「治療費は全額清算」の示談書に注意‼交渉時に見落とされがちな一文
- 代表行政書士 堤

- 8 分前
- 読了時間: 45分
🌺こんにちは!おてがる契約書の代表行政書士 堤です。
本日は示談書についての重要なポイントを解説したコラム記事をお届けします。
交通事故や怪我の示談交渉では、「治療費は全額清算」と書かれた一文が思わぬトラブルの原因になることがあります。表面的にはシンプルでも、症状固定前や後遺障害未確定の段階で署名してしまうと、将来の請求権を失うリスクがあります。本コラムでは、初心者でもわかるように、危険な文言や注意点を詳しく解説します。
本記事のまとめ:
重要事項 | 概要 |
|---|---|
症状固定前や後遺障害未確定の場合、将来の損害請求権が制限される可能性がある。 | |
「現時点まで」「後遺障害を除く」など、権利を保護する文言を使う。 | |
文言の曖昧さやリスクを見落とすと、後で取り返しがつかなくなる場合がある。 |
🌻「示談書を交わしたはずなのに、あとで追加請求できない…」そんな後悔を防ぐために、ぜひ本記事をお読みください。具体例や実務での文言の工夫を紹介し、あなたの権利を守るための示談書の読み方と交渉のポイントをわかりやすく整理しています。
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▼目次
~事例・比較分析紹介~
~番外編~
1.「治療費は全額清算」とは何を意味するのか
交通事故や医療トラブルなどで示談書を作成するとき、よく目にする表現に「治療費は全額清算」という一文があります。しかし、この言葉の意味を正しく理解していないと、後々追加請求ができない、あるいはトラブルが再燃する原因になりかねません。ここでは「治療費は全額清算」の法的意味や注意点を丁寧に解説します。
示談書における「清算」「終局的解決」の法的意味
示談書で「清算」という言葉が使われるとき、法律上は単なる「支払い」という意味だけでなく、「これで当事者間の問題は最終的に解決した」という意味も含まれます。特に「終局的解決」という言葉が添えられている場合、示談書の条文は次のような効力を持つことになります。
当事者同士での金銭請求権が、示談書で決めた範囲を超えて存在しない
後日、同じ内容で追加請求を行うことが困難になる
裁判になった場合、示談書を証拠として「すでに合意済み」と主張される
つまり、示談書で「治療費は全額清算」と記載すると、支払済みの金額については将来追加請求ができなくなる可能性があります。法律上は、この一文があるかないかで、後のトラブルリスクが大きく変わるのです。
「支払済み」と「今後一切請求しない」の違い
一見似ているようで、実務上は大きな違いがあります。
表現 | 意味 | 実務上の注意点 |
支払済み | 現在までの治療費は支払った | 今後の追加請求の余地は残る |
今後一切請求しない | 将来の治療費や追加費用も請求しない | 後日追加費用が発生しても請求不可になる可能性あり |
例えば、事故直後の治療費は全額支払ったとしても、後遺症が出て追加治療が必要になる場合があります。示談書に「今後一切請求しない」と明記されていると、この追加費用を相手に請求できないリスクがあります。
ここが初心者が見落としがちなポイントです。「全額清算=支払済み」と安易に理解すると、後で痛い目を見ることがあります。
保険会社が使う定型文の特徴
実務上、保険会社が示談書に盛り込む文言には一定のパターンがあります。よくある例は以下の通りです。
「本件に関する一切の金銭債権はこれをもって清算済みとする」
「将来の損害についても請求しないものとする」
ポイントは、「一切の金銭債権」「将来の損害」といった文言が入っているかどうかです。これらが入っている場合、後日追加治療費や慰謝料を請求することは原則として難しくなります。
保険会社はこの表現を使うことで、会社側のリスクを最小化し、示談を“終わらせる”ことを目的としています。したがって、被害者側としては、この一文を軽く見て署名してしまうと、後で困るケースが少なくありません。
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2.交通事故の治療費は本来どこまで請求できるのか
交通事故の示談交渉で重要なのは、「治療費がどこまで請求できるのか」を正しく理解することです。「治療費は全額清算」と示談書に書かれてしまうと、後から必要な治療費を請求できなくなるリスクがあります。ここでは、治療費の請求範囲を法律や実務の観点から整理します。
治療費の基本的な支払原則
交通事故で被害者が加害者側や保険会社に請求できる治療費は、原則として「必要かつ相当な治療費」です。
必要な治療費:医学的に治療が必要と認められる費用
相当な治療費:社会通念上、過剰でない金額
例えば、事故直後の通院や整骨院での治療、必要な検査費などが該当します。逆に、医学的に不要な過剰な施術や、保険適用外の高額サービスは「相当な治療費」とは認められない場合があります。
表で整理すると次のようになります。
請求できる治療費 | 説明 | 例 |
必要かつ相当な治療費 | 医学的に必要で、過剰でない費用 | 整形外科での通院、レントゲン検査、処方薬 |
請求が難しい治療費 | 不要または過剰と判断される費用 | 高額な美容整形、過剰なマッサージ代、自己判断での高額治療 |
完治まで/症状固定まで
治療費の請求は、基本的に症状固定までが原則です。症状固定とは、「これ以上治療を続けても症状が改善しない状態」を指します。完治とは異なり、多少の後遺症が残ることもあります。
完治まで請求できる場合:事故による症状が完全に治まるまでの治療費
症状固定まで請求できる場合:医学的にこれ以上の回復が見込めない時点まで
実務上は症状固定後も追加治療が必要になることがあります。この場合、示談書で「全額清算」と書かれていると、追加費用を請求できないリスクがあるため注意が必要です。
通院継続中の場合の扱い
示談交渉時にまだ通院が継続している場合、「全額清算」と書くことは非常に危険です。
通院中の患者は、今後の治療費や検査費がまだ発生する可能性があります
そのため、「現時点で支払われた費用を清算」と限定して記載するのが望ましい
例えば以下のように条文を工夫します。
安全な書き方:「○○までに支払われた治療費については清算済みとする」
避けたい書き方:「治療費は全額清算する」→将来の治療費請求もできなくなる可能性あり
治療費と慰謝料・後遺障害との関係
治療費だけでなく、交通事故では慰謝料や後遺障害に関する補償も関係します。
治療費は実際にかかった医療費が対象
慰謝料は通院日数や入院日数に応じて精神的損害を金銭換算
後遺障害等級が認定される場合は、後遺障害慰謝料や逸失利益も請求可能
ポイントは、示談書で「治療費全額清算」と書いてあっても、慰謝料や後遺障害慰謝料は別途請求できるケースがあることです。ただし、示談書の文言によっては慰謝料も含めて「一切請求しない」とされる場合があるため、条文の確認が重要です。
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3.「全額清算」条項が問題になる典型パターン
示談書の「治療費は全額清算」という一文は、場合によっては被害者に不利に働くことがあります。特に、示談のタイミングや条文の書き方によっては、後から治療費や慰謝料を追加請求できなくなるリスクがあります。ここでは、典型的な問題パターンを整理します。
症状固定前に示談してしまったケース
示談書を作成するタイミングは非常に重要です。症状固定前に「全額清算」と記載して示談してしまうと、まだ続く治療費を請求できなくなる可能性があります。
具体例
交通事故でむち打ち症を負った
事故から2か月で示談書を作成し、「治療費は全額清算」と署名
その後、3か月目に追加で必要なリハビリが発生
示談書の文言により、追加治療費は保険会社に請求できない
このように、症状固定前の示談は非常に危険です。法律上は「まだ治療が必要」と判断されても、示談書が優先されるため、請求権を失うことがあります。
後遺障害が後から判明したケース
後遺障害は、事故直後には症状が明確でない場合があります。示談時に「全額清算」と書かれていると、後遺障害が判明した際に追加補償を請求できない可能性があります。
ポイント
後遺障害が判明するのは数か月〜1年後
後遺障害慰謝料や逸失利益は示談書で明確に除外していないと請求不可
「治療費全額清算」と書かれているだけでは、後遺障害補償も含まれる可能性がある
表に整理すると分かりやすいです。
ケース | 示談書の条文 | 後日請求の可否 |
後遺障害が未確定 | 「治療費は全額清算」 | 後遺障害慰謝料も含めて請求できない可能性あり |
後遺障害が明記されていない | 「治療費及び後遺障害慰謝料を除く全額清算」 | 後遺障害慰謝料は請求可能 |
治療費と慰謝料を一括で処理しているケース
示談書の中には、治療費だけでなく慰謝料や休業損害まで一括で清算する条文が入っている場合があります。この場合、どの費用まで含まれるのかが曖昧になり、後日トラブルになることがあります。
具体例
示談書に「本件に関する一切の金銭債権はこれをもって清算する」と記載
実際には治療費は支払われたが、慰謝料が過少
「清算済み」とされるため、後から追加慰謝料を請求できない
ポイント:条文が抽象的すぎると、示談の対象範囲を巡って争いが生じやすくなります。
「既払金を含め清算」と書かれている場合
示談書に「既払金を含め清算」と書かれている場合は特に注意が必要です。これは、これまでに支払った治療費や一時金を差し引いた上で「残額も含めて清算した」という意味で解釈されることがあります。
注意点
既払金の金額が正確か確認が必要
不明確な場合、後日追加請求が困難になるリスク
「○○円までの既払金を含め清算」と具体的に明記されているかがポイント
具体例
既払金10万円を含め清算
実際の治療費は15万円必要だったが、示談書の文言により残り5万円の請求が難しくなる
まとめると、「全額清算」条項は一見シンプルですが、症状固定前の示談、後遺障害の有無、治療費と慰謝料の一括処理、既払金の取り扱いによって、大きなリスクが生じます。示談書に署名する前に、条文の意味と将来の請求可能性をしっかり確認することが重要です。
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4.見落とされがちな危険な一文の具体例
示談書に署名する際、「治療費は全額清算」と書かれているだけでなく、さらに将来の請求を制限する危険な文言が含まれていることがあります。これらの一文を見落とすと、後日必要な治療費や慰謝料の請求ができなくなるリスクがあります。ここでは、実務上特に注意すべき条文例とその危険性を解説します。
「本件事故に関し、治療費を含む一切の損害は解決済みとする」
この文言は一見シンプルですが、実務上は非常に強力です。
「一切の損害」と書かれている場合、今後発生する損害も含めて請求できないと解釈される可能性があります
治療費、休業損害、慰謝料、後遺障害慰謝料まで全て含まれるケースもある
具体例
示談書署名前:事故によるむち打ち症で通院中
示談書条文:「本件事故に関し、治療費を含む一切の損害は解決済みとする」
署名後:追加のリハビリや検査費を請求できない可能性
ポイント:通院中に署名すると、症状固定前でも追加治療費を請求できなくなる危険があります。
「今後名目の如何を問わず請求しない」
この条文は、示談書の範囲をさらに広げる表現です。
「名目の如何を問わず」とは、治療費だけでなく慰謝料や雑費などの請求も含むことができる
法律上は、将来どんな理由であっても請求権を放棄したと見なされる
具体例
示談書条文:「今後名目の如何を問わず請求しない」
事故後に発生した後遺障害慰謝料や通院交通費も含まれ、請求できないリスク
「後日発生する損害についても請求しない」
この一文は、最も危険なパターンの一つです。
「後日発生する損害」には、症状固定後に必要になる追加治療費やリハビリ費も含まれる
後遺障害認定後の逸失利益請求も影響を受ける可能性がある
具体例
示談書作成時:むち打ち症の通院中
事故から半年後:後遺障害が判明し、追加の治療費や慰謝料が必要
結果:「後日発生する損害についても請求しない」があるため、請求できない可能性が高い
なぜこの文言が危険なのか(実務解説)
これらの文言が危険なのは、将来発生する費用や損害まで請求権を放棄する形になるからです。示談書は署名することで法的効力を持ち、裁判でも「すでに合意済み」として認められる場合があります。
表にまとめるとわかりやすいです。
危険な文言 | 想定される影響 | 注意点 |
本件事故に関し、治療費を含む一切の損害は解決済みとする | 将来の治療費・慰謝料・休業損害も請求できなくなる | 通院中や症状固定前に署名しない |
今後名目の如何を問わず請求しない | 名目に関係なく全ての損害請求権を放棄 | 条文の対象範囲を限定する文言に変更 |
後日発生する損害についても請求しない | 後日発生する治療費や後遺障害補償も請求不可 | 「現時点で支払済みの治療費のみ」と限定 |
実務上のポイント
通院継続中や症状固定前に署名しない
将来の請求権を放棄する条文が含まれていないか確認
必要に応じて「現時点で支払済みの金額に限る」と条文を修正
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5.「治療費は全額清算」でも例外的に争える余地はあるのか
示談書に「治療費は全額清算」と書かれている場合、基本的には追加請求が難しくなります。しかし、法律上・実務上は例外的に争える余地が残るケースもあります。ここでは、どのような状況で争いが可能か、実務上の傾向を整理します。
錯誤・説明義務違反が問題になる可能性
示談書に署名した当時、内容や条文の意味を誤解していた場合、「錯誤」による取消しが検討できる場合があります。
錯誤の例:治療費の清算範囲を誤解して署名
保険会社・加害者の説明義務違反:重要な条文について十分な説明がなかった場合
具体例
示談書に「治療費は全額清算」と記載されていたが、通院中の追加治療費を請求できると誤解して署名
後日、署名時に十分な説明がなかったことを根拠に争う
ただし、実務では裁判で錯誤を認めてもらうのは簡単ではなく、証拠や説明内容の記録が重要です。
後遺障害の未確定性
事故直後に症状固定や後遺障害の有無が確定していない場合は、示談書が「全額清算」となっていても、後遺障害補償の請求は例外として争える可能性があります。
症状固定前や後遺障害等級が未確定の状態で示談
後日、後遺障害が認定された場合
「全額清算」の条文が治療費のみを対象としているかどうかが争点
具体例
状況 | 示談書条文 | 実務上の争点 |
通院中に示談 | 治療費全額清算 | 後遺障害が後日判明 → 裁判で請求可否を争える余地 |
後遺障害認定後 | 治療費全額清算 | 後遺障害慰謝料・逸失利益の請求は条文の対象外と解釈される場合あり |
判例・実務上の判断傾向(概要レベルで)
過去の裁判例や実務の傾向からは、以下のような考え方が一般的です。
明確に「今後一切請求しない」と書かれていれば争いは困難→ 将来発生する費用や慰謝料まで含む場合は原則として請求不可
治療費のみを対象とする条文や、曖昧な条文の場合は争いの余地あり→ 後遺障害補償や追加治療費の請求が認められるケースもある
示談時の説明不足や錯誤を根拠に争うケースもあるが、立証が必要→ 保険会社側の説明資料や医師の診断書が重要
ポイント
「全額清算」と書かれていても、示談書作成時の状況や条文の範囲で争える場合がある
特に症状固定前・後遺障害未確定・説明義務違反は例外として注目される
実務では、これらの争いは慎重に進める必要があり、弁護士など専門家の判断が重要
6.示談交渉時に必ず確認すべきチェックポイント
示談書に署名する前には、条文や条件をしっかり確認することが非常に重要です。「治療費は全額清算」と書かれた示談書でも、事前にチェックしておけばリスクを大幅に減らせます。ここでは、交渉時に必ず確認すべきポイントを整理します。
治療は終了しているか
まず確認すべきは、治療がすでに終了しているかどうかです。
通院中に「全額清算」と署名すると、追加の治療費を請求できなくなる可能性があります
目安としては、症状が安定し、医師から「これ以上の治療は不要」と言われている状態
具体例
むち打ち症で週2回通院中に示談書を作成
署名後、追加でリハビリが必要になった場合 → 保険会社に請求不可の可能性
ポイント:示談書に署名する前に、必ず医師と確認し、治療が終了しているかどうかを確認しましょう。
症状固定の診断は出ているか
示談交渉時に症状固定の診断が出ているかも重要です。
症状固定前に示談すると、今後の追加治療費や後遺障害の申請に影響する場合があります
症状固定とは、「これ以上治療しても症状が改善しない状態」を意味します
具体例
状況 | 問題点 | 対策 |
症状固定前 | 将来の治療費請求ができなくなるリスク | 症状固定の診断を受けてから示談 |
症状固定後 | 後遺障害申請も可能 | 示談書で条文を確認 |
後遺障害申請の可能性
交通事故では、後遺障害が後から判明することがあります。示談書を作る前に、後遺障害申請の可能性を確認することが大切です。
後遺障害が認定されれば、追加の慰謝料や逸失利益を請求可能
示談書に「全額清算」とだけ書かれていると、後遺障害補償まで含まれる場合がある
具体例
示談書署名前:症状は軽度だが、後遺障害認定の可能性あり
示談書条文:「治療費全額清算」 → 後遺障害慰謝料も含まれる可能性
対策:条文に「後遺障害認定後の補償は別途請求可能」と明記
治療費と慰謝料の内訳が分かれているか
示談書で治療費と慰謝料が一括で記載されていないかも確認しましょう。
一括処理されると、どこまでが治療費でどこまでが慰謝料か分からなくなり、後日トラブルの原因に
できれば、治療費・慰謝料・休業損害の内訳が明確に分かれている条文にする
表で確認例
項目 | 金額 | 備考 |
治療費 | 50万円 | 通院・検査・薬代 |
慰謝料 | 20万円 | 通院日数・入院日数に基づく |
休業損害 | 10万円 | 事故による欠勤日数に基づく |
清算条項に「留保」があるか
最後に、清算条項に「留保(りゅうほ)」の記載があるかを確認します。留保とは、将来発生する可能性のある費用をあらかじめ除外することを意味します。
「○○までの治療費は清算済み」と書かれていれば、将来の治療費は別途請求可能
留保がない場合、全ての費用を放棄する形になり、後日請求できなくなるリスク
具体例
留保あり:「現時点までの治療費は清算済み。今後必要な治療費は別途請求可能」
留保なし:「治療費は全額清算する」 → 今後の追加治療費も請求不可の可能性
まとめ
示談交渉時には、以下のポイントを必ず確認することで、将来の請求権を守ることができます。
治療が終了しているか
症状固定の診断が出ているか
後遺障害申請の可能性を考慮しているか
治療費と慰謝料・休業損害の内訳が明確か
清算条項に留保が設けられているか
これらを確認することで、「治療費は全額清算」と書かれていても、将来の追加費用や補償請求の可能性を残すことができます。
7.安全な示談書にするための修正文言の考え方
示談書の条文をそのまま署名してしまうと、将来の治療費や慰謝料の請求ができなくなるリスクがあります。そこで、安全に示談書を作成するためには、条文を修正して将来の請求権を残す工夫が重要です。ここでは、実務でよく使われる修正文言や交渉のポイントを整理します。
「現時点までの治療費に限り清算する」
まず基本となるのが、**「現時点までの治療費に限り清算する」**という文言です。
通院中であっても、これまで支払われた治療費のみを示談の対象にする
将来発生する追加治療費は別途請求可能
具体例
修正文言:「現時点までに支払われた治療費については清算済みとし、今後必要な治療費は別途請求可能」
効果:通院継続中でも、将来の治療費請求ができる
表に整理するとわかりやすいです。
条文 | 効果 | リスク回避ポイント |
治療費は全額清算する | 現在・将来の治療費すべて請求不可 | 通院中や症状固定前に署名すると追加費用が請求できない |
現時点までの治療費に限り清算する | 現在までの費用のみ清算、将来分は請求可能 | 将来の治療費を守れる |
「後遺障害が認定された場合を除く」
後遺障害が判明する可能性がある場合は、**「後遺障害が認定された場合を除く」**という条文を入れることで安全性を高められます。
事故直後では後遺障害の有無が不明なケースがある
将来の後遺障害慰謝料や逸失利益を請求できる余地を残す
具体例
修正文言:「本示談により現時点までの治療費は清算するが、後遺障害が認定された場合の慰謝料・逸失利益は別途請求可能」
効果:将来後遺障害が認定されても、請求権を残すことができる
治療費・慰謝料・後遺障害を分けて処理する
安全な示談書作成の基本は、費目ごとに分けて条文を作ることです。
治療費、慰謝料、休業損害、後遺障害慰謝料を明確に区分
一括で「全額清算」とせず、各項目ごとに清算範囲を限定
表で例示
項目 | 清算対象 | 留保・例外 |
治療費 | 現時点まで | 今後の治療費は別途請求 |
慰謝料 | 現時点までの通院日数に応じた額 | 追加通院が発生すれば請求可能 |
後遺障害慰謝料 | なし | 後遺障害認定後に請求可能 |
休業損害 | 現時点で確定分 | 将来の欠勤があれば別途請求可能 |
このように費目ごとに分けることで、条文の曖昧さによるトラブルを防げます。
条項修正を求める際の交渉実務
実務上、示談書の修正を求める際には以下のポイントが重要です。
具体的な条文案を提示する
「治療費は現時点まで」「後遺障害は除外」など具体的な文言を提案
なぜ修正が必要か理由を説明する
将来の追加費用を請求できないリスクを丁寧に説明
保険会社や相手側と柔軟に交渉する
強硬に全額清算を押し付けられる場合もあるため、条文を分ける工夫や留保を残す交渉
交渉記録を残す
将来のトラブルに備え、修正交渉の経緯は書面やメールで記録
具体例
交渉文言案:「治療費は現時点まで清算。症状固定後に追加治療が必要な場合は別途請求可能」
効果:保険会社も理解しやすく、示談後のトラブルを予防できる
このように、示談書を安全に作成するには、条文の具体性・留保の明示・費目ごとの分離・交渉記録の確保が重要です。これらを押さえることで、「治療費は全額清算」と書かれていても、将来必要な費用や補償請求の可能性を守ることができます。
8.保険会社から示談書が届いたときの正しい対応
交通事故後、保険会社から示談書が届くと、つい「早くサインしなければ」と焦ってしまいがちです。しかし、示談書に署名すると法的拘束力が生じるため、安易にサインすることは非常に危険です。ここでは、保険会社から示談書が届いた際の正しい対応を整理します。
すぐにサインしてはいけない理由
まず、示談書が届いたらすぐに署名してはいけません。
示談書は署名した時点で法的効力を持つ
「治療費は全額清算」「今後請求しない」といった条文により、将来の追加請求ができなくなる可能性がある
通院中や症状固定前に署名すると、必要な治療費や慰謝料を失うリスクがある
具体例
事故後1か月で示談書が届き、通院が続いている状態で署名
その後、リハビリや追加検査が必要になったが、示談書により請求不可
ポイント:示談書を受け取ったら、内容を確認し、焦って署名しないことが重要です。
修正交渉は可能か
示談書に不利な条文が含まれていても、条文の修正を求める交渉は可能です。
保険会社は交渉の余地を理解しており、柔軟に条文を修正できる場合がある
「現時点までの治療費に限る」「後遺障害は別途請求可能」などの修正文言を提案できる
具体例
修正前 | 修正後 | 効果 |
治療費は全額清算 | 現時点までの治療費に限り清算 | 今後の治療費請求が可能 |
今後名目の如何を問わず請求しない | 後遺障害認定後の慰謝料は除外 | 後遺障害慰謝料や逸失利益を請求できる |
ポイント:条文の曖昧さや過度な制限は、遠慮せず修正を求めましょう。
自分で交渉するリスク
自分だけで保険会社と交渉すると、思わぬ落とし穴があります。
保険会社の提示条件をそのまま受け入れやすい
専門的な条文の意味やリスクを見落とす可能性
後日、追加請求が認められずトラブルになるケースが多い
具体例
「全額清算」とだけ書かれた示談書に署名
後日、追加治療費や慰謝料を請求したが、条文の効力により認められず
ポイント:法律的な意味を正しく理解していないと、知らないうちに権利を放棄してしまう可能性があります。
専門家チェックの重要性
示談書は専門家にチェックしてもらうのが最も安全です。
弁護士や行政書士に条文を確認してもらう
危険な条文や将来の請求権を失う条文を指摘してもらう
修正文言の提案や交渉サポートも受けられる
実務の流れ例
保険会社から示談書を受領
示談書の条文をコピー・保存
専門家にチェック依頼
修正条文の提案・交渉
安全な条文で署名
この流れを踏むことで、後日トラブルや請求不可になるリスクを大幅に減らすことができます。
まとめ
示談書はすぐにサインせず、内容を確認する
不利な条文は修正交渉できる
自分だけの判断で署名するリスクは大きい
専門家によるチェックと交渉サポートが非常に重要
これらを守ることで、「治療費は全額清算」と書かれていても、将来必要な治療費や慰謝料の請求権を守ることが可能です。
9.まとめ|「治療費は全額清算」の一文が人生を左右する
交通事故後の示談書は、一見シンプルな書面でも、人生に大きな影響を与える重要な文書です。特に「治療費は全額清算」という一文は、注意して扱わなければ、将来の請求権を失うリスクがあります。ここでは、示談書の意味と注意点を改めて整理します。
示談書は「終わらせる書面」
示談書は法律上、事故やトラブルを最終的に解決するための書面です。
署名すると、原則として契約内容に従う義務が生じる
「治療費全額清算」と書かれていれば、現時点の治療費だけでなく、将来の追加治療費も含まれる場合がある
言い換えれば、署名した瞬間に争いを終わらせる効力を持つ
例え話
示談書は、交通事故トラブルの「ゴールテープ」のようなものです。テープを切った瞬間、そこから先は争えなくなるとイメージすると分かりやすいです。
しかし、終わらせ方を間違えると取り返しがつかない
示談書の条文を安易に受け入れると、後で困るケースがあります。
通院中に「全額清算」と署名 → 追加治療費が請求できない
後遺障害が判明 → 補償請求ができない
治療費・慰謝料・休業損害を一括処理 → 内訳が不明で後日トラブル
表で整理
条文の書き方 | 可能なリスク | 安全策 |
治療費は全額清算 | 通院中でも追加費用請求不可 | 「現時点までの治療費に限る」と修正 |
今後一切請求しない | 後遺障害補償や慰謝料も請求不可 | 後遺障害認定後は除外と明記 |
治療費・慰謝料を一括 | 内訳不明でトラブル | 各費目ごとに分けて条文作成 |
不安がある場合は必ず専門家に相談を
示談書は一度署名すると法的拘束力を持つため、不安や疑問がある場合は専門家に相談することが最も安全です。
弁護士や行政書士に条文チェックを依頼
危険な条文の指摘や修正文言の提案
将来の追加請求を守るための交渉サポート
ポイント:自分だけの判断で署名せず、専門家の助言を受けることで、後悔やトラブルを防ぐことができます。
最終的な注意点
「治療費は全額清算」の一文は一見無害でも、将来の費用請求権に大きく影響する
通院中や症状固定前に署名するとリスクが高い
条文の範囲を限定したり、留保を入れることで安全性を高められる
不安がある場合は必ず専門家に確認する
示談書は人生を左右する重要な書面です。焦らず、条文の意味を理解した上で署名することが、将来の安心につながります。
~事例・比較分析紹介~
10.「治療費は全額清算」と書かれている示談書に含まれる共通フレーズ調査
交通事故やその他のトラブルで示談書が作成されるとき、「治療費は全額清算」のような条文は必ずしも単独で書かれるわけではありません。実際にはさまざまな専門家コラムや示談雛形、保険会社の書式などから、似た意味の文言や清算条項として使われるフレーズが多数見られます。以下では、公開されている裁判関連サイトや法律事務所・専門家コラムなどで確認できる文言パターンを収集し、分類して解説します。
「治療費清算」に関する代表的な条文パターン
示談書に含まれる「治療費清算」や「請求放棄」などの条文は、特に清算条項(権利放棄条項)の一部として出てくることが多いです。以下に代表的なパターンをまとめました。
治療費の支払と清算に関する文言示談書の中でよく見られるのが、当該事故で発生した治療費やその他費用の支払い・受領を確認する条文です。例えば、弁護士の書式例では「甲は、既に、乙から治療費〇〇円を受領済みであることを確認する」といった項目が示談書に含まれます。これは料金の支払と清算を明確にするための基本文言です。
清算条項(免責条項)としての全体的な解決表現示談書全体を締結し「以後何らの請求をしない」などとする「清算条項」は、典型的な表現として使われます。例として「本示談書に定めるもののほか、何らの債権債務がないことを相互に確認する」や「以後何らの請求をしない」などが挙げられます。これらは治療費だけでなく、当該事故に関する全ての請求権を放棄することを確認するためのフレーズです。
「一切請求しない」等の包括的清算表現示談書の清算条項はより強い表現でまとめられることもあります。たとえば、一定の支払を受領した者が「今後一切請求しない」と誓約する文言は、損害賠償全般の放棄を意味することがあります。こうした包括的表現があると、治療費だけでなく、将来発生する後遺障害関連費用などの権利も制限されてしまう可能性があります。
よく使われる文言パターンの分類
収集した条文は、示談書における扱われ方や意図によって大きく以下のようなパターンに分類できます。
分類 | 文言例 | 意味合い |
受領確認 | 「○○円を受領したことを確認する」 | 支払・受領の事実を明確化 |
全体清算 | 「本示談書に定めるもののほか、何らの債権債務がないことを確認する」 | 示談内容以外の権利放棄を確認 |
請求放棄 | 「以後何らの請求をしない」 | 将来の追加請求を放棄 |
包括放棄 | 「今後一切請求しない」 | 全ての請求権の放棄(強い表現) |
条件付き清算 | (例文は少ないが留保条項) | 一部の権利を除外して清算する |
※上記表は、示談書や法律コラム・雛形例などから一般的に使用される表現パターンを整理したものです。文言や効果はその内容・使われ方次第で実務的な影響が変わる点に注意が必要です。
こうした条文パターンを理解しておくことで、「治療費は全額清算」という一文が単独でどのような効果を持つかだけでなく、示談書全体でどのような権利放棄や清算のルールが前提になっているかを見抜くことが重要になります。示談内容のチェックでは、単語単体だけでなく、文全体の構成と背景を理解することが大切です。
11.「治療費は全額清算」と書かれた後に再請求が争われたケースの傾向分析
交通事故などの示談書に「治療費は全額清算」と明記された場合、原則としてその後の追加請求は認められません。ただし、裁判例や法律の考え方によって、例外的に再請求が認められる可能性があるケースも存在します。ここでは、どのような状況で争いになっているのか、実務上の判断のポイントも踏まえて解説します。
症状固定前・後遺障害未確定時に示談した事例
示談交渉の段階でまだ治療が継続中だったり、後遺障害が確定していない段階で示談書を締結してしまうと、将来追加で治療や補償が必要になったときに請求できなくなるリスクが高まります。
示談成立時に症状固定(※これ以上治療を続けても症状が改善しないと医師が判断する時点)していない
後遺障害の評価・等級認定の可能性が残っている
このような場合、示談で全額清算したとしても、後になって追加で請求したいという争いが生じやすいです。特に後遺障害が「予見できなかった」場合には、再請求が認められた例もあります。これは、当時予想できなかった損害についてまで放棄したと解するのは合理的でないとした考え方によるものです(最高裁判例)。
裁判所が「請求不可」と判断したケース/例外的に認めたケース
裁判例を整理すると、示談後の再請求について次のような傾向があります。
原則として請求不可とした考え方
示談書は当事者間での「終局的な解決」を意味し、被害者が示談書署名時に放棄した請求権については、後から請求できないのが原則です。例えば、示談書に「これで一切の請求権を放棄する」といった明確な文言がある場合、その後の症状悪化・治療費追加・慰謝料増額などの請求は認められないという判断になります。これが一般的な実務上の基準として扱われています。
例外的に再請求を認める裁判例
一方、最高裁判所は例外的に、示談当時に予想できなかった損害については追加請求が認められる可能性があるとしています(昭和43年3月15日判決)。この判例では、示談時に予見できない重大な後遺障害や再手術の必要性が後で発生した場合、当初予見できなかった損害についてまで放棄したとは解せないと判断されています。
つまり、示談時には軽微な損害しか認識されていなかったのに、後日重篤な後遺障害が生じたケースなどでは、「当時の合理的な意思」として一部権利を保持する余地が認められる可能性があります。
判断を分けたポイント(文言・時期・説明の有無)
裁判所が再請求を許すか否かを判断する際には、次のようなポイントが重視される傾向があります。
1.示談書の文言の正確な範囲
示談書に「全ての請求権を放棄する」といった強い表現があるか、あるいは「当時認識されている損害に限る」といった限定的な表現かで判断が異なります。限定的な放棄にとどまると、後の事情変化に対応できる可能性が高くなります。
2.示談締結時の症状や治療状況
示談時に症状固定が出ているか、治療が終了しているか、後遺障害等級の可能性があるかどうかが重要です。未確定の状態で示談すると、後日の変化を理由に争われやすくなります。
3.当時の説明や合意の内容
被害者が示談条項の内容を十分理解していなかった、誤解していた、説明義務違反があったなどの事情がある場合は、「錯誤(勘違い)」や不当な合意として無効や取消しが認められた例もあります。例えば、示談に至る過程で本来請求可能な項目について適切な説明がなく、被害者が誤認したまま示談した場合です。
再請求が問題になった事案の比較(例)
事案の状況 | 示談時の状態 | 再請求の可否 | 判断のポイント |
治療中・後遺障害未確定 | 早期示談 | 原則不可 | 明確な放棄条項 |
予想外の後遺障害発生 | 症状固定前示談 | 再請求認められた例あり | 予見できなかった損害を理由に例外的判断 |
示談過程で説明不足・誤認 | 示談書記載あり | 錯誤として無効判断 | 説明義務違反が争点 |
まとめ
「治療費は全額清算」と書かれた示談書は、基本として後の追加請求を封じる強力な条文です。しかし、以下のような事情があると例外として再請求が争われ、裁判所が一定の再請求を認める可能性もあります。
示談時に予見できなかった後遺障害等が発生した
示談書の文言が限定的である
示談締結時の説明不足や錯誤が認められる
こうした傾向を踏まえて、示談交渉時には将来の変化やリスクを見据えた条文にすることが重要です。
12.保険会社が提示する示談書における「治療費清算条項」の位置・書き方分析
保険会社が被害者に示談書を送付する際、清算条項(治療費やその他損害についての「全額清算」の表現)は文章のどこに書かれているか、どのような表現で埋め込まれているかによって、被害者が気づかずに権利を失ってしまう危険性があります。以下では、実際の示談書ひな形や専門家解説から、その位置や書き方の傾向を具体的に分析します。
清算条項がどこに書かれているか
示談書の構成は自由ですが、一般的には次の流れで内容が記載されます:
当事者の特定
事故の概要や背景
損害の内容や示談金額
支払方法・支払条件
清算条項(一般的には最後の方)
署名・日付
清算条項は示談書の後半、損害賠償額や支払条件などの主要な条文の後に記載されることが多いです。これは、「示談内容を確定させる最終的な合意事項」として位置づけられているためです。たとえば示談書の雛形では、損害項目明細のあとに「清算条項」という見出しで記載されることがあります。
一般的な文例ではこんな形で配置されています:
(清算条項)
甲及び乙は、本件に関し、本示談書に定めるもののほか、何らの債権債務がないことを相互に確認する。
※「本件」や「本示談書に定めるもののほか」といった文言によって、示談範囲=一切の請求権放棄を意味します。
目立たない場所・定型文に紛れ込ませている実態
保険会社が作成する示談書では、清算条項はしばしば他の専門用語・定型文の中に紛れ込ませる形で書かれます。これは、被害者が条文全体をざっと読むだけでは見落としてしまう可能性を高めるためです。
たとえば、支払条項や損害明細が長く続いた後に、最後の段落としてサラッと「清算に関する条文」が入る形式があります。こうした書き方の理由は次の通りです:
示談書の「最重要条文」に見えないよう、専門用語に紛れ込ませる
被害者が主に気にするのは金額と支払条件であり、最後のまとめ的な条文を軽視させる
定型文を使い回しすることで、保険会社側の意図を隠しやすい
この結果、例えば「遅延損害金」「期限の利益喪失」などの専門的な文言に続けて、清算条項が控えめに付けられるケースが多いと言われます。
以下は、その文例の位置関係をわかりやすく整理した図表です。
項目 | 示談書内の記載位置 | 備考 |
事故状況の説明 | 文頭 | まず基本情報を記載 |
損害と示談金の内訳 | 中盤 | 被害者が最も重視しがちな部分 |
支払条件(期限・方法) | 損害明細の後 | 支払の具体性 |
清算条項(全額清算など) | 文末近く | 示談内容を最終的に確定する条項 |
署名・日付 | 最後 | 当事者双方の同意の証 |
(表は一般的な示談書の構成傾向をまとめたものです。)
専門用語の使い方の傾向
清算条項では、専門的な法律用語が使われることが一般的です。このため、初心者にとって意味を取り違えやすい表現が多数含まれています。代表的なものは次のとおりです:
用語 | 一般的な意味 | 初心者にありがちな誤解 |
清算 | すべての債権債務を解消すること | 今までの支払いを終える意味だけと認識 |
債権債務 | 金銭・請求権の全体 | 具体的に何を放棄するか分からない |
以外 | “それ以外にも”という範囲の広さを示す | 文章の範囲限定と思い込む |
相互に確認する | 当事者双方の合意を強調 | 形式的な確認だと誤認 |
例えば示談書の雛形では、専門用語の羅列の後に清算条項を組み込んでいることが多く、被害者が示談書を一度さらっと読んだだけでは見落としてしまう実態があります。
特に表現例としてこんな文がよく見られます:
「本示談書に定めるもののほか、当事者間に債権債務は存在しないことを相互に確認する」
「本件に関し、当事者間に未払・未請求の損害は存在しないものとする」
これらは形式が違うだけで、実質的には全額清算を意味する清算条項になっています。
まとめ
保険会社が提示する示談書における「治療費清算条項」は、
示談書の後半、支払条件の後に配置されることが多い
他の条文(支払時期・遅延損害金など)の延長線上として目立たない形で挿入される傾向
法的専門用語で書かれているため、初心者には意味や範囲の理解が難しい
という特徴があります。
そのため、示談書を受け取ったら、金額部分だけでなく条文全体をじっくり確認し、特に文末の清算条項を慎重に読み解くことが重要です。専門家にチェックしてもらうことで、見落としリスクを大幅に減らすことができます。
13.症状固定前に示談した場合、どの損害項目が失われやすいかの整理
交通事故や労災などの示談交渉において、「症状固定前」に示談書を作成してしまうと、将来的に請求できる損害項目が制限されるリスクがあります。ここでは、どの損害項目が特に失われやすいか、また清算条項の影響範囲をわかりやすく整理します。
治療費・通院慰謝料・後遺障害慰謝料の関係整理
交通事故では、損害賠償として大きく分けて以下の3つの項目が関わります。
損害項目 | 意味 | 発生時期・対象 |
治療費 | 事故による怪我の治療にかかる費用 | 通院・入院中の医療費、薬代、リハビリ費用など |
通院慰謝料 | 入通院による精神的苦痛への補償 | 治療期間中に支払われる精神的損害の金額 |
後遺障害慰謝料 | 後遺症や障害が残った場合の補償 | 症状固定後、後遺障害等級認定に応じて支払われる |
ポイント
治療費と通院慰謝料は、事故発生から症状固定までの期間に対応します。
後遺障害慰謝料は、症状固定後に後遺障害が認定される場合のみ発生します。
つまり、症状固定前に示談すると、後遺障害がまだ確定していない状態で清算してしまうことになり、将来の損害請求権が制限される可能性があります。
清算条項がある場合の影響範囲
示談書に「治療費は全額清算」や「一切の請求権を放棄する」といった清算条項が含まれる場合、症状固定前に示談すると以下の影響があります。
清算条項の表現 | 影響範囲 |
「本示談書に定める損害は全て清算済み」 | 将来発生する可能性のある治療費や通院慰謝料まで放棄してしまう |
「後日いかなる請求も行わない」 | 後遺障害慰謝料や追加治療費も請求不可になる可能性が高い |
「既払金を含め清算」 | 支払済みの金額も含めて「すべて解決」と解釈され、後からの増額請求が認められない |
特に後遺障害慰謝料は、症状固定後に初めて算定されることが多く、症状固定前示談ではほぼ自動的に請求権を失うリスクがあります。
症状固定前示談でトラブルになりやすい損害項目
症状固定前に示談してしまうと、以下の項目が特にトラブルになりやすいです。
追加治療費
通院期間が延びた場合や、追加の手術・リハビリが必要になった場合に請求できなくなることがあります。
通院慰謝料の増額
治療期間が当初予想より長くなると、通院慰謝料の額も増えることがありますが、全額清算条項があると増額請求が困難です。
後遺障害慰謝料・逸失利益
後遺障害が残った場合、将来の逸失利益や後遺障害慰謝料の請求が認められないケースがあります。
特に、示談時に後遺障害の可能性が医師からも説明されていたにもかかわらず、清算条項で包括的に放棄してしまうと、後日裁判で争っても認められにくいです。
例え話で理解すると
「症状固定前に示談すること」は、未完成の家を買って全額支払うようなものです。
住める部分(治療中に発生した損害)は支払済みとして確定
まだ建設中の部屋(後遺障害や追加治療)は、契約で放棄してしまうリスクがあります
つまり、未確定の損害を含めて清算してしまうと、後で請求できなくなる点が最大の注意点です。
14.「治療費は全額清算」を安全に修正するための実務文言調査
示談書で「治療費は全額清算」と書かれている場合、症状固定前や後遺障害未確定の状況で署名すると、将来の損害請求権を失うリスクがあります。そこで実務上は、「留保条項」や文言の修正によって権利を守る工夫が行われています。ここでは、実務で使われる代表的な文言と、その使い分け、どこまで書けば安全とされるかを整理します。
実務で使われている留保条項の整理
留保条項とは、示談書で全額清算をする際に、将来の損害や未確定の請求権をあえて除外しておく条文のことです。実務でよく使われるパターンは以下の通りです。
留保条項の例 | 説明 | 用途 |
「現時点までの治療費に限り清算する」 | 示談書作成時点までに発生した治療費だけを清算対象にする | 治療継続中でも権利を残す |
「症状固定前における請求権は留保する」 | 症状固定前の将来治療費や通院慰謝料を請求できるようにする | 後日発生する損害を保護 |
「後遺障害が認定された場合を除く」 | 後遺障害慰謝料・逸失利益は清算の対象外にする | 後遺障害未確定時に必須の表現 |
「現時点まで」「症状固定前」「後遺障害を除く」などの使い分け
損害項目や事故の状況に応じて、文言を組み合わせることで安全性が高まります。
文言 | 意味 | 使用例・ポイント |
現時点まで | 示談書作成時点で発生した損害のみを対象 | 治療費・通院慰謝料など、確定分だけ清算 |
症状固定前 | まだ確定していない損害を将来請求可能にする | 通院継続中や追加治療の可能性がある場合に使用 |
後遺障害を除く | 後遺障害が確定するまでは清算しない | 後遺障害慰謝料・逸失利益の請求権を保護 |
実務上の文例
本示談書における治療費及び通院慰謝料は、現時点までに発生したものに限り清算するものとし、
症状固定後に後遺障害が認定された場合は、別途協議の上で請求できるものとする。
このように具体的に条件を明記することで、清算範囲を限定しつつ、将来の請求権を保護できます。
どこまで書けば実務上安全とされるか
実務では、次のポイントを押さえれば、症状固定前でも示談書の安全性が高まります。
清算対象の範囲を限定する
「現時点まで」「確定分のみ」など、明確に期間や金額を限定する。
将来の請求権を明示的に留保する
症状固定前の治療費や通院慰謝料
後遺障害慰謝料・逸失利益
条項を分かりやすく記載
一文でまとめず、複数の文で条件や留保対象を明確化する。
後遺障害認定までの流れを想定
「症状固定後に後遺障害が認定された場合、別途協議する」と明記
まとめ
「治療費は全額清算」という条項は、症状固定前・後遺障害未確定の場合にリスクが高い
実務では留保条項を活用し、「現時点まで」「症状固定前」「後遺障害を除く」と明記することで権利保護が可能
安全な示談書にするには、清算対象を限定し、将来請求権を明確に残すことが重要
15.治療費と慰謝料をまとめて清算した場合のトラブル類型整理
交通事故の示談書では、「治療費・通院慰謝料・後遺障害慰謝料」をまとめて一括清算するケースがあります。しかし、内訳を明確にせずに全額清算してしまうと、後々トラブルになる可能性が高まります。ここでは、まとめて清算した場合の典型的なトラブル類型を整理します。
内訳不明示のリスク
示談書で「治療費及び慰謝料は全額清算」とだけ記載され、具体的な内訳が明示されていない場合、次の問題が発生します。
請求権の範囲が不明確になる
どの金額が治療費で、どの金額が通院慰謝料か分からない
将来の追加治療費や延長通院による慰謝料の算定が難しくなる
後日争いになった際に裁判所の解釈に委ねられる
内訳不明だと、裁判で「全額清算」と判断され、増額請求が認められないリスクが高い
例え話
「お菓子の詰め合わせをまとめて買ったけど、何が何個入っているか分からない状態」と同じです。後で好きなお菓子を取り出そうとしても、どれが対象か分からず困る、というイメージです。
後遺障害慰謝料との関係
治療費と通院慰謝料をまとめて清算すると、後遺障害慰謝料との境界が曖昧になることがあります。
後遺障害慰謝料は、症状固定後に算定されるのが原則
示談書で「全額清算」と書かれると、後遺障害が発生しても、追加請求ができない可能性が出てくる
特に、内訳不明の場合、裁判所が「後遺障害慰謝料も清算済み」と判断するケースがある
再請求不可になる範囲の広がり
治療費と慰謝料をまとめて清算すると、以下のように将来の請求権が広く制限される可能性があります。
まとめ清算の対象 | 将来請求できなくなる可能性 |
治療費 | 追加の通院・手術費用が請求不可になる |
通院慰謝料 | 通院延長による慰謝料増額が請求不可になる |
後遺障害慰謝料 | 後遺障害が確定しても請求できない可能性がある |
逸失利益 | 後遺障害による将来の収入減も含めて請求不可となることがある |
ポイント
「まとめて清算」は一見シンプルですが、どの損害項目まで含まれるかを明確にしないと、権利が意図せず消滅するリスクがあります
特に後遺障害慰謝料や逸失利益は、症状固定後でないと金額が確定しないため、まとめ清算では保護が不十分になります
実務上の教訓
内訳を必ず明示する
治療費、通院慰謝料、後遺障害慰謝料を分けて記載
清算対象を限定する文言を入れる
「現時点まで」「症状固定前」「後遺障害を除く」など留保条項を活用
再請求可能な範囲を明確にする
後遺障害が出た場合の対応や、追加治療費の請求権を示す
まとめると、まとめ清算は便利に見えて危険。示談書作成時には、内訳と留保条項の記載を必ず確認することが、後悔しないための第一歩です。
契約書作成は弁護士・行政書士どっちに依頼すればいい?
契約書を作成する際、「弁護士と行政書士、どちらに依頼すればよいのか?」と悩む方は多いでしょう。どちらの専門家も契約書作成の業務を行いますが、その役割や対応範囲には違いがあります。本記事では、専門家に依頼するメリットや具体例を交えながら、どちらを選ぶべきかを解説します。
専門家に依頼するメリット
1. 契約のリスクを防げる
契約書には、当事者同士の合意内容が明確に記載されます。しかし、素人が作成すると、法律的に不備があったり、トラブルが発生したときに対応しきれなかったりするリスクがあります。専門家に依頼することで、契約の抜け漏れを防ぎ、将来的なトラブルを未然に防ぐことができます。
具体例
たとえば、フリーランスが企業と業務委託契約を結ぶ際、報酬の支払い期限や業務範囲の記載が不明確だと、後々「こんなはずじゃなかった」と揉める原因になります。専門家に依頼すれば、報酬の支払い遅延時のペナルティや、契約解除の条件など、重要な事項を適切に盛り込んだ契約書を作成できます。
2. 自社や個人に適した契約内容にできる
契約書の雛形(テンプレート)はインターネット上にもありますが、それをそのまま使うと、自社のビジネスモデルに合わなかったり、不要な条項が含まれていたりすることがあります。専門家は依頼者の事情をヒアリングし、最適な契約書を作成してくれます。
具体例
例えば、飲食店のオーナーがテナント契約を結ぶ際、一般的な賃貸借契約書だけでは、営業時間の制限や原状回復義務について十分にカバーされていないことがあります。専門家に相談すれば、こうした細かい点も考慮した契約書を作成でき、トラブルを未然に防げます。
行政書士と弁護士の違いは?
契約書作成を依頼できる専門家には、行政書士と弁護士の2種類があります。それぞれの違いを理解することで、自分に適した専門家を選びやすくなります。
行政書士:契約書作成の専門家
行政書士は、主に「契約書の作成」を専門とする国家資格者です。法律に基づいた正確な契約書を作成し、行政手続きや許認可申請にも対応できます。
具体例
・事業者間の業務委託契約書の作成 ・飲食店や美容サロンなどのテナント契約書の作成 ・売買契約書や合意書の作成
ただし、行政書士は「紛争が発生した場合の代理交渉」や「法廷での弁護」は行えません。トラブルが発生した際の対応まではできないため、契約内容に不安がある場合は、弁護士に相談する必要があります。
弁護士:法律トラブルに対応できる専門家
弁護士は、契約書の作成だけでなく、契約に関する紛争対応や訴訟の代理もできる法律の専門家です。トラブルが発生した際のリスクを考慮し、より強固な契約書を作成できます。
具体例
・企業間の買収、合併契約書の作成と交渉 ・高額な不動産売買契約の作成とリーガルチェック ・契約違反が起きた際の法的対応
弁護士に依頼すると、契約書の作成だけでなく、万が一の紛争時にも対応してもらえるというメリットがあります。ただし、弁護士の費用は行政書士より高額になることが一般的です。
専門家に依頼する際の費用と流れ
費用の相場
依頼する専門家や契約書の種類によって、費用は異なります。一般的な相場は以下のとおりです。
専門家 | 費用の目安 |
行政書士 | 契約書作成3万~10万円、リーガルチェック1万~3万 |
弁護士 | 契約書作成10万~30万円、紛争対応10万円以上 |
行政書士は比較的リーズナブルな価格で契約書を作成できますが、紛争対応はできません。一方、弁護士は費用が高めですが、契約のリスク管理を徹底できるというメリットがあります。
依頼の流れ
専門家を選ぶ:契約内容や将来的なリスクを考慮し、行政書士か弁護士のどちらに依頼するか決める。
相談・ヒアリング:依頼者の状況を詳しく聞き、契約書の目的や必要な条項を確認する。
契約書の作成・修正:専門家が契約書を作成し、依頼者と確認しながら修正を加える。
最終確認・納品:完成した契約書を納品し、必要に応じて公証役場での認証を行う。
具体例
たとえば、フリーランスが業務委託契約を結ぶ際、
行政書士に相談し、業務範囲や報酬条件をヒアリング。
契約書のドラフトを作成し、内容を確認。
必要に応じて修正し、最終版を納品。
依頼者が契約書に署名し、取引先と締結。
このような流れで進めるため、契約の重要性を理解しながら進めることができます。
まとめ
契約書作成を専門家に依頼することで、契約のリスクを防ぎ、スムーズな取引を実現できます。
行政書士は契約書の作成が得意で、費用を抑えられるが、紛争対応はできない。
弁護士は契約書作成に加えてトラブル対応も可能だが、費用は高め。
契約内容や想定リスクに応じて、適切な専門家を選びましょう。
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