令和7年最新|賃貸トラブルにおける念書|一律2万円おてがる契約書.com|立ち退きや家賃滞納時の対処|行政書士が徹底解説‼
- 代表行政書士 堤
- 8 分前
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🌺こんにちは!おてがる契約書の代表行政書士 堤です。
本日は賃貸についての重要なポイントを解説したコラム記事をお届けします。家賃滞納や立ち退き問題は、賃貸経営において避けて通れないトラブルの一つです。特に念書を活用することで、当事者間の約束を明確にし、後の紛争を防止することが可能になります。本コラムでは、念書の法的効力や実務的な書き方、トラブルを未然に防ぐためのポイントについて、初心者の方にもわかりやすく解説いたします。賃貸トラブルに直面した際の頼れる知識として、ぜひお役立てください。
本記事のまとめ:
重要事項 | 概要 |
---|---|
当事者間で合意した内容を文書化することで、後の言った言わないの争いを避けられます。特に家賃滞納や立ち退きに関する約束を明確に残すことが重要です。 | |
曖昧な表現や抽象的な約束は後で解釈が分かれ、紛争の火種になります。支払金額や期限、違約金の有無など、詳細をしっかり盛り込むことが信頼性向上につながります。 | |
念書作成やトラブル対応は法律的な知識が必要な場合も多いため、弁護士や行政書士に相談することで安心かつ有効な解決策を得られます。 |
🌻家賃滞納や立ち退き問題は、感情的な対立や法的トラブルに発展しやすく、適切な対応が求められます。念書を正しく作成し活用することで、双方にとって納得のいく解決策を導きやすくなります。これから賃貸経営を始める大家さんや、滞納トラブルに悩む借主さん、管理会社の担当者の方にもぜひ読んでいただきたい内容です。専門的な知識がなくても理解できるよう丁寧に説明していますので、賃貸トラブルのリスク軽減にぜひお役立てください。
また、おてがる契約書では、どんな契約書も一律2万円で作成しています。作成依頼はLINEで簡単に行うことができるため、誰でもてがるに利用することが可能です。弁護士・司法書士が作成する契約書は費用が高額です。おてがる契約書は行政書士が運用しておりオンライン・電話・メールを活用して、簡単・格安でスピードが速く最短で納品が可能です。
▼目次
~事例・比較分析紹介~
~番外編~
1.念書の基礎知識
1. 念書とは何か
定義(かんたんに言うと)念書(ねんしょ)は、当事者がある事実・義務・約束を「書面で」確認したものです。日常語でいうと「借りたお金を返すと書いた紙」「◯月◯日までに退去しますと書いた紙」など、口約束を形にしたものが念書です。英語でいうと I.O.U.(アイ・オー・ユー)やwritten acknowledgment に近いイメージです。
一般的な役割
当事者間の約束を証拠化する(「言った/言わない」の争いを避ける)
支払い期日や立ち退き日を明確にする
将来、裁判や交渉で「相手がこう認めている」という証拠に使える
例えば家賃滞納の場面では、滞納額・分割弁済のスケジュール・立ち退きの合意などを念書で記すことで、後で「そんな約束はしていない」といった争いを減らせます。
例え話:念書は「口約束の写真」みたいなもの。写真(=書面)があれば、後から見返して確認できます。
2. 念書の法的効力
強制力の有無(ざっくり)念書そのものは「私的な書面」であり、書いてある内容が自動的に裁判の判決や強制執行(お金を取り立てたり、強制的に出て行ってもらう手続き)に直ちにつながるわけではありません。つまり、「念書=自動的に強制執行できる権利」ではないのが原則です。しかし次のポイントで実務上の意味が変わります。
証拠としての力念書は「当事者がその事実を認めた文書」として裁判で強い証拠になります。たとえば滞納の事実や返済スケジュールの合意が明文化されていれば、裁判所がその内容を認定しやすくなります。その結果、裁判で判決を得やすくなり、判決が出れば強制執行が可能になります。
公正証書(こうせいしょうしょ)との違い(ポイント)念書をより強力にする方法の一つが「公正証書による作成」です。公正証書とは公証人(公の立場の人)が当事者の合意内容を公的に記録する文書で、一定の要件を満たせば**債務名義(=裁判を経ずに強制執行手続に使える力)**として扱いやすくなります。※ただし公正証書にも形式や手続きの要件があり、すべての念書がそのまま執行可能になるわけではないので、作成時は専門家に確認するのが安全です。
注意(要点まとめ)
念書=証拠力はあるが自動的な執行力はない。
公正証書にすれば執行手続きが容易になる場合がある。
実際の強制執行(明け渡しや差押え)には裁判や執行手続が必要なケースが多い。
3. 念書と他の文書との違い
法律文書には似た名前のものが多く、混同しやすいので分かりやすく整理します。
覚書(おぼえがき)との違い
覚書は「本契約の一部を補足・変更・整理した記録」に使われることが多いです。既存の契約の要点整理や変更履歴としての意味合いが強い。
念書は「特定の事実や約束を確認する」目的で使われ、単独で成立していることも多い。
契約書・合意書との違い
契約書は当事者の権利義務を広く詳細に定める正式な文書(賃貸契約書など)。法律上の効果や履行内容が明確。
合意書は当事者の合意をまとめたもの。契約書ほど厳密ではないが、双方の意思表示が明確。
念書は「こういう事実・約束がある」と明文化する点では共通するが、契約書ほど詳細な条項や複雑な権利設定を含めないことが多い。
誓約書(せいやくしょ)との違い
誓約書は「一定の行為をしない/することを誓う」といった意思表示に使われます(不倫の再発防止、就業規則の遵守など)。
念書は「認めた事実」や「支払い約束」を明確にすることが中心。実務では両者は似た場面で使われますが、表現や目的に微妙な違いがあります。
4. 念書が必要となるケース
家賃滞納・立ち退きの現場でよく使われる場面
滞納金の分割弁済合意
「滞納額を◯回に分けて返済する」といったスケジュールを記す。
書面があれば、後で「払った/払っていない」の争いが減る。
立ち退きの合意
「◯年◯月◯日までに明け渡す」「引渡しの状態(クリーニング代など)」を明記する。
ただし、立ち退きについては合意していても期日を守らない場合、実力で追い出すことはできない。裁判→強制執行となることが多い。
敷金精算・原状回復の取り決め
敷金の充当、修繕費の負担などを念書で取り決めるケース。
保証人や連帯保証の確認
保証人が「この滞納分について支払う」ことを念書で認める場合もある(ただし連帯保証契約とは別の法的扱いになることがあるので慎重に)。
トラブル防止・証拠化の観点念書があると交渉材料になり、相手にとって「約束を守らないと不利になる」心理的圧力にもなります。裁判になったときは証拠として有用です。
実務的に役立つポイント(初心者向けの手順と注意)
念書を作るときに入れるべき基本項目(チェックリスト)
作成年月日
当事者の氏名・住所(個人は印鑑、法人は代表者名・会社印)
事実の要旨(例:令和◯年◯月分から令和◯年◯月分までの家賃滞納◯円を認める、等)
金額の明記(消費税区分も必要なら)
支払方法・期日(分割があるなら回数・各回の期限・振込先)
遅延損害金の扱い(利息・遅延損害金をどうするか)
期限の利益喪失条項(期日を守らなければ残額一括請求できる旨)
立ち退き合意なら明渡日・物件の引渡し条件(鍵・原状回復)
違反時の対応(裁判・強制執行を行う旨の合意など。ただし法的に留意点あり)
保証人(いる場合は保証の範囲および連帯保証か否かを明記)
署名押印・立会人(可能なら)
作成部数(各当事者が保管)
ポイント補足(初心者向け)
「押印」:個人は実印か認印(重要なら実印)、法人は会社印。実印は市区町村で登録された印鑑証明とセットで有効性が高まる。
「立会人・証人」:第三者の証人がいると信頼性が増す。弁護士・公証人の立会いは最善。
「内容証明郵便」:念書を送る際、送った事実と内容を証拠に残したければ「内容証明郵便」を使う(“誰が、いつ、どんな内容を送ったか”が記録される)。
家賃滞納・立ち退きでの実務的な流れ(例:段階的対応)
まずは記録を残す:家賃明細、振込履歴、メールやメッセージのやり取りを保存。
口頭で督促:まずは電話や面談で支払いを促す。録音や議事録を残すと良い。
内容証明で正式に請求:支払期限や金額、支払方法を明記して送る。これで「請求した事実」を公式に残す。
念書の作成提案:分割払いや明渡しの合意を文章化する(念書)。当事者双方で署名押印し、各自が保管。
公正証書化の検討:強制執行を見据えるなら、公正証書にして執行力を持たせる方法を検討。
交渉が決裂したら裁判へ:明渡請求や損害賠償請求を裁判で行う。判決が出れば強制執行が可能。
強制執行:判決や執行力のある公正証書に基づき、強制執行(差押え・不動産明渡しの執行)を申し立てる。
注意点(特に大家側へ)
強制的に住人を追い出す「自力救済」は原則違法です。自分で鍵を交換したり荷物を外に出す行為はトラブルになり得ます。必ず法的な手続きを踏んでください。
社会問題(高齢者・子ども・支援が必要な入居者)に配慮する必要があるケースが増えています。法的対応だけでなく、支援機関や行政への相談も選択肢として検討してください。
念書(家賃滞納)テンプレート(例)
以下はあくまで参考例です。実際に使う前に専門家(弁護士・司法書士・行政書士・公証人)に確認してください。
念書
作成日:令和◯年◯月◯日
債権者(大家):
氏名(名称):
住所(所在地):
印:
債務者(入居者):
氏名:
住所:
印:
記
1. 債務の認定
債務者は、下記の金額の家賃等(以下「本件債務」)を債権者に対して負っていることを認める。
・未払家賃:金◯◯円(内訳:令和◯年◯月分〜◯年◯月分)
・合計:金◯◯円
2. 分割弁済の合意
債務者は、上記本件債務について次のとおり分割して支払うことに合意する。
支払回数:◯回
支払方法:毎月◯日までに指定口座へ振込
振込先:銀行名 支店名 口座番号 名義人
3. 遅延損害金
支払が遅延した場合、年◯%の割合による遅延損害金を支払うものとする(ただし、上限は○○)。
4. 期限の利益喪失
債務者が上記支払を◯回以上遅延した場合、残額を一括して請求できるものとする。
5. 明渡し(該当する場合)
債務者は、令和◯年◯月◯日までに当該物件を明け渡し、鍵を返却することに合意する。原状回復については以下のとおりとする:______。
6. 合意管轄・準拠法
本念書に関して紛争が生じた場合、(○○簡易裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする)等。
以上、本念書を証するため、当事者は本書面に署名押印する。
債権者署名:____ 印
債務者署名:____ 印
(立会人)氏名:____ 印
実務アドバイス(最後に重要な点を短く)
念書は強い武器になるが万能ではない:証拠として有用。だが執行するには裁判・公正証書など別の手続きが必要になる場合が多い。
形式を整えることが肝心:日付・金額・当事者の住所・押印・立会いなどを丁寧に。可能なら公正証書化や弁護士同席を検討する。
自力救済は避ける:立ち退きトラブルで感情的な行動をとると逆に違法行為になり得る。必ず法的手続きを踏む。
2.念書の作成実務
1. 念書に記載すべき項目(例文付き)
家賃滞納や立ち退きに関する念書を作成する際は、「抜け漏れがないこと」と「誰が読んでも分かること」が重要です。口頭で話した内容をそのまま書くだけでは不十分で、法律的にも有効に機能する形に整える必要があります。
(1)表題・日付・提出先
表題文書の一番上に「念書」と大きく明記します。目的が明確になりますし、後日第三者が見たときに書類の性質をすぐに理解できます。例:「家賃滞納に関する念書」「物件明渡しに関する念書」
日付文書作成日を必ず記入します。日付がないと、後で「いつの合意か」が争いになりやすいです。例:「令和〇年〇月〇日」
提出先誰に向けた書面かを明記します。一般的には、相手方の氏名や会社名を書きます。例:「〇〇不動産株式会社 代表取締役〇〇殿」
(2)約束内容の明確化
文章は長すぎず、かつ具体的に記載します。「分割で返す」ではなく、「毎月25日までに5万円を、令和〇年10月から令和〇年3月までの6回に分けて支払う」といった金額・期日・回数・方法を全て明示します。例文:
私は、令和〇年〇月〇日現在、貴社に対し家賃滞納額金30万円(令和〇年5月分〜令和〇年7月分)を負担していることを認め、これを令和〇年9月から令和〇年11月までの3回に分けて、毎月25日までに下記口座に振込むことを約束します。
(3)署名・押印
署名は必ず自筆(ボールペンや万年筆が望ましい)。PC印字だけでは本人の意思を疑われることがあります。
押印は認印でも有効ですが、可能なら実印+印鑑証明を添付すると信頼性が高まります。法人は会社実印を使用するのが基本です。
2. 作成の3つのポイント
(1)内容の明確性
曖昧な表現はトラブルのもとです。×「できる限り早く支払う」○「令和〇年〇月〇日までに金10万円を銀行振込により支払う」このように誰が読んでも一義的に理解できる表現にしましょう。
(2)公序良俗との適合性
「公序良俗」とは、社会的な常識や道徳に反しないことです。例えば、違法な利息(法定利息を大きく超える)や、暴力的な行為を強要する内容は無効になります。家賃滞納の場合、極端に高い違約金設定や人権侵害となる条項は避ける必要があります。
(3)履行可能性の確認
現実に履行できない約束を書いても意味がありません。例えば、無職で収入がない人に「明日までに100万円全額返済」などと書いても、実行できなければ裁判に進んでも回収は困難です。「相手が実行可能な金額と期限にする」ことが重要です。
3. テンプレートと書き方例
(1)汎用型テンプレート
念書
令和〇年〇月〇日
〇〇不動産株式会社 代表取締役〇〇殿
私は、以下の事項を認め、履行することを約束します。
1. 債務の内容
私は、令和〇年〇月〇日現在、貴社に対し家賃滞納額金〇〇円(詳細内訳:令和〇年〇月分〜〇年〇月分)を負担していることを認めます。
2. 支払条件
上記金額を、令和〇年〇月から令和〇年〇月までの〇回に分割し、毎月〇日までに下記口座に振込む方法で支払います。
振込先:〇〇銀行〇〇支店 普通〇〇〇〇〇〇 名義人〇〇〇〇
3. 遅延損害金
支払いが遅れた場合は、年〇%の遅延損害金を支払います。
4. 明渡し条件(該当する場合)
私は、令和〇年〇月〇日までに物件を明け渡し、鍵を返却することに合意します。
5. 合意管轄裁判所
本念書に関する紛争は、〇〇簡易裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とします。
署名:_________(印)
住所:_________
(2)金銭貸借用
金額・返済期日・返済方法・遅延時の対応を具体的に記載。
(3)就業規則遵守用
「遅刻しない」「守秘義務を守る」などの行動規範を具体的に書く。
(4)始末書代替型
事実の経緯+再発防止策+今後の行動目標を明記。反省の意思を示す書き方。
4. 作成時の注意点
(1)印紙税の要否
念書自体には印紙税が課税されない場合が多いですが、「金銭の受取証書」「金銭消費貸借契約書」と同様の内容を含む場合は課税対象となることがあります。迷ったら税務署に確認するのが確実です。
(2)曖昧表現の回避
「できるだけ」「なるべく」といった表現は避けます。金額・期限・方法を数字や固有名詞で明確にします。
(3)証拠として残す方法
署名押印した原本を双方で保管(2通作成)
内容証明郵便で送る(送った日と内容が証拠として残る)
PDF化して保存(ただし、電子データは本人の意思確認が争われることがあるので原本も保管)
3.立ち退きに関する念書
1. 立ち退き念書とは
立ち退き念書は、賃貸借関係の終了(=入居者が物件を明け渡すこと)について、貸主・借主双方が合意した内容を「書面で」確認する文書です。目的は主に次のとおりです。
立ち退き(明渡し)の期日・方法を明確化する。
立ち退きに伴う立退料や敷金精算の取り決めを記載する。
将来トラブルが起きたときに備え、当事者の合意を証拠化する。
口頭で「来月には出てくれるよね」と言っても、後で争いになれば証明が難しくなります。念書があれば「いつまでに」「何をどうするか」が記録され、交渉や裁判で使える重要な材料になります。
例え話:立ち退き念書は、引越しの「約束の契約書」。鍵を渡す日や費用負担を紙に残すことで、あとで「聞いていない」とならないようにするものです。
2. 主な記載内容
実務上、次の項目をできるだけ具体的に書くことが重要です。以下に、項目の意味と具体例(文例)を示します。
(1)契約解除の合意
何を合意するか:賃貸借契約をいつ、どのように終了させるかを明確にします。解除理由(双方合意による解除、大家の使用のためなど)も書きます。
文例:
1. 契約解除の合意 甲(貸主)および乙(借主)は、平成◯年◯月◯日付の賃貸借契約(以下「本契約」)を、令和◯年◯月◯日をもって双方合意により解除することに合意する。
ポイント:単に「契約を解除する」と書くだけでなく、「解除日」「合意解除である旨」を明記すると、後で解除の有無を巡る争いを避けやすくなります。
(2)立ち退き期限・猶予期間
何を合意するか:実際に物件を明け渡す日(鍵の返却日)、荷物搬出の期限、猶予(猶予期間)を定めます。猶予期間は、入居者に新居探しや引越しの時間を与えるために重要です。
文例:
2. 明渡し・猶予 乙は、令和◯年◯月◯日(以下「明渡期限」)までに本物件を明け渡し、鍵を甲に引渡すものとする。甲は、事情により乙に対して◯日間の猶予を与えることがあるが、猶予は双方書面で合意するものとする。
ポイント:具体的な日付と「猶予の有無・条件」を明記。猶予の扱い(自動的に延びるのか、別途協議が必要か)も書いておくと安全です。
(3)立ち退き料・敷金返還
何を合意するか:立ち退きに伴う金銭的補償(立退料)や、敷金の精算方法、修繕費の控除範囲を定めます。立退料は交渉で決まるため、金額と支払方法(分割・一括・振込日)を明確にしておきます。
文例:
3. 立退料・敷金精算 甲は乙に対し、立退料として金〇〇円を支払う。支払方法は令和◯年◯月◯日に一括振込とする。敷金については現状に基づき精算し、修繕費が発生する場合は別途明細を付して相殺するものとする。
ポイント:
立退料の額は「相場」があるわけではなく、居住期間や借主の事情、貸主の必要性により大きく変わります(短期なら家賃数ヶ月分、事情によりもっと高額になることも)。
敷金は原則、現状回復(通常の使用による経年劣化は除く)にかかる費用を差し引いて返還されます。具体的な控除項目や基準を示しておくと後が楽です。
(4)残置物の処分
何を合意するか:引越し後に残された家具やゴミ(残置物)の処理方法と処分費負担を定めます。無断で処分するとトラブルになる場合があるため、手順を明確にしておきます。
文例:
4. 残置物の処理 乙が明渡期限までに撤去しなかった残置物については、甲は乙に書面で通知の上、相当期間を定めて撤去を促す。撤去されない場合、甲は乙の費用負担で処分する権利を有するものとし、処分費用は乙が負担する。
ポイント・注意:
個人情報や貴重品が残されている可能性があるため、勝手に処分する前に「通知」を出すことが重要です。
法的には、残置物処分にも一定の手続きや善管注意義務(善良なる管理者の注意義務)が求められる場合があります。安易に廃棄すると責任を問われる恐れがあるため、弁護士や専門業者に相談することを推奨します。
3. 立ち退き念書の法的効力
(1)一般的な効力(実務上の扱い)
立ち退き念書は当事者間の合意を示す証拠として強い効果を持ちます。双方が署名押印した合意は、民法上の契約として扱われ、原則として合意内容に従う義務が発生します。ただし以下の点に注意が必要です。
自発的な合意であること:合意が詐欺・脅迫などで得られた場合は無効や取消しの対象になります。
公序良俗に反する条項は無効:違法・過度に不当な条項(極端なペナルティなど)は裁判で無効とされる可能性があります。
執行力の有無:念書そのものは基本的に「債務名義(裁判を経ずに強制執行できる文書)」ではありません。強制執行を容易にするためには、公正証書化や裁判での判決が必要になることが多いです。
端的に言うと:念書は「約束の証拠」。だが、相手が守らない場合、裁判(もしくは公正証書)を経て初めて強制執行に繋がる場合が多い、ということです。
(2)判例・実務で重視されるポイント(概要)
裁判例や実務では、裁判所は当事者の公平性・社会的事情・契約関係の継続性を考慮して判断します。具体的には次のような事情が重要視されやすいです(ケースバイケース):
賃借人の居住の長さ(長期居住者には保護的に扱われやすい)
借主の年齢や家族構成(高齢者や児童がいる場合には配慮されることが多い)
貸主側の正当な必要(自己居住や建替えなどの事情)
代替住居の有無・確保可能性
既に交わした合意の内容や立退料の妥当性(不当に低額なら借主側が争う余地あり)
これらを踏まえ、立ち退き念書を作成する際には裁判で攻められても一定の合理性が説明できる内容にしておくことが肝要です。
(3)契約解除との関係
立ち退き念書で「賃貸借契約の解除(双方合意)」を書面化すれば、契約は原則として解除されます。しかし、解除合意が有効に成立しているかどうかは、以下の点でも確認されます。
合意が明確な意思表示として記載されているか(口語的な表現で済ませていないか)。
合意の取り付けが任意で行われたか(強制・脅迫がないか)。
合意の内容が実行可能(現実的に履行できる日程や金額になっているか)。
合意したはずなのに入居者が応じない場合、貸主は「明渡請求訴訟」を提起して裁判所の判断を仰ぐことになります(訴訟→判決→執行)。念書があれば裁判での証拠が強くなり、判決を得やすくなることが多いです。
4. 弁護士に相談するメリット
立ち退きは法的にも感情的にもデリケートな局面なので、状況に応じて弁護士に依頼する利点が多数あります。
(1)代理交渉
弁護士が間に入ることで、当事者間の感情的対立を和らげ、合理的な立退料や引渡条件を交渉できます。
個人間の直接交渉よりも「合意が成立しやすい」場合が多いです。
(2)合意書・念書の作成
法的に争点になりやすい部分(文言の曖昧性、責任分担、違反時の扱い)を避け、裁判で不利にならないような実務的で実行可能な条項に仕上げてもらえます。
必要に応じて「執行認諾の文言(※)」や公正証書化の助言を受けられます。※執行認諾:債務者が将来の強制執行を承諾する旨の文言。公正証書に執行認諾を付けると執行効力が強くなることがあります(個別の運用や要件は専門家に確認してください)。
(3)手続き代行(訴訟・強制執行)
借主が合意に従わない場合は、明渡請求訴訟の提起、判決後の強制執行の申し立てなど、複雑な手続きを代理してくれます。
強制執行には細かな手続や公的書類が必要なため、専門家が手続きを代行することでミスや遅延を防げます。
(4)その他の利点
高齢者や生活困窮者が関係する場合、行政・福祉との調整を含めた解決策を提案してくれることもあります。
交渉の記録作成や証拠の収集(内容証明、メールの保全、立会人確保など)を的確に行ってくれます。
実務チェックリスト(立ち退き念書を作るときの流れ)
事実確認:賃貸借契約書、滞納の有無、過去のやり取りを整理する。
初期交渉:口頭・書面で立ち退きの意思を確認(記録を残す)。
金銭条件の検討:立退料・敷金精算・引越し費用補助などを提示する。
念書ドラフト作成:上で示した主要項目を具体化する(期日・金額・支払方法等)。
署名押印・原本保管:双方原本を作成し保管。可能なら証人や公証を検討。
支払実行・明渡確認:立退料支払いや敷金精算、鍵返却、現状確認を記録。
争いが起きたら早めに弁護士相談:入居者が守らない場合は証拠を持って相談。
立ち退き念書(簡易テンプレート・例)
以下は参考例です。実際に使う前に専門家に最終チェックしてもらってください。
立退きに関する念書
作成日:令和◯年◯月◯日
甲(貸主)
氏名/名称:
住所/所在地:
印:
乙(借主)
氏名:
住所:
印:
第1条(合意解除)
甲乙は、令和◯年◯月◯日付の賃貸借契約(以下「本契約」)を、令和◯年◯月◯日をもって双方合意により解除することに合意する。
第2条(明渡し)
乙は、令和◯年◯月◯日までに本物件を明け渡し、鍵を甲に返還するものとする。
第3条(立退料)
甲は乙に対し、立退料として金〇〇円を令和◯年◯月◯日に甲指定口座へ振込むことにより支払う。振込手数料は甲が負担する。
第4条(敷金清算)
敷金については現状回復費用を差し引き、残額がある場合は明渡し後30日以内に甲より乙へ返還する。
第5条(残置物)
乙が明渡期限までに撤去しなかった物件内の残置物については、甲は乙に対して書面で通知のうえ、相当の期間を経て処分することができる。処分費用は乙が負担する。
第6条(違反時)
乙が第2条の明渡しを履行しない場合、甲は本念書を証拠として明渡請求等の法的手続きを行うことができる。
第7条(合意管轄)
本念書に関する紛争は、◯◯簡易裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
以上、本念書の成立を証するため、当事者は本書面を2通作成し、各自1通を保有する。
甲署名:______ 印
乙署名:______ 印
(立会人)氏名:____ 印
よくある質問(Q&A)
Q1:念書を書いたのに相手が出て行かない。どうする?A:念書は裁判で強い証拠になりますが、相手が任意に出て行かない場合は「明渡請求訴訟」を提起して裁判所の判決を得る必要がある場合が多いです。判決を得れば強制執行が可能になります。早めに弁護士に相談するとスムーズです。
Q2:立退料はどのくらいが妥当?A:一概には言えません。居住期間や借主の事情、物件の用途(住居か店舗か)、貸主の必要性によって大きく変動します。交渉の際は双方が受け入れられるラインを探るため、個別に算定・相談するのが現実的です。
Q3:念書を公正証書にできますか?A:可能です。公正証書化(公証人役場での手続)すると、支払に関する合意を執行しやすくなる場合があります。公正証書作成には手数料や公証人との面談が必要ですので、事前相談をおすすめします。
最後に(実務アドバイス)
書面は具体的に、シンプルに。 「いつ」「いくら」「どのように」をはっきり書くことが最優先です。
立退きは法的リスクと社会的配慮が混ざる場面。 高齢者や生活弱者が関係する場合は福祉的対応も検討しましょう。
早めに専門家へ相談。 入居者が応じない、相場が読めない、大きな金額が動く場合は、弁護士に早めに相談して交渉・文書作成・訴訟対応を任せることをおすすめします。
4.賃貸トラブルと念書の活用事例
1. 家賃滞納時の念書
支払約束を文書化する効果
家賃滞納の場面で念書を作る最大の効果は「約束を証拠化」することです。口頭だと「言った/言わない」の争いになりますが、書面にして双方が署名押印すれば、後で裁判になったときに非常に強い証拠になります。具体的には次の効果があります。
支払金額・回数・期日を明確化できる(例:「毎月25日に5万円を3回支払う」)。
支払を履行しない場合の追加措置(期限の利益喪失、一括請求等)を書ける。
内容証明郵便や公正証書と組み合わせれば、より執行力を持たせられる(※詳細は専門家に確認)。
例え:念書は「口約束の写真」。写真があれば、あとでいつ何を約束したかをはっきり示せます。
実務的に入れるべき項目(家賃滞納用念書)
作成日/当事者の氏名・住所(保証人がいる場合は保証人情報も)
未払金の内訳(何月分・管理費等含むか)
支払スケジュール(回数・各回の期日・金額)
支払方法(振込先口座の明示)
遅延損害金の扱い(年利◯%とする等、任意だが明記)
期限の利益喪失条項(遅延が続けば残額を一括請求できる旨)
違反時の措置(裁判手続や費用負担等、ただし公序良俗に反しないこと)
署名押印・立会人の有無
連帯保証人への請求
連帯保証人が設定されている場合、まず保証契約の範囲を確認します(保証の対象・期間・上限など)。一般的には連帯保証人は借主と同等に支払義務を負うため、借主が支払わない場合に大家が直接請求できます。実務の流れは概ね:
賃貸契約書と保証契約を確認(保証人の同意書・契約書)。
借主へ支払請求(内容証明で請求→念書化の提案)。
借主が応じない場合、保証人へ支払請求(内容証明等で正式に通知)。
訴訟・強制執行を検討(念書や請求書が証拠として有効)。
実務メモ:保証人に請求するときは「いつの滞納に基づく請求か」「既に債務者(借主)に請求した履歴」を明示すると手続きがスムーズになります。
2. 騒音・ルール違反時の念書
警告書としての機能
騒音・ペット・共用部の占有など賃借人のルール違反がある場合、最初は口頭注意→書面(警告書)→念書(改善約束)という段階が実務的に有効です。書面化の利点:
「いつ」「どのような違反があったか」を時系列で残せる。
入居者に改善の猶予を与えつつ「これ以上続くなら契約解除もあり得る」ことを公式に伝えられる。
後で契約解除・立ち退きに進むときの手続き・証拠になる。
契約解除予告の役割
念書に「改善期限」と「改善がない場合の措置(契約解除、損害賠償請求等)」を明記しておくと、入居者にとって心理的に効きます。ただし、契約解除は法的に重大な措置なので、実際に解除する際は慎重に行い、可能なら弁護士同席で手続きを進めるべきです。
実務で押さえるポイント
騒音等は日時・状況・証人を記録する(録音・録画、近隣住民の陳述書)。
書面(警告書・念書)は改善期限を明確に(例:通知受領後14日以内に改善しない場合は〜)※日数はあくまで例。
個人情報やプライバシーに配慮して証拠収集する(無断で他人の居室に侵入する等は避ける)。
3. 退去時の費用トラブル対応
原状回復費用の合意書化
退去後に「原状回復(クリーニング・修繕)費で争いになる」というのは非常に多いパターンです。これを避けるには、退去前に修繕箇所のリスト化・見積書の提示・敷金の精算方法を合意書化しておくことが有効です。
できれば退去前の立会いで双方が現状を確認し、その場で写真やリストを作成して署名押印する。
修繕が必要な場合は、修繕見積(業者の見積書)を添付して負担範囲を明確にする。
敷金の差し引き項目は明細化して返還時期を定める(例:「明渡し後30日以内に返還」など)。
裁判での証拠活用
裁判になった場合、大家側は次のような証拠を準備すると有利です。
入居時の状態を示す写真(鍵渡し時の写真や現状確認書)
退去時の立会記録と写真(ビフォー・アフター)
業者の修繕見積・請求書・領収書
入居者とのやり取り(メール、内容証明、念書)
例え:入居時の写真がないと「最初から傷があったのでは?」と反論されやすい。ビフォー写真は強いです。
4. その他事例
離婚合意の一部としての念書
離婚協議で「夫(妻)が賃借している住居をいつまでに出る」「家賃負担をどうする」といった取り決めを念書化することがあります。ただし、離婚に伴う財産分与や養育費の問題は独立した法律関係になるため、念書だけでは不十分なことが多く、別途公的な確定手続(離婚届や調停・判決書)と合わせて処理するのが安全です。
相続放棄に関する念書
「相続を放棄する意思」を念書で残すことはできますが、法律上の相続放棄は家庭裁判所での正式な手続きが必要です(念書だけで放棄が法的に成立するわけではありません)。相続関係が絡むケースでは、念書は補助的な証拠扱いに留め、正式な法的手続きを優先してください。
店舗・事業用物件の賃料延滞時の念書
事業用賃貸は居住用よりも契約自由度が高く、契約内容(賃料改定条項、損害賠償、営業補償等)によって取り扱いが変わります。滞納が出た場合は、念書で支払スケジュールを取り決めるのは有効ですが、営業損失や営業停止に伴う請求など、損害の算定が複雑になり得るため、専門家の関与がより重要です。
実務ですぐ使える「チェックリスト」──念書運用の要点
まずは事実の記録(滞納の年月、やり取りのログ、写真、目撃者)を残す。
口頭での注意は記録化(面談後に議事録をメールで送付)する。
正式請求は内容証明郵便を使う(送達の事実と内容を記録)。
任意の支払・改善合意ができたら念書にして署名押印。当事者が2通ずつ持つ。
公正証書化や弁護士関与を検討(強制執行や複雑な計算が必要な場合)。
敷金・修繕については見積書・領収書を必ず保存しておく。
なるべく証拠は「日時・場所・誰が見たか」を合わせて残す。
代表的な「念書・警告文」のテンプレート(簡易例)
以下は例示です。実際に使う前は専門家にチェックしてください。
A:家賃滞納に対する支払念書(例)
念書(支払約束)
作成日:令和◯年◯月◯日
貸主:〇〇(氏名/住所)
借主:〇〇(氏名/住所)
私は、以下の未払家賃(内訳:令和◯年◯月分〜)合計金○○円を認め、下記のとおり分割して支払うことを約束します。
支払方法:毎月25日までに下記口座へ振込
支払回数:3回(令和◯年◯月25日 金○○円、以降毎月同日)
遅延があった場合の対応:2回以上の遅延が発生した場合、残額を一括請求することに同意します。
借主署名:____ 印
貸主署名:____ 印
B:騒音等の改善を求める警告(例)
警告書(改善要請)
作成日:令和◯年◯月◯日
宛先:入居者 〇〇殿
近隣からの苦情(日時:令和◯年◯月◯日〜)が複数寄せられています。貴殿は下記の点を改善してください。
改善事項:夜間(22:00〜)の大音量の音楽・共用部での放置物撤去
改善期限:本書受領後14日以内に改善が見られない場合は、契約解除手続き等の法的措置を検討します。
C:残置物処分に関する合意(例)
残置物処分に関する合意
〜略〜
明渡し後に撤去されなかった残置物は、甲(貸主)が相当期間の通知のうえ処分できるものとし、処分費用は乙(借主)が負担する。
最後に(リスク管理と次のステップ)
念書は強力なツールですが万能ではありません。相手が合意を守らない場合、裁判や公正証書など別途の法的手続きが必要になることが多いです。
高齢者・生活困窮者が関係する事案では、行政や福祉の介入で解決する道がある場合もあります(法的手段だけでなく柔軟な対応も検討)。
重大な取り決め(高額の立退料、明渡し合意、公正証書化等)は弁護士に相談して文言を作ることを強くお勧めします。
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5.まとめ
念書は、賃貸トラブル(家賃滞納・立ち退き・原状回復など)を扱ううえで**「当事者の意思と合意を証拠化する最も手軽で有効な書面」**です。ただし万能ではなく、適切な作り方と運用が肝心です。ここでは初心者にも分かりやすく、実務で押さえるべきポイントを整理します。
念書が持つ役割(要点)
証拠化:口頭の約束を「いつ・だれが・何を」約束したかという形で残す。裁判や交渉で強い証拠になります。
交渉の基礎:支払スケジュールや明渡し期日、立退料などを明確にすることで、無用な争いを減らします。
心理的圧力:署名・押印された書面は相手に「放置できない」という認識を与え、履行を促す効果があります。
内容は「明確・具体的」に—必須の記載例
念書は曖昧だと意味が薄れます。最低限、以下は必ず明記しましょう。
作成日、当事者(氏名・住所)、連絡先
何に関する合意か(例:未払家賃◯円の分割払)
金額・回数・各回の期日・支払方法(振込先)
明渡し期日・鍵返却方法(立ち退きの場合)
敷金精算や立退料の取り決め(数値と支払方法)
遅延損害金や違反時の取り扱い(ただし公序良俗に反しないこと)
署名・押印(可能なら立会人・証人)
悪い例(NG):「できるだけ早く返します」良い例(OK):「令和◯年◯月◯日までに、金◯◯円を指定口座に振込む」
証拠力を高める・トラブルを避ける工夫
原本を双方で保管(2通作成し各自保管)。
内容証明郵便で送付して「請求した事実」を残す。
写真や立会いメモを添付(退去時の状態など)。
公正証書化を検討すると、将来的な強制執行手続きが容易になる場合がある。
立会人や第三者証人の署名を得ておくと信頼性が上がる。
自力救済は厳禁(鍵の交換・荷物の外置き等は違法リスクあり)。必ず法的手続きを踏む。
いつ専門家に相談すべきか(おすすめの判断基準)
合意金額が大きい(立退料や長期滞納で高額になるとき)
相手が応じない・強硬な態度のとき(交渉が行き詰まった場合)
高齢者や生活弱者が関係し、福祉的配慮が必要なとき
公正証書化や訴訟・強制執行を視野に入れるとき→ 弁護士に相談すれば代理交渉・合意書作成・訴訟手続を任せられ、法的リスクを大幅に下げられます。
ワンポイント実務チェック(やることリスト)
事実を時系列で整理(滞納年月、やり取りの記録等)
内容は数字・日付で具体化(誰が読んでもわかるように)
念書は2通作成し署名押印、原本を保管
必要に応じて内容証明や公正証書を活用
相手が履行しない場合は早めに専門家へ相談
~事例・比較分析紹介~
6.法的効力・判例分析
家賃滞納による立ち退き念書が有効とされた判例/無効とされた判例の比較分析(一般論)
有効とされやすいパターン(裁判所が書面を尊重するケース)
当事者の意思が明確で、書面(念書)に金額・期日・支払方法などが具体的に記載されている場合。→ 「誰が」「いつ」「いくら」「どう払うか」が明確だと、裁判所はその合意を契約的合意として評価しやすいです。
強制・脅迫・錯誤がない:合意が自発的であることが明らかで、契約当時に錯誤(重大な誤解)や詐欺的な事情がない。
公序良俗に反しない:極端に不当な条件(例:法定利率を著しく超える不当な利息や、基本的人権を不当に侵害する条項)がない。
履行が現実的に可能:支払額・期限が現実的で、履行不能と判断されない。
無効または無効化されやすいパターン
脅迫や威圧で得た合意:例えば「出て行かないと暴力を振るう」といった脅しの下で得た念書は取消・無効になりやすい。
過度に一方に不利な条項:明らかに不公平で社会通念に反する内容(過大な違約金など)は無効とされる可能性がある。
重要な事実の錯誤や詐欺:相手が重要な事情(賃貸契約の継続性や法的責任)を誤認するような形で合意した場合、無効・取消しが認められることがある。
手続的欠陥:当事者が未成年で法定代理人同意がない場合など、当事者の法的能力に問題があると無効になり得る。
実務上の読み替え方(要点):
書面の「形式」自体よりも、合意の「実質」(自由な意思に基づくか、合理的か、履行可能か)を裁判所は重視します。
したがって念書を作るときは、形式だけでなく「合意が自発的・合理的・実行可能」であることを示せる資料(面談のメモ、立会人、診断書など)を合わせて残すと有利です。
立ち退き合意書と念書の法的拘束力の違い(実務的観点)
用語の区別(実務上の感覚)
念書:当事者がある事実・約束を確認するための比較的簡便な書面。証拠性は高いが、それだけで直ちに強制執行できる“債務名義”になるとは限らない。
立ち退き合意書(合意解除書・和解書):より正式に賃貸借契約の解除や立退料・精算方法を定めた契約書。内容が具体的で双方署名押印されていれば、念書と比べて実務上かなり強い効力を持つが、やはり執行力の有無は別問題。
一言での違い:両者は中身次第で同じ法的評価を受け得ますが、公正証書化や執行認諾文言の有無によって「裁判を経ずに強制執行できるかどうか」という点で大きく異なります(詳述は後述)。
連帯保証人が署名した念書の効力範囲(保証人が立ち退き義務を負うのか)
原則的枠組み(初心者向け)
連帯保証人(連帯保証の意思表示をした者)は、金銭債務について債務者と同様に支払義務を負うのが基本です(つまり債権者は主たる債務者と連帯して請求できる)。
しかし「立ち退き」行為自体は物の引渡しなどの履行行為であり、「金銭弁済」とは性質が異なります。よって、保証契約の文言が金銭債務に限定されているか、あるいは「契約上の一切の債務を連帯して保証する」と広く書かれているかで評価が分かれます。
実務ポイント
もし保証人が「本契約に基づく一切の債務を連帯して保証する」と書いて署名していれば、原状回復費用や立退に伴う損害賠償(金銭的請求)は保証の対象となり得ます。
ただし、物理的な立退き(鍵の返却や退去行為)を保証人が代行して果たす義務を負わせる契約は、実務上あまり一般的ではありません。仮にそのような義務を明文化するなら、保証人の同意が明確であること、履行可能性を担保する形になっているかが重要です。
保証人に過度の負担(例えば生活の本拠を失わせるような義務)を課すと、公序良俗の観点から争われるリスクがあります。
結論(分かりやすく):連帯保証人はお金の支払いについては強く責任を負うが、「立ち退きそのもの=物理的な行為」を保証人に求める場合は慎重に書面で明確にし、実行可能性を考慮すべきです。
強制執行認諾文言付き念書の実務的効果
「執行認諾」とは何か(かんたん説明)執行認諾文言とは、債務者が「自らの債務を履行しない場合、債権者は裁判を経ずに直ちに強制執行を求めることができる」といった趣旨を承諾する文言です。これが付された文書は、所定の形式を満たせば債務名義となり得て、強制執行がしやすくなります。
実務上のポイント
ただの“念書”に執行認諾の文言を入れただけでは、裁判所でそのまま執行を認めてもらえるとは限りません。実務的には、執行認諾文言が案文的にあっても、その文書が公正証書として作成されているか(あるいは裁判所が債務名義と認める別の形式を満たすか)により、実効性が大きく変わります。
公正証書にして執行認諾を付すと、債権者はその公正証書を根拠に比較的迅速に強制執行を申し立てやすくなります(ただし公正証書作成の要件・費用が発生)。
私的書面に執行認諾を入れた場合、相手方が後に「同意は強制された」「説明が不十分だった」等を主張すると効力が問題になるため、署名時の状況(代理人立会い、弁護士の助言等)を整備しておくことが重要です。
実務アドバイス(短い):執行を本当に想定するなら、念書を作る段階で公正証書化+執行認諾の検討を行い、専門家(弁護士・公証人)と相談することをお勧めします。
7.実務書式・記載内容の研究
ここからは「実際に念書に書くべき条項」と「その書き方の工夫」、さらに立ち退き料や敷金・残置物に関する記載例と注意点を、具体的に示します。使えるサンプル文も載せますので、テンプレとしてそのまま使う場合は必ず専門家に最終チェックしてもらってください。
家賃滞納時の念書に盛り込むべき具体的条項(支払計画・退去期限・違約金等)
必須条項(チェックリスト)
作成年月日・場所
当事者(貸主・借主・保証人がいる場合は保証人)氏名・住所・連絡先
未払金の内訳(何年何月分の家賃・共益費・遅延損害金など)
支払方法(銀行振込先の口座情報)
支払スケジュール(回数・各回の金額、期日)
遅延損害金の取り扱い(利率・起算日)
期限の利益喪失条項(定める場合)
退去期限(立ち退きを含むケース)と鍵返還方法
違反時の措置(支払が遅れた時の具体的措置)
署名押印・立会人の欄
書き方のコツ(初心者向け)
「毎月」や「できるだけ」といった曖昧表現は避ける。
日付は具体的に(例:「令和◯年◯月◯日」)。
金額は半角数字+漢字(例:金30万円(¥300,000))で重複表記すると誤解が減る。
振込先は金融機関名、支店名、口座種別、口座番号、口座名義まで記載。
支払計画の例文(コピペ用)
甲(借主)は、令和◯年◯月◯日現在、甲が負う未払家賃等合計金額金300,000円(内訳:令和◯年◯月分〜◯年◯月分)を認め、これを下記のとおり分割して支払うことを約する。 支払回数:3回 支払金額・期日: ①令和◯年◯月25日 金100,000円、 ②同年◯月25日 金100,000円、 ③同年◯月25日 金100,000円。 支払方法:甲は上記各期日までに以下の口座に振込むものとする。〔振込先〕
違約金(遅延損害金)についての注意
日本では法定利率(民法)等の制約があり、過度の利率は無効・減額されるリスクがある。遅延損害金を定める場合は、明示的かつ妥当な利率にすること、あるいは法的上限を確認することが必要。
立ち退き料の金額相場と念書での明記方法
相場の捉え方(実務的・交渉的観点)「相場」は地域・物件種別(住居/店舗)・借主の事情(年齢・家族構成・営業への影響)・貸主の立退き必要性で大きく変わります。実務では、交渉で合意される金額は下の要因に左右されます。
居住用物件なら:家賃の数ヶ月分〜数年分(期間や事情による)。
店舗用物件なら:営業損失や設備投資を見積もって高くなることが多い。
注意:ここでの「数ヶ月分」などはあくまで目安です。具体的な金額は個別交渉・弁護士の助言に基づき決めるべきです。
念書での書き方(明記方法の例)
立退料の総額、支払方法(振込・現金)、支払期限、支払条件(鍵返還の条件)を明記する。
例文(シンプル):
甲は乙に対し、立退料として金〇〇円を支払う。甲は本合意に基づき、令和◯年◯月◯日に当該金額を乙の指定口座へ振込むものとする。なお、乙が当該金額を受領した時点で本件明渡義務に関する金銭債権は消滅するものとする(但し、敷金の精算は別途精算する)。
注意点
立退料を受け取った直後に明渡しが実際に行われたことを確認する条項を入れるのが実務上重要(「立退料は鍵返却・現物引渡しを条件とする」等)。
立退料受領と引換に、敷金や他の請求権を放棄するか否かを明確化しておく。
敷金返還条件と原状回復費用を巡る記載例
基本原則(初心者向け)
敷金は契約終了時の原状回復(借主の使用による損耗を除く)に要する費用を差し引いた残額が返還されるのが原則。
「原状回復」の範囲については、国(国土交通省)のガイドラインが実務で参照されることが多く、経年劣化(通常の使用による老朽化)を借主負担とするのは一般的でないという考え方が広がっています。
念書に盛り込む記載例
敷金の精算は、明渡し後甲が本物件を確認のうえ必要な原状回復費用(通常の経年変化を除く損耗のみ)を算出して精算し、残額がある場合は明渡し後30日以内に乙へ返還する。原状回復費用の内訳は甲が業者の見積書を添付して説明するものとする。
実務的注意
退去時は入居者立会いのもとで現状確認を行い、写真・チェックリスト・業者見積を残すこと。これが裁判での重要な証拠になります。
「特約」の有無(契約書にある特約条項)によっては争点が変わるので、契約書をまず確認してから念書を作ること。
「残置物処分」条項の有効性とトラブル事例
条項の一般的な形
例:
乙が明渡期限までに撤去しなかった残置物については、甲は乙に対して書面で通知の上、30日間の引取猶予を付し、それでも撤去されない場合、甲は乙の費用負担で処分できるものとする。処分費用が発生した場合は乙が負担する。
有効性のポイント
残置物は「物」なので勝手に廃棄すると損害賠償問題や器物損壊の主張につながるリスクがある。したがって、事前の通知・相当期間の猶予・写真記録・処分費の明示があることが重要。
特に貴重品や個人情報が含まれる可能性がある場合、安易に処分するとプライバシー侵害や違法処分の問題に発展する恐れがある。
よくあるトラブル事例(実務的)
大家が入居者の荷物を勝手に外へ出し、損傷→損害賠償請求される。
処分費用を入居者へ請求したが、費用の妥当性を巡って争いに。
家主が廃棄後に貴重品(通帳や証書)が見つかり、責任を問われる。
防止策
事前に「通知→一定期間(例:30日)→処分」のプロセスを守る。
写真・立会いメモ・証人を残す。
残置物処分は可能なら専門業者に依頼し領収書を保存する。
高価なものがありそうなら、可能なら仮保管場所を提示して引取方法を示す。
最後に(実務的チェックリストと次のステップ)
すぐやるべきチェックリスト
契約書と過去のやり取り(メール・メモ)を整理する。
念書案は「数字・日付・方法」を必ず明記する(曖昧表現禁止)。
立会い記録や写真を残す(入居時・退去時) 。
可能なら念書は2通作成して双方に原本を保管。
執行(強制)を見据えるなら、公正証書化+執行認諾を検討する(弁護士に相談推奨)。
連帯保証人や第三者が関与する場合は、その署名の意味と範囲を明確にしておく。
残置物処分は「通知→猶予期間→処分(領収書保存)」の順序を踏む。
8.契約・念書の相互関係
賃貸借契約書と念書の優先順位に関するトラブル事例
まず押さえるべき基本点。法律的には「契約書(原契約)」がベースラインで、念書はその上に乗る“当事者間の追加合意”です。とはいえ、実務ではどちらが優先するかは文言次第になります。
● よくあるトラブルの図式(実例イメージ)
事例A(優先:念書)賃貸借契約書には滞納時の記載がぼんやりしていたが、貸主と借主が後日「分割で返す」と具体的に念書で合意。借主がその念書を誠実に履行すれば、裁判所はその合意内容を尊重する場合が多い。
事例B(優先:契約書)契約書に「滞納が3か月続けば契約解除できる」と明記されている状況で、貸主が念書で「今回は猶予する」とした。しかし後に貸主が撤回して契約解除を主張すると、裁判では契約書に基づく解除が認められるケースがある(念書の作り方・当事者の意思表示の明確さに依る)。
ポイント
念書が「契約の一部として明確に合意された変更・補足」になっている場合、念書の内容が優先され得る。
しかし念書が「口約束の記録」や「暫定的なメモ」のように曖昧であれば、元の契約書が優先される。
トラブルを避けるには、念書に「本念書は令和◯年◯月◯日付賃貸借契約(以下「本契約」)の◯条を変更するもの」などと明示しておく。
契約更新時に交わす念書と、契約解除前提の念書の違い
更新時に交わす念書(=更新の条件や家賃改定内容などを確認するもの)と、解除前提の念書(=立ち退き日や立退料を定めるもの)は目的と法的効果が違います。
更新時の念書:目的=「契約継続の条件」を明確化する。法的性質=契約内容の変更・明文化。更新後は通常の賃貸借契約の一部として扱われる。補足例:「家賃を月額5万円から5万5千円に改定し、更新後は敷金の取り扱いをこうする」など。
解除前提の念書:目的=「契約を終了させる条件」を合意する(いつ終わるか、立退料の有無、明渡の条件)。法的性質=契約解除の合意(双方合意による解除)や和解契約に近い。補足例:「令和◯年◯月◯日をもって契約を解除し、立退料として金◯◯円支払う」など。
実務上の注意点解除前提の念書は終了後の権利関係(敷金精算、残置物の処理、原状回復費用)をきちんと決めないと、後で別途紛争になる。更新系は変更点を契約書に反映させ、必ず双方の署名押印を取ること。
家賃減額交渉と念書の組み合わせ事例
家賃減額の交渉は借主に有利な交渉になることが多く、合意が成立したら念書で確実に固めます。実務でよくあるパターン:
借主から家賃減額の申し入れ(事情:収入減、コロナ影響等)
管理会社・大家が一時的減額を認める(例:6ヶ月間◯%減額)
合意内容を念書で明文化(期間、適用開始日、元に戻す方法、違反時の措置)
終了後の取り扱い(自動復帰・再交渉等)を記載
念書に盛り込むべき具体項目(家賃減額)
減額率・減額期間(例:令和◯年◯月◯日〜令和◯年◯月◯日、家賃70%)
減額の理由(背景を簡潔に記載すると後の争いが減る)
減額後の支払方法・期日
終了後の再度の適用(自動で元に戻すのか、再交渉するのか)
減額と引換の条件(例:立会い・協力義務など)
ワンポイント:減額は「暫定的措置」であることが多いため、終了条項(期間満了時の取り扱い)を明確にすることが重要です。
9.トラブル防止・交渉術の実態調査
管理会社・大家が家賃滞納時に念書を活用する手順(実務フロー)
管理会社・大家が滞納対応で念書を使う際の標準的な手順を実務目線で整理します。
事実確認と帳簿整理
滞納期間・金額、過去の督促履歴を整理。領収書や振込履歴を保存。
初期連絡(非公式)
電話や訪問で事情確認。メモを残す(日時・会話内容)。記録が後で重要。
書面による正式請求(内容証明)
支払期限・金額・支払方法などを明記した内容証明を送付し、法的な手続きに備える。
任意交渉(念書ドラフト提示)
分割払いや立退き条件を交渉し、合意したら念書(2通作成)を提示して署名押印を得る。可能なら立会人や管理会社担当者の署名も。
履行確認
支払があったかを逐一確認。履行が遅れた場合は念書の違反条項に基づき対応(催告、期限一括請求等)。
公正証書化・弁護士介入の検討
任意合意が危うい場合や高額になる場合は公正証書化、または弁護士に依頼して法的措置へ移行。
実務Tip:最初の段階で「記録を残す」こと。電話でのやり取りは、面談後に議事録(メール)を送付し、相手の返信(合意の証拠)を獲得すると安心です。
借主側から見た「署名を求められた際の注意点」
借主が貸主や管理会社から念書への署名を求められた場合に注意すべきポイントを、わかりやすく段階的にまとめます。
内容を最後まで読む
日付、金額、期日、遅延損害金、期限の利益喪失(「一度遅れたら残額即一括」)などの条項を必ず確認。
不明点は即答しない
その場でサインを求められても「確認してから返答します」と伝え、持ち帰る。強要は違法性を含むことがある。
署名前にコピーを要求
署名・押印された写しを必ず受け取り、保管する。
不利益条項に注意
「債務不履行があれば即時退去を認める」など、生活に直結する条項は慎重に。弁護士や法テラスに相談するのも選択肢。
保証人の同意確認
保証人がいる場合、その人にも通知・同意が必要な条項があるか確認する。保証人の知らないところで不利な条項が増えると問題になる。
署名の形式を確認
手書き署名が原則。電子署名や代理署名の場合はその扱いを確認する。
例文(借主が交渉時に言えるフレーズ)
「念書の内容を弁護士に確認したいので、今日中の署名はご容赦ください。」
「支払計画の具体的な根拠(収入見込み)を提示しますので、そのうえで再度協議させてください。」
弁護士・司法書士・行政書士が介入するケースの比較
日本の専門職の役割分担を実務目線で比較します(初心者向け、簡潔に)。
弁護士(Bengoshi)
主な業務:訴訟(明渡請求訴訟)、交渉代理、強制執行手続、法的助言。
介入ケース:相手が応じない、裁判・強制執行が必要、複雑な法的争点がある場合。
メリット:代理権(法廷での代理)、紛争解決力が高い。費用は高め。
司法書士(Shihōshoshi)
主な業務:登記(不動産)、簡易裁判の代理(一部条件下)、書類作成。
介入ケース:不動産登記や債権差押え手続きの補助、簡易な金銭請求手続(一定金額以下)。
メリット:登記等の専門性に強い。訴訟代理は制限あり。
行政書士(Gyōseishoshi)
主な業務:契約書・念書等の文書作成、提出書類の作成支援。
介入ケース:念書や合意書のドラフト作成、手続き書類の整備。
メリット:文書作成の専門家としてコストが比較的低い。ただし訴訟代理は不可。
実務判断の目安
交渉レベルで合意を目指す=行政書士や司法書士で対応可能なことも多い。
相手が拒否・法的措置が見込まれる=弁護士に依頼するのが標準的。
立ち退き合意までの平均交渉期間と成功率(実務目安)
公開された全国統計のような厳密な「平均値」は存在しづらく、地域や物件種別・借主の事情により大きく異なります。したがって以下は統計データではなく実務上よく見られる目安と考えてください。
交渉期間の目安
短期で合意するケース:数日〜数週間(借主が協力的、支払能力がある場合)。
一般的な交渉:数週間〜数ヶ月(支払計画の調整や立退料の協議など)。
困難なケース:半年〜1年以上かかることも(相手が応じない・複数関係者がいる場合)。
合意に至る成功率(傾向)
単純な分割弁済案や短期猶予で解決するケースは比較的高い合意率。管理会社や大家が柔軟に対応するなら7割程度の交渉成功が見られることもある(あくまで現場感覚)。
立退きを巡る争い(特に居住権保護・高齢者が関係する場合)は合意成立が難しい傾向。訴訟に持ち込まれる確率が高く、合意率は下がる。
重要な補足
「成功率」はどの段階で“成功”とするか(任意合意・裁判判決・強制執行での明渡し)により大きく変わるため、数字そのものを信用しすぎないこと。
交渉を短期間で成功させる鍵は「事前準備(書類・証拠)」「合理的な譲歩案」「第三者(弁護士・仲裁人)の早期導入」。
実務で使える交渉術(具体テクニック)
1) 管理会社・大家側の交渉術
準備重視:滞納の内訳、振込記録、契約書、過去の督促履歴を資料にして提示。資料が揃っていると相手も交渉しやすい。
最初は“現実的な提案”を提示:例えば「3回分割で払う」「当面は家賃を半額にして残額は半年後払い」等、相手の支払能力に即した案を提示。
“アンカー”を設定する:最初に提示する金額や条件はやや強めにしておき、交渉で譲歩しやすくする(心理的手法)。
書面化を徹底:口約束で終わらせず、念書にして署名押印を取る。可能なら立会人や内容証明を併用。
段階的圧力と支援の併用:単に追い込むのではなく、行政や福祉窓口の紹介などの支援提案も行うと解決しやすい。
2) 借主側の交渉術
事実と事情を正直に伝える:収入の見込みや支出、代替案を示すと説得力が増す。
代替案を用意する:一度に全額の支払いは難しいなら、分割案・延滞利息負担の提案などを提示。
法的リスクを確認する:サインする前に不利な条項(期限の利益喪失や高額違約金)がないか確認。必要なら相談窓口へ。
第三者の同席を求める:管理会社や大家との面談には立会人(家族・弁護士・支援団体)を同席させることで、強要や誤解を避けられる。
3) 実務で効く「妥協案の作り方」
短期的譲歩 × 長期的保護:短期は支払猶予や減額を認める代わりに、長期的には分割計画や保証人の追加などで回収を確保する。
履行担保を付ける:先に一部を支払ってもらったり、定期的な振込の自動化(口座振替)を条件にする。
段階的成功基準を設定:例えば3回連続で支払えたら追加の猶予を与える等、履行を促す仕組みを作る。
最後に:実務チェックリスト(貸主・借主共通)
合意は必ず書面化(念書)する。
書面は数字・日付・支払方法が明確であること。
署名前に全文を読み、コピーを受け取る。
強制執行を想定するなら公正証書化や弁護士相談を検討。
証拠(写真、入居時の状態、やり取りのログ)は必ず保存する。
強要や脅しでの合意は無効になり得るので、サインは冷静に。
10.特殊ケースの検証
高齢者・生活保護受給者の家賃滞納における念書の扱い
高齢者や生活保護受給者の家賃滞納は、法律的にも社会的にも非常にデリケートな問題です。念書を使って対応する際も、通常の借主とは異なる配慮や法的制限があります。
まず、高齢者の場合、体調不良や認知機能の低下などにより、支払い能力が著しく低下していることが多く、法的には「意思能力の有無」も念書の有効性に影響します。つまり、高齢者本人が内容を理解できていない場合、その念書の効力が争われる可能性が高いのです。
生活保護受給者の場合は、家賃支払いは生活保護費の一部として「住宅扶助」として給付されるため、家賃滞納の背景には行政の給付手続きの遅延や支給額の不足も影響します。貸主が念書で支払いを約束させても、実際に履行されるかどうかは受給者の生活状況に依存し、強制力が限定的です。
社会福祉との調整が必要なため、貸主や管理会社は単純な念書の締結だけでなく、市区町村の福祉課や社会福祉協議会と連携し、ケースワーカーの介入を仰ぐことが多いです。こうした連携により、念書は「今後の支払計画を明文化する」ツールとして機能し、強制執行ではなく「話し合いの合意文書」としての意味合いが強くなります。
店舗賃貸物件における立ち退き念書の事例分析
店舗用の賃貸物件は、居住用物件とは異なる事情が多数あります。特に立ち退き念書では、事業活動の継続や移転コスト、営業損失が絡むため、合意内容が複雑化しやすいです。
事例として、都心の飲食店が家賃滞納で立ち退きを求められたケースを考えます。このケースでは、店舗の営業権や看板の移転、客足への影響が大きいため、立ち退き念書には以下のような特記事項が含まれました。
立ち退き料の支払いに加え、営業再開支援費用の一部負担
原状回復の範囲を店舗設備に特化し、貸主が一部修繕費用を負担する条項
残置物の処理に関して、特定の厨房機器は借主に引き取り権を認める
立ち退き期限の猶予期間を長めに設定し、新店舗開店のための準備時間を確保
こうした条項は、店舗経営者の事業継続のための現実的ニーズを反映しています。また、立ち退き念書は単なる契約終了通知ではなく、双方の合意による「事業移転支援契約」の側面も持ちます。
判例では、店舗賃貸の立ち退き合意において、貸主が一方的に条件変更を主張した場合、借主の営業継続権や損害賠償請求が認められる傾向があります。したがって、念書の内容は双方の合意をしっかり明文化し、後で争わないよう細部まで詰めることが重要です。
家賃滞納後に分割払いを合意した念書の履行率データ
家賃滞納後、借主と貸主が分割払いを合意し、その内容を念書にしたケースの履行率について、実務上の調査データがあります。
一般的に、分割払いの念書を作成した約80%のケースで初回の支払いは履行されますが、長期にわたる全期履行となると約50%程度に減少します。これは借主の経済状況の変化や支払い意欲の減退などが影響します。
履行率を上げるためには、念書に以下のポイントを明記することが有効とされています。
支払日と金額を具体的に記載し、曖昧さを排除
遅延が生じた場合の具体的なペナルティ(遅延損害金や一括返済請求)を設定
途中履行確認のための定期報告義務や連絡先の明記
支払方法(銀行振込、口座振替など)の明確化
加えて、貸主側が支払状況をきちんと管理し、誠実なコミュニケーションを継続することも重要です。柔軟な姿勢と同時に、履行を確実にするための段階的措置を用意することが成功の鍵となります。
コロナ禍や災害時における滞納対応と念書の柔軟運用
新型コロナウイルス感染症の拡大や自然災害など、社会全体が非常に不安定な状況に置かれると、家賃滞納が急増します。こうした特殊事情下では、貸主・管理会社は従来の厳格な対応から、柔軟かつ人道的なアプローチへ転換する必要があり、念書の運用も変化しています。
具体的には、以下のような柔軟対応が実務で見られます。
支払期限の繰り延べや分割期間の延長を念書に反映
滞納理由や社会的背景の明記(「コロナ禍による収入減少による一時的遅延」等)を入れ、理解を示す姿勢を明文化
家賃減額や一部免除に関する合意を念書で取り交わすケースも増加
オンラインでの署名・押印の活用など、非対面対応を推進
このような運用は、借主の信頼回復や早期の経済再建を目指す社会的配慮が背景にあります。結果的に、トラブルの長期化を避け、双方にとって実効的な解決策となることが多いです。
一方で、念書の内容を曖昧にしたり、法的拘束力の弱い形に留めてしまうと、後々の紛争の種になるため、柔軟な対応であっても「書面で明確に約束を残す」ことが重要です。例えば、「202X年X月X日までに◯◯万円の分割払いを完了する」という具体的な履行計画を記載し、双方署名することが推奨されます。
特殊な事情が絡む場合でも、念書は単なる「約束の紙」ではなく、両者の合意を法的にも社会的にも裏付ける大切な役割を持っています。高齢者や生活保護受給者、店舗賃貸や社会的危機状況など、ケースごとに適切な対応と文書作成が求められます。トラブルを未然に防ぎ、円満解決を目指すために、専門家の助言を仰ぎながら念書を活用することを強くおすすめします。
契約書作成は弁護士・行政書士どっちに依頼すればいい?
契約書を作成する際、「弁護士と行政書士、どちらに依頼すればよいのか?」と悩む方は多いでしょう。どちらの専門家も契約書作成の業務を行いますが、その役割や対応範囲には違いがあります。本記事では、専門家に依頼するメリットや具体例を交えながら、どちらを選ぶべきかを解説します。
専門家に依頼するメリット
1. 契約のリスクを防げる
契約書には、当事者同士の合意内容が明確に記載されます。しかし、素人が作成すると、法律的に不備があったり、トラブルが発生したときに対応しきれなかったりするリスクがあります。専門家に依頼することで、契約の抜け漏れを防ぎ、将来的なトラブルを未然に防ぐことができます。
具体例
たとえば、フリーランスが企業と業務委託契約を結ぶ際、報酬の支払い期限や業務範囲の記載が不明確だと、後々「こんなはずじゃなかった」と揉める原因になります。専門家に依頼すれば、報酬の支払い遅延時のペナルティや、契約解除の条件など、重要な事項を適切に盛り込んだ契約書を作成できます。
2. 自社や個人に適した契約内容にできる
契約書の雛形(テンプレート)はインターネット上にもありますが、それをそのまま使うと、自社のビジネスモデルに合わなかったり、不要な条項が含まれていたりすることがあります。専門家は依頼者の事情をヒアリングし、最適な契約書を作成してくれます。
具体例
例えば、飲食店のオーナーがテナント契約を結ぶ際、一般的な賃貸借契約書だけでは、営業時間の制限や原状回復義務について十分にカバーされていないことがあります。専門家に相談すれば、こうした細かい点も考慮した契約書を作成でき、トラブルを未然に防げます。
行政書士と弁護士の違いは?
契約書作成を依頼できる専門家には、行政書士と弁護士の2種類があります。それぞれの違いを理解することで、自分に適した専門家を選びやすくなります。
行政書士:契約書作成の専門家
行政書士は、主に「契約書の作成」を専門とする国家資格者です。法律に基づいた正確な契約書を作成し、行政手続きや許認可申請にも対応できます。
具体例
・事業者間の業務委託契約書の作成 ・飲食店や美容サロンなどのテナント契約書の作成 ・売買契約書や合意書の作成
ただし、行政書士は「紛争が発生した場合の代理交渉」や「法廷での弁護」は行えません。トラブルが発生した際の対応まではできないため、契約内容に不安がある場合は、弁護士に相談する必要があります。
弁護士:法律トラブルに対応できる専門家
弁護士は、契約書の作成だけでなく、契約に関する紛争対応や訴訟の代理もできる法律の専門家です。トラブルが発生した際のリスクを考慮し、より強固な契約書を作成できます。
具体例
・企業間の買収、合併契約書の作成と交渉 ・高額な不動産売買契約の作成とリーガルチェック ・契約違反が起きた際の法的対応
弁護士に依頼すると、契約書の作成だけでなく、万が一の紛争時にも対応してもらえるというメリットがあります。ただし、弁護士の費用は行政書士より高額になることが一般的です。
専門家に依頼する際の費用と流れ
費用の相場
依頼する専門家や契約書の種類によって、費用は異なります。一般的な相場は以下のとおりです。
専門家 | 費用の目安 |
行政書士 | 契約書作成3万~10万円、リーガルチェック1万~3万 |
弁護士 | 契約書作成10万~30万円、紛争対応10万円以上 |
行政書士は比較的リーズナブルな価格で契約書を作成できますが、紛争対応はできません。一方、弁護士は費用が高めですが、契約のリスク管理を徹底できるというメリットがあります。
依頼の流れ
専門家を選ぶ:契約内容や将来的なリスクを考慮し、行政書士か弁護士のどちらに依頼するか決める。
相談・ヒアリング:依頼者の状況を詳しく聞き、契約書の目的や必要な条項を確認する。
契約書の作成・修正:専門家が契約書を作成し、依頼者と確認しながら修正を加える。
最終確認・納品:完成した契約書を納品し、必要に応じて公証役場での認証を行う。
具体例
たとえば、フリーランスが業務委託契約を結ぶ際、
行政書士に相談し、業務範囲や報酬条件をヒアリング。
契約書のドラフトを作成し、内容を確認。
必要に応じて修正し、最終版を納品。
依頼者が契約書に署名し、取引先と締結。
このような流れで進めるため、契約の重要性を理解しながら進めることができます。
まとめ
契約書作成を専門家に依頼することで、契約のリスクを防ぎ、スムーズな取引を実現できます。
行政書士は契約書の作成が得意で、費用を抑えられるが、紛争対応はできない。
弁護士は契約書作成に加えてトラブル対応も可能だが、費用は高め。
契約内容や想定リスクに応じて、適切な専門家を選びましょう。
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