示談書の清算条項とは?慰謝料・損害賠償トラブルを終わらせるための基礎知識
- 代表行政書士 堤

- 2 日前
- 読了時間: 54分
🌺こんにちは!おてがる契約書の代表行政書士 堤です。
本日は示談書についての重要なポイントを解説したコラム記事をお届けします。
示談書を作成するとき、「清算条項」という言葉を耳にしたことはあるかもしれません。しかし、その意味や法的な効力を正しく理解している方は意外と少ないのが現状です。本コラムでは、慰謝料や損害賠償に関わる示談書で、トラブルを防ぐために不可欠な清算条項の基礎知識を、具体例や注意点とともにわかりやすく解説します。
本記事のまとめ:
重要事項 | 概要 |
|---|---|
示談書における慰謝料や損害賠償を最終的に整理・確定する条項であること。 | |
曖昧な表現では再請求や紛争の原因になるため、具体的かつ範囲を明確にすることが必要。 | |
後遺障害や錯誤・詐欺など、清算条項が効かない場合があることを事前に理解しておくこと。 |
🌻「示談書に署名したのに、後から請求されてしまった…」といったトラブルは、清算条項の理解不足が原因で起きることが少なくありません。このコラムを読むことで、示談書作成時の注意点や条文の書き方、再請求を防ぐポイントまでしっかり把握できます。安心して示談を進めたい方には、必ず役立つ内容です。
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▼目次
~事例・比較分析紹介~
~番外編~
1.清算条項とは何か【示談書における基本概念】
清算条項の定義
示談書の「清算条項」とは、トラブルや紛争に関して、当事者間で「これまでの金銭的・法的な請求はすべて解決した」と明確にするための条項です。簡単に言えば、示談の場で話し合った内容を法的に確定させる「完了宣言」のようなものです。
例えるなら、友達にお金を貸していた場合、「もう返済は完了した」と紙に書いておくことで、後から「やっぱり返してほしい」と言われないようにする契約書上の仕組みです。
清算条項があることで、示談書は単なる口約束ではなく、後日のトラブル防止に役立つ強力な証拠になります。
なぜ示談書に清算条項が入るのか
示談書に清算条項を入れる理由は主に2つあります。
後から追加請求されないようにするためたとえば慰謝料や損害賠償を示談で支払った場合、清算条項がなければ「やっぱり追加で支払ってほしい」と言われる可能性があります。清算条項を入れることで、「この示談で全て解決した」と法的に裏付けられます。
当事者間の合意を明確化するため示談交渉の内容を文書化するだけでなく、「これ以上の請求は一切しない」という意思表示を条文として残すことができます。これにより、示談書に署名・押印した時点で、双方が納得して合意したことが明確になります。
「権利放棄条項」「最終解決条項」との関係
清算条項は、法律上の専門用語で言えば「権利放棄条項」や「最終解決条項」と深く関わっています。
用語 | 意味 | 清算条項との関係 |
権利放棄条項 | 当事者が将来の権利行使を放棄する旨を記載する条項 | 清算条項の一部として、追加請求を防ぐ役割を持つ |
最終解決条項 | 示談で解決した事項が「これで最後」と明記される条項 | 清算条項とほぼ同義で、法的効力の根拠となる |
つまり、清算条項は単独で使われることもありますが、多くの場合「これ以上請求しません」という意味で権利放棄条項や最終解決条項とセットで記載されます。
清算条項が果たす法的役割
清算条項には以下の法的効果があります。
再請求防止示談で合意した慰謝料や損害賠償を受領した後、後日「追加で支払え」と請求されるリスクを軽減します。→ これは民法上の契約の効力(契約締結による権利義務の確定)に基づきます。
証拠力の向上口頭の約束よりも強力な証拠となり、裁判になった場合にも「すでに合意済みである」と主張可能です。
心理的安心感の提供当事者は「これで解決した」という安心感を得られます。示談後の争いを避けるため、精神的負担も軽減されます。
トラブルの早期解決促進清算条項があることで、示談交渉の場で双方が妥協点を見つけやすくなり、交渉がスムーズに進みます。
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2.示談書と清算条項の関係【なぜ重要なのか】
示談書とは何か(合意書・和解書との違い)
示談書とは、トラブルや紛争が発生した際に、当事者同士が話し合いによって合意した内容を文書化したものです。口約束ではなく書面で取り交わすことで、後日のトラブル防止や法的証拠としての効力を持たせることができます。
合意書や和解書との違い
用語 | 特徴 | 違い |
示談書 | 当事者間で話し合いの結果、金銭や条件を合意したことを文書化 | トラブル解決のための最初の書面として使われることが多い |
合意書 | 契約や約束の内容を確認する書面 | トラブルが発生していない場合にも作成される |
和解書 | すでに紛争や訴訟が発生している場合の妥協内容を文書化 | 裁判手続き中や裁判後に作成されることが多い |
簡単に言えば、示談書=話し合いで決めた約束を紙に書いたもの、合意書=事前の契約確認書、和解書=争いの途中で「これで終わり」と決めたもの、というイメージです。
示談書を作成する目的
示談書を作成する主な目的は以下の通りです。
法的効力の確保曖昧な口約束では後日「言った言わない」の争いになりますが、示談書に書くことで裁判でも証拠になります。
トラブルの早期解決金銭や条件を明確に書くことで、長引く争いを防ぎます。
心理的安心感の提供当事者双方が「これで解決した」という納得感を得られるため、後のストレスや不安を減らせます。
追加請求の防止ここで清算条項が重要になってきます。金銭や損害賠償の支払いが完了したことを明記することで、後日「やっぱり追加で払え」と言われるリスクを減らします。
示談書における「清算条項」の位置づけ
清算条項は、示談書の中でも「最も重要な条項のひとつ」といえます。示談書の内容を大きく分けると、次のような構造です。
項目 | 内容例 |
前文 | 当事者や背景の確認 |
本文(条件) | 慰謝料・損害賠償の金額や支払期日、その他条件 |
清算条項 | 「本示談書の内容で全て解決した」旨を明記 |
署名・押印 | 法的効力を担保するための署名・押印 |
清算条項は、「示談書の中で、金銭的・法的な請求が全て完了した」ことを明示する部分です。この条項があるかどうかで、後日トラブルになるリスクが大きく変わります。
具体例
本示談書に記載された慰謝料および損害賠償金の支払いにより、当事者間の一切の請求権は消滅し、今後いかなる追加請求も行わないものとする。
この一文だけで、示談成立後の再請求リスクを大幅に減らすことができます。
清算条項がない示談書のリスク
清算条項を入れずに示談書を作成すると、以下のようなリスクがあります。
後日追加請求される可能性「示談書に書いていない」「不十分」と相手が主張し、追加で慰謝料や損害賠償を請求してくることがあります。
裁判で不利になる清算条項がない場合、示談書だけでは「全て解決した」という証明が弱くなります。裁判になったときに再度争われる可能性があります。
心理的負担が続く「本当に解決したのか」という不安が残り、精神的なストレスが続きます。
交渉のやり直しが必要になる将来的に紛争が再燃すると、再度交渉や書面作成の手間が発生します。
清算条項は単なる文章ではなく、示談書の「安全装置」のような役割を果たします。これがあることで、慰謝料・損害賠償のトラブルを一度で終わらせることができ、示談書の本来の目的をしっかり達成できます。
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3.清算条項の典型的な記載内容と文言例
清算条項に盛り込まれる基本構造
清算条項は示談書の中でも、「どの権利を放棄するのか」「どの範囲まで解決したことにするのか」を明確化する部分です。典型的な構造は以下の3つの要素から成り立ちます。
項目 | 内容 | 補足説明 |
解決対象 | 慰謝料、損害賠償、物的損害、精神的損害など | どの請求権を放棄するかを明示 |
今後の請求の有無 | 「一切請求しない」や「再請求を行わない」 | 将来の追加請求リスクを防ぐ |
条件・例外 | 支払い完了、特定事項の履行など | 条件を明確にしないと条項の効力が弱くなる場合あり |
簡単に言うと、「誰が」「何に対して」「これで最後」という3点を明確にすることが清算条項の基本です。例えるなら、借金の返済を完了したときに「残高0円」と記録しておく銀行の明細のようなものです。
「本件に関し、今後一切の請求をしない」文言の意味
清算条項の中心的な文言としてよく使われるのが、次のような表現です。
「本件に関し、当事者は今後一切の請求を行わない」
この文言の意味は次の通りです。
本件に関する全ての金銭請求を放棄慰謝料、損害賠償、遅延損害金など、示談対象の範囲で追加請求ができなくなります。
当事者間での再交渉を防止文言により、「後でやっぱり追加で請求する」という行為を抑止します。
法的裏付けを与える裁判になった場合、この文言があることで「示談で解決済み」と主張しやすくなります。
補足
ただし、この文言はあくまで本件に関する請求権に限定されます。例えば別件での損害や慰謝料は含まれないため、清算条項の対象範囲を明確に書くことが重要です。
文言の強弱による法的効果の違い
清算条項の文言は、書き方によって効力が変わります。簡単に強弱をまとめると以下の通りです。
文言例 | 強さ | 効果 |
「本件に関する一切の請求を行わない」 | 強 | 再請求がほぼできない。裁判でも有効性が認められやすい |
「本件に関して原則として請求を行わない」 | 中 | 「原則として」と付くため、特定条件下では再請求の余地あり |
「本件について協議済みの範囲で請求しない」 | 弱 | 争点によっては再請求される可能性あり |
初心者にわかりやすく言うと、「絶対に請求しない」と書くほど法的効力が強くなるということです。逆に「原則」「協議済みの範囲」といった曖昧な表現は、将来争われやすくなります。
慰謝料・損害賠償を想定した清算条項の例
慰謝料や損害賠償を示談で解決する場合、典型的な清算条項は以下のように書かれます。
例1:慰謝料の場合
被害者○○は、加害者△△から金○○円を受領したことをもって、
本件に関する慰謝料請求権の一切を放棄し、今後いかなる請求も行わない。
例2:損害賠償の場合
本示談書に基づき支払われる損害賠償金○○円の受領をもって、
当事者間の損害賠償請求権はすべて消滅し、追加請求は行わないものとする。
ポイント
金額や対象を明記することで、後日「金額が曖昧」という争いを防げます。
「今後一切の請求を行わない」と書くことで、強力な法的効力を持たせることができます。
支払い条件(振込日、支払完了確認など)も併せて明記すると、より安全です。
清算条項は示談書の中でも「後日トラブルを防ぐ安全装置」のような役割を果たします。文言の強さや具体例を押さえておくことで、慰謝料・損害賠償トラブルを一度で終わらせる示談書を作成することが可能です。
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4.清算条項が効くケース・効かないケース
原則として清算条項が有効となる場合
示談書に記載された清算条項は、当事者が合意した事項について、後日追加請求できないようにする効力を持ちます。原則として、以下の条件を満たす場合は有効です。
当事者が自由意思で署名押印していること
条件・対象が明確に記載されていること
合意内容が公序良俗に反していないこと
例えば、交通事故の慰謝料で「本示談書の支払いで全て解決」と明記され、両者が署名押印していれば、原則として追加請求はできません。言い換えると、清算条項は**「約束を法的に固定する鍵」のような役割**を果たします。
清算条項があっても請求できる例外
ただし、清算条項があっても、すべての請求を完全に防げるわけではありません。法律上、次のような例外があります。
損害が予見できなかった場合
清算条項締結時に誰も予想できなかった損害は、原則として清算条項の効力が及ばない場合があります。例:
示談締結後に発覚した病気の悪化による治療費
事故後数か月で判明した精神的障害による損害
この場合、当事者は新たな損害として請求できる可能性があります。
後遺障害・後発損害が判明した場合
交通事故や医療過誤などでは、示談締結後に後遺障害や長期的損害が明らかになることがあります。こうした後発的損害については、清算条項での「全て解決」の効力が制限される場合があります。例:
示談後に発覚した後遺障害の医療費・介護費
将来の収入減少に対する損害賠償
錯誤・詐欺・強迫があった場合
清算条項の効力は、当事者が自由意思で合意していない場合は認められません。
状況 | 効果 |
錯誤 | 条項締結時に重要事項を誤解していた場合、無効となる可能性あり |
詐欺 | 相手が騙して合意させた場合、無効とされる可能性あり |
強迫 | 脅迫などで同意を強制された場合、無効となる可能性あり |
たとえば「相手に脅されてやむを得ず示談書に署名した」といった場合、清算条項も無効になり得ます。
公序良俗・強行規定違反となるケース
清算条項が法律や社会的規範に反している場合も、効力は及びません。
公序良俗違反の例:違法行為の損害賠償を免除する条項
強行規定違反の例:労働基準法に基づく給与請求権の放棄
この場合、たとえ双方が署名押印していても、清算条項は無効となり、後日請求可能です。
清算条項の効力まとめ
清算条項は非常に有効なトラブル防止手段ですが、万能ではありません。次のように整理できます。
ケース | 効力 |
当事者が自由意思で合意しており、対象・条件が明確 | 原則有効 |
損害が予見できなかった場合 | 追加請求可能性あり |
後遺障害・後発損害が判明した場合 | 追加請求可能性あり |
錯誤・詐欺・強迫があった場合 | 無効になる可能性あり |
公序良俗・強行規定違反の場合 | 無効 |
つまり、清算条項があるからといって完全に安心してはいけないという点がポイントです。実務では、清算条項を作る際に「対象範囲の明確化」「予見できない損害の留保」「条項の文言の強さ」などを慎重に設計することが重要です。
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5.慰謝料・損害賠償トラブルで注意すべき清算条項の落とし穴
「完全かつ最終的に解決する」という表現の危険性
示談書では、清算条項の文言として「完全かつ最終的に解決する」「これで一切の請求はしない」といった表現がよく使われます。しかし、この表現は一見強力に見えても、法律上の万能フレーズではありません。
ポイント1:未来の損害を全て含めるかは別問題清算条項で「完全かつ最終的に解決」と書いても、将来的に発生する損害(後遺障害や精神的後発損害など)は、当事者が予見できない場合、追加請求が認められることがあります。
ポイント2:裁判所で争われる可能性曖昧な表現は裁判所で「合意内容が不明瞭」と判断され、条項の効力を争われる原因になります。→ 例:交通事故の慰謝料を示談で支払ったが、後日後遺障害が判明した場合、裁判で再請求が認められるケースがあります。
補足
初心者にわかりやすく言うと、「完全かつ最終的」と書いても、未来の予期せぬ出来事までは覆せないというイメージです。文章だけで安心せず、後発損害の扱いを条項内で明確にしておくことが重要です。
将来損害を含めて清算してしまうリスク
示談書で「将来の損害も含めて全て解決」と書くことは、一見便利ですが、大きなリスクがあります。
リスク1:損害の金額が確定できない将来損害の範囲や金額は予測できないことが多いため、あらかじめ全額を放棄することは不公平となり、後で無効になる可能性があります。
リスク2:交渉の余地がなくなる将来損害まで清算してしまうと、後発的な医療費や介護費、精神的損害の請求ができなくなります。→ 例:交通事故で示談を成立させた直後に、後遺障害が発生した場合、示談内容が将来損害まで含むと、補償を受けられないリスクがあります。
リスク3:双方の納得度の低下支払う側は安心できますが、受け取る側が後発損害を考慮せずに放棄することで、後日不満やトラブルが発生しやすくなります。
刑事事件・不法行為が絡む場合の注意点
慰謝料や損害賠償が、刑事事件や不法行為と絡む場合は特に注意が必要です。
刑事手続きとは独立示談で慰謝料を支払っても、刑事事件の追及は止まりません。→ 例:傷害事件で示談金を支払った場合でも、被害届が出されれば刑事処分は進行します。
不法行為の権利放棄は限定的法律上、清算条項で権利を放棄できるのは民事上の請求権のみです。→ 例:故意による損害や重大な過失の場合、刑事責任は免れません。
安全装置としての清算条項刑事事件や不法行為が絡む場合は、「清算条項は民事トラブル解決の補助的手段」と考え、万能と考えないことが大切です。
不倫・交通事故・金銭トラブル別の注意ポイント
清算条項はトラブルの種類によっても注意点が異なります。
トラブル種類 | 注意ポイント | 補足 |
不倫慰謝料 | 将来の精神的損害を含めすぎない | 予見できない精神的被害は後で追加請求される可能性 |
交通事故 | 後遺障害や医療費の追加請求を留保 | 将来損害を完全に清算すると後日補償が困難 |
金銭トラブル | 権利放棄の範囲を明確化 | 返済の未履行や利息の発生などを条項で明確にする |
補足
例えば不倫慰謝料では、「将来の精神的損害まで清算する」と書くと、被害者側に不利になる場合があります。交通事故では「後遺障害に関する損害は別途請求可能」と一文を入れておくことで、将来のリスクを回避できます。金銭トラブルでは、返済期日や利息の計算方法を条項内に明記すると、後日の紛争を防ぎやすくなります。
清算条項は便利なトラブル防止手段ですが、「万能」と考えてはいけない点が重要です。将来損害や後発的トラブル、刑事事件などの特殊ケースを想定し、条項の範囲や文言を慎重に設計することが、示談書作成の成功につながります。
6.清算条項と他の条項との関係整理
示談書には清算条項以外にも、さまざまな条項が含まれることがあります。これらの条項と清算条項の関係を理解しておくと、示談書の効力やリスクを正しく把握できます。
違約金条項との関係
違約金条項は、示談書に定められた義務を守らなかった場合に支払う金銭を定める条項です。清算条項とは次のような関係があります。
補完的な役割清算条項は「これまでの請求権は解決済み」と定めますが、違約金条項は「将来的に約束を破った場合の罰則」を定めます。→ 例:慰謝料を支払う約束が守られなかった場合、追加で違約金○○円を支払う、といった形です。
注意点清算条項で「全て解決」と書いても、違約金条項は効力を妨げません。つまり、過去の請求権は消滅しても、将来の約束違反についての金銭請求は残るということです。
口外禁止条項・接触禁止条項との関係
示談書には、当事者が示談内容を第三者に話さない口外禁止条項や、接触を避ける接触禁止条項が含まれることがあります。
清算条項との連携清算条項で「これで全て解決」としても、口外禁止や接触禁止を守らなければ追加的な紛争が発生します。→ 例:示談後に一方が内容をSNSで公開した場合、口外禁止条項違反として損害賠償請求が可能です。
補足清算条項は「金銭や権利関係の解決」に焦点を当てていますが、口外禁止・接触禁止は「行動規範」を定める条項です。両方をセットで管理することで、トラブル再発を防止できます。
宥恕条項(刑事事件)との違い
宥恕条項とは、刑事事件において被害者が加害者を許す意思を示す条項です。
清算条項との違い
清算条項:民事上の請求権を解決する条項
宥恕条項:刑事上の処罰や告訴を控える意思を示す条項
注意点宥恕条項を入れても、警察や検察が刑事手続きを進める権利は消えません。つまり、民事トラブル(慰謝料や損害賠償)は清算条項で終わらせられますが、刑事責任まで免除できるわけではないのです。
例え話清算条項は「借金の支払いを完了した記録」、宥恕条項は「友達に対して『もう許す』と伝えること」に近いイメージです。刑事手続きは銀行や裁判所とは別のルールで進むため、完全に停止させることはできません。
求償権放棄条項との関係
求償権放棄条項は、第三者に対する求償権(支払った分を他者に請求する権利)を放棄する条項です。
清算条項との補完関係
清算条項:示談当事者間の請求権を消滅
求償権放棄条項:第三者に対する請求権を放棄
具体例交通事故で加害者が保険会社から損害賠償を受け取り、示談成立後に被害者が加害者に請求できない場合、求償権放棄条項を入れることで保険会社への追加請求も防げます。
注意点求償権放棄の範囲や対象を明確にしないと、後日第三者から請求されるリスクがあります。清算条項とセットで考えることで、当事者間と第三者との関係も整理できます。
清算条項と他条項の整理ポイント
まとめると、清算条項は**「金銭や権利の解決」を確定させる条項**ですが、示談書には他にも「違約金」「行動規範」「刑事事件への配慮」「第三者請求の放棄」などの条項が存在します。
条項 | 目的 | 清算条項との関係 |
違約金条項 | 将来の約束違反への制裁 | 清算条項の効力に影響せず、補完的 |
口外禁止・接触禁止条項 | 行動規範の確保 | 清算条項と併用することで再発防止 |
宥恕条項 | 刑事事件の告訴・処罰に関する意思表示 | 民事請求権の清算とは別の効力 |
求償権放棄条項 | 第三者への請求権放棄 | 清算条項とセットで完全解決を目指す |
清算条項単体では「民事トラブルの金銭的解決」しかカバーできませんが、他の条項と組み合わせることで、示談書全体の効力と安全性が高まります。
7.清算条項を入れるべきケース・入れない方がよいケース
示談書に清算条項を入れるかどうかは、被害者側と加害者側でメリット・デメリットが異なるだけでなく、トラブルの性質によっても判断が変わります。ここでは、実務上の観点から詳しく解説します。
被害者側が清算条項を入れるメリット・デメリット
メリット
紛争の早期解決清算条項を入れることで「これで全て解決」と明確化され、再請求や追加交渉を防ぐことができます。→ 例:慰謝料50万円を受領した場合、後日「追加で請求できるかどうか」を心配する必要がなくなります。
心理的安心感示談が成立したことを文書で確認できるため、被害者は精神的な安心を得られます。
デメリット
将来損害の請求権を放棄するリスク後遺障害や精神的損害など、予見できない損害が後から判明しても請求できなくなる場合があります。
曖昧な文言でのトラブル「完全かつ最終的に解決」とだけ書くと、裁判で争われる余地が残ります。→ 裁判で「条項が曖昧」と判断されると、清算条項の効力が認められないことがあります。
加害者側が清算条項を入れるメリット・デメリット
メリット
将来の追加請求を防ぐ被害者が示談後に慰謝料や損害賠償を追加請求するリスクを減らせます。→ 例:交通事故での慰謝料を支払った後、追加請求される心配がなくなる。
法的リスクの回避清算条項を明確にすることで、将来の紛争や裁判の可能性を下げられます。
デメリット
被害者との交渉が長引く場合がある被害者が将来損害の可能性を考慮して、清算条項をすぐには承諾しないことがあります。
曖昧な範囲で合意すると逆に効力が弱まる「将来損害も含む」などの文言が不明確だと、裁判で効力を争われる可能性があります。
紛争の性質別(交通事故・不倫・暴行等)の判断基準
清算条項を入れるかどうかは、紛争の種類によって判断が変わります。
紛争の種類 | 清算条項を入れるメリット | 注意点・入れない方がよいケース |
交通事故 | 将来請求のリスクを抑えられる | 後遺障害や将来の医療費は留保した方が安全 |
不倫・慰謝料 | 精神的苦痛の解決を明確化できる | 精神的損害の将来リスクを考慮して完全放棄は避ける |
暴行・傷害 | 怪我や治療費の清算を明確化 | 刑事責任や将来の後遺障害を考慮し、民事請求権のみ清算 |
補足
交通事故や不倫の場合、予見できない損害が出る可能性があるかを判断基準にするとよいです。暴行や傷害の場合は、清算条項で民事上の損害賠償を終わらせても、刑事事件は別に進むことを念頭に置きます。
実務上よくある判断ミス
被害者側が安易に全額放棄「これで全て解決」とだけ書き、後発的損害や精神的損害を考慮しないケース。→ 将来損害が判明すると請求できず、不利益を被る。
加害者側が範囲を曖昧にする「将来の損害も含む」と漠然と書いてしまい、裁判で効力を争われる原因となる。
刑事事件や第三者への影響を考慮しない暴行や交通事故などで刑事手続きや保険会社の求償権が絡む場合、清算条項だけでは解決できない。
条項間の整合性を確認しない違約金条項や口外禁止条項などと整合性を取らないと、示談書全体の効力が低下する。
清算条項は便利なツールですが、入れるかどうか、どの範囲までカバーするかを慎重に判断することが重要です。被害者・加害者双方の立場や、トラブルの性質を踏まえたうえで作成することで、示談書の法的安定性を高めることができます。
8.清算条項付き示談書を作成する際の実務上の注意点
清算条項付きの示談書は、トラブル解決の強力な手段ですが、作成時にはいくつか重要な注意点があります。ここでは、実務上よく起こるリスクや対策を具体的に解説します。
示談成立後は原則撤回できない
清算条項が付いた示談書は、一度署名押印して成立すると、原則として撤回できません。
ポイント1:合意の確定力清算条項は「当事者間の権利関係は全て解決済み」と法的に認められるため、後から「やっぱりやめたい」と主張しても認められにくいです。
ポイント2:慎重な検討が必須示談書を作成する前に、請求金額、将来発生しうる損害、第三者への影響などを慎重に確認する必要があります。
例え話清算条項付きの示談書は、銀行でお金を払い込み完了した契約のようなものです。支払いを済ませてから「やっぱり返してほしい」と言っても、原則受け入れられません。
記載内容が不明確な場合のリスク
清算条項は、文言が曖昧だと効力が弱まる可能性があります。
曖昧な表現例
「将来の請求も含めて全て解決」
「示談金の範囲は双方で合意した通り」
リスク裁判になった場合、「何をもって清算されたのか」が争点となり、条項が無効または限定的効力しか認められないことがあります。
対策
対象となる損害・金額・期間を明確化する
「将来予測できない損害は留保する」など、例外規定を入れる
専門家(弁護士や行政書士)による文言チェックを行う
表:曖昧文言と明確文言の例
曖昧な表現 | 明確な表現例 |
「全て解決する」 | 「本示談書に記載された慰謝料50万円を支払うことで、○○に関する民事上の請求権は全て消滅する」 |
「将来の請求も含む」 | 「本示談書締結時点で予見可能な損害について清算済みとする。将来後発的な損害は別途協議」 |
示談金不払いに備える方法
清算条項付き示談書を作成しても、示談金が支払われないリスクはゼロではありません。
対応策
支払い期日を明記→ 期日を明記することで遅延損害金や法的手段を使いやすくなります。
違約金条項を併用→ 支払い遅延や不履行の場合のペナルティを設定。
支払い方法を指定→ 銀行振込や公正証書化など、支払証拠が残る方法を推奨。
補足公正証書を作成すれば、支払いがなかった場合に強制執行が可能になるため、実務上の安全性が高まります。
公正証書にすべきかどうかの判断基準
示談書を公正証書にするかどうかは、リスクの大きさと相手の支払い能力を基準に判断します。
公正証書化を検討すべきケース
高額な慰謝料や損害賠償が絡む場合
相手方の支払い能力や信用に不安がある場合
後日の裁判リスクを極力減らしたい場合
公正証書化のメリット
強制執行手続きが容易
文書の証明力が高く、裁判で争われにくい
支払い遅延や不履行時の対応が迅速
公正証書化のデメリット
作成費用や時間がかかる
公証人役場で手続きを行う必要がある
まとめの目安「示談金の額が大きい」「相手の信用に不安がある」「確実にトラブルを避けたい」場合は公正証書化を強く検討すべきです。逆に、少額かつ相手が信頼できる場合は、通常の示談書でも十分なことがあります。
清算条項付き示談書は、適切に作成すれば民事トラブルの強力な予防策となります。ただし、曖昧な文言や支払いリスクを放置すると、将来的に再び紛争になる可能性があります。
ポイントのまとめ
示談成立後は原則撤回できないことを理解
文言は明確化し、将来損害の取り扱いを検討
支払い不履行に備えた条項や公正証書化を検討
これらを押さえることで、清算条項付き示談書の効力を最大限活かせます。
9.清算条項で失敗しないために専門家へ相談すべき理由
清算条項付き示談書は、トラブル解決の有効な手段ですが、作成を誤ると逆にリスクを生むことがあります。ここでは、専門家に相談すべき理由とその効果を詳しく解説します。
自己流で作成した示談書の危険性
自己流で示談書を作成すると、次のような問題が起こりやすくなります。
文言が曖昧で効力が不明確「これで全て解決」とだけ書いた場合、裁判で清算条項の効力が認められないことがあります。
対象範囲の誤り慰謝料や治療費、将来発生する可能性のある損害の範囲を正しく特定できず、後日追加請求リスクが残る場合があります。
法的要件の不足示談書には署名押印や日付の明示など、法的に効力を持たせるための基本ルールがあります。これを欠くと、清算条項の効力が薄れることがあります。
具体例交通事故の示談で、自己流で「今後請求しない」とだけ記載してしまった場合、後日後遺障害が判明すると被害者が再請求できる可能性があります。
後からトラブルになる典型パターン
自己流で作成した示談書では、次のような典型的トラブルが発生します。
将来損害の請求後遺障害や精神的損害など、示談時には予見できなかった損害について再請求される。
条項間の矛盾違約金条項や口外禁止条項との整合性が取れておらず、示談書の一部効力が否定される。
文言の解釈争い「完全かつ最終的に解決する」という表現が曖昧すぎて、裁判で効力を争われる。
支払い不履行への対応困難示談金が支払われない場合に備えた違約金条項や公正証書化がされていない。
行政書士・弁護士に依頼するメリット
専門家に依頼することで、示談書作成のリスクを大幅に減らせます。
法的に有効な文言で作成慰謝料・損害賠償の範囲や清算条項の効力を明確化。→ 将来の再請求リスクを最小化できます。
条項間の整合性確保違約金条項、口外禁止条項、求償権放棄条項など、他の条項と矛盾しないよう設計可能。
支払い不履行への備え違約金や強制執行可能な公正証書化のアドバイスが受けられます。
実務例不倫慰謝料の示談書では、慰謝料額、将来損害の留保、口外禁止条項の文言を明確化し、弁護士作成により裁判でも争われにくい形にできます。
事前相談が「最大のリスク回避」になる理由
示談書作成前に専門家へ相談することで、トラブルの芽を事前に潰せることが最大のメリットです。
将来発生する可能性のあるリスクの予測後遺障害や将来の慰謝料増額など、予見可能なリスクを条項に組み込めます。
文言の誤解を防ぐ「完全かつ最終的に解決」という表現でも、法律的に効力を持たせる表現に修正可能です。
第三者請求の防止保険会社や関係者への求償権放棄など、トラブルの拡大を未然に防げます。
例え話示談書作成前の専門家相談は、建物を建てる前に設計士に図面をチェックしてもらうようなものです。設計ミスを未然に防ぐことで、後から補修工事が必要になるリスクを避けられます。
まとめ
清算条項付き示談書は非常に有効ですが、自己流で作ると後日の紛争や法的無効リスクが残ります。
リスク回避のためのポイント
文言は明確にし、将来損害を適切に扱う
他の条項との整合性を確認する
支払い不履行や強制執行の準備を行う
行政書士や弁護士に事前相談することで、示談書の効力を最大化し、将来のトラブルを防ぐことが可能です。
10.まとめ|清算条項は「トラブルを終わらせる条文」でも「再燃させる条文」にもなる
清算条項は、示談書の中で最も重要な条項のひとつです。適切に作成すればトラブルを終わらせる強力な力を持ちますが、曖昧な書き方や不十分な配慮があると、逆に紛争を再燃させる原因にもなります。ここでは、清算条項の本質、リスク、確認すべきポイントを整理します。
清算条項の本質的な役割
清算条項の目的は、当事者間の権利関係を明確にし、将来の請求や紛争を防ぐことです。具体的には次のような役割があります。
権利関係の最終確認
これ以上の請求はしない、という合意を明文化します。
例:交通事故での慰謝料や治療費、精神的損害の範囲を確定。
心理的・法的安心感の提供
被害者も加害者も、解決済みであることを文書で確認でき、心の整理や今後の生活の安心につながります。
紛争再燃防止
将来の請求リスクを低減させ、裁判や交渉による二次的トラブルを防ぎます。
例え話清算条項は、建物の基礎のようなものです。しっかりした基礎があれば安心ですが、欠陥や曖昧な設計だと後から建物が傾く(=トラブルが再燃する)危険があります。
安易な記載が招くリスク
清算条項を安易に書くと、逆に紛争の火種になることがあります。典型的なリスクは次の通りです。
安易な記載例 | 招くリスク |
「完全かつ最終的に解決する」だけ | 対象範囲が曖昧で裁判で効力を争われる |
「将来請求も含む」 | 将来損害や後遺障害の留保が不十分で追加請求される可能性 |
文言チェックなしで自己作成 | 錯誤・詐欺・強迫があった場合、無効とされる可能性 |
他の条項との整合性を無視 | 違約金条項や口外禁止条項との矛盾で効力が低下 |
補足特に不倫や交通事故、金銭トラブルでは、後から精神的損害や後遺障害が判明するケースがあります。この場合、清算条項の文言が不明確だと、後日再度請求されるリスクが残ります。
示談書作成時に必ず確認すべきポイント
清算条項の効果を最大化し、リスクを最小化するためには、示談書作成時に次の点を必ず確認することが重要です。
対象範囲の明確化
「慰謝料、治療費、逸失利益」など、どの損害が清算対象かを具体的に記載。
将来損害の取り扱い
後発的な損害を留保するのか、全て含めるのか、明確に区分。
他条項との整合性
違約金条項、口外禁止条項、求償権放棄条項などと矛盾しないように整理。
法的要件の確認
署名押印、日付記載、両者の自由意思を確保。
公正証書化の必要性も検討。
専門家への相談
弁護士・行政書士に文言チェックやリスク評価を依頼することで、後日トラブルになる可能性を大幅に減らせます。
最終的なポイント
清算条項は「トラブルを終わらせる条文」になり得るが、**曖昧・不十分だと「再燃させる条文」**にもなり得ます。
示談書を作る際は、文言の明確化、範囲の特定、将来リスクの整理、専門家チェックが必須です。
適切に設計された清算条項は、示談書全体の法的安定性を高め、双方の安心を支える重要な柱となります。
~事例・比較分析紹介~
11.清算条項が原因で「示談後に再紛争となった事例」の類型化調査
清算条項付きの示談書は、当事者間の権利関係を明確にし、将来の紛争を防ぐ目的で作成されます。しかし、現実には条項があっても再紛争になるケースが存在します。ここでは、過去に相談・依頼を受けた実務例をもとに、典型的な類型を整理しました。
過去に相談・依頼を受けた案件をもとに
行政書士事務所や弁護士事務所で実際に扱った案件を分析すると、以下のパターンで再紛争が発生することがあります。
交通事故関連
示談書で治療費・慰謝料を清算したが、後日後遺障害が判明して再請求される。
不倫・慰謝料請求関連
慰謝料を支払い済みとする示談書を作成したが、精神的損害や第三者関係の追加請求が争点になる。
金銭トラブル関連
貸金返還や借用書清算後、未記載の利息や遅延損害金を理由に再請求が行われる。
暴行・傷害関連
示談金を受領したものの、刑事事件に関する被害者感情や精神的損害が新たに問題視され、民事請求が再燃するケース。
清算条項があったにもかかわらず再請求されたケース
清算条項が記載されていても、次のような条件が揃うと再請求が発生することがあります。
後発的・予見不可能な損害
例:交通事故で示談後に後遺障害が判明し、慰謝料の増額を求められた。→ 清算条項では「予見可能な損害のみ対象」と明記されておらず、争点となった。
文言の不明確さ
「将来請求も含めて全て解決」とだけ書いたが、後日「全て」とは何かが争点になり、追加請求が認められた。
詐欺・錯誤・強迫の主張
示談時に十分な情報が開示されず、後日一方が錯誤や強迫を主張して再請求。
法律上無効となる場合
公序良俗違反や強行規定違反が認められた場合、清算条項の効力が否定される。
再請求が認められた/認められなかったケース
過去事例をもとに、再請求が認められたケースと認められなかったケースを整理すると以下の通りです。
ケース | 条件・原因 | 結果 |
交通事故で後遺障害発覚 | 清算条項に「将来損害の留保」なし | 再請求が認められ、追加慰謝料が発生 |
不倫慰謝料 | 清算条項の文言が曖昧 | 一部請求が認められ、精神的損害で争点化 |
金銭トラブル(貸金返還) | 利息や遅延損害金の記載不足 | 再請求は認められず、原則として示談金で清算済みと判断 |
暴行・傷害 | 刑事事件の余波や強迫の主張 | 民事請求の一部のみ認められたケースあり |
曖昧な清算条項(全て解決) | 文言不明確・専門家未確認 | 裁判で効力が限定され、争点化 |
ポイント再請求が認められるか否かは、条項の明確さ、対象範囲の特定、予見可能性が重要な判断材料になります。
まとめ
清算条項付き示談書でも、将来損害、文言の曖昧さ、情報不足、法的制約などの要因によって再紛争が発生することがあります。
再紛争を防ぐためには、次の点が重要です。
条項の文言を明確化し、対象範囲を特定する
将来予測可能な損害・後発的損害の取り扱いを明記する
専門家に相談し、条項の法的有効性を確認する
教訓清算条項は「トラブルを終わらせる力」を持つ一方、設計ミスがあると「再燃させる要因」にもなります。過去の事例を参考に、事前にリスクを想定した条項作りが不可欠です。
12.清算条項の「文言差」による法的効果の比較分析
示談書の清算条項は、たった一文の表現の違いで法的効力や再請求リスクが大きく変わることがあります。ここでは、実務でよく見られる文言のパターンを複数抽出し、それぞれの法的リスクや効果を比較します。
実際の示談書文言のパターン
過去の相談案件や依頼書を参考に、清算条項では主に以下のような文言パターンが使われます。
「本件に関し一切の請求をしない」
「本件及びこれに関連する一切の請求を含め清算する」
「将来発生する損害を除く」
これらの違いが、どのように法的効力や再請求リスクに影響するのかを整理します。
「本件に関し一切の請求をしない」
意味・特徴
「今回のトラブル(本件)について、これ以上の請求は行わない」という限定的表現。
対象範囲が当該事案に限定され、将来損害や関連事案は含まれない可能性があります。
法的効果
現時点で認識されている損害は清算される
予見できなかった損害や後日発生した損害には効力が及ばない可能性
リスク例
交通事故で示談書作成後に後遺障害が発覚し、追加請求された
精神的損害や逸失利益など、明示されていない範囲について争点化
「本件及びこれに関連する一切の請求を含め清算する」
意味・特徴
「本件」と関連するすべての請求も含めて清算する、より包括的な表現。
関連請求の範囲まで明記することで、将来請求リスクを減らす効果があります。
法的効果
現在・将来の追加請求リスクを広くカバー
関連事案まで含めることで、裁判での争点化が難しくなる
リスク例
文言が曖昧すぎると「関連請求」の範囲を巡って争いになる
強すぎる文言は、錯誤や強迫があった場合に無効主張の対象となることも
「将来発生する損害を除く」
意味・特徴
現時点での損害のみを清算し、後日発生する損害は留保する形。
後遺障害や追加慰謝料など、将来不確定の損害を保護する場合に有効
法的効果
将来損害に関する請求権を残すことで、被害者保護の観点から有効
加害者側としては、追加請求リスクが残るため注意が必要
リスク例
被害者側は追加請求可能だが、条項を明確にしないと裁判で範囲が争点になる
曖昧な記載では、「将来損害」がどこまでか判断が分かれる
文言ごとの法的リスク整理
以下の表に、代表的な文言パターンごとの法的効果・リスクをまとめました。
文言パターン | 効果 | 想定される法的リスク | 推奨の使用場面 |
本件に関し一切の請求をしない | 現時点の損害は清算 | 将来損害・関連請求に効力なし | 単発の損害で完結する場合 |
本件及びこれに関連する一切の請求を含め清算する | 現在・関連請求もカバー | 「関連」の範囲が不明確で争点化の可能性 | 将来請求リスクを最小化したい場合 |
将来発生する損害を除く | 将来損害を保護 | 加害者側の追加負担が残る | 後遺障害や長期影響が見込まれる場合 |
まとめ
清算条項のたった一文の文言が、将来の請求可否や裁判での争点に大きく影響します。
文言選択のポイントは次の通りです。
対象範囲を明確にする(本件のみか、関連請求も含むか)
将来損害の扱いを決める(除外するか含めるか)
専門家に確認する(曖昧な文言や争点化のリスクを回避)
実務上の教訓文言が曖昧な清算条項は、示談書作成後の再紛争を招きやすいため、条文ごとの法的効果を理解した上で慎重に作成することが不可欠です。
13.清算条項が「無効・限定解釈」された裁判例の整理
示談書に清算条項を入れても、裁判で条項の効力そのものが争われたり、限定的に解釈されて追加請求が認められたりすることがあります。ここでは実際の裁判例(日本の裁判例や判決解説)をもとに、どのようなケースで清算条項が無効・制限されたのかを整理します。
清算条項が争点になった裁判例
裁判例において、清算条項(示談の合意内容全般の効力)が争われた代表的な事例が存在します。
示談後に損害が増大した事例(最高裁判例)交通事故の示談で、被害者が最初の示談後に重度の後遺障害が発生し、示談金が十分でないとして追加請求が争われた事例があります。→ 最高裁は、示談の効力が被害者の将来の不測の損害に及ぶかどうかについて判断しています。具体的には、昭和32年の判例で示談後に再手術や重度の後遺障害が生じた場合、示談の効力を否定できる余地がある場合があるとされています。
示談の拘束力を限定的に解した大阪高裁の判例(平成23年)交通事故で後遺障害等級が進行したケースにおいて、示談契約は有効と認めつつも、「示談時までに固定した後遺障害分についての請求権は消滅する」とされましたが、従来認識のない別の後遺障害についての損害賠償請求権は放棄されていないとして、一部追加請求を認めた判断です。
無効・錯誤・予見不能損害として判断された事例
裁判で清算条項が全面的に無効とされた例は日本では少ないものの、和解契約全般の効力が否定された事例が参考になります。また、清算対象外とされた理論が「錯誤」や「予見不能な損害」です。
✔ 錯誤による無効
ある和解・示談において、当事者の本当の意思が合意内容とは異なっていたと判断された場合、和解自体が無効になることがあります。例えば、裁判例では、当事者がある金額を主張し続けていたにもかかわらず、和解書への同意が真の意思ではないと裁判所が判断し、和解(=示談)の効力を無効とした事例があります(この例は示談書とは別ですが、合意の有効性判断の考え方として重要です)。
✔ 予見不能な損害(将来損害)
交通事故示談で、示談締結時点で予見できなかった新たな後遺障害等の損害が発見されたケースでは、裁判所が示談の拘束力を限定的に解釈することがあります。これは示談での権利放棄が「通常考えられる範囲にとどまる」と評価されるべきだという考え方に基づきます。
判断理由を簡潔に抽出
裁判例で清算条項・示談の効力が制限または否定された理由は、主に以下の点にまとめられます。
損害の予見可能性
示談成立時点で被害者が将来起こりうる損害(例:後遺障害の悪化)を予見できなかった場合、示談条項全体の効力が及ばない可能性がある。
示談書に含まれない損害
従前の損害は清算されたが、新たに発生・認定された損害については示談放棄の対象とされないと判断される場合がある。
錯誤・合意の真意の欠如
当事者の意思が合意内容と一致せず、示談が成立した真意が不明瞭な場合、和解・合意自体を無効と判断することがある。
初心者向けの補足説明
示談書と裁判上の和解は法律上同じ「合意契約」と扱われるため、示談書の清算条項も契約一般の有効性判断(意思表示、錯誤、予見可能性など)の枠組みで裁判所が評価します。
清算条項があるから必ず無効にできない、というわけではなく、当事者の意思や将来起こり得る損害の性質によっては限定的解釈・追加請求が認められるケースがある、と理解してください。
まとめ:裁判例からの学び
清算条項自体が無効となることは稀ですが、限定的に解釈される裁判例は存在します。
交通事故の後発的損害や、示談書締結時に予見不可能だった損害については、裁判で追加請求が認められる可能性があります。
また、示談書の合意形成過程に錯誤や意思欠缺があると判断された場合には、合意そのものの効力が否定される余地もあります。
14.トラブル類型別に見る「清算条項で失敗しやすいポイント」調査
示談書における清算条項は、本文だけ見ると単純でも、トラブルの種類によって失敗しやすいポイントが異なります。ここでは代表的なトラブル類型ごとに、清算条項が揉めやすい論点と、専門家(弁護士・行政書士)がチェックする重要ポイントを詳しく解説します。
不倫・不貞慰謝料
不倫・不貞慰謝料は、精神的損害に対する賠償金を示談で解決するケースが多く、感情や関係性・将来影響が絡むため、清算条項で失敗しやすい性質があります。
清算条項で揉めやすい論点
精神的損害の範囲が曖昧「慰謝料で全て解決」とだけ書くと、後日に発生した精神的ストレスをめぐり再請求となることがあります。→ 精神的損害は具体的な症状や継続期間によって評価が変わるため、条項が曖昧だと争点になります。
第三者(家族・子ども等)への配慮が欠ける例えば不倫発覚後に子どもに影響が出た場合、将来的な損害の取り扱いで争われる場合があります。
口外禁止条項との整合性不備示談後の内容漏洩やSNS投稿などによる損害を清算条項だけでは防げないケースがあります。
専門家が必ず確認するポイント
項目 | 説明 |
精神的損害の対象 | どの損害が清算対象か明確に記述 |
将来損害の留保 | 後発的な精神的損害の扱いをどうするか |
口外禁止・接触禁止条項 | 情報漏洩や再トラブル防止の規範 |
補足専門家は、慰謝料額だけでなく、「将来発生し得る損害を示談で放棄する範囲」を具体的に限定した文章にすることを重視します。
交通事故
交通事故では、**物的損害・治療費・後遺障害・逸失利益(将来の収入減少の損害)**など、多岐にわたる損害が絡むため、清算条項がトラブルになりやすい分野です。
清算条項で揉めやすい論点
後遺障害が後で判明するケース示談後に後遺障害等級が確定したり、悪化したりすると、「最初の示談では補償されていない」として追加請求が発生することがあります。
将来損害の扱い治療費だけでなく、将来の介護費や収入減少まで含めるかどうかの表現が曖昧だと揉めます。
損害範囲・因果関係の不一致示談時の損害計算が不十分だった場合、その後の精算で争いになることがあります。
専門家が必ず確認するポイント
項目 | 内容 |
後遺障害の留保 | 将来発覚する損害をどう扱うかの条項 |
逸失利益の明確化 | 将来の収入減少への評価基準を明記 |
治療中断リスク | 治療期間や医療費の清算対象範囲確認 |
補足交通事故は医学的な評価が絡むため、示談時点での損害計算を専門家が確認し、予測可能な損害かどうかの線引きを明確に条項に落とし込みます。
暴行・傷害
暴行・傷害は刑事事件と民事請求が同時に進むことが多く、清算条項が刑事責任まで及ぶと誤解されるケースもあります。
清算条項で揉めやすい論点
刑事責任との混同示談で「全て解決」としても、刑事事件における処罰や告訴の権利は民事とは別なため、被害者が後に刑事告訴するケースがあります。
精神的損害の再請求怪我が軽度でも、示談後にPTSD等の精神的損害が明らかになると、清算条項の対象外として争われることがあります。
反復暴行や共犯的事情がある場合単発でないケースでは、示談書で書かれていない行為について責任追及がされることがあります。
専門家が必ず確認するポイント
項目 | 解説 |
刑事責任との線引き | 示談は民事請求権の解決であることを明記 |
精神的損害の範囲 | 後発的ストレスの対象範囲を限定 |
行為の範囲 | 示談がカバーする具体的事実を明確化 |
補足専門家は示談書において、刑事責任は別である旨を明確にし、清算条項が「どこまでの請求権を放棄するか」を具体的に書くよう調整します。
金銭トラブル
貸金の返還や債務整理、借用書の清算などの金銭トラブルでは、利息・遅延損害金・求償関係の整理が甘いと清算条項で揉めることがあります。
清算条項で揉めやすい論点
利息や遅延損害金の扱いが不明確主たる元本のみ清算しても、将来の利息や遅延損害金を含まないと再請求の原因になります。
連帯保証人や第三者の求償関係主債務者との示談で清算条項を書いても、保証人が別途請求されることがあるため揉めやすい。
支払方法や期日の曖昧さ支払いの具体的条件が示談書に明記されていないと、履行遅延や不履行を巡る紛争が起きます。
専門家が必ず確認するポイント
項目 | 内容 |
利息・遅延損害金の明確化 | 利息計算の起点や清算範囲を明記 |
求償権放棄の有無 | 保証人や第三者に及ぶ清算範囲を整理 |
支払条件 | 期日、方法、遅延時対応の明示 |
補足専門家は清算条項だけでなく、求償権放棄条項や違約金条項との関係も整理し、再請求リスクが残らないよう文言を適切に調整します。
トラブル類型別まとめ:チェック表
以下は、今回取り上げた4つのトラブル類型における清算条項の失敗ポイントと専門家チェック項目をまとめた表です。
類型 | 清算条項で揉めやすい論点 | 専門家が確認するポイント |
不倫・不貞慰謝料 | 精神的損害の範囲の曖昧さ | 損害対象・将来損害の留保範囲 |
交通事故 | 後遺障害・将来損害 | 将来費用、逸失利益の明示 |
暴行・傷害 | 刑事責任との混同 | 民事/刑事の線引き |
金銭トラブル | 利息や遅延金、求償関係 | 利息計算・支払条件・求償放棄 |
最後に:失敗を防ぐための基本姿勢
各トラブルには固有のリスクがありますが、共通する重要ポイントは以下の通りです。
清算条項は誰の何を解決するかを明確に書くこと「これで全部解決」とだけ書くと、後で争いになります。
将来の損害や別請求(第三者・関連請求)を明確に線引きすること将来発生する可能性を理解し、示談時に条項の扱いを決めることでリスク回避になります。
専門家(弁護士・行政書士)に文言チェックを依頼すること慰謝料、交通事故、暴行・金銭トラブルいずれでも、プロのチェックがトラブル回避の最大の保障となります。
15.清算条項がある示談書と「公正証書化した示談書」の実務差分調査
示談書に清算条項を入れることで民事上のトラブルを終わらせる効果がありますが、作成方法によって実務上のリスクや効力が大きく変わります。ここでは、私文書として作成した場合と公正証書化した場合の違いを比較し、回収率や再トラブル発生率、強制執行の可否を整理します。
清算条項付き示談書(私文書)と公正証書の違い
まず基本的な違いを整理します。
項目 | 清算条項付き示談書(私文書) | 清算条項付き示談書(公正証書) |
作成主体 | 当事者同士 | 公証人(国家公務員)が作成 |
法的効力 | 原則は契約書として民事効力のみ | 強制執行認諾文言があれば、即時強制執行可 |
証明力 | 紛争時には署名・押印の真偽が争われる可能性あり | 公証人が作成しているため高い証明力を持つ |
作成費用 | 安価(印紙代・コピー程度) | 手数料が必要(数千円~数万円規模) |
取り扱い | 当事者保管 | 公証役場保管+当事者控え |
強制執行 | 別途裁判手続きが必要 | 即時強制執行可能(支払督促や訴訟不要) |
再トラブル発生率 | 高め(条項内容の争いが多い) | 低め(証明力・執行力が高いため) |
回収率の比較
示談金や損害賠償金の回収率は、示談書の形式によって大きく差が出ます。
私文書回収率は60〜70%程度が目安。内容自体は有効ですが、支払いが遅れた場合や不履行時には裁判や調停が必要です。手間や時間、弁護士費用がかかるため、実質的に回収が難しくなるケースがあります。
公正証書回収率は80〜90%以上が期待可能。強制執行が容易なため、債務者が支払わない場合でも裁判手続きなしに差押えや給料の取り立てができます。
補足
交通事故や不倫慰謝料などで示談後すぐに金銭回収したい場合、回収効率の高さは公正証書に大きく軍配が上がります。
強制執行の可否
清算条項付き示談書では、強制執行の可否がトラブル回避の鍵です。
私文書の場合強制執行は原則できません。債務者が支払わない場合、裁判を経て判決を得る必要があります。その間に金銭回収が遅れ、追加費用がかかるリスクがあります。
公正証書の場合示談書に**「金銭支払義務に関する強制執行認諾文言」**を入れることで、債務不履行があればすぐに強制執行可能です。裁判を経る手間が不要で、回収までの期間が短縮されます。
再トラブル発生率
清算条項の効力が争われる典型例として、以下のような再トラブルがあります。
私文書
「どの損害が清算対象か曖昧」で追加請求
「署名や押印の真正性」を巡る争い
「支払い期日や方法」が不明確で督促トラブル
公正証書
公証人による証明力で争いが減少
強制執行可能なため未払いリスクが低減
再請求が認められる場合は、通常は条項内容自体に法的瑕疵があるケースに限定
補足
再トラブル発生率は、示談書の形式だけでなく、条項の文言の明確性が最も大きな要因です。公正証書化しても文言が曖昧なら争いは発生します。
実務上の使い分けの目安
少額・関係性が良好なケース→ 私文書でも十分対応可能。簡易かつ低コスト。
高額・支払い確実性が重要なケース→ 公正証書化が望ましい。交通事故の損害賠償、不倫慰謝料、高額金銭貸借など。
再請求や未払いリスクが高いトラブル→ 公正証書+強制執行認諾文言で安全策を取る。
まとめ
清算条項付き示談書と公正証書化した示談書の実務差分は以下の通りです。
項目 | 私文書 | 公正証書 |
法的効力 | 民事効力のみ、証明力は低め | 民事効力+高い証明力、強制執行可能 |
回収率 | 60〜70% | 80〜90%以上 |
強制執行 | 裁判が必要 | 裁判不要、即時執行可 |
再トラブル | 条項争いで発生しやすい | 証明力が高く発生率低い |
作成コスト | 安価 | 手数料必要 |
結論
示談書の清算条項は、単に「書いて終わり」ではなく、形式と文言の明確性がトラブル防止の鍵です。特に高額の慰謝料・損害賠償の場合や、相手の支払い能力に不安がある場合は、公正証書化して強制執行認諾文言を入れることが、最大のリスク回避策になります。
16.「清算条項を入れなかった場合」に起きた二次被害の分析
示談書に清算条項を入れないまま作成すると、一見解決したように見えても、後日トラブルや追加請求が発生するリスクがあります。ここでは、過去の相談・依頼案件をもとに、清算条項未記載で起きた二次被害の典型例を整理します。
再請求が発生したケース
ケース例:交通事故による示談
内容:治療費と慰謝料の支払いで示談書を作成
清算条項:未記載
発生した問題:被害者が後日、通院記録の追加費用を理由に再請求
結果:加害者側は追加請求を拒否するため、裁判・調停に発展
ポイント
清算条項がない場合、**「支払い済みかどうか」「どの損害が含まれるか」**が不明確になり、再請求の理由を与えてしまいます。
追加請求が発生したケース
ケース例:不倫・不貞慰謝料
内容:慰謝料の支払いで示談成立
清算条項:未記載
発生した問題:相手方が慰謝料に加えて精神的損害や交通費を追加請求
結果:追加請求が認められる場合と、争われる場合に分かれ、再交渉や訴訟が必要
ポイント
清算条項がないと、**「慰謝料で全ての損害が清算されたのか」**が争点になります。
追加請求がある場合、再度交渉や訴訟に時間と費用がかかります。
請求額増額が発生したケース
ケース例:金銭トラブル
内容:貸金返済について示談書を作成
清算条項:未記載
発生した問題:利息や遅延損害金を後から請求され、当初の返済額より増額
結果:加害者(借主)側は不満を訴え、支払い計画を再調整する羽目に
ポイント
清算条項がない場合、金額や範囲の確定が不明確となり、請求額増額につながります。
明確に「本件に関するすべての債権を清算する」と書いておくことが重要です。
二次被害の整理
過去の事例から、清算条項未記載のリスクを整理すると次の通りです。
二次被害の種類 | 具体例 | 発生原因 |
再請求 | 交通事故の治療費追加 | 清算範囲が不明確 |
追加請求 | 不倫慰謝料の精神的損害追加 | 「慰謝料だけ」など限定的記載のみ |
請求額増額 | 金銭トラブルで利息・遅延損害金追加 | 支払対象や期間が曖昧 |
訴訟・調停発生 | 上記いずれの場合も | 当事者間の解釈の違いによる紛争 |
まとめ
清算条項未記載の示談書は、後日の二次被害の温床になりやすい。
再請求・追加請求・請求額増額のいずれも、条項が明確であれば防げるケースが多い。
示談書作成時には、**「何を、どこまで、どの範囲で清算するか」**を具体的に記載することが、二次トラブルを防ぐ最大のポイントです。
17.清算条項をめぐる「依頼者の誤解・思い込み」実態整理
示談書に清算条項を入れると、トラブルを終わらせる効果があることは確かですが、依頼者の中には誤解や思い込みによって過信してしまうケースが多く見られます。ここでは、相談時に実際によくある誤解と、実務上の正しい整理を解説します。
相談時によくある誤解
示談書を作成する際に、依頼者からよく出る発言として以下のパターンがあります。
「清算条項があれば、絶対にこれ以上請求されない」
「将来的に後遺障害が出ても、請求はできない」
「条文に書いてあれば、どんな内容でも法的に有効」
これらの誤解をそのまま信じると、示談後にトラブルが再燃するリスクがあります。
「清算条項があれば絶対に終わる」という誤解
多くの依頼者は、清算条項を入れれば**「示談成立=完全終了」**だと考えます。
実務上の注意点
清算条項は契約上の合意であり、法的に絶対の効力を持つわけではありません。
例外として、以下のような場合には再請求が可能です。
錯誤や詐欺があった場合
将来発生が予見できなかった損害
公序良俗違反や強行規定違反
例え話
清算条項は「保険の安全装置」のようなもの。装置を付けても、想定外の事態(事故や故障)が起きた場合は別の手段が必要になることがあります。
「後遺症が出ても請求できない」という誤解
交通事故などでよくある誤解です。
依頼者:「示談書に清算条項を書いたから、後遺障害が出ても請求できないのでは?」
実際:将来発生する損害や後遺障害は、明確に除外しない限り、一定の条件下で請求可能です。
補足
示談当時に予見できなかった損害や医療費は、清算条項の対象外と判断される場合があります。
「後遺障害が出た場合は例外として請求可能」と明記する方法もあります。
「書いてあれば何でも有効」という誤解
依頼者の中には、「条文に書いてあるから安心」と思い込み、条文の文言や形式を軽視するケースがあります。
実務上の注意点
曖昧な表現は争点になりやすい
法的効力は文言の明確さと当事者の合意が前提
公正証書化することで証明力や執行力が高まる
例「本件に関し一切の請求をしない」という表現だけでは、将来損害の範囲や細かい費目が不明瞭になり、再請求リスクが残ります。
実務上の正しい整理
依頼者が安心して示談を成立させるためには、次のポイントを確認することが重要です。
ポイント | 説明 |
条文の明確性 | 何を清算するのか(慰謝料、治療費、将来損害など)を具体的に記載 |
将来損害の扱い | 後遺症・追加費用など予見不能損害の扱いを明記 |
執行力の確保 | 公正証書化や強制執行認諾文言の検討 |
例外規定の理解 | 錯誤・詐欺・公序良俗違反など再請求可能な場合を事前に整理 |
まとめ
清算条項は強力なトラブル防止ツールですが、「書いたら絶対安心」ではないことを理解することが重要です。専門家と相談し、条文の範囲や文言を正確に定めることで、思わぬ二次被害を防ぐことができます。
契約書作成は弁護士・行政書士どっちに依頼すればいい?
契約書を作成する際、「弁護士と行政書士、どちらに依頼すればよいのか?」と悩む方は多いでしょう。どちらの専門家も契約書作成の業務を行いますが、その役割や対応範囲には違いがあります。本記事では、専門家に依頼するメリットや具体例を交えながら、どちらを選ぶべきかを解説します。
専門家に依頼するメリット
1. 契約のリスクを防げる
契約書には、当事者同士の合意内容が明確に記載されます。しかし、素人が作成すると、法律的に不備があったり、トラブルが発生したときに対応しきれなかったりするリスクがあります。専門家に依頼することで、契約の抜け漏れを防ぎ、将来的なトラブルを未然に防ぐことができます。
具体例
たとえば、フリーランスが企業と業務委託契約を結ぶ際、報酬の支払い期限や業務範囲の記載が不明確だと、後々「こんなはずじゃなかった」と揉める原因になります。専門家に依頼すれば、報酬の支払い遅延時のペナルティや、契約解除の条件など、重要な事項を適切に盛り込んだ契約書を作成できます。
2. 自社や個人に適した契約内容にできる
契約書の雛形(テンプレート)はインターネット上にもありますが、それをそのまま使うと、自社のビジネスモデルに合わなかったり、不要な条項が含まれていたりすることがあります。専門家は依頼者の事情をヒアリングし、最適な契約書を作成してくれます。
具体例
例えば、飲食店のオーナーがテナント契約を結ぶ際、一般的な賃貸借契約書だけでは、営業時間の制限や原状回復義務について十分にカバーされていないことがあります。専門家に相談すれば、こうした細かい点も考慮した契約書を作成でき、トラブルを未然に防げます。
行政書士と弁護士の違いは?
契約書作成を依頼できる専門家には、行政書士と弁護士の2種類があります。それぞれの違いを理解することで、自分に適した専門家を選びやすくなります。
行政書士:契約書作成の専門家
行政書士は、主に「契約書の作成」を専門とする国家資格者です。法律に基づいた正確な契約書を作成し、行政手続きや許認可申請にも対応できます。
具体例
・事業者間の業務委託契約書の作成 ・飲食店や美容サロンなどのテナント契約書の作成 ・売買契約書や合意書の作成
ただし、行政書士は「紛争が発生した場合の代理交渉」や「法廷での弁護」は行えません。トラブルが発生した際の対応まではできないため、契約内容に不安がある場合は、弁護士に相談する必要があります。
弁護士:法律トラブルに対応できる専門家
弁護士は、契約書の作成だけでなく、契約に関する紛争対応や訴訟の代理もできる法律の専門家です。トラブルが発生した際のリスクを考慮し、より強固な契約書を作成できます。
具体例
・企業間の買収、合併契約書の作成と交渉 ・高額な不動産売買契約の作成とリーガルチェック ・契約違反が起きた際の法的対応
弁護士に依頼すると、契約書の作成だけでなく、万が一の紛争時にも対応してもらえるというメリットがあります。ただし、弁護士の費用は行政書士より高額になることが一般的です。
専門家に依頼する際の費用と流れ
費用の相場
依頼する専門家や契約書の種類によって、費用は異なります。一般的な相場は以下のとおりです。
専門家 | 費用の目安 |
行政書士 | 契約書作成3万~10万円、リーガルチェック1万~3万 |
弁護士 | 契約書作成10万~30万円、紛争対応10万円以上 |
行政書士は比較的リーズナブルな価格で契約書を作成できますが、紛争対応はできません。一方、弁護士は費用が高めですが、契約のリスク管理を徹底できるというメリットがあります。
依頼の流れ
専門家を選ぶ:契約内容や将来的なリスクを考慮し、行政書士か弁護士のどちらに依頼するか決める。
相談・ヒアリング:依頼者の状況を詳しく聞き、契約書の目的や必要な条項を確認する。
契約書の作成・修正:専門家が契約書を作成し、依頼者と確認しながら修正を加える。
最終確認・納品:完成した契約書を納品し、必要に応じて公証役場での認証を行う。
具体例
たとえば、フリーランスが業務委託契約を結ぶ際、
行政書士に相談し、業務範囲や報酬条件をヒアリング。
契約書のドラフトを作成し、内容を確認。
必要に応じて修正し、最終版を納品。
依頼者が契約書に署名し、取引先と締結。
このような流れで進めるため、契約の重要性を理解しながら進めることができます。
まとめ
契約書作成を専門家に依頼することで、契約のリスクを防ぎ、スムーズな取引を実現できます。
行政書士は契約書の作成が得意で、費用を抑えられるが、紛争対応はできない。
弁護士は契約書作成に加えてトラブル対応も可能だが、費用は高め。
契約内容や想定リスクに応じて、適切な専門家を選びましょう。
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