を問わず、条件整理のために使われる

  • 和解書:争いを終結させる意味合いが強い

ただし、法律的な効力はほぼ同じで、中身が重要です。


免責証書との違い

免責証書は、「相手に責任を追及しない」「請求しない」ことを一方的に表明する書面です。ここが示談書との大きな違いです。

書類

双方の合意

双務性

示談書

あり

あり

和解書・合意書

あり

あり

免責証書

原則なし

なし


免責証書は、一方が差し出すだけのケースも多く、相手からの反対給付(お金の支払いなど)が明確でないことがあります。


そのため、トラブル解決の場面では、免責証書だけでは不十分になることが少なくありません。



誓約書・念書では代替できない理由

「誓約書や念書を書いてもらえば大丈夫ですか?」という質問も非常に多いですが、結論としては、示談書の代わりにはなりにくいです。


誓約書・念書の性質

誓約書や念書は、基本的に一方当事者だけが約束する書類です。

  • 誓約書:将来守ることを約束する

  • 念書:事実や意思を確認する

たとえば、「今後一切連絡しません」という誓約書は有効ですが、「慰謝料を払う代わりに請求しない」という双方の取引関係を整理するには不向きです。


なぜトラブルになりやすいのか

誓約書や念書には、次のような弱点があります。

  • 双方の合意関係が不明確

  • 清算条項が入らないことが多い

  • 相手の義務が明示されていない

その結果、「約束は書いてあるけど、肝心のお金や終結条件が曖昧」という状態になりやすいのです。



どの書類を選ぶべきかの判断基準

では、実際にどの書類を選べばよいのでしょうか。判断のポイントは、目的とリスクです。


書類選択の基本的な考え方

目的・状況

適した書類

トラブルを完全に終わらせたい

示談書・和解書

支払いを確実にしたい

公正証書

将来の約束だけ確認したい

誓約書

一方的に責任を免除したい

免責証書


迷ったときの実務的な結論

トラブル解決の場面では、「示談書を作り、必要に応じて公正証書化する」これが最も安全な選択です。


名前に惑わされるよりも、

  • 双方の合意が明確か

  • 終結条件が書かれているか

  • 守られなかった場合の対処が考えられているか

これらが整理されているかどうかが、書類の価値を決めます。


示談書は万能ではありませんが、他の書類との違いを理解して正しく使えば、トラブルを長引かせないための強力な道具になります。



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  4.示談書が使われる主な場面と特徴


交通事故における示談書

示談書が最も多く使われる場面の一つが、交通事故です。物損事故・人身事故を問わず、最終的な解決として示談書が作成されることが一般的です。


交通事故示談書の特徴

交通事故の示談書では、次のような項目が中心になります。

  • 治療費・修理費・慰謝料の金額

  • 支払方法(一括か分割か)

  • 支払期限

  • 今後一切請求しないこと(清算条項)

特に注意が必要なのは、後遺障害や通院期間が確定する前に示談してしまうケースです。一度示談書で「これ以上請求しない」と合意すると、後から症状が悪化しても、追加請求が難しくなる可能性があります。


保険会社との関係

多くの場合、保険会社が示談交渉に関与します。保険会社が提示する示談書案は合理的なことも多いですが、被害者にとって必ずしも最善とは限りません。


「示談=すぐ終わらせることが正解」と思い込まず、内容を理解したうえで署名することが重要です。



不倫・不貞行為に関する示談書

不倫・不貞行為のトラブルでも、示談書は頻繁に使われます。この分野では、感情的な対立を法的に整理する役割が特に大きくなります。


不貞示談書に特有の条項

不倫に関する示談書では、次のような条項がよく盛り込まれます。

  • 慰謝料の金額と支払方法

  • 接触禁止・連絡禁止条項

  • SNSでの発信禁止

  • 違約金条項(再接触時のペナルティ)

金額だけでなく、今後の関係をどう断ち切るかが重要なポイントになります。


曖昧な示談の危険性

「もう連絡しない」「これで終わり」という口約束だけでは、後から再接触やトラブルが再燃するケースが非常に多いです。

示談書で具体的にルールを定めておくことで、心理的にも法的にも線引きが明確になります。



金銭トラブル・損害賠償の示談書

個人間・事業者間を問わず、金銭トラブルや損害賠償請求でも示談書は多用されます。


よくあるケース

  • 貸したお金が返ってこない

  • 商品・サービスによる損害

  • 契約違反による損害賠償

この分野の示談書では、支払いの確実性が最大のテーマになります。


金銭トラブル示談書で重要なポイント

項目

内容

金額

元本・損害金・遅延損害金の区別

支払方法

一括/分割、振込先

期限

明確な日付

不履行時

違約金・期限の利益喪失


特に分割払いの場合、「1回でも遅れたら残額一括請求できる」といった条項を入れるかどうかで、回収の難易度が大きく変わります。



労働問題・名誉毀損などのケース

示談書は、労働問題や名誉毀損といった、形のない損害が問題となる場面でも使われます。


労働問題での示談

  • 未払い残業代

  • ハラスメント問題

  • 退職条件をめぐる紛争

こうしたケースでは、「会社を辞める代わりにいくら支払うのか」「今後お互いに請求しない」といった条件整理が示談書の中心になります。


ただし、労働法は労働者保護が強いため、示談書を書いても無効とされる可能性がある条項が存在します。


名誉毀損・ネットトラブル

名誉毀損では、

  • 投稿の削除

  • 再投稿禁止

  • 謝罪文の掲載

  • 慰謝料

といった内容が示談書に盛り込まれます。


この分野では、「どこまで削除するのか」「どの媒体が対象か」を具体的に書かないと、解釈を巡って再トラブルになりやすい点が特徴です。



刑事事件が絡む場合の注意点

示談書が作成される場面の中でも、刑事事件が絡むケースは特に注意が必要です。


示談=不起訴ではない

よくある誤解として、「示談が成立すれば、必ず不起訴になる」という考えがあります。

実際には、

  • 犯罪の内容

  • 被害の程度

  • 社会的影響

などを総合的に判断して、検察が処分を決めます。示談書は考慮されますが、結果を保証するものではありません


示談書に書いてはいけない内容

刑事事件が絡む場合、

  • 被害届を出さないことを強要する

  • 捜査に協力しないことを約束させる

といった内容は、問題になる可能性があります。


示談書はあくまで民事上の解決を目的とするものであり、刑事手続きに不当に介入する内容は避けるべきです。


示談書は、使われる場面によって重視すべきポイントやリスクが大きく異なります

「とりあえず示談書を作る」ではなく、その場面に合った内容になっているかを確認することが、後悔しない示談への第一歩です。




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  5.示談書に必ず記載すべき基本項目


当事者の特定(氏名・住所)

示談書で最も基本かつ重要なのが、当事者の特定です。誰と誰の間で結ばれた示談なのかが明確でなければ、示談書としての意味を持ちません。


最低限、次の事項は記載します。

  • 氏名(フルネーム)

  • 住所

  • 法人の場合は、法人名・代表者名・所在地

「知っている相手だから大丈夫」「下の名前だけで分かる」こうした省略は、後々のトラブルの元になります。


たとえば、同姓同名がいた場合や、引っ越し後に連絡が取れなくなった場合、示談書があっても相手を特定できないという事態になりかねません。



紛争の内容・発生日時・経緯

次に重要なのが、何についての示談なのかを明確にすることです。

  • いつ起きたトラブルなのか

  • どこで、どのような行為があったのか

  • 何が問題となっているのか

これらを簡潔にまとめます。


ポイントは、詳しすぎず、曖昧すぎずです。

感情的な表現や細かすぎる事実関係を並べる必要はありませんが、「本件トラブル」とだけ書くのは危険です。


たとえるなら、「どのケンカについて仲直りしたのか」を特定するイメージです。これが曖昧だと、「あの件は含まれていない」と主張される余地が残ります。



示談金の金額・支払方法・期限

金銭の支払いがある場合、ここは最重要ポイントです。


必ず具体的に書くべき事項

  • 金額(数字と漢数字を併記することも多い)

  • 支払方法(銀行振込・手渡しなど)

  • 振込先

  • 支払期限(具体的な日付)

「できるだけ早く支払う」「近日中に支払う」といった表現は避け、必ず日付を特定します。


分割払いの場合の注意点

分割払いにする場合は、次の点も重要です。

項目

記載例

支払回数

全○回

毎回の金額

各○円

支払日

毎月○日

遅延時

残額一括請求

支払いが滞った場合を想定しておくことが、示談書の実務的な価値を高めます。



謝罪条項・誓約事項

示談書には、金銭だけでなく、謝罪や今後の行動に関する約束を盛り込むことがあります。


謝罪条項の役割

謝罪条項は、「金銭だけでなく、非を認めて謝罪する」という意味合いを持ちます。

特に、不倫・名誉毀損・ハラスメントなどのケースでは、被害者の精神的な区切りとして重要視されることが多いです。


誓約事項の具体例

  • 今後一切接触しない

  • 同様の行為を繰り返さない

  • 第三者に漏らさない


ただし、抽象的すぎる誓約はトラブルの原因になります。「誠意をもって対応する」といった表現ではなく、具体的な行動レベルまで落とし込むことが大切です。



清算条項の意味と重要性

清算条項は、示談書の中でも最も重要な条文の一つです。


清算条項とは何か

清算条項とは、「本件に関して、これ以上お互いに請求しない」ことを確認する条文です。

これがあることで、示談が完全な終結であることが明確になります。


清算条項がない場合のリスク

清算条項がないと、

  • 後から追加請求される

  • 別の名目で再度請求される

といった可能性が残ります。


示談書は「終わらせるための書類」です。清算条項は、その目的を達成するためのといえます。



接触禁止・口外禁止・違約条項

トラブルの再燃を防ぐために、行動制限やペナルティを定めることも重要です。


接触禁止・口外禁止条項

  • 電話・メール・SNSでの連絡禁止

  • 職場・自宅付近への接近禁止

  • 第三者への口外禁止

これらは、精神的平穏を守るために非常に有効です。


違約条項(違約金)

違約条項とは、約束を破った場合のペナルティを定める条項です。

たとえば、「接触禁止に違反した場合、違約金○万円を支払う」といった内容です。

違約金があることで、約束の実効性が大きく高まります。



署名・押印・作成日

最後に、形式面として欠かせないのが、署名・押印・作成日です。


署名と押印の意味

  • 署名:自分が内容に同意した証拠

  • 押印:本人の意思表示を補強するもの

法律上、必ず押印が必要というわけではありませんが、実務上は押印がある方が証拠として強いとされています。


作成日を記載する理由

作成日があることで、

  • いつの時点の合意か

  • 他の書面との前後関係

を明確にできます。


示談書は、内容と同じくらい「形式」も重要です。

一つ一つは当たり前に見える項目でも、どれか一つ欠けるだけで、「あるのに使えない示談書」になってしまうことがあります。



  6.【トラブル事例】示談書を知らずに損をしたケース


ここでは、実際によくある「示談書をきちんと理解していなかったために損をしたケース」を紹介します。いずれも珍しい話ではなく、誰にでも起こり得る失敗です。「自分だったら大丈夫」と思わず、具体例として読み進めてみてください。



清算条項を入れなかったため追加請求された事例

事例の概要

不倫トラブルに関して、当事者間で慰謝料50万円を支払うことで合意し、簡単な示談書を作成しました。示談書には金額と支払方法は書かれていましたが、「これ以上お互いに請求しない」という清算条項が入っていませんでした。


起きたトラブル

示談金の支払いが完了した数か月後、相手方から「精神的苦痛が想定以上だった」「別の損害が発覚した」として、追加で慰謝料を請求されました。

支払った側は「もう終わった話だ」と主張しましたが、示談書に清算条項がなかったため、「追加請求をしない合意があった」と立証できず、紛争が再燃しました。


教訓

示談書において清算条項は、「終わりを確定させるためのフタ」のような存在です。これがないと、示談は途中経過と解釈されるリスクがあります。



金額は書いたが支払期限がなく未回収となった事例

事例の概要

金銭トラブルに関し、「損害賠償として100万円を支払う」という内容の示談書を作成しました。

ただし、支払期限が一切記載されていませんでした。


起きたトラブル

支払う側は、「いずれ払うつもりだった」「今は資金がない」と支払いを先延ばしにし続けました。

請求する側が催促しても、「期限が決まっていない以上、遅れていない」と主張され、強く責任追及ができませんでした。


教訓

支払期限は、「いつまでにやらなければ違反になるか」を決める重要な要素です。

期限がなければ、いつまでも支払われない示談書になってしまう危険があります。



曖昧な表現で「示談成立」を否定された事例

事例の概要

トラブル解決のために、「本件については話し合いの結果、円満に解決したものとする」という文言を含む書面を作成しました。

しかし、示談金の支払いや具体的な合意内容は、ほとんど書かれていませんでした。


起きたトラブル

後日、相手方が「単なる話し合いの確認書に過ぎず、示談ではない」と主張し、合意の成立自体を否定しました。

書面の内容が抽象的だったため、裁判でも示談の成立が否定される可能性が生じました。


教訓

「円満解決」「話し合いで解決」といった言葉は、一見きれいですが、法的には非常に弱い表現です。

示談書では、何に合意したのかを具体的に書くことが不可欠です。



相手に有利な条文に気づかず署名した事例

事例の概要

相手方が用意した示談書案に、そのまま署名・押印しました。内容をよく読むと、

  • 慰謝料は支払う

  • しかし、相手は一切責任を負わない

  • 将来の請求権はすべて放棄する

といった、一方的に不利な条文が含まれていました。


起きたトラブル

後から内容に気づき、「こんな内容だとは思わなかった」と主張しましたが、署名済みの示談書がある以上、簡単には覆せませんでした。


教訓

示談書は、「サインした時点で内容を理解し、同意した」と扱われます。

分からないまま署名することは、白紙委任状にハンコを押すのと同じ危険性があります。



テンプレートを流用して無効と判断された事例

事例の概要

インターネットで見つけた示談書テンプレートを、そのまま流用しました。トラブルの内容や当事者の事情に合わない条文も多く、一部には法律に反する内容も含まれていました。


起きたトラブル

後に裁判になった際、その示談書について、

  • 内容が不明確

  • 当事者の意思が正確に反映されていない

  • 公序良俗に反する部分がある

として、示談書の効力自体が否定されました。


教訓

テンプレートはあくまで「ひな形」です。それをそのまま使えば安全、というものではありません。


示談書は、個別事情に合わせて調整してこそ意味がある書類です。

これらの事例に共通するのは、「示談書があるのに、守られない・役に立たない」という点です。


示談書は、書けば安心なのではなく、正しく書いて初めて意味がある書類です。



  7.示談書作成の流れとタイミング


示談書は、いきなり書き始めるものではありません。準備 → 交渉 → 作成 → 取り交わし → 保管という流れを踏むことで、初めて「使える示談書」になります。

ここでは、初心者の方でもイメージしやすいように、時系列に沿って解説します。



事実関係・損害内容の整理

示談書作成の第一歩は、事実関係と損害内容を整理することです。


整理すべき主なポイント

  • いつ、どこで、何が起きたのか

  • 誰が関与しているのか

  • どのような損害が生じたのか

ここが曖昧なままでは、示談条件も示談書の内容も定まりません。

たとえるなら、「地図を作らずに目的地を決める」ようなものです。


証拠の確保も同時に行う

この段階で、

  • LINEやメールの履歴

  • 写真・動画

  • 診断書・修理見積書

など、証拠になり得るものを整理しておくことが重要です。示談交渉では、証拠が交渉力になります。



示談条件の交渉

次に行うのが、示談条件の交渉です。


交渉で決める主な事項

  • 示談金の金額

  • 支払方法・期限

  • 謝罪の有無

  • 接触禁止・口外禁止などの条件

ここで大切なのは、「感情」と「条件」を切り分けることです。

怒りや不満をぶつけるだけでは、現実的な合意にたどり着きません。


口約束で終わらせない

交渉がまとまったとしても、この時点ではまだ示談は完成していません

条件は必ず、後で書面に落とし込む前提で話し合う必要があります。



示談書の作成・確認

交渉で合意した内容をもとに、示談書を作成します。


作成時の基本姿勢

  • 交渉内容とズレがないか

  • 抜け漏れがないか

  • 曖昧な表現になっていないか

特に初心者の方は、「それくらい分かるだろう」と思って省略しがちですが、示談書では書いていないことは存在しないのと同じです。


必ず双方で確認する

示談書案は、必ず双方が内容を確認します。

一方が一方的に作り、流れで署名させる形は、後の無効・取消しリスクを高めます。



署名押印・取り交わし

内容に問題がなければ、署名・押印をして示談書を取り交わします


取り交わしの基本

  • 当事者双方が同じ内容の示談書を保有する

  • 原本を1通ずつ持つ

コピーだけを渡したり、一方だけが原本を持つのは避けましょう。


押印の意味

押印は法的に必須ではありませんが、本人の意思を強く裏付ける証拠になります。

特に後日の争いを考えると、署名+押印が望ましいといえます。



保管方法と証拠管理のポイント

示談書は、作って終わりではありません


保管の基本

  • 原本は安全な場所に保管

  • スキャンや写真でデータ保存

  • クラウドと紙の両方で管理

紛失してしまうと、示談書があっても主張できなくなるリスクがあります。


関連資料も一緒に保管

示談書だけでなく、

  • 交渉のやり取り

  • 支払いの証拠(振込明細など)

もまとめて保管しておくと、後日のトラブル対応が格段に楽になります。



作成のタイミングを誤った場合のリスク

示談書は、作るタイミングを誤ると逆効果になることがあります。


早すぎる示談のリスク

  • 損害が確定していない

  • 後遺症や追加損害が判明していない

この状態で示談すると、後から不利な結果になる可能性があります。


遅すぎる示談のリスク

  • 相手が態度を硬化させる

  • 証拠が失われる

  • 時効が迫る

時間が経つほど、交渉は不利になりがちです。

タイミング

主なリスク

早すぎる

追加請求できない

遅すぎる

合意自体が困難


ベストなタイミングとは

示談書を作成するベストなタイミングは、事実と損害がある程度見え、交渉条件が固まった時点です。


「まだ早いかも」「もう遅いかも」と迷う場合は、その時点で一度、専門家に相談することで、取り返しのつかない失敗を防ぐことができます。



  8.示談書作成時の重要な注意点


示談書は「とりあえず書面にしておけば安心」というものではありません。内容や作成の仕方を誤ると、あとから取り返しがつかない不利益を被ることもあります。ここでは、初心者の方が特に見落としやすい重要な注意点を整理して解説します。



一度締結すると原則として撤回・変更できない

示談書は、法律上「契約」として扱われます。そのため、双方が合意して署名・押印した時点で成立し、原則として一方的に「やっぱりやめたい」「条件を変えたい」と言うことはできません。


たとえば、

  • 示談金を安く設定してしまった

  • 後から想定外の損害が判明した

  • 冷静でない状態で合意してしまった

といった事情があっても、単に後悔しているだけでは撤回は認められません


例えるなら、「セール品を買ってから定価を知って後悔しても返品できない」のと似ています。だからこそ、署名する前に内容を十分に確認することが何より重要です。



損害が確定する前に作成する危険性

示談書を急ぎすぎると、「本来請求できたはずの損害」を取りこぼすリスクがあります。


特に注意が必要なのは、次のようなケースです。

  • けがの治療がまだ終わっていない

  • 後遺障害が残る可能性がある

  • 精神的損害が今後拡大する可能性がある

この段階で「本件に関する一切の請求をしない」といった清算条項を入れてしまうと、後から追加で請求することがほぼ不可能になります。


損害が確定していない場合は、

  • 一部示談(現時点分のみ)にする

  • 将来損害について留保条項を入れる

といった工夫が必要です。



示談交渉に参加できるのは誰か

示談交渉や示談書の締結は、原則として当事者本人が行う必要があります。


注意したいポイントは次のとおりです。

  • 家族や知人が勝手に条件を決める

  • 代理人を名乗る人物に権限がない

  • 会社トラブルで担当者が権限外の合意をする

このような場合、「有効な示談ではない」と主張される余地が生じます。


代理人が関与する場合は、

  • 委任状があるか

  • どこまでの権限が与えられているか

を必ず確認することが重要です。



強要・脅迫が疑われる場合のリスク

示談は「自由な意思による合意」が前提です。次のような状況で作成された示談書は、後から無効と判断される可能性があります。

  • 「今すぐ署名しないと訴える」と過度に迫られた

  • 大声や威圧的な態度で同意を迫られた

  • 監禁や長時間拘束の中で署名させられた


法律上、これは「強迫」や「公序良俗違反」と評価されることがあります。

ただし、無効を主張する側がその事実を証明しなければならないため、簡単ではありません。そのため、少しでも不安を感じた場合は、その場で署名せず持ち帰る判断が非常に重要です。



電子契約・PDF署名の法的注意点

最近は、示談書を紙ではなく、

  • PDFファイル

  • 電子署名サービス

  • メールでの合意

といった形で作成するケースも増えています。


結論から言うと、電子的な示談書でも法的効力が認められる場合はあります。ただし、次の点に注意が必要です。

注意点

内容

本人性の確認

本当に本人が同意したか証明できるか

改ざん防止

後から内容を変更できない仕組みか

保存性

長期間、証拠として保存できるか

単なる「名前を打ち込んだだけのPDF」や「メールでの口約束」は、後から争いになった際に証拠として弱い傾向があります。


重要な示談ほど、

  • 電子署名サービスの利用

  • 紙での署名・押印との併用

  • 公正証書化の検討

といった対策を取ることが、安全性を高めるポイントです。


示談書は、正しく作れば強力なトラブル解決手段になりますが、軽く考えて作ると、かえって自分を縛る書面になりかねません。


「本当に今、この内容で締結してよいのか?」その一歩立ち止まる意識が、将来の大きな損失を防ぎます。



  9.示談書は自分で作れる?専門家に依頼すべき判断基準


示談書について調べていると、「テンプレートを使えば自分でも作れるのでは?」と思う方も多いはずです。実際、自分で作成できるケースもありますが、内容や状況によっては専門家に依頼しないことで大きな損をすることもあります。ここでは、その判断基準をわかりやすく整理します。



自分で作成できるケース

次のような条件がそろっている場合は、自分で示談書を作成しても比較的リスクが低いといえます。

  • トラブルの内容が単純で争点が少ない

  • 示談金の金額が少額

  • 当事者同士の関係が良好で、将来の争いの可能性が低い

  • すでに条件が明確に固まっている


たとえば、

  • 物を壊してしまい修理代を支払う

  • 軽微な近隣トラブルで一定額を支払って解決する


といったケースでは、基本項目を押さえた示談書を作成することで十分な場合もあります。

ただし、この場合でも「清算条項」や「支払期限」などの最低限のポイントは必ず入れる必要があります



自作のリスクと限界

示談書を自作する最大のリスクは、「何を書かなければならないかが分からない」点にあります。

よくある問題としては、

  • 法的に重要な条文が抜けている

  • 曖昧な表現になっている

  • 相手に有利な解釈ができる内容になっている

といった点が挙げられます。


たとえば、「本件はこれで解決とする」と書いたつもりでも、法律的には清算条項として不十分と判断されることもあります。

例えるなら、「見よう見まねで作った契約書」は、見た目は契約書でも中身が空っぽという状態になりがちです。


自作は「費用がかからない」というメリットがある反面、トラブル再燃時に何の役にも立たない書面になる可能性がある点が限界です。



公正証書にすべきケース

次のような場合は、示談書を公正証書にすることを強く検討すべきです。

  • 示談金が高額

  • 分割払いが含まれる

  • 支払われないリスクが高い

  • 確実に強制執行できる状態にしておきたい

公正証書にしておくと、**支払いが滞った場合に裁判をせず、すぐに強制執行(差押え)**が可能になる場合があります。


特に、

  • 元配偶者との金銭トラブル

  • 継続的な支払いが発生する示談

では、公正証書化するかどうかで回収できるかどうかが大きく変わることがあります。



行政書士・弁護士の役割の違い

示談書の作成を依頼する専門家には、主に「行政書士」と「弁護士」がいます。それぞれの役割の違いを理解しておくことが重要です。

専門家

主な役割

向いているケース

行政書士

示談書・合意書などの書面作成

条件が固まっている示談

弁護士

交渉・代理・訴訟対応

争いが激しい・交渉が必要


行政書士は、当事者間で合意した内容を法的に整った書面に落とし込む専門家です。一方で、示談交渉そのものを代理で行うことはできません。

弁護士は、交渉から裁判まで一貫して対応できますが、その分、費用は高くなる傾向があります。



費用とリスクのバランスの考え方

示談書作成では、「できるだけ安く済ませたい」と考えがちですが、本当に考えるべきなのは**「失敗した場合の損失額」**です。

  • 示談金が10万円 → 自作でも許容範囲の場合あり

  • 示談金が100万円以上 → 専門家費用は保険と考える

  • 支払われないリスクが高い → 公正証書化を検討


示談書は、将来の紛争を防ぐための書面です。数万円の専門家費用を惜しんだ結果、何十万円・何百万円の損失につながるケースは珍しくありません。


「この示談が崩れたら困るかどうか」その視点で判断すると、依頼すべきかどうかが見えてきます。



  10.よくある質問(FAQ)


ここでは、示談書について相談を受ける中で特によく聞かれる質問をまとめて解説します。初めて示談書を作成する方が不安に感じやすいポイントを中心に、できるだけ噛み砕いて説明します。



示談書に決まった形式はある?

結論から言うと、示談書に法律で決められた様式(フォーマット)はありません。

市販のテンプレートやネット上の雛形を使っても問題はありませんが、重要なのは「形式」ではなく、中身が法的に成立しているかどうかです。


たとえば、

  • 当事者が誰なのか明確か

  • 何について示談するのか特定できるか

  • 金銭の支払い条件がはっきりしているか

といった点が欠けていると、どんなに見た目が整っていても意味を持ちません。


例えるなら、「決まった形のレシピはないが、材料が足りなければ料理にならない」というイメージです。



手書きでも有効?

手書きの示談書でも、原則として有効です。

示談書の効力は「パソコンで作ったか」「手書きか」ではなく、当事者の合意が明確に表れているかで判断されます。

ただし、手書きの場合には次の点に注意が必要です。

  • 読みにくい文字や曖昧な表現になりやすい

  • 書き直しや修正が多いと不自然に見える

  • コピーや保管がしづらい


そのため、実務上はパソコンで作成し、署名押印する方法が一般的です。手書きは「できなくはないが、あえて選ぶ理由は少ない」と考えるとよいでしょう。



何部作成すべき?

示談書は、原則として当事者の人数分作成します。

たとえば、当事者が2人の場合は、

  • 相手方保管用:1部

  • 自分保管用:1部

の合計2部を作成し、それぞれに署名・押印をするのが基本です。

コピーではなく、すべて原本として扱うことが重要です。どちらか一方だけが原本を持っていると、後々の証拠として不利になることがあります。



相手に住所を知られたくない場合は?

示談書では、通常「氏名・住所」を記載して当事者を特定します。しかし、ストーカー被害や不倫トラブルなどでは、「住所を知られたくない」というケースも少なくありません。


このような場合には、

  • 住民票記載の住所ではなく「現在の居所」を記載する

  • 代理人(行政書士・弁護士)の事務所住所を連絡先として記載する

  • 住所を別紙として管理し、示談書本体には記載しない

といった対応が検討されます。


ただし、当事者特定が不十分だと示談書の効力に影響する可能性もあるため、安易に省略せず、専門家に相談したうえで方法を選ぶのが安全です。



示談書なしでも示談は成立する?

法律上は、示談書がなくても当事者間の合意があれば示談は成立します。

たとえば、口頭で

  • 「この金額を払えば終わりにする」

  • 「もう請求しない」

と合意した場合でも、理論上は示談が成立しています。


しかし、証拠が残らないことが最大の問題です。

  • 言った・言わないの争いになる

  • 合意内容を後から否定される

  • 裁判で証明できない

といったリスクが非常に高くなります。


示談書は、「示談が成立したこと」そのものを証明するための書面です。

示談書を作らないことは、「契約書を作らずに高額な取引をする」のと同じくらい危険だと考えてください。


示談書は「書かなくても成立する」ものではありますが、「書いておかないと守れない権利がある」書面です。迷った場合は、作成前に一度立ち止まって確認することが、結果的に一番の近道になります。



  11.まとめ|示談書を「形式」だと思う人ほど損をする


ここまで見てきたとおり、示談書は単なる「話し合いの記録」や「お決まりの書式」ではありません。示談書の理解が浅いほど、あとから大きな不利益を被る可能性が高いという点が、この記事を通じて最も伝えたいポイントです。



示談書はトラブルを終わらせる最重要書面

示談書の本質は、「すでに起きたトラブルを、法的にも実務的にも終わらせるための書面」であることにあります。


感情的な対立がある場面では、「とにかく終わらせたい」「早く解決したい」という気持ちが先行しがちです。しかし、示談書が曖昧なままだと、

  • 後日、再度請求される

  • 合意内容を否定される

  • 裁判になった際に証拠として弱い

といった形で、トラブルが終わるどころか長期化することも珍しくありません。


示談書は、「これで完全に解決した」と第三者にも説明できる状態を作るための最重要書面なのです。



内容次第で「守る書類」にも「地雷」にもなる

示談書は、作り方次第で正反対の結果をもたらします。

  • 適切に作られた示談書 → 自分の権利を守り、再燃を防ぐ「盾」になる

  • 不十分・不利な内容の示談書 → 相手に有利な証拠として使われる「地雷」になる


特に多いのが、

  • 清算条項がなく追加請求される

  • 支払期限や方法が曖昧で回収できない

  • 相手に一方的に有利な文言に気づかない

といったケースです。


「とりあえず形だけ整えた示談書」は、存在しないのと同じか、むしろマイナスになることすらあるという点は、ぜひ覚えておいてください。



不安な場合は必ず専門家チェックを受ける重要性

示談書は、自分で作成できる場面もあります。しかし、

  • 金額が大きい

  • 人間関係が複雑

  • 将来トラブルが再燃しそう

  • 相手がすでに専門家を使っている

こうしたケースでは、素人判断で進めるリスクが非常に高いと言えます。


専門家に依頼・チェックを受けることで、

  • 自分に不利な条文を防げる

  • 抜けやすい重要項目を補える

  • 将来の紛争リスクを大幅に下げられる

といったメリットがあります。


示談書は、**「あとから修正できない可能性が高い書面」**です。だからこそ、「大丈夫だろう」と思うタイミングほど、一度立ち止まり、専門家の目を通すことが、結果的に一番安く、安全な選択になります。


示談書を「ただの形式」だと思っている人ほど、あとで「こんなはずじゃなかった」と後悔しがちです。


示談書は、トラブルを終わらせるための最終防衛ライン。その重要性を正しく理解し、慎重に向き合うことが、自分の身を守る最大のポイントと言えるでしょう。



~事例・比較分析紹介~



  12.示談書トラブル事例の条文分析調査


この章では、**実際に相談・依頼の現場で持ち込まれた示談書(すべて匿名化)**をもとに、「どの条文が欠けていた、または曖昧だったためにトラブルが再燃・拡大したのか」を分析します。


ネット上の一般論ではなく、実務で本当に多い失敗パターンを知ることで、「どの条文がどれほど重要か」を具体的に理解できるはずです。



実務で多い示談書トラブルの共通点

複数の示談書を見比べていくと、トラブルになる示談書には共通した特徴があります。

  • 見た目は「それっぽく」整っている

  • 当事者は「これで解決した」と思っている

  • しかし、肝心の条文が抜けている、または曖昧

特に問題になるのは、**「書いてあること」よりも「書いていないこと」**です。



分析事例① 清算条項が存在しなかったケース

事例概要

不倫トラブルに関する示談書。慰謝料として100万円を支払う旨は明記されていた。


問題となった条文

  • 清算条項(これ以上の請求をしない旨)の記載がなかった


実際に起きたトラブル

示談金支払い後、数か月経ってから「精神的苦痛が続いている」「家族関係が悪化した」などとして追加の慰謝料請求を受けた。


条文上の問題点

金額の合意はあっても、「この支払いで全て解決する」という合意が文書化されていなかったため、追加請求を完全には否定できなかった。



分析事例② 支払期限・方法が曖昧だったケース

事例概要

金銭トラブルに関する示談書。「〇〇円を支払う」とだけ記載。


問題となった条文

  • 支払期限

  • 支払方法(振込か現金か等)


実際に起きたトラブル

相手が「今は資金がない」「もう少し待ってほしい」と支払いを先延ばし。結局、いつまでも支払われない状態が続いた。


条文上の問題点

期限がないため、「いつまでに払わなければならないか」が確定せず、履行遅滞(支払いが遅れている状態)を主張しにくかった。



分析事例③ 示談対象が特定されていなかったケース

事例概要

交通事故後の示談書。「本件事故について示談する」とのみ記載。


問題となった条文

  • 紛争内容の具体的な特定(日時・場所・事故内容)


実際に起きたトラブル

後日、相手方から「この示談は物損のみで、人身損害は含まれていない」と主張された。


条文上の問題点

「何についての示談なのか」が曖昧なため、示談の範囲について解釈の争いが生じた。



分析事例④ 表現が曖昧で示談成立を否定されたケース

事例概要

労働トラブルに関する書面。「話し合いの結果、円満に解決する方向で合意した」と記載。


問題となった条文

  • 示談成立を明確に示す文言がなかった


実際に起きたトラブル

相手方が「最終合意ではなく、方向性を確認しただけ」と主張。


条文上の問題点

示談書であるにもかかわらず、「合意」「解決」「清算」といった確定的な表現が使われていなかった



分析事例⑤ テンプレート流用による不整合ケース

事例概要

ネット上の無料テンプレートを流用して作成された示談書。


問題となった条文

  • 事案と合っていない条文が多数存在

  • 不要な条文が残ったまま


実際に起きたトラブル

条文同士が矛盾し、「どちらが正しいのか分からない」として、示談書全体の信用性が問題視された。


条文上の問題点

テンプレート自体が悪いのではなく、個別事情に合わせて修正されていなかったことが致命的だった。



トラブル化した示談書に共通する「欠落条文」一覧

欠けていた・弱かった条文

起きやすいトラブル

清算条項

追加請求・蒸し返し

支払期限・方法

未回収・先延ばし

示談対象の特定

示談範囲の争い

違約条項

約束を破られても抑止力がない

明確な合意文言

示談成立自体を否定される



条文分析から分かる重要なポイント

この調査から明確に言えるのは、示談書トラブルの多くは「知識不足」ではなく「条文の詰めの甘さ」から生じているという点です。

  • 書いていないことは、守ってもらえない

  • 曖昧な表現は、相手に都合よく解釈される

  • テンプレートは「完成形」ではない


示談書は、感情を整理するための書面ではなく、将来の紛争を防ぐための設計図です。

この章で紹介した条文分析を踏まえ、「自分の示談書に同じ穴がないか」を必ず確認することが、示談書で損をしないための最大のポイントと言えるでしょう。



  13.テンプレート示談書とオーダーメイド示談書のリスク比較


示談書を作成しようとしたとき、多くの人が最初に検索するのが「示談書 テンプレート 無料」といったキーワードです。


確かに、Web上には数多くの無料テンプレート示談書が公開されています。しかし、**実務の現場では「テンプレートを使ったこと自体が原因でトラブル化したケース」**が後を絶ちません。


この章では、無料テンプレ示談書と、個別事情に合わせて作成するオーダーメイド示談書を比較し、実際にどこが危険なのかを、実務目線で整理します。



Web上で配布されている無料テンプレ示談書の実態

テンプレ示談書の主な特徴

無料テンプレ示談書を複数確認すると、共通して次のような特徴があります。

  • 汎用的で抽象的な表現が多い

  • 典型的な金銭トラブルのみを想定している

  • 条文数が少なく、シンプル

  • 「誰でも使える」ことを優先している

一見すると便利そうですが、これは裏を返すと**「誰のための示談書でもない」**ということでもあります。



実務目線で見た「実際に危険な点」

想定されていない紛争パターン

無料テンプレの多くは、次のような前提で作られています。

  • 当事者同士が冷静

  • 紛争が単純

  • 将来トラブルが再燃しない


しかし、実際の相談現場では、

  • 感情的対立が激しい

  • 関係性が継続する(職場・親族・近隣など)

  • 刑事・民事が絡む

  • 第三者(配偶者・会社・保険会社)が関与する

といった複雑な紛争パターンがほとんどです。

テンプレ示談書は、こうした「現実に多いケース」をほぼ想定していません。


使えない/危険な条文の具体例

清算条項が弱すぎる例

多くのテンプレでは、清算条項が次のように書かれています。

本件について、今後互いに異議を述べないものとする。

一見問題なさそうですが、

  • 何についての清算なのか不明

  • 将来損害を含むか不明

  • 誰に対する請求を放棄するのか不明

という致命的な弱点があります。


実務では、「異議を述べない=追加請求しない」とは限らないと判断されるリスクがあります。


支払条文が抽象的すぎる例

テンプレに多いのが、

  • 支払期限が「速やかに」「〇年〇月頃」

  • 支払方法が未記載

といった条文です。


これでは、

  • いつから遅延なのか

  • 支払われない場合どうするのか

が分からず、回収不能リスクが極めて高い示談書になります。


違約条項が存在しない例

無料テンプレの多くには、違約した場合のペナルティ規定がありません。

その結果、

  • 約束を破っても相手に抑止力がない

  • 再度争うしかなくなる

という状態になります。


違約条項は「必須ではない」と言われがちですが、**実務では「あるかないかで交渉力が大きく変わる条文」**です。



実際の紛争類型とのズレ

テンプレ示談書が想定する世界

テンプレ示談書は、例えるなら**「教科書通りに進む理想的なトラブル」**を前提にしています。

  • 紛争は一度で終わる

  • 相手は約束を守る

  • 解釈の争いは起きない


しかし、実際の紛争は、

  • 後出し主張が出る

  • 条文の解釈で揉める

  • 相手が態度を変える

といった想定外の連続です。



オーダーメイド示談書の特徴と強み

個別事情を前提に設計される

オーダーメイド示談書では、

  • 当事者関係

  • 紛争の経緯

  • 将来起こり得るリスク

を前提に、「この人・このトラブル専用」の条文設計を行います。


たとえば、

  • 接触禁止が必要か

  • 口外禁止はどこまで及ぶか

  • 将来損害をどう扱うか

といった点を、具体的に詰めていきます。



テンプレとオーダーメイドのリスク比較表

比較項目

テンプレ示談書

オーダーメイド示談書

想定紛争

単純・理想型

実務ベース

条文の具体性

抽象的

具体的

将来リスク対応

ほぼなし

想定済み

解釈の余地

大きい

極力排除

トラブル再燃リスク

高い

低い



リスク比較から分かる本質的な違い

テンプレ示談書の最大の問題点は、「今の合意」しか見ていないことです。

一方、オーダーメイド示談書は、

  • 合意後に何が起きるか

  • 相手が約束を破ったらどうするか

といった未来のトラブル防止を前提に作られます。


示談書は、**作った瞬間よりも「後から効いてくる書面」**です。

無料テンプレは、「今すぐ形を整える」には役立つかもしれませんが、将来の紛争リスクまで考えると、むしろ危険になることがある


この点を理解したうえで、「本当にテンプレで足りるのか」を一度立ち止まって考えることが、示談書で損をしないための重要な判断ポイントと言えるでしょう。



  14.示談成立後に“再燃”した紛争の原因分析


「示談が成立したはずなのに、また揉めている」実務の現場では、この相談が驚くほど多く寄せられます


この章では、示談成立後にもかかわらず再燃した紛争案件を分析し、「なぜ示談で終わらなかったのか」「どこに原因があったのか」を、具体的な類型ごとに検証します。


示談書を作る目的は「一旦収めること」ではなく、二度と蒸し返されない状態を作ることです。再燃事例から、その失敗要因を読み解いていきましょう。



示談後トラブルに共通する構造

再燃した案件を見ていくと、共通して次の特徴があります。

  • 当事者の一方が「まだ納得していない」

  • 示談書に「想定外の行動」を止める条文がない

  • 示談金を払えば終わると思い込んでいた

つまり、示談書が「過去の整理」にはなっていても、「将来の抑止」になっていなかったという点が最大の共通点です。



追加請求トラブルが起きたケース

典型的な相談内容

  • 「示談金を払ったのに、また請求された」

  • 「新たな精神的苦痛が生じたと言われた」


なぜ再燃したのか

多くのケースで、清算条項が不十分、または存在しませんでした。

  • 将来損害を含むのか不明

  • 請求放棄の対象が曖昧

  • 第三者(配偶者・家族)の請求を想定していない

その結果、相手は「新しい損害だから別問題」と主張できてしまいます。


ポイント解説

清算条項は「これ以上請求しない約束」ではなく、**「請求できない状態を作るための条文」**です。曖昧な清算条項は、実質的に清算になっていません。



接触再開・嫌がらせに発展したケース

典型的な相談内容

  • 示談後に連絡が再開した

  • 職場や自宅周辺での接触

  • 遠回しな嫌がらせ行為


なぜ再燃したのか

多くの示談書には、接触禁止条項がそもそも存在しない、または次のように弱い表現でした。

  • 「今後は連絡を控える」

  • 「可能な限り接触しない」

これでは、「控えてはいる」「悪意はない」という言い逃れが可能になります。


ポイント解説

接触禁止条項は、禁止行為・禁止期間・違反時の対応まで具体化して初めて機能します。



示談金未払いが続いたケース

典型的な相談内容

  • 支払うと言ったが払われない

  • 分割払いが途中で止まった


なぜ再燃したのか

原因の多くは、次の条文不足です。

  • 支払期限が明確でない

  • 分割条件が曖昧

  • 遅延時のペナルティがない

その結果、相手は「今は払えない」「もう少し待ってほしい」と支払いを引き延ばし続けます。


ポイント解説

示談金条項は、**「払う約束」ではなく「払わせる設計」**が必要です。期限・方法・違約条項が揃っていないと、示談は未完成です。



口外・SNS投稿トラブルに発展したケース

典型的な相談内容

  • 示談後にSNSで暴露された

  • 周囲に話を広められた


なぜ再燃したのか

示談書に、

  • 口外禁止条項がない

  • SNS・インターネットを想定していない

というケースがほとんどでした。

また、「口外しないよう努める」といった努力義務的表現も、実務では抑止力が弱いと判断されます。


ポイント解説

口外禁止は、対象範囲(誰に・どこで・何を)を具体化しないと意味を持ちません。特に現代では、SNSを明示しない条文は極めて危険です。



再燃トラブル別・原因整理表

再燃類型

主な原因条文

問題点

追加請求

清算条項

範囲・将来損害が不明

接触再開

接触禁止条項

抽象的・努力義務

未払い

支払条項

期限・制裁なし

口外問題

口外禁止条項

SNS未想定



示談で終わらなかった本当の理由

示談が再燃した案件を総合すると、問題は相手の性格ではなく、**「相手の行動を縛れていない示談書」**にありました。


示談書は、

  • 信頼関係を前提にする書面ではない

  • 善意を期待する書面でもない

「最悪の行動を取られた場合でも止められるか」この視点が欠けていると、示談は簡単に崩れます。



再燃事例から導かれる教訓

示談成立=安全、ではありません。示談書が不完全であれば、むしろ火種を残す結果になります。

  • 終わらせたいなら、未来まで書く

  • 曖昧さは必ず争点になる

  • 「想定外」を想定する


示談書は、過去の清算書ではなく、未来のトラブル防止契約です。


再燃事例を他人事にせず、「同じ原因が自分の示談書にないか」を確認することが、示談で本当に損をしないための最大のポイントと言えるでしょう。



  15.示談書が「無効・争点化」されたケースの法的論点整理


示談書は「一度合意すれば終わり」というイメージを持たれがちですが、実務では示談書の有効性そのものが争われるケースも少なくありません。ここでは、実際に示談書が無効と主張されたり、裁判で争点になった事例をもとに、「どこが問題になりやすいのか」を初心者の方にも分かるように整理します。



示談書の効力が争われる場面とは

示談書は、民法上の「和解契約」にあたります。つまり、当事者双方の合意があれば有効なのが原則です。

しかし、次のような場合には「そもそも本当に自由な意思で合意したのか?」「内容は法的に許されるものか?」といった点が問題になり、効力が争われます。



強迫・錯誤・公序良俗が問題となるケース

強迫による示談と判断される場合

強迫とは、簡単にいうと**「断れない状況に追い込まれて同意させられた」**状態です。


例えば次のようなケースです。

・「示談に応じないなら職場に全部バラす」・「今ここで署名しないと警察に突き出す」・深夜や密室で複数人に囲まれて署名を求められた

このような状況では、形式上は署名があっても自由な意思による合意とは言えないとして、示談書が無効と判断される可能性があります。


錯誤(思い違い)による示談

錯誤とは、重要な前提事実を誤解したまま合意してしまうことです。


例としては、

・「これで一切請求されないと思っていたが、実は一部の請求だけだった」・「示談金は分割でもよいと思っていたが、一括払いが条件だった」

など、示談の根本に関わる認識違いがある場合です。

ただし、軽い勘違い程度では無効にならない点には注意が必要です。


公序良俗違反とされる内容

公序良俗とは、「社会の常識や道徳」に反する内容を指します。

例えば、

・違法行為を隠蔽する目的の示談・過度に人格を否定する条項・将来にわたって一切の権利行使を禁止する極端な条文

このような内容は、合意があっても無効と判断されることがあります。



内容不明確な示談書が招くトラブル

曖昧な表現が争点になる理由

示談書で非常に多いのが、**「書いてあるけど意味がはっきりしない」**という問題です。

例えば、

・「本件に関し、解決したものとする」・「今後一切の請求を行わない」

一見すると問題なさそうですが、「本件」とはどこまでを指すのか「一切」とは将来の損害も含むのかといった点が後から争われます。


内容不明確な条文の典型例

問題のある表現

争点になりやすい理由

本件について解決済みとする

本件の範囲が不明確

一切の請求をしない

将来損害を含むか不明

適切な方法で支払う

支払方法・期限が不明

示談書は「短いほど良い」わけではなく、具体的に書くほどトラブルを防げる文書です。



当事者が不特定・不正確な場合のリスク

当事者の記載ミスが与える影響

示談書では、誰と誰が合意したのかが極めて重要です。

次のようなケースは要注意です。

・通称やニックネームしか書いていない・法人なのに代表者名がない・実際の加害者・被害者と異なる名義

この場合、「この示談は自分には関係ない」と主張され、第三者に対抗できないおそれがあります。


家族・関係者が絡む場合の注意点

例えば、

・配偶者や親族も被害を受けている・会社の従業員が関与している

このような場合、示談に参加していない人から別途請求されるケースもあります。



署名押印・成立過程の問題点

署名押印がない示談書の扱い

示談書は必ずしも押印がなければ無効、というわけではありません。しかし、署名押印がない場合、

・本当に本人が合意したのか・後から内容を差し替えられていないか

といった点が争われやすくなります。


成立までの経緯が問題視されるケース

裁判では、**「どのような流れで示談が成立したか」**も重視されます。

・十分な説明があったか・考える時間が与えられたか・専門家に相談できる状況だったか

これらが欠けていると、「不当な示談だった」と評価されるリスクが高まります。



示談書を無効・争点化させないための実務的ポイント

最後に、実務上特に重要なポイントを整理します。

チェック項目

注意点

合意の自由

強引な進め方になっていないか

内容の具体性

金額・期限・範囲を明確に

当事者特定

氏名・住所・法人名を正確に

成立過程

説明・検討時間を確保

書面形式

署名押印・日付を明記


示談書は、**作った瞬間より「後からどう評価されるか」**が重要な文書です。「これで大丈夫だろう」という感覚だけで作成すると、思わぬ形で無効や紛争の火種になることがあります。


示談書を本当に「トラブルを終わらせる道具」にするためには、法的論点を意識した慎重な作成が欠かせません。



  16.示談書に「書かなかったことで失った金額・権利」の可視化


示談書トラブルで非常に多いのが、「書いていなかったせいで、あとからお金や権利を失った」というケースです。


示談書は、書いてあることだけが効力を持ちます。裏を返せば、書かなかったことは守られないということです。


ここでは、条文不足によって実際に発生した不利益を、できるだけ「金額」「具体的な権利」という形で整理します。



条文不足が不利益につながる仕組み

示談書は「気持ちの整理の書面」ではなく、後日の紛争を想定して先回りで防ぐ契約書です。

しかし実務では、

・話し合いで決まった内容を書ききれていない・テンプレートを流用して必要な条文が抜けている・「言わなくても分かるだろう」と思い込んでいる

こうした理由で、重要な条文が欠落しがちです。

その結果、数十万円〜数百万円単位の不利益につながることも珍しくありません。



回収できなかった示談金額の具体例

分割払いや期限未記載による未回収

よくあるのが、「示談金○○円を支払う」とだけ書いて、支払期限や支払方法を書かなかったケースです。

この場合、

・いつまでに払えばいいのか分からない・分割か一括かで揉める・支払いをズルズル先延ばしされる

といった問題が起きます。

結果として、

・回収までに数年かかる・結局一部しか回収できない

という事態になります。


実務上よくある未回収パターン

書かなかった条文

実際に失ったもの

支払期限

回収のタイミングを失う

遅延損害金

支払遅延の抑止力

分割条件

勝手な分割を許す結果

強制執行の合意

回収手段の制限

「払うと約束したのに払われない」という状況は、示談書の不備が原因であることが非常に多いです。



追加請求を防げなかったケース

清算条項がなかったことによる追加請求

清算条項とは、「この示談で本件に関する請求はすべて解決した」という趣旨の条文です。

これがないと、

・「あのときは言わなかったが、実は別の損害がある」・「精神的苦痛がまだ続いている」

といった理由で、後から追加請求される可能性が残ります。


実際に起きやすい追加請求の内容

・追加の慰謝料請求・治療費や修理費の再請求・付随的損害(通院交通費など)の主張

これらは、金額としては数万円〜数十万円規模でも、精神的・時間的な負担は非常に大きくなります。


条文の有無による結果の違い

示談書の内容

その後の結果

清算条項あり

追加請求を拒否できる

清算条項なし

追加交渉・紛争に発展

「もう終わったと思っていたのに、また連絡が来た」という相談の多くは、ここが原因です。



再交渉・再紛争にかかったコスト

金銭コストだけで見えない損失

示談書が不十分だった場合、再度話し合いや法的対応が必要になります。

その際に発生するコストは、

・専門家への相談費用・内容証明郵便の作成費用・交渉や対応にかかる時間

など、多岐にわたります。


再紛争にかかる現実的なコスト例

内容

目安コスト

専門家への再相談

数万円

書面作成・交渉対応

数万円〜

精神的ストレス

金額換算不可

時間的拘束

数か月〜数年

示談書をきちんと作っていれば、最初に数万円で防げた問題が、結果的に何倍もの負担になることもあります。



「書かなかった」ことが最大のリスクになる

示談書トラブルを振り返ると、多くの場合、問題は「変なことを書いた」ことではなく、「大事なことを書いていなかった」ことにあります。

・金額・期限・範囲・将来の請求・再接触や再交渉の防止


これらを明確に書くことで、示談書は初めて「紛争を終わらせる書面」になります。

示談書は短くまとめることが目的ではありません。失うはずだった金額・権利を守るための道具であることを、常に意識する必要があります。



   契約書作成は弁護士・行政書士どっちに依頼すればいい?


契約書を作成する際、「弁護士と行政書士、どちらに依頼すればよいのか?」と悩む方は多いでしょう。どちらの専門家も契約書作成の業務を行いますが、その役割や対応範囲には違いがあります。本記事では、専門家に依頼するメリットや具体例を交えながら、どちらを選ぶべきかを解説します。



専門家に依頼するメリット

1. 契約のリスクを防げる

契約書には、当事者同士の合意内容が明確に記載されます。しかし、素人が作成すると、法律的に不備があったり、トラブルが発生したときに対応しきれなかったりするリスクがあります。専門家に依頼することで、契約の抜け漏れを防ぎ、将来的なトラブルを未然に防ぐことができます。


具体例

たとえば、フリーランスが企業と業務委託契約を結ぶ際、報酬の支払い期限や業務範囲の記載が不明確だと、後々「こんなはずじゃなかった」と揉める原因になります。専門家に依頼すれば、報酬の支払い遅延時のペナルティや、契約解除の条件など、重要な事項を適切に盛り込んだ契約書を作成できます。


2. 自社や個人に適した契約内容にできる

契約書の雛形(テンプレート)はインターネット上にもありますが、それをそのまま使うと、自社のビジネスモデルに合わなかったり、不要な条項が含まれていたりすることがあります。専門家は依頼者の事情をヒアリングし、最適な契約書を作成してくれます。


具体例

例えば、飲食店のオーナーがテナント契約を結ぶ際、一般的な賃貸借契約書だけでは、営業時間の制限や原状回復義務について十分にカバーされていないことがあります。専門家に相談すれば、こうした細かい点も考慮した契約書を作成でき、トラブルを未然に防げます。



行政書士と弁護士の違いは?

契約書作成を依頼できる専門家には、行政書士と弁護士の2種類があります。それぞれの違いを理解することで、自分に適した専門家を選びやすくなります。


行政書士:契約書作成の専門家

行政書士は、主に「契約書の作成」を専門とする国家資格者です。法律に基づいた正確な契約書を作成し、行政手続きや許認可申請にも対応できます。


具体例

・事業者間の業務委託契約書の作成 ・飲食店や美容サロンなどのテナント契約書の作成 ・売買契約書や合意書の作成

ただし、行政書士は「紛争が発生した場合の代理交渉」や「法廷での弁護」は行えません。トラブルが発生した際の対応まではできないため、契約内容に不安がある場合は、弁護士に相談する必要があります。


弁護士:法律トラブルに対応できる専門家

弁護士は、契約書の作成だけでなく、契約に関する紛争対応や訴訟の代理もできる法律の専門家です。トラブルが発生した際のリスクを考慮し、より強固な契約書を作成できます。


具体例

・企業間の買収、合併契約書の作成と交渉 ・高額な不動産売買契約の作成とリーガルチェック ・契約違反が起きた際の法的対応

弁護士に依頼すると、契約書の作成だけでなく、万が一の紛争時にも対応してもらえるというメリットがあります。ただし、弁護士の費用は行政書士より高額になることが一般的です。


専門家に依頼する際の費用と流れ

費用の相場

依頼する専門家や契約書の種類によって、費用は異なります。一般的な相場は以下のとおりです。

専門家

費用の目安

行政書士

契約書作成3万~10万円、リーガルチェック1万~3万

弁護士

契約書作成10万~30万円、紛争対応10万円以上

行政書士は比較的リーズナブルな価格で契約書を作成できますが、紛争対応はできません。一方、弁護士は費用が高めですが、契約のリスク管理を徹底できるというメリットがあります。



依頼の流れ

  1. 専門家を選ぶ:契約内容や将来的なリスクを考慮し、行政書士か弁護士のどちらに依頼するか決める。

  2. 相談・ヒアリング:依頼者の状況を詳しく聞き、契約書の目的や必要な条項を確認する。

  3. 契約書の作成・修正:専門家が契約書を作成し、依頼者と確認しながら修正を加える。

  4. 最終確認・納品:完成した契約書を納品し、必要に応じて公証役場での認証を行う。


具体例

たとえば、フリーランスが業務委託契約を結ぶ際、

  1. 行政書士に相談し、業務範囲や報酬条件をヒアリング。

  2. 契約書のドラフトを作成し、内容を確認。

  3. 必要に応じて修正し、最終版を納品。

  4. 依頼者が契約書に署名し、取引先と締結。

このような流れで進めるため、契約の重要性を理解しながら進めることができます。


まとめ

契約書作成を専門家に依頼することで、契約のリスクを防ぎ、スムーズな取引を実現できます。

  • 行政書士は契約書の作成が得意で、費用を抑えられるが、紛争対応はできない。

  • 弁護士は契約書作成に加えてトラブル対応も可能だが、費用は高め。

契約内容や想定リスクに応じて、適切な専門家を選びましょう。


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